毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-29 転移

 境界を越えて十分ほど降りると斜め下に伸びた穴が終わり、100mほどの広い空間に出る。

 

「ここが・・・」

「うむ。"黄金の迷宮"じゃな」

「ああ、思い出すぜ。この空気だよこの空気」

 

 苦い過去を思い出しているのだろう、サーベージが顔をしかめる。

 一方でメルボージャ、セーナやミトリカと言った高い魔力を持つもの以外は一様に顔をこわばらせていた。額に汗を浮かべているものもいる。

 

「おいおいなんだこりゃ・・・魔力が濃密な霧みたいになってんぞ」

 

 その中でも一際大きな汗を浮かべているのがモリィ。

 メルボージャが振り向いて頷いた。

 

「やはりお主の《目の加護》は強力じゃの。

 しかり、前にも言うたがこの迷宮の大気中の魔力はとんでもなく濃い。

 それ故に生息するモンスターも圧倒的に強いのじゃ」

「にしては地上に出て来たモンスターは・・・あ、地上や"保養地"の魔力濃度でも生きていける程度のモンスターだから地上に出て来たって事か」

「そういうことじゃ」

 

 リアスが剣を構えながら周囲を油断なく見回す。

 

「モンスターの気配を感じないのもそういうことですの?」

「だろうね。ボクの記憶が正しければ、ここは黄金の迷宮でも最上層部だ。元から比較的弱いモンスターしかいなかったんだろうさ」

「比較的、ね」

 

 黒等級相当のシロウ達や、特務機関の精鋭であるディグ達を含めた緑等級冒険者数十人と駐留軍の奮戦、それにヒョウエの支援呪文とモリィの雷光銃があってようやく撃退できたモンスターの群れを思い起こしてヒョウエやカスミが苦笑する。

 

「まあ黒等級一箱で撃退できるなら、この迷宮では雑魚の部類だろぉな」

「雑魚でない連中を数匹ならともかく数十匹相手にするのはいささかつらそうですわね」

「ったりめえだ。オレだって一人じゃ死にそうになる相手だぞ? おめえなんざまだまだよ」

「道半ばですわね」

 

 師匠のにべもない言葉に、それでもリアスが微笑んで頷く。

 求道者のたぐいによくいる、修行や努力を全く苦にしないタイプなのが彼女だ。

 

「まあモンスターがおらぬなら丁度よい。アルテナ、頼むぞ」

「うむ! わらわの力、見せてくりょうぞ!」

 

 えっへんと胸を張るアルテナ。

 ヒョウエが真剣な顔で頷いた。

 

「・・・」

 

 周囲も真剣な表情で見つめる中、目を閉じて集中する。

 

「すうー・・・はぁー・・・」

 

 深呼吸と共にアルテナの魔力が高まる。

 魔力を感じられる面々が特に注視する中、最後の数瞬一気に高まる魔力。

 

「!」

「!?」

 

 メルボージャ、セーナ、ヒョウエ、ミトリカの顔色が変わる。

 次の瞬間、一同の姿は洞窟の中から消えていた。

 

 

 

「おいババァ、どういう事だ!?

 他の連中が消えちまったぞ!」

「黙っとれ、今考えとんのじゃ」

 

 どことも知れぬ洞窟の中。

 常人ならば吐くほどの魔力濃度がかろうじてここが黄金の迷宮と教えてくれる。

 その中に二人たたずんでいるのはサーベージとメルボージャ。

 普段は城壁より厚い面の皮を誇るサーベージの顔に、今は僅かな焦りの色があった。

 

「・・・やはりクリスめの仕掛けじゃろうな。最後の瞬間に何らかの干渉を受けた。恐らくはそれだと思うが、今となってはわからん」

「バラバラに飛ばされたってことか。他の連中の場所はわかんねえのか?」

「ここは魔力濃度が濃くて、本体ですら限界があると言うたじゃろうが」

「・・・」

「・・・」

 

 瞑目して念じるメルボージャ、無言で周囲を警戒するサーベージ。その手は無意識のうちに腰の刀の鯉口を切っている。

 しばしの間を置いてメルボージャが目を開いた。

 

「それでも一組は見つけた。これは・・・片方はセーナじゃな。もう片方は恐らく人間の誰かじゃろうが、よくはわからん。少なくともミトリカではないし、ヒョウエやアルテナでもない」

「ちっ、その二人が一番重要だろうに」

「文句はクリスに言え。取りあえずセーナ達と合流じゃな」

「おう」

 

 頷きつつ、無造作に抜刀する。

 その視線の先の通路からは、重い足音と強烈な敵意。

 恐れる風でもなく、二人は無造作にそちらへ歩き出す。

 どのような怪物であろうと、この二人が揃っている限り毛ほどの傷もつけられぬだろうと思える姿だった。

 

 

 

 対してこちらは別の洞穴。

 白い甲冑を身につけた凛々しいサムライが、いつにもなくおろおろしていた。

 

「なんてこと、カスミと離れてしまうなんて・・・! ああ、カスミ、大丈夫かしら・・・一人で心細くて泣いてはいないかしら」

「カスミは一人でも大丈夫だろ。むしろほっといたら危なっかしいのはリアスじゃねーか?」

「なんですって!」

 

 にしし、と笑うのはミトリカ。

 大人げなくそれに噛みつくのはリアス。

 しばらく二人はにらみ合っていたが、どちらからともなく視線を外して戦闘態勢に入った。

 

「お、鋭いじゃねーか、人間のくせに」

「あなたも鋭いですわよ、ピクシーのおちびさんにしては」

 

 ふふっ、と互いに笑みを浮かべる。

 その視線の先には、類人猿のような前傾姿勢をとった、二足歩行のトカゲ人間の群れ。身長は、直立すれば3mには届くだろう。

 腕が長く、いざとなれば熊のように四足走行もするのだろうと思われるが、ここにいる二人にそれ以上を察する知識はない。

 

「支援術とかは使えるんですの?」

「んにゃ、ブッ飛ばすだけ。眠りの術とか幻術は使えなくもねーけどな」

「まあ余り効きそうにないですし、それでいいでしょう。では互いの邪魔をしないようにと言うことで」

「オッケー!」

 

 次の瞬間、白きサムライと蓮っ葉な妖精は、共に閃光となって敵の群れに突っ込んでいった。

 

 

 

 闇の中、明かりもつけずにモリィとティカーリが歩いている。

 双方夜目が利くうえに腕利きの狩人であり、気配も足音もほとんど感じさせない。

 恐らく並の人間では、目の前を通ったとしても察知できないだろう。

 

「!」

 

 先頭を歩くモリィがぴたりと止まり、ゼスチャーで後ろのティカーリにも止まるよう合図する。

 止まったティカーリに今度は足元を指し示すが、何のことかわからず彼女は首を振った。

 モリィが少し意外そうな顔をして、耳元で囁く。

 

「足跡だよ。人間の靴跡だ。モンスターじゃねえ」

「・・・」

 

 言われたティカーリがかがんでその辺を凝視するが、やはり何も見てとることは出来なかった。

 

「ダメか。エルフならわかるかと思ったんだけどよ」

「モリィさんの《目の加護》は凄すぎるんですよ。感覚強化は私余り得意じゃありませんし・・・セーナやミトリカちゃんくらいじゃないと」

「そういうもんか」

 

 セーナは魔法は基本得意ではないが、弓矢に魔力を込めるのと感覚器を含めて肉体を強化するのは例外的に得手としている。エルフの基準でも上位の魔力の持ち主であり、その魔力量に任せた強化はかなりのものだ。

 突然変異体であるドータボルカスであり、元から魔術の得意なミトリカは言うまでもない。

 

「んじゃま、この足跡を追っていこうぜ。サイズからしてカスミかジジイ以外の誰かだが、岩肌じゃそれ以上はちょっとわかんねーな」

「そうですね」

「ああそれと」

「?」

 

 首をかしげたティカーリに、ニヤッと笑ってみせる。

 

「モリィでいいよ。少なくとも今だけは相棒(バディ)だ。タメ口で行こうぜ」

「・・・そうだね、わかったよモリィ」

 

 闇の中で笑みを交わし、二人は再び歩き始めた。




修行や努力を全く苦にしないと聞いて最初に思い浮かぶのがカミタマン。
後年歌ってたのが田中真弓本人と気付いて目を丸くした。
85年の作品ですが、当時から歌うまかったんだなあ・・・

後ばらける面々は実はサイコロで決めたのですが、サーベージとメルボージャは綺麗に同じ目を出して二人道行きと相成りました。
リアス-カスミやセーナ-ティカーリ-ミトリカもばらけたのに何と言う絆の強さかw(腐れ縁とも言う)
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