毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-30 一番駄目な奴

 転移の衝撃から立ち直ると同時に、サフィアが素早く"探偵(ショルメス)"のペルソナをかぶり、油断なく周囲を警戒する。

 ヒョウエも念響探知(サイコキネティックロケーション)を試そうかと思ったが、やめておいた。

 あれは潜水艦のアクティブソナーと同じで、周囲の状況を判断出来はするが、鋭い相手ならほぼ100%気付かれてしまう欠点がある。

 同様の理由で魔法の明かりもつけない。

 

「ふむ。近くにはモンスターはおらんようじゃな」

「みたいだね」

 

 アルテナの言葉にサフィアが頷く。

 今この場にいるのはヒョウエとこの二人だけだった。

 ヒョウエが呪文を唱え、魔法の明かりが周囲を照らす。

 

「何が起きたんだろう? 何か魔法の干渉を受けた感じだったけど・・・」

「そんなところじゃな。迷宮の構造を知覚して、最下層に転移しようとした瞬間に何か、がつんと来たのじゃ」

「恐らくはクリス先生が仕掛けたトラップですね。警備兵を置いておくことは出来なくても、見張りと転移封じの罠だけはきっちり設置してたわけだ」

 

 おほほほほ、と高笑いをするクリスのイメージと、キャハハハハと甲高い笑い声を上げるダー・シのイメージが同時にヒョウエの脳裏によぎる。

 

(ええい、うるさい)

 

 首を振って高笑いの二重奏を脳裏から追い払うと、サフィアとアルテナがこちらを見ていた。

 

「何です?」

「ああ、これからのことだけど・・・っ!」

 

 いきなりサフィアが両手で口元をふさいで顔を背ける。

 その頬が真っ赤だ。

 

「あー・・・」

「・・・」

 

 こちらも僅かに頬を染めて頬をかくヒョウエ。

 しばしいたたまれない沈黙が続く。

 

「やれやれ」

 

 溜息をついたのはアルテナ。

 

「サフィアはヒョウエが好きで、ヒョウエもサフィアを憎からず思っておる。それでいいではないか。何故いちいち恥ずかしがる? 無駄な事をする暇があったら交尾してくれと頼めばよいではないか」

「アルテナーッ!?」

 

 顔を真っ赤にしたサフィアの絶叫が響く。

 

「ええいうるさい。怒鳴るでないわ。時と場合を考えよ!」

「キミが言うかなそれを!? 後女の子がそう言うこと言うの禁止!」

 

 けろりとした顔で文句をつけるアルテナに、更にサフィアが突っ込む。

 その顔はもはや熟れすぎたトマトよりも赤い。

 

「どうどうどう。サフィアさん、お気持ちはわかりますが抑えて抑えて。どこからモンスターが聞きつけるかわからないんですから」

「む、むむむ」

 

 苦笑するヒョウエにたしなめられ、サフィアは何とか自制を取り戻したようだった。

 それを確認してアルテナの方を振り向く。

 

「あのですね、確かに無駄ですが人間というのはその無駄が必要な生き物なんです。一見無駄に見えるのは、本当に重要なことに備えるためのリソースの予備なんですよ。

 そういう意味では完璧で無駄のない生き物である龍とは正反対というか」

「ふーむ」

 

 ちょっと考え込んでヒョウエの顔を見上げるアルテナ。

 

「じゃがこの件に関してはお主が一番悪いのではないか?」

「何で僕が?」

 

 思わず眉を寄せる。

 

「リーザにしろモリィにしろその他のメスどもにしろ、一人に決めるなり全員とつがうなり、さっさと決めればサフィアが気をもむこともなかろう。

 だいたい、お主は誰が一番なのじゃ。そこをはっきりせんから問題が起きるのではないか?」

「むう」

 

 淡々と、そして無遠慮にグイグイ追求してくる金髪の幼女にヒョウエが口ごもる。

 

「うーん・・・前にも聞かれたような気がしますが、リーザなりモリィなりと一緒にいるのは楽しいですけど、それより本を読んでいるのが楽しいというか」

「なるほど、お主が一番駄目な奴じゃと言うことはよーくわかった」

「ぐっ」

 

 全く手心のない言葉の一撃がヒョウエを痛打する。

 さんざん父親やサナに説教されて自覚があるだけに言い返せない。

 がっくりとヒョウエが肩を落とし、サフィアが苦笑しつつ後頭部を撫でてやっていた。

 閑話休題(いたくなければおぼえませぬ)

 

 

 

「で、どっちからどこへ行くのじゃ。何ならわらわが最下層へ転移させてやってもよいが」

「「それはなしで」」

「む」

 

 ヒョウエとサフィア、二人の声がハモった。

 取りあえず色恋沙汰のあれこれは脇に置いて冷静さを取り戻している。

 「これが終わったら話があるからね」と真顔で言われてヒョウエがちょっと顔を引きつらせていたが些細な問題だ。

 それはそれとして口を揃えて否定されたアルテナは面白く無さそうな顔をしていた。

 

「なんでじゃ? 力はありあまっておるぞ。今度は大丈夫じゃ!」

「いやまあ力は余ってるでしょうけど大丈夫かどうかは・・・力はまだしも技術でアルテナがクリス先生に勝てるとは思えないしなあ・・・」

「そうだね。さすがにこの状況で更にばらけるのは御免蒙りたい。君たちはこの作戦のキーパーソンだから尚更ね」

 

 冷静さを取り戻したサフィアの頭はいつもの回転を取り戻している。

 そしてその脳裏で改めて決心することが一つ。

 

(二人を何としてでも目的地まで連れて行かなくてはならない。場合によってはボクの命と引き替えにしてでも)

 

「サフィアさん?」

「ん、なんだい?」

 

 少年を見下ろすサフィアの笑顔。一瞬間が開く。

 

「いえ別に。ともかくここは中層、3-59の玄室かと思いますけどどうでしょう」

「うん、ボクもそう思う」

 

 僅かな時間で迷宮のマップを全て暗記した二人が、その記憶を確認し合い、頷きをかわす。

 "学者(スカラー)""探偵(ショルメス)"という知力特化の仮面(ペルソナ)を持つサフィアはまだしも、ヒョウエがそれをやるのは"賢き魔術師(ウィザード)"の面目躍如。

 

「ここから最短距離で水晶の間に通じる封印の扉に向かうって事でいいかな?」

「あらかじめそう決めてますしね。一応"失せもの探し(センス・ロケーション)"を使ってはみますが。アルテナもそれでいいね?」

「無論じゃ」

 

 少女が頷いたのを確認して術を発動する。

 待つことしばし。

 

「・・・どうじゃった?」

 

 アルテナの問いに首を振るヒョウエ。

 

「やっぱりダメですね。霧の中で音を聞くような感じです。

 そっちの方にいるような気はするんですけど、場所や方向がまるでわからないと言うか」

「アルテナのダンジョンマスター権限でそのへんはわからないのかい?」

「うーむ、どうかのう? 何か出来そうな気がせぬが」

 

 しばらく精神集中するが、やはり首を振る幼女。

 

「やはりだめじゃ。どうもぼんやりしてよくわからん」

「アルテナの場合、厳密に僕と同じダンジョンマスター権限があるとは限りませんからね。

 後、ダンジョンから生まれたモンスターは感知しやすいんですけど、中にいる人間とかは感知するのにちょっと熟練が必要だったりします」

「へええ」

「なるほどのー」

 

 ヒョウエのうんちくにちょっと感心する青銀髪の麗人と金髪の幼女。

 ややあって、三人がまじめな顔に戻る。

 

「それでは行きますか。僕が後衛、サフィアさんが前衛、アルテナが真ん中。サフィアさんには消耗少なめの強化(バフ)呪文もかけておきましょう」

「お願いするよ」

 

 頷きあい、手早く術をかけてからヒョウエたちは最下層に向かって歩き出した。

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