毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-32 「しかづの」と打ち込んでも変換されないけど「かづの」と打ち込むと「鹿角」と出てくる

 その後もヒョウエたちの一行(パーティ)は様々な危険に遭遇した。

 差し渡し10キロにもなるだろう広大な空間にたむろう飛竜(ワイヴァーン)の群れ。

 その数数千匹、加えて地上で見る同族の三倍、15mくらいはある。

 透明化で避けてすれ違おうとしたが、臭いで気付かれそうになったので悪臭物質をまき散らして逃走した。ワイヴァーン達からすればいきなりスカンクに屁を引っかけられたようなもので、とんだ災難だったろう。

 

 

 

 通路を塞ぐ黒い魔力の渦。

 触れればまともな物質は無事では済まない。術式でさえもだ。

 しかも後ろからはやはり10mはあろうかという毒のブレスを吐く巨大コモドドラゴンの群れ。

 "物質分解(ディスインテグレイト)"で人一人が潜れるくらいの縦穴を掘り、素早く入り口を塞いで遠回りしながら迂回路を掘って通り抜けた。

 

 

 

 底なしの谷に黄金の鱗を持つ東洋龍、天龍(ティエン・ルン)の群れが無数に舞っていたときは立ちくらみを起こして思わず顔を覆った。

 アルテナに竜になってもらい、天龍の嫌う鉄錆の粉を周囲にばらまいて何とか突破した。

 錆の粉を周囲にばらまくのはサフィアのアイデアだ。

 ヒョウエも聞いたことがなかったが、"物質変性(マテリアル・コンヴァージョン)"で作った鉄錆の粉を念動で周囲に浮かせると、確かに天龍は嫌がって近づいてこなかった。

 

「マネージャーが現役の時にそれで危地を脱したらしくてね。それ以降"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"では『ドラゴンと会ったときのために鉄錆の粉をお守り代わりに持っていけ』って言われるらしいよ」

「へえええええ」

『わらわは別に平気なんじゃがのう?』

 

 龍に変じたアルテナが真の言葉で首をかしげる。

 

「ニホンでもあのタイプの龍は鉄の矢を嫌うという伝承がありますからね。何か種類によって好き嫌いがあるのかも。しかし、サフィアさんは本当に博識ですね」

「いやあ、キミには負けるさ」

「まあ僕は生まれた時から王宮の書庫に入り浸っていたようなものですし」

「らしいね。書庫から出てこなくて困ってる、ってサナから愚痴を聞かされたことがあるよ」

「おっとと」

 

 くすくす笑うサフィア。

 ヤブヘビになってしまったヒョウエが思わず首をすくめた。

 

『やはりヒョウエはダメ人間じゃの』

「はいそこ黙って飛ぶ」

 

 

 

 その後も竜人(ドラコニュート)獣龍(タラスク)、ドラゴンタートルと言ったモンスターの襲撃、亜竜の骨がうずたかく積み上がった洞窟(魔力濃度が濃すぎてサフィアが血を吐いた)、知恵を持つ龍との謎かけ勝負などを乗り越えて一行は迷宮深くへ進む。

 龍の糞で天井まで塞がれた玄室に出くわしたときには、引き返そうとするアルテナを二人がかりで説得するのにいい加減無駄な時間を使った。

 

「しかし、あの龍の糞、出来れば持って帰りたかったですねえ」

「あーそうだね」

 

 ヒョウエの物質分解と浮遊の術で龍の糞の山を乗り越えた二人が残念そうに言葉を交わす。アルテナがもの凄く嫌そうな顔になった。

 

「何じゃお前ら、そんな趣味があったのか? 人間は不可解な事をするが・・・糞を顔に塗りたくるならわらわには近づくなよ」

「しないよ!?」

「しませんよ! ・・・龍の糞って色々貴重な薬や魔道具の原料になるんですよ。まあ化粧品にもなりますが。血が薄まって力衰えたとは言え龍ですからね。成分も含有魔力も、そこら辺に転がってるようなものじゃありません。

 あれ全部回収できれば、僕の借金も大半返せますよ」

「ふむ。ではわらわのおしっこを飲ませれば病気が治ったりするのかの?」

 

 ヒョウエとサフィアが同時に吹き出した。

 

「アルテナーっ!」

「だから女の子がそう言うこと言っちゃダメだって!」 

「じゃがそういうことであろう?」

「まあ違いませんけどね!?」

 

 実際には直だとむしろ成分が濃すぎて人間が飲んだら即死するだろう。

 西遊記では、龍馬のおしっこで王様の病気を治す薬を作ったりしているが・・・

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「ヒョウエくんっ!」

 

 いきなりサフィアがヒョウエを突き飛ばした。

 危ない、と言おうとしたのであろうか。その口が何かを伝えようと動いて、次の瞬間背中が大きく切り裂かれ左腕が切り飛ばされた。

 

「サフィアさん!」

「サフィア!」

 

 咄嗟に念動でサフィアの体を引き寄せ、同時に後ろに跳ぶ。

 アルテナも同時に跳んでいた。

 

「!」

 

 咄嗟に張った念動障壁の表面に再び斬撃。

 経絡一つ分とは言えヒョウエの念動障壁を苦もなく切り裂いたそれはギリギリでサフィアの首筋をかすめ、青銀の髪を宙に数本舞わせた。

 

「"オーラ感知(センス・オーラ)"! "魔力解析(アナライズ・マジック)"!」

 

 着地と同時に術を発動。同じタイミングで、ヒョウエとサフィアを守るようにアルテナが一歩前に出る。

 術によって拡張された視界の中で、人型の何かが身じろぎするのがわかった。

 

「・・・」

 

 一瞬迷った後、人型は透明化を解いた。

 そこに現れたのは、一見すると高級そうな毛皮の上着を纏った貴族らしき男性。

 ただし頭部からは鹿のような枝分かれした鋭い角が二本生えており、よく見ると毛皮もところどころで肉体と一体化している。

 特徴はないものの禍々しい気配を放つ剣を二本、両手に握っていた。

 

「やれやれ、完璧な奇襲のつもりだったんだがな。人間とは言え大したものだよ、そちらのお嬢さんは」

 

 男が口を開いた。ワイルドだが親しみやすく、気品を感じさせる風貌。

 しかしその目は人のものではない。

 

「悪魔ですね・・・かなり上位の。イナ・イーナ・ボーインやヴェヴィスと互角・・・いや、少し上か」

「イナ・イーナ・・・ああ、アナクトミクのことか? レースの時におまえたちにやられた」

 

 サフィアの応急処置をしつつヒョウエが頷くと、悪魔は肩をすくめた。

 

「まあ大体あってる。ただヴェヴィスの奴は裏方や黒幕としちゃあ優れてたが、直接戦闘はからっきしだったからな。楽屋に踏み込まれた時点で負けてたさ」

「そんな気はしてました」

 

 心臓ありとは言えヒョウエが全力を出した途端に瞬殺されたエセ紳士を思い起こして、再びヒョウエが頷く。同時に応急処置が終わった。だがあくまで応急処置だ。本格的に治癒術をかけないと衰弱死する恐れがある。

 意識を失ったサフィアの体からは力が抜け、本当に人間の体かと思うほどにぐにゃりとしている。呼吸も弱く、心なしか体温も低い。

 

「早くケリを付けて治療を始めないと・・・と思ってるな? させねぇよ! 貴様らの首、このル・ユフルが取る!」

「!」

 

 双剣を竜巻のように振り回し、鹿の悪魔ル・ユフルが襲いかかる。

 

「させん!」

「ぬっ?!」

 

 迎撃に飛び出すアルテナ。

 石と金属を強くぶつけたような音がした。




鹿角(かづの)市は秋田県にある市。
今回の話とは全く関係ありませんが。

「アナクトミク」はイナ・イーナ・ボーインのモデルであるイッパツマンのコン・コルドー会長を演じた肝付兼太氏の名前をローマ字表記にしてひっくり返してアナグラムしたものです。
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