毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
武器と生身の腕がぶつかったとは思えないような衝撃音が響いた後、悪魔ル・ユフルが飛び退った。
ヒョウエたちの前に立ちはだかるように立つアルテナ。
その右腕は皮一枚切り裂かれ、僅かに血がにじんでいた。
「さすが幼体とは言え始祖の黄金龍の娘だ。人間の姿でもかてぇかてぇ」
「・・・」
軽口を叩く鹿角の男に対し、金髪の幼女は無言。
腕の傷痕をぺろりとなめる。
「どうだい、龍の姿に戻っちゃあ? それなら俺に勝てるかもしれねえぜ」
「・・・」
挑発にも無言。
後ろから僅かに心配そうな声がかかる。
「アルテナ?」
「案ずるな。踊らされはせぬ。こやつ、今のわらわの龍の姿では勝てぬ。根拠はないがな」
双剣の悪魔からは目を離さない。
後ろでヒョウエが頷く気配がした。
念動の術でサフィアの左腕が引き寄せられ、アルテナの視界の外に消える。
目の前の悪魔からは目を離さない。
にやり、と男が笑った。
「鋭いな。面倒くさいことこの上ないぜ・・・っと!」
火花が散った。
今度はアルテナの方から踏み込んでいる。
両手の指先から生えたカギ爪を、悪魔の双剣が払う。
同時にヒョウエの呪文が走った。
「"
「うおっ!?」
力強さと素早さを増したアルテナの爪に、ル・ユフルが僅かに狼狽する。
「"
「・・・!」
矢継ぎ早に投げかけられる支援呪文。
水晶の心臓の七つの魔力経絡を失っても、通常の発動と高速発動を併用して一息で2つの呪文を投げかける。達人にしか成し得ないはずの業を当然のように操るヒョウエに、鹿角の悪魔が顔をこわばらせた。
「"
「・・・ぐぐっ!」
敵の攻撃と身のこなしは鋭くなり、逆に自分の攻撃は当たっても弾かれる。
それが更に
たまらずル・ユフルは再度バックステップして距離をとった。
「ちっ・・・心臓さえなけりゃ並の術師なんて言ってたが、こいつ全然やるじゃねえかクリスさんよぉ・・・!」
そのこめかみには冷や汗と、アルテナの爪がかすった傷痕。
身にまとう毛皮や衣裳にも、いくらかの裂け目がある。
対するアルテナは無傷。最初に負った浅手も、既にヒョウエの呪文によって治療されている。
ふっ、と金髪の幼女が優越感に溢れた笑みをこぼす。
「当然じゃ。ヒョウエはわらわを救い出した勇者ぞ。貴様やあの紫の女男なぞに計れるものか!」
「お褒めにあずかり恐悦至極。後全然やる、は文法的に間違ってると思いますよ」
苦笑するヒョウエ。その間にもサフィアの治療の手は休めない。敵への挑発もだ。
ル・ユフルが舌打ちした。その顔から当初の余裕は消え去っている。
「ならこれを喰らって無事かどうか、確かめてやるよ!」
その言葉と共に額の鹿角に電光が走った。
バチバチと音を立てるそれは、見る間にまばゆい雷光の塊になる。
「このっ!」
「甘ぇっ!」
アルテナが襲いかかるが、雷光のチャージ以外防御に徹したル・ユフルを崩しきれない。
一方ヒョウエが取りだしたのは"
鹿角の悪魔がニヤリと笑う。その角にわだかまる雷光は、もはや正視も出来ぬほどに輝きを強めている。
「その球ッコロについては教えて貰ったがなあ、注ぐ魔力に応じた出力しか出せねえっていうじゃねえか。
心臓をえぐり出される前ならともかく、今のてめぇは魔力量自体は大した事はねえ。それで俺の全力の雷撃は防げるか!?」
「この・・・倒れよ!」
「できねえ相談だ!」
アルテナの激しいラッシュ。それでもル・ユフルは致命傷だけは避けて雷撃を放つチャンスを窺う。
その顔には絶対の自信。
黄金の龍であるアルテナには効かずとも、もう一人のキーパースンであるヒョウエを屠るだけの威力。自らの切り札に対する自負と自信。
真剣な顔で魔力を練り、金属球に注ぐヒョウエ。こうなれば、もはや単純な力勝負だ。
限界を超えて魔力を練れば、今胸の中にある人工心臓がどうなるかはわからない。
脳が精神の源であるように心臓は生命の源。つまり魔力の源だ。
いかにメルボージャ謹製の魔道具とは言え、全力の魔術行使に耐えられる保証はない。
アルテナの捨て身の全力攻撃もむなしく、雷光の輝きがついに頂点に達する。
ヒョウエは体の魔力を全て金属球に注ぎ込もうとして。
「・・・あ」
何かに気付いたかのように、口がぽかんと開いた。
その直後、鹿角の悪魔の咆哮が轟く。
「
まばゆい雷光が、広い洞穴を真昼のように照らし出した。
雷光が収まり、洞窟に元の暗さが戻ってくる。
任務の達成を確信したル・ユフルはニヤリと笑い。
次にその表情が驚愕に大きく崩れた。
「馬鹿・・・な・・・」
中空に浮くのは直径3mほどの暗黒の球体。
ヒョウエの金属球が生み出した、魔力を吸収する対呪文・対魔力攻撃兵器。
そしてその後ろに、杖に灯る魔法の輝きに照らされて無傷のヒョウエと、意識を取り戻したサフィアの驚く顔があった。
「なんて・・こった・・・」
ヒョウエのニヤリと笑う顔を見ながら、鹿角の悪魔は仰向けに倒れる。
その胸から引き抜かれたのは、背中まで突き通されたアルテナの右腕。
地面に倒れるか倒れないかのタイミングでその体はゆらめき、大気に溶けて消えた。
「おお、さすがじゃな。よくあれを防御してのけたわ」
自身はまともに食らいながら、ほぼ無傷のアルテナ。
振り向いて笑みを浮かべるが後ろの二人はそれどころではなかった。
「アルテナ! 服! 服!」
「ダメだよ! 女の子なんだからもうちょっと恥じらいを持たないと!」
先に述べたとおりアルテナにはほとんど外傷はない。
ただしアルテナ本人は、だ。
「・・・おお」
言われて初めて気がついたのか、金髪の幼女はすっぽんぽんの自分を見下ろして軽い驚きの声を上げた。
ろっかくの術!
え、桃太郎伝説なんて知らないって?