毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-36 光は見えず

 離宮上空、レスタラの空中要塞。

 続々と魔導甲冑が降下してくるそれとは別のハッチが開き、火球が飛び出した。

 ひとつ、ふたつ、・・・その数合計十個。

 

「・・・おい」

「まさか」

 

 先の第二次レスタラ戦役を経験した者達の口から戦慄の呻きが漏れる。

 十個の火球は絡み合うような軌道を描いて地上に降り、それぞれの間に光のワイヤーフレームを形成する。

 人の形をしたそのワイヤーフレームにそって炎が走り、燃える巨人の姿を現出させた。

 

「嘘だろ・・・」

「なんてこった」

「・・・"炎の魔神(ザイフリート)"!」

 

 身長20m。魔神の目が開き、溶岩のような光を放つ。

 牙持つ口から、炎の吐息が漏れた。

 

 

 

 魔神が閃光の吐息を放つ。

 地面を薙ぎ払うそれは大地を溶岩に変え、冒険者やエルフや魔導甲冑を問わず、そこにいたもの全てを灼き尽くした。

 

「なんと!」

「これは・・・厄介な!」

 

 空中で肩を並べて戦っていたシロウとモニカが目を見張る。

 地上ではサティが舌打ちしていた。

 

『どけどけどけぇ! こいつは俺達が抑える! みんなは悪魔と魔導甲冑をやってくれ!』

「む」

 

 足裏の無限軌道を高速回転させてそこに滑り込んできたのは"ハーキュリーズ"。

 三階建ての家に手足をつけたその巨体は、ザイフリートには及ばずとも頭一つ低いほどの体躯を誇る。現在この場で唯一対抗できるとしたら、確かにこれしかあるまい。

 

「かたじけない! 我らはあのデカブツを・・・と言いたいところだが」

「いささか以上にやっかいだな・・・!」

 

 空を見上げるライタイムの英雄とアグナムの退魔術師。

 頭上に浮かぶレスタラの空中要塞からは、魔導砲の弾幕がひっきりなしに降り注いでいる。

 それらをかいくぐるのは、いかに彼らと言えどもたやすい事とは思われなかった。

 

 

 

「メディ! 耐熱、対魔力術式起動! 特に拳に集中」

「もうやってるわ! マデレイラ、あなたは離れてなさいっ!」

『いいえ、援護しますお姉様! いくらそれでも単体では無理があります!』

「~~~~っ! 無理はしないように!」

『はいっ!』

 

 勇ましく答えを返してくる従妹に顔をしかめた後、耐熱対魔力術式の起動を完了する。

 

「・・・」

 

 ふと気になって、胴体に対魔力術式をもう一重展開した直後、それが来た。

 

「ぐおっ!」

 

 魔神の閃光。両腕でブロックしているとは言え、それをまともに浴びたハーキュリーズからのフィードバックだろう、イサミが苦悶の声を上げる。

 閃光の余波が地面をえぐり、歩道の敷石が融解蒸発する。

 

「・・・」

 

 閃光が収まったとき、そこにはほぼ無傷の"ハーキュリーズ"が立っていた。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

 人類側の戦士達――特に先の第二レスタラ戦役を経験したディテクの軍人と冒険者から歓声が上がる。

 離宮の魔法障壁を紙のように貫き、宮殿一つを吹き飛ばした魔の閃光をまともに受けて、なお立っている。

 アンドロメダが追加の対魔力術式を展開していなければ、ハーキュリーズと言えども損傷は免れなかっただろう。偶然ではあるが、それは生き残りの戦士達を鼓舞するのに十分な結果であった。

 

「メディサンクス、助かった!」

「お礼は後! このまま行くわよあなた!」

「応!」

 

 家の巨人(ハーキュリーズ)が拳を握り、炎の魔神(ザイフリート)に殴りかかった。

 

 

 

 戦いは続く。

 ハーキュリーズがザイフリートを抑えているとはいえ、空中要塞から降り注ぐ砲撃と次々に現れる魔導甲冑、同様に倒されても倒されても現れるトンボ悪魔(ドラゴンフライ)

 サティやシロウ、モニカや黒箱リーダーなどが気を吐くものの、圧倒的な数と火力が味方側の戦力を見る見る間に撃ち減らす。

 ハーキュリーズも抑えているだけで既に身体の各部は溶解を始め、動きもはっきり鈍くなってきていた。

 

「・・・まずいな、これは」

「ですな」

 

 司令部で呟いたのはジョエリー。それに頷いたのは"狩人"。

 

「あのキワモノとマデレイラ嬢のアーティファクトが頑張ってくれていますが、抑えるのが精一杯だ。このままでは敗退は不可避でしょう」

「・・・撤退しろと?」

 

 ジョエリーの目が鋭くなる。立場としてはジョエリーの配下のカレンの更にその配下に過ぎない"狩人"だが、50年以上現場に立ち続けた歴戦の勇士にはこの場の誰もが敬意を払っている。

 ざわめく参謀たちをよそに"狩人"が首を振った。 

 

「撤退したところでディテクは悪魔に蹂躙されて終わりでしょう。ここは予備をつぎ込んででも戦線を維持するしかありますまい」

「結局はヒョウエたちに賭けるしかないのね」

「おっしゃるとおりです」

 

 溜息をついたカレンの言葉に頷く。続けてジョエリーも溜息をついた。

 

「せめてライタイムが"星の騎士"を貸してくれていればな」

「同様の状況で、我が国が黒等級冒険者を全員貸し出せたか、と考えるとかなり難しいでしょうな」

「そうだなあ」

 

 更にもう一度溜息をついた後、ジョエリーが両頬を叩いて気合いを入れた。

 

「空中騎兵出撃! 攻城弩弓(バリスタ)部隊も移動開始させろ! とにかく兵力に余裕があるところは、近衛でも何でも引っぺがして連れてこい!」

「!? 突っ込ませたところで犬死にです!」

「犬死にして貰うのだ! 時間を稼ぐためにな!」

「・・・!」

 

 思わず口を挟んだ参謀が、鬼気迫るジョエリーの表情に押されて何も言えなくなる。

 

「どうした! 命令は下したぞ!」

「は、ははっ!」

 

 顔をこわばらせた数人の士官が連絡魔道具を繋いで命令を伝達する。

 "狩人"がことさらな無表情で天を仰いだ。

 

「・・・元よりベッドの上で死ぬ気はありませんでしたが、我々はろくな死に方はできないでしょうな」

「あの世でならいくらでも切り刻まれてやるわよ。今はディテクを、いえ、世界を守ることが最優先事項だわ」

 

 ジョエリーと"狩人"がカレンの言葉に頷く。

 しばし、司令部に沈黙が降りた。

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