毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-37 ファンファーレは鳴らず

 僅かな時間を置いて、空中騎兵部隊と攻城弩弓部隊、加えて通常の板金鎧を装備した重装歩兵部隊が攻撃を開始する。

 しかしエルフや緑等級冒険者、魔導甲冑部隊でさえ苦戦する悪魔達を相手に通常の軍が太刀打ち出来るわけがない。

 

「うわああああ!」

「ぎゃああ!」

「ひいい!」

 

 ――ありていに言って、それは虐殺だった。

 緑の悪魔が空中から襲いかかり、プレートアーマーや鉄の大盾をやすやすと引き裂く。

 のど首に食らいつき、頭を食いちぎる。

 攻城弩弓も当たり所が悪ければ弾かれ、操作する兵は次々に血袋になった。

 

 空中騎兵は流石に善戦したが、それでも地力が違う。

 一騎、また一騎と落とされて、人と馬とが等しく街路の石畳で潰れる。

 トンボ悪魔の中には戦いを忘れ、人や馬の血肉を喰らうものもあった。

 

「あ・・・あああ・・・」

 

 重装歩兵の一人が尻餅をついて後ずさりする。

 股間からは生暖かい液体。

 気付けば周囲に生きた仲間はいなかった。

 

 大柄でたくましい肉体の持ち主だがまだ若い。この春に十六になったばかりだ。

 農家の三男坊が軍に入り、《加護》を見出されて選抜部隊に抜擢。

 そのまま出世して良い暮らしをするんだ、実家にも仕送りをするんだと思っていた。

 

 だが、未来は今目の前で真っ赤に染まっていた。

 仲間は誰一人として生きてはいない。

 頼みの重装甲は容易く引き裂かれ、湯気の立つはらわたを食われている。

 自分もそうなるのだと思った。

 多少《加護》が強い程度で、あの緑色の悪魔に勝てはしない。

 剣を握って立ち向かったところで、火を見るよりも明らかだ。

 

「・・・けど」

 

 それでも右手は、取り落とした剣を拾い上げた。

 膝をついて立ち上がり、左手が重いタワー・シールドをしっかりと握り直す。

 

「お前達をほっとくわけにゃいかねえんだ。

 とうちゃんやかあちゃんや、ねえちゃんやエミリーのところに行かせるわけにはいかねえんだ!」

 

 涙と鼻水で顔はぐじゃぐじゃだ。

 だがそれでも彼は立った。

 盾を構え、剣を握りしめて立った。

 

「GYGYGY?」

 

 なんだこいつは、といった風情で何匹かのドラゴンフライが顔を上げた。

 

「GYAGYAGYAGYAGYA!」

 

 そして笑った。

 種族が違ってもなおわかる、嘲りの笑み。

 

「うおおおおおおおお!」

 

 笑われていることなど気にも止めず、少年が突貫する。

 腰だめに剣を構えて(弾かれるに決まっているのに)、盾をしっかりと立てて(紙みたいに切り裂かれるのに)、意味のわからない言葉をおめきながら突進する。

 

「GYYYYYYYYYYYYYY!」

 

 立ち上がった緑の悪魔が、気付いたら目の前にいた。

 振り下ろされる鉤爪。

 ああ死ぬんだと思った。

 それでも相手の目だけを見て、その腹に剣を突き刺すことだけを考えて。次の瞬間。

 

「・・・・あ?」

 

 少年は呆然と立ち止まっていた。

 真っ二つにされた緑の悪魔が黒い塵となって消えていく。

 

「済まなかったな、少年・・・いや、戦友。遅れてしまった」

「あ・・・あ」

 

 ファンファーレは鳴らない。

 だが若き戦士はその姿を知っていた。

 水色の甲冑。星を染めた赤いサーコート。翼をあしらった兜。

 光をはじく白銀の剣、左手に構える輝く騎士盾。

 たとえディテクの人間であろうとも・・・否、この世界に生きる人間でこの男の名前を知らないものはない。

 

「星の・・・騎士! グラン・ロジスト!」

「知っていてくれたとは光栄だ、名も知らぬ勇敢な友よ」

 

 世界最高の冒険者が振り返り、ニカッと笑みをこぼした。

 

 

 

 "星の騎士"の出現。

 それを皮切りに、離宮を囲むように次々と人影が現れ始めた。

 空を舞う全身燃えさかる人影。魔術の産物である人造人間、"生ける炎(リヴィングフレイム)"コート・ハモンド。

 青い肌、黒い髪、尖った耳。生ける炎と並び、泳ぐように空中を飛ぶのは魚人妖精(オアンネス)とのハーフ、"潜るもの(サブマリン)"ロマン・クルカン。

 星の騎士を加えたこの三人こそ、現存する最古の冒険者パーティ。

 津波を防ぎ、真なる毒龍を打ち倒し、アイアン・スカルをはじめとするあらゆる悪からライタイムを、そして世界を守り抜いた英雄たち。

 

「"不朽なる者たち(イン・ヴェイダーズ)"!」

 

 それだけではない。

 少年の知らない、ありとあらゆる強者たち。

 極東風の甲冑を纏った戦士の一団。

 浅黒い肌にローブを纏った術師たち。

 見事な馬を乗りこなした草原の騎兵たち。

 ありとあらゆる無節操な武装に身を包んだ冒険者たち。

 弓と剣で武装した白い肌のエルフの戦士達。

 真なる銀の鎧で身を覆い、巨大な斧を担ぐドワーフの猛者ども。

 数は少ないが魚人(オアンネス)やピクシー、バグシーやヴァナラなど、他の妖精族の姿も見える。

 

 ヒョウエから状況を伝えられた"星の騎士"が音頭をとり、神殿や懇意の貴族のネットワークと世界各地の転移術師の協力を得てかき集めた戦力。

 百数十年に及ぶ星の騎士の名声とコネクション、先だってのレースで培われた関係があればこその離れ業。

 少年にモリィ並みの目があれば、草原の騎兵たちの中に白い神馬にまたがったダルクの英雄、カイヤンの姿も見えただろう。

 そして。

 

「かーっかっかっか! ザマァねえなウドの大木! ご自慢のゲテモノもそのていたらくか! 魔導技師(アーティフィサー)の称号なんて返上して、でくのぼうとでも名乗ったらどうだ! 姫も物好きだからてめぇに餌を与えて飼うくらいはしてくれるだろうよ!」

「バーリー!?」

 

 突如堀から盛上がった水の柱。その上に立っていたのは寸詰まりで腕が異常に長い霊猿(ヴァナラ)、バーリーだった。

 一瞬あっけにとられたイサミが、不敵な笑顔で言い返す。

 

「うるせえな、ここから反撃して大逆転するんだよ! そう言うのがお約束だろうが!」

「かはっ、威勢だけはいっちょまえだな! まあいい、姫の手前もあらぁ、助けてやるからありがたく思えよ!」

「頼んでねえよ!」

 

 言いつつも、イサミの口元は楽しそうに歪んでいて。

 

「オン・バロダヤ!」

 

 バーリーの唱える真言と共に、水の柱は20mほどの巨大な人型・・・いや、水の巨猿となった。

 堀を出、ハーキュリーズに並んで立つ。炎の魔神の前に、家の巨人と水の巨猿が並び立った。

 味方から歓声が上がる。敵から驚愕のうめき声が。

 そして、それらの声を圧して一つの声が響いた。

 

 掲げられるは神より賜りし金剛不壊の盾「ヴィヴラント」。

 そを掲げるは唯一の担い手にして英雄の中の英雄、人の力を極めしもの、星の騎士。

 輝く盾のもとに、彼は高らかに謳い上げる。

 

「今ここに我らは集った! 世界のため、人々のため、いざや我らは剣を取る!

 ここにある皆の中には兵士もいる! 傭兵もいる! 戦う人間ですらないものもいる!

 だがそれでも、自分の大事なもの、他人の大事なものを守るために集まってくれた!

 それに敬意を表し、あえて言おう!」

 

 それは伝説の再現。この大陸に住まうものならば誰もが知る英雄譚のひとこま。

 無数の冒険者たちを率いて真なる毒龍とそれに従う部族を打ち倒したときの雄叫び。

 だから、誰もが声を揃えた。

 誰もが叫んだ。

 

「"冒険者たちよ、突撃せよ(アドベンチャラーズ・アッセンブル!)"!」




「イン・ヴェイダーズ」はマーベルでもっとも古いヒーローチーム「インベーダーズ」のもじり。
キャプテン・アメリカとヒューマントーチ(ファンタスティックフォーの人間松明ではなくその原型になった人造人間)、最近中南米の人になってしまったアトランティス王の半魚人サブマリナーの三人チームです。

まあ、メインで戦ってた相手は旧日本軍ですけどね!(ぉ
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