毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
しばしの後、満足したのかリアスがハグを解いた。
ヒョウエに一礼するとカスミが元の位置に戻る。
「あー、ひょっとしてお疲れで?」
「それはそうでしょう。あなたこそ、ずっと術を使いっぱなしなのに良く疲れないものですね?」
「これでも術師としては優秀な方ですので」
「そのようですわね・・・」
ふう、とリアスが溜息をついた。
確かにその顔にも疲労が濃い。
(休みを入れた方が良さそうですね)
そんな事を考えていると珍しくカスミが口を挟んできた。
「そう言えば実際お嬢様たちは何をしていらっしゃるのですか?」
「あ、そう言えばちゃんと説明してませんでしたっけ?」
二人が部屋に籠もっている間、カスミはずっと外で見張り番をしている。
文字通り蚊帳の外な訳で、気になるのも当然と言えた。
「え? いえその、それは・・・」
「ちょっと、なんでそこで頬を染めるんです? 恥ずかしげにうつむくんです!?」
「・・・ヒョウエ様?」
ヒョウエが慌てる。対照的に冷静なカスミはすうっと眼を細めた。
その眼がいつの間にか、いつぞやのような冷たい青に変わっている。
その一方でリアスは俯いたまま言葉を続ける。
「だって・・・そうじゃありませんの! 裸身をまさぐられ、全身をくまなく撫でられ、まるで人形のようにもてあそばれて・・・家督を継ぐために必要なことでなければ、腹を斬って今すぐ果てたいくらいのことですのよ!」
「リアス様ーっ!」
叫ぶリアス。
頭を抱えて絶叫するヒョウエ。
びくり、と震えてその動きが止まった。
氷よりも冷たい青い瞳。
無感情に人の命を奪う殺人機械が彼を見据えている。
「いや、そのですね」
「・・・そう言えば。時折中から妙な声が聞こえて参りました。
必要なことと思って何も申し上げませんでしたが、立場を利用してリアス様にいかがわしいことをしていたのでしたら、私も必要な行動を取らざるを得ません」
(ヤバい殺られる)
全身から汗が噴き出す。
勝てるかどうかはともかくとして、目の前の童女はやると言ったらさくりとやる。
絶対に近い確信があった。
「とにかく! その殺る気を抑えてください! リアス様も紛らわしい事言わない!」
「わたくしは冷静です、ヒョウエ様」
「まぎらわしいとは何です! 事実ではありませんか!」
「ヒョウエ様、やはり・・・!」
「いいからおまえら二人とも黙れ! 動いていない魔導甲冑を動かしているように見せるために、操り人形を動かすようにお嬢様の体を動かして誤魔化す、そのための練習です! やましいことはまったくありません!」
カスミの目にややいぶかしげな色が混じる。
しかしそれだけだ。
「意味がわかりませんが。あなたがお嬢様の体に無遠慮に触れているということには何の違いもないのでは?」
「術です! 念動の術! 触れずにものを動かす術があるんですよ!」
カスミの動きが止まった。
ただし目の冷たい青は変わっていない。
ヒョウエが指を振ると香草茶を淹れたポットが宙に浮き、ヒョウエのカップにお代わりを注いで元の場所に戻った。
カスミが顔をリアスの方に向ける。
「・・・本当ですか、お嬢様?」
「ええ、そうですわ! 魔法とは言え、見えない手に体中をまさぐられているような感触! もう何度も恥ずかしくて死んでしまおうかと・・・!」
すうっ、と目の色が青から黒に戻っていった。
それとともにまとっていた無機質で冷たい空気も雲散霧消する。
大きく溜息をついて、ヒョウエに一礼。
「大変・・・大変失礼いたしました。どうぞ私どもをお許し下さい」
ヒョウエが大きく息をついた。
「まさかこんなところで命のやり取りを覚悟する羽目になるとは思わなかった・・・」
「重ね重ね申し訳なく・・・」
安堵の息をつくヒョウエに対して、リアスは不満げな顔。
「え、なんでわたくしも謝らねばいけないんですの? 本当の事ですわよ!」
「お嬢様」
ずい、とカスミが詰め寄った。
「な、なんですの?」
「お嬢様はまがりなりにも伯爵家の当主となられるお方。そうですね?」
「そ、そうですけど・・・まあヒョウエさんの策がうまく行けばですが・・・」
「それはひとまずおきます。問題はリアス様が人の上に立つお方だと言うことですっ!
聞いていたのが私だけだから良かったようなものの、他の家臣の皆様が聞いていれば今頃ヒョウエ様は怒り狂った方々によってなますにされていたかも知れないんですよ!」
ずずい、と再びカスミが詰め寄る。
「そ、そんなこと」
「ありえるんです! 前々から思っておりましたが、リアス様はご自分のお言葉に無頓着すぎます! いいですか・・・」
始まるお説教。
リアスは反論しようとするが、正論を重ねるカスミの前に敢えなく撃沈される。
15才の娘が10才の童女に説教されるというかなりみっともない構図。
その視線がちらりとヒョウエを見る。
(あの、助けて・・・)
(地獄で逢おうぜベイビー)
拳を握ってぴっと親指を立てる。
蜘蛛の糸にすがる依頼主を、ヒョウエはにっこり笑って蹴り落とした。
「うう、カスミがひどいですわ・・・」
「まだ反省が足りないようですね?」
「わかりました! わかりましたから眼を青くしないでっ!」
悲鳴を上げるリアスに同情しつつも助けの手はさしのべないヒョウエである。
実際人の上に立つものが軽々しく言葉を発したら、それを真に受けて馬鹿をやるものが絶対に出る。ヒョウエ自身が子供の頃から叩き込まれてきたことだ。
(誰のエピソードでしたっけ? 谷の深さを知りたいと言ったら部下が飛び降りて父親に叱られた奴。うーん、さすがに思い出せない)
さすがに前世の、しかも子供の頃の話となると記憶もおぼろげだ。
漫画でも似たような話を読んだ気がするが、覚えていない。
へたりこんだリアスを放置してカスミがヒョウエに向き直る。
「しかしお嬢様を操り人形にして、実際にうまく行くものなのでしょうか?」
「行かせるしかないですね。幸いと言えるかどうか、自分の動きを念動で強化するのはそこそこ慣れていますし、人形操りもそれなりには経験があります。
ご隠居様に
それでお嬢様が鼎を持ち上げてみせれば、みなさん納得せざるを得ないでしょう」
そういえば、とリアスが口を挟む。
「ヒョウエさんが鼎自体を持ち上げるのではいけませんの? そのほうが自然な動きになりませんこと?」
私もこんな特訓をしなくてすみますし!と言外に主張するリアスに二人して苦笑する。
「残念ながら。鼎の方に術をかければ術師の人、素質のある人には察知されてしまいますからね。
お嬢様に術をかければ、魔導甲冑の発する魔力としか思わないでしょう。誤魔化すためにはお嬢様の方を動かすしかありません」
「ですのね・・・」
リアスががっくりとうなだれた。
谷に飛び降りたのは真田信之・幸村兄弟と赤沢嘉兵衛と言う人のエピソードです。
三人揃ってこっぴどく叱られ、余計な言い訳をした赤沢さんの方はしばらくお家を追放されたとか。
漫画の方は望月三樹也のジャパッシュですね。
それの元ネタが何かあったような気がするんですけど思い出せません。
作者のモチベーションは読者の皆様の評価と感想です。
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