毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「駆けろ、"
「ヒヒーン!」
草原の英雄が神馬と駆ける。
その両脇にはカイヤンには及ばぬものの、神馬を駆る氏族の英雄が一人ずつ。
三頭の神馬がくつわを並べて駆ける、ダルク史上初めての光景。
神話を駆る三人の英雄たちを先頭に、草原の精鋭・・・彼らもまた英雄と呼ばれうる戦士達が悪魔の群れに突っ込んだ。
街路を突き進んで悪魔を蹂躙し、空中の悪魔を弓や投げ槍で駆逐していく。
極東風の甲冑を纏ったサムライは刀から雷を放ってトンボどもを焼き払い、エルフが緑の壁で味方を守ると共に矢で悪魔を叩き落としていく。
ドワーフの戦士達が斧と鎚で魔導甲冑部隊を文字通り叩きつぶし、ターバンを巻いた術師たちが空に虹色の網を投げかける。
ディテクとライタイムの黒等級冒険者たちが並んで戦い、その他の妖精族や冒険者たちも悪魔やレスタラの魔導甲冑とぶつかり合う。
ゴードは味方への支援と伝令に駆け回り、モニカやシロウ、孔雀鷲に乗ったサティたちは空中要塞に突入する。
星の騎士と仲間達が全ての中心で全軍を鼓舞していた。
突然空中に裂け目が生まれ、巨大な瘴気の塊が現れる。
瘴気が巨人の形を取ったようなそれを見て、ズールーフのエルフの里の援軍の一人、術の長シャンドラが目を見張った。
「あれは! インフェ・ビブリオ!」
「なんですって!?」
隣で支援魔法を放っていた美魔女術師アディーシャが振り返る。
「姿は変わっておるが間違いない! 改めて向こうから召喚しおったか! アディーシャ、ここは任せるぞ!」
言うなりシャンドラは宙に飛び上がり、孔雀鷲を一羽強奪してそこに向かっていった。
既に星の騎士たちが応戦しているが、生ける火炎の放つ炎も、"潜るもの"の水術もろくに効果を上げていない。
「星の騎士と言ったか、わしに任せよ! こやつは半霊体じゃ! わしのような霊魂の術の使い手でなくばまともには戦えん!」
「わか・・・」
わかった、と叫ぼうとして星の騎士は目を見張った。こちらに突っ込んでくる燃えるような赤い体色の飛竜。それにまたがった髑髏面の男に彼は見覚えがあった。
「あるいはわしのような、だな」
「お前は・・・アイアン・スカル!」
星の騎士の仇敵、真なる毒竜を崇める部族の族長。真なる毒竜を擁してかつてのライタイムに攻め込んだ大陸史上屈指の大怪人、そして肉体を乗り換える魂の《加護》の持ち主にして優れた霊術師。
星の騎士が剣と盾を構える。
「何をしに来た?」
「あいにくだが貴様などと戦っておる暇はない。さっさと全体の指揮に戻れ」
「・・・協力してくれるというのか?」
あっけにとられたような星の騎士の言葉。心地よさそうに鉄の髑髏が笑う。
「わしは確かに貴様の敵だ。
「・・・」
しばし沈黙が空き、星の騎士が頭を垂れた。
「ありがとう、アイアンスカル・・・感謝する」
「そう思うならその体をよこせ」
ぐっぐっぐ、と笑う髑髏面。星の騎士も苦笑するしかない。
「その件についてはまた話しあおうじゃないか」
「ふ・・・よかろう。では力を合わせるぞ、エルフの霊術師よ!」
「おう!」
赤い飛竜と虹色の孔雀を駆り、怪人とエルフの霊術師が黒い瘴気に向かっていった。
そして空中で目を引くのが黒い瘴気の魔なら、地上で目を引くのは、やはり
先ほどまでの防戦一辺倒だったそれとは違い、今や水の巨猿を仲間に加えたハーキュリーズは互角にザイフリートと戦っていた。
巨猿が口から水を吐き出し、辺りは魔神の体から立ち上る水蒸気の雲に覆われる。魔神の体を構成するエネルギー体を消耗させ、相手の力を削る作戦。失われた水は即座に堀から補充する。
ハーキュリーズにも水の幕を纏わせることで、相手の熱からのダメージもほぼ防いでいた。
「おあたたたたたたた! ほあったあ!」
打撃強化術式をまとったハーキュリーズの拳の連打が
「はははは、俺が与えてやった援護のおかげで調子いいじゃねえか! そら、その調子でやっちまえ! 俺が与えてやった援護でなぁ!」
「ぶっとばすぞこの猿野郎! こいつを片付けたら次はお前だ! 忘れるな!」
「やってみろよ、できるもんならなぁ!」
互いを罵倒しつつも、連携は完璧。巨人と巨猿はこれ以上ないほど息を合わせて戦っている。
「・・・まったくもう」
アンドロメダが小さく苦笑した。
そして地底。
鹿角の悪魔とウィナー伯爵の手勢に包囲されていたヒョウエたちのところにも「それ」は現れた。
地底の大広間に突如現れた、数十の人影。
その中で一際巨大な影が一歩踏み出した。
ダークブルーの魔導甲冑を身にまとった、身長2mを優に超える巨人。
ヒョウエと三人娘が目を見張る。
「・・・サヌバヌール!?」
アンドロメダの実家、魔導君主第二位リムジー家の有力者にして、ゲマイ最強の術師サヌバヌール・リムジー。
ゴリラにも似たいかつい顔に、にやりと笑みを浮かべる。
「久しいな、青い鎧。いや、ヒョウエ王子だったか。我を倒した時の意気はどうした?
この程度の連中に怯むとは、それに敗れた我が情けないにもほどがあるではないか」
「怯んではいませんよ、失礼な。まあちょっと手間がかかりそうでしたけどね」
あえて軽く、ヒョウエが肩をすくめてみせる。
サヌバヌールの哄笑。
「かはははは! 言いよるわ! 力の源の"チイト"も失っておいてな!」
むっとした顔の三人娘とセーナとミトリカ。
だが彼女らが何かを言う前にサヌバヌールが言葉を続ける。
「こやつらは我が片付けておいてやろう。前座を務めるのも業腹だが、今回は華を譲ってやる。一度は我を倒したその功績に免じてな」
「!」
一瞬驚きを見せはしたが、ヒョウエは無言で一礼するときびすを返した。
モリィやサーベージ達もそれに続く。
サヌバヌールの脇に控えていた老婆、ミロヴァがメルボージャに一礼を送ってよこす。
頷いて答えると彼女もヒョウエに続いて走り出した。
向かう先は水晶の間への道をふさぐ鹿角の悪魔ル・ユフルと
「舐めてくれんじゃねえの。俺がそう簡単に抜けると――」
「フンッッッ!」
サヌバヌールの合わせた拳から放たれた念動の竜巻。
「ぐおお!?」
「GYGYGY!?」
鋼鉄の剣でも歯が立たない緑悪魔の肉体を、魔導甲冑とサヌバヌールの術力を合わせた一撃が藁人形のように容易く引き裂く。
それは洞窟の壁を砕き、トンボ悪魔の群れを半ばまで屠り、上位悪魔であるル・ユフルの肉体にすら傷をつけていた。
「行くぞ!」
「く・・・させねえよ!」
サヌバヌールの攻撃で開いた穴に駆け込むヒョウエたち。
それでもさすがに上位悪魔、ル・ユフルが剣を閃かせて襲いかかる。
「・・・む?」
ふたつ、火花が散った。
ル・ユフルの双剣を、サヌバヌールの配下らしき黒覆面の剣士がその双剣で受け止めた結果。
「ほぉ」
対応しようと剣を抜いていたサーベージが僅かに笑みを浮かべた。
サーベージから見てもそれなりに見事な踏み込みと剣技。
視線を向けないまま、黒覆面が言葉を発する。
「ほら、早く行きなよ。こんな雑魚に構ってる暇ないでしょ」
「どうも! 感謝しますよ知らないおじさん!」
「傷つくなあ。もっと若いかも知れないじゃない?」
駆け去っていくヒョウエたちにちらりと視線をやって、ぼやく黒覆面の男。
だが剣を合わせている相手はそれどころではなかった。
「雑魚だと・・・人間のくせしやがって!」
激昂と共に双剣に力がこもる。
「おっととと」
金属音。
流石に支えきれず、剣を外して黒覆面が一歩下がった。
その覆面が僅かに切れている。
「てめぇの力量は見切った。同じ双剣使いとして共感を覚えないでもないが、邪魔をするならぶった切るぜ」
一歩踏み出した鹿角の悪魔の圧力にも、黒覆面の調子は変わらない。むしろへらへらとした笑いすらその口元に浮かんでいる。
「まあ、そうだねえ。確かに双剣同士だとちょっと勝てそうにないかな」
「それがわかっているなら・・・」
「二本なら、ね」
「!?」
黒覆面の脇腹から金属音。
両脇から一本ずつ展開した銀の腕と、その先に生えたハチドリの羽音を鳴らす剣。
ぺらり、と切られた覆面が垂れて落ちる。
「・・・貴様!?」
サヌバヌールと相対していたウィナーから驚愕と怒りの声が漏れる。
「そっちの元伯爵様への借りは返したけど、ヒョウエくんにもメレンゲの借りがあるからねえ。わざわざ
かつて「ショーグン」と呼ばれた男、ウィナーに依頼されてヒョウエを狙った暗殺剣士、四本腕のバリントンはにへらと笑った。