毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-44 屈服の証

「ヒョウエっ!」

「え・・・リアスさん?」

「ヒョウエ様は大丈夫なんですか?!」

 

 地上から悲鳴が上がる。

 確かに見てとったのはモリィだけだが、彼女の様子を見れば何かが起こったのはわかる。

 今まで流れるように空を切り裂いていた青い輝点が、ふらふらと左右に揺れれば尚更だ。

 

「・・・取りあえず一発貰っただけで何とか立て直したような感じだがどうだ?」

「そんな感じだな。けど、さっきまで互角だったのが明らかに押されてる。やべえぞ」

 

 サーベージの問いに、頭上の輝点から視線を外さないまま答えるモリィ。

 その目には黒い鎧(クリス)の猛攻を必死で耐える青い鎧(ヒョウエ)の姿がはっきりと映っていた。

 

 

 

「ホラッ! ホラッ! ホラホラホラホラホラホラホラァ! さっさとどうにかなっちゃいなさいヨッ!」

「くっ・・・!」

 

 呪鍛鋼の籠手に包まれた黒い拳の連打。

 もはやそのスピードも力も、青い鎧のそれをはっきりと上回っている。

 かろうじてブロックはしているが、もはや攻撃を繰り出す余裕はない。

 防御専念していてすら、一つ間違えば直撃を貰いかねない猛攻。

 

「あっ・・・」

「モリィさん!?」

 

 《目の加護》を持つ少女が思わず漏らしたうめきにサムライの少女が反応するが、モリィがそれに答える前に青い鎧が地面に叩き付けられる。

 土ぼこりが上がり、月面にもう一つクレーターが増えた。

 

「・・・」

 

 クレーターの中心、大の字に横たわる青い鎧。

 ゆっくりと、暗紫色のマントをなびかせて降りてくる黒い鎧。

 それは、誰の目にも明らかな勝者と敗者の姿だった。

 

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 何かを言いたいが、何も言葉が出てこないモリィ達。

 ミトリカやサーベージでさえ一言もない。

 

 黒い鎧がクレーターに降り立った。

 地に横たわる青い鎧にゆっくりと歩み寄る。

 

「・・・」

 

 青い鎧が僅かに身じろぎする。

 その傍らに立って、黒い鎧がそれを見下ろした。

 

「くふふ。勝負あり、ネ。降参しなさい、ヒョウエくん。

 ソウすれば悪いようにはしないワ。天へ昇れば水晶の心臓も不要だし、アナタに返してアゲル。

 ね、悪い条件じゃないデショ? 大丈夫、嘘はつかないわ」

 

 腰に手を当て、余裕の声音で語りかける。

 実際その通りなのだろう。できればヒョウエを殺したくないのも、不要になった水晶の心臓を彼に返していいと思っているのもクリスの本音。

 

「・・・」

 

 青い鎧が身を起こした。

 膝立ちになって黒い鎧を見上げる。

 

「ごめんね、痛かったでしょう? でももう何もしなくていいの。ワタシたちは天に昇る。後は好きにしなさい」

 

 黒い鎧が手をさしのべる。その声ににじむのは優越感と勝利の確信。そして自分が失敗することはないと確信する狂気。

 ひざまずいた青い鎧がその手を握った。

 それは誤解しようもない屈服の形。

 

「・・・・・・・・・・っ!」

「くっ・・・・・・!」

 

 モリィ達があるいは歯を食いしばり、あるいは目をそらす。

 クリスが兜の下で笑みを浮かべ、その手を握りしめた瞬間、その音が鳴った。

 

「!」

 

 モリィ達が一斉に顔を上げる。

 鳴り響いたのはファンファーレ。

 彼女たちが何度も聞いた、ヒーローの先触れを告げるそれ。

 

 彼女たちの目には何か変わったようには見えない。

 黒い鎧の前にひざまずいた青い鎧。

 

 だがモリィの目には黒い鎧が小刻みに震えているのが見えた。

 セーナとカスミ、サフィアの耳にはファンファーレに紛れて異音が聞こえていた。

 

 みしり。

 べきべきべきっ。

 

 黒い鎧の右手が甲冑ごとひしゃげる。

 呪鍛鋼の籠手が握りつぶされ、手の骨が砕ける。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」

 

 黒い鎧(クリス)が膝をつき、声にならない絶叫を上げる。

 それを見下ろすのは完全に立ち上がった青い鎧(ヒョウエ)

 先ほどまでの構図の、それは逆転。

 

「え・・・」

「なんだと・・・」

「ど、どういう事だ!?」

 

 呆然と言葉を漏らすモリィ達の目の前で、青い鎧(ヒョウエ)黒い鎧(クリス)の右手を離した。

 固めた拳が黒い鎧(クリス)の顔面に炸裂し、面頬がひしゃげる。

 黒い鎧(クリス)はそのまま吹き飛ばされ、数キロ水平に飛行してからクレーターの斜面に激突して巨大な土ぼこりを上げた。

 

 

 

「よっしゃっ! 小僧め、やりおった!」

 

 メルボージャが拳を握った。

 戸惑った顔のサーベージが、一同を代表して妻に尋ねる。

 

「お、おいババァ。こりゃあ一体どういう事だ?」

「ふふふ、それはな・・・」

 

 老婆が笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「ど、どーゆーコトよ一体・・・!」

 

 黒い鎧が土ぼこりの中から飛び上がる。

 その目の前には既に青い鎧。

 

「あり得ないわ! 仮にあなたの新しい心臓が元のそれと同じだけの出力を叩き出せたとしても、ワタシは真なる魔術師よ!? オリジナル冒険者族とは言え、今の人間とは基礎能力が違うわ!

 おまけに世界最大の竜脈に流れる魔力をそのまま使えるのよ!? 

 どう考えたってアナタの二倍以上の魔力があるはずだわ!」

 

 握りつぶされた右手は既に修復されている。だがクリスの口調には、右手を握りつぶされていたときと同じくらいの恐怖と疑問の響きがあった。

 

「確かにそうですね。ただし、僕単体ならの話です」

「単体? まさか、アナタもワタシ同様にどこかに魔力ソースを用意してたっていうノ? だとしてもこの金龍の竜脈に匹敵するほどの魔力なんて・・・」

「僕の周囲の魔力と魔素を精密に観察してみればわかると思いますよ」

「・・・? ・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

 いぶかしげに"魔力解析(アナライズ・マジック)"を発動したクリスが絶句する。

 その目に見えたのは、周囲の魔力と魔素を吸収し続ける青い鎧の姿。

 

 

 

「つまり、小僧めは周囲の魔力と魔素を吸収しておのれの魔力とする術を身につけおったのよ。そうでなくば水晶の心臓なしでル・ユフルの雷撃を凌げるわけがない」

「そうか、周囲の魔力を吸収することで出力差をおぎなったんですね!」

 

 サフィアがぱちん、と指を鳴らす。

 

「そういうことじゃ。とはいえ現代世界の大気に含まれる魔力はそれほど大したものでもない。しかし神代でも稀に見るレベルの魔力と魔素の濃度を今なお保っておる黄金竜の迷宮の、それも最深部なら・・・」

「使える魔力は無限ってことじゃの」

「いかにも」

 

 アルテナの言葉に、メルボージャが満面の笑みで答えた。

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