毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-45 魔王降臨

「馬鹿な・・・馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な! アリエナイッ!

 周囲の魔力を吸収する・・・大周天の法ですって!? 真なる魔術師(ワタシたち)の中でも、お姉様と精霊神(アウレリエン)だけが習得できた秘術ヨ?! それがいくらオリジナル冒険者とは言え、現代の魔術師ガッ!」

「コツを掴むまでちょっと苦労しましたけど、色々修羅場をくぐらせて貰いましたからね。悪魔とか、妖魔とか、真なる魔術師とか。それに黄金の迷宮の魔力濃度と魔素濃度ですか。これがなければ多分習得は出来ませんでしたね」

「~~~~っ!」

 

 クリスが歯がみする。

 それもそうだろう。言わば最大の敵を自分自身で育ててしまったのだ。

 しかも自分が習得できなかった高度の術をだ。

 だがそこでふと違和感に気付く。

 

「・・・嘘じゃない。嘘じゃないと思うけどそれだけじゃないわね? 大周天の法を修めたとしても、その出力は周囲の魔力と魔素に比例する。

 たとえ黄金の迷宮とは言え、せいぜい互角がいいところ。いくらなんでも竜脈を抑えたワタシを圧倒する程の出力は出せないはずよ」

「ご明察」

 

 兜の下でニヤリと笑う。

 

「とは言えこちらは単純な話です――あなたがその鎧を使いこなしてないからですよ」

「!?」

 

 本日何度目かの絶句。

 とはいえこれは無理からぬことである。

 魔力量においてはまだしも、『技術で』負けていると言われたのだ。

 神代の真なる魔術師であるクリスが、現代の魔術師であるヒョウエに!

 

「馬鹿ナッ! 確かにこの具現化術式は見事な代物よ!? 念動による身体能力の強化に周囲への念動、術式演算能力強化に魔力自体の増幅機能まである!

 でも真なる魔術師であるワタシがそれを解析できないなんて、あり得ない!」

「ああ、そういう意味ではなく、もっと単純なことです」

「・・・?」

「同じ道具なら使い慣れてる方が強いでしょう? それだけのことです」

「あ・・・!」

 

 極々単純な理屈。

 技術と知識では圧倒的に優れるクリスが見落としていたこと。

 その優れた技量ゆえに、機能を把握していれば術式は使いこなせるというおごり。

 ヒョウエの指摘はそこを的確に突いていた。

 

「同じ術式でも使い慣れていればより効率よく、より高い出力を叩き出せます。

 それが元々僕専用に組み上げられたものなら尚更でしょう」

「・・・」

 

 もはや言葉もないクリス。

 握った拳がブルブルと震えている。

 

「さて、あなたは礼儀にのっとって降伏勧告をしてくれましたし、僕も一応礼儀を守りましょう。クリス先生、降伏するおつもりはありますか?」

「・・・」

 

 黒い鎧の拳の震えが強くなり、全身に波及する。

 そして激情が爆発した。

 

「フザけるナァッ! 六千年、六千年待ったのよ! それを・・・それを今更・・・・がっ・・・」

 

 黒い鎧の言葉が途切れる。

 その胸に突き刺さるのは青い鎧の手刀。

 

「では返して貰いましょう」

 

 抜き出した手が握るのは握り拳ほどの透き通った水晶。

 "隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"、ヒョウエが――クリスの仕掛けた召喚術式の影響で――生まれ持った強力無比な《加護》にして天然の具現化術式。

 今、それがヒョウエの手に戻ってきた。

 

「ぐ・・・がが・・・」

 

 ふらふらと、胸を押さえて黒い鎧が後退する。

 ヒョウエと違って自前の心臓は別にあるものの、体に埋め込まれていたそれを引きちぎられた苦痛と魔力の低下は隠し切れない。

 これで黒い鎧の魔力はおおよそ半減。完全に青い鎧の敵ではない。

 それを見やる青い鎧の視線からも、声からも感情はうかがえない。

 

「・・・もう一度聞きますよ。降伏するおつもりは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうですか」

 

 左手に水晶の心臓を持ったまま、右手を拳の形に構える。

 だがそれを突き出そうとした瞬間、クリスの口が一つの真の言葉を放つ。

 

■■■■■■■(来たれ、闇の世界)

「!?」

 

 巨大な気配がその場に現れる。

 以前、ヒョウエが心臓をえぐられた時のような。

 咄嗟に飛び退いた青い鎧の目の前で、黒い鎧が爆発的に膨れあがった。

 

「――――――――!」

「先生!」

 

 クリスの無音の悲鳴。

 それは肉体の変形と共にぶっつりと途絶える。

 びりびりと、震動が伝わる。

 大地だけではない。空間そのものが揺れている。

 

「な・・・なんだこいつぁ」

「クリスめ・・・呑まれよった」

 

 メルボージャが発した絶望的な声音に、全員の視線が集中する。

 

「どういう事だよ婆さん!?」

「自分が喚んだ最上位悪魔に、体も魂も乗っ取られたと言う事じゃ!」

「それではあの方は・・・」

「心も魂も食い尽くされて残ってはおるまい・・・召喚の術は心身共に万全の準備を整えて行えと、口を酸っぱくして言って聞かせたじゃろうが・・・馬鹿が」

 

 悲しみと怒りと無力感のない混じったメルボージャの声。

 サーベージがそっとその肩を抱いてやった。

 

 

 

 黒い鎧だったものは恐ろしい勢いで増殖・巨大化を続ける。

 100mを遥かに超え、1kmを越えた。それでも勢いは衰えず巨大化し続ける黒い塊。

 青い鎧が、手元の水晶の心臓に視線を落とした。

 そしてしばしの後。

 

「モリィさん・・・どれだけあるんですの?」

「・・・ざっと3kmってとこだな。いや、もうちょいか」

 

 空を見上げる。

 その偉容に、今は首の痛さすら感じない。

 全高3kmを越える巨大なヒトガタ。

 金属の板を組み合わせて作られた巨大な人間のかたち。

 頭の両脇には角。真っ黒い顔には赤い二つの目だけがらんらんと輝いている。

 

「魔王って奴でしょうか・・・」

「さあの。わしも世界の外に関してはそこまで詳しくはない」

「か、勝てるの、あれに・・・?」

 

 ティカーリの声は震えている。

 その肩をセーナが抱いてやった。

 言葉を引き取るのはサーベージ。

 

「さあな。だが小僧はやる気のようだぜ」

「!?」

 

 突然、まばゆい光が闇を照らした。

 山よりも巨大な存在を焼く光の収束は青い鎧の必殺技の一つ、"太陽神の眼(マドゥロク'ス・ゲイズ)"。

 この場に存在する魔素と魔力をつぎ込んで放たれたそれは、通常時の数倍から数十倍の威力を誇る。

 だが。

 

「■■■■■■■■」

 

 巨大な闇の影が右手を上げる。

 

「っ!」

「?!」

 

 無色の衝撃波がほとばしった。

 不可視のそれは余波だけで地上のモリィ達を討ち倒し、大地にしがみつかせる。

 それを正面からまともに食らった青い鎧は少し飛ばされた後、体勢を立て直す。

 しかし集中が途切れたのか光の収束は途絶えた。

 

 英雄(ヒーロー)魔王(ギガンティス)

 どちらもまだ、小手調べですらない。




大周天は気功の奥義の一つ。
宇宙の気を吸収し、また吐き出す技法だと言われます。
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