毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-46 ファイナルクライシス

「よし、大丈夫っぽいな・・・うわっ!?」

 

 モリィ達が立ち上がろうとしたところで今度は暴風が吹き荒れた。

 

「おいババァ!?」

「わかっとるわ! 全員わしのそばから離れるなよ!」

 

 叫んだのはサーベージとメルボージャ。

 戦人の勘でやばそうな徴候を察知した夫と、青い鎧の能力を知るがゆえに何が起きたか気付いた妻。

 "太陽神の眼(マドゥロク'ス・ゲイズ)"と並ぶ青い鎧のもう一つの必殺技"冬神の吐息(テトラ・ブレス)"。

 大気中の空気を圧縮冷却して相手に叩き付ける、絶対零度の吹雪。

 その、前段階(・・・)

 

「周囲の空気を集めるだけでこれですか!?」

「今の奴が今までの奴と同じとは・・・」

 

 思うな、と言おうとしたところで冬神の吐息(テトラ・ブレス)が炸裂した。

 3kmを優に越す巨体が、ほとんど全部白い霜に覆われる。

 キラキラ光るダイヤモンドダストが風速100mを越えるであろう暴風に巻かれて渦を作っている。

 たとえようもなく美しく、恐ろしい光景。

 

「お前ら絶対にわしから離れるなよ! 結界の外に出たら、人間なんぞ一瞬で氷結した上で粉々じゃ!」

 

 恐らく気温は零下百度を下回る。

 余波ですらこれなのだ、いかにあの巨体でも無事では済むまい――そう思っていたところで、巨大な氷の塊が降ってきた。

 

「なんだ!?」

「あいつから剥がれた氷だよ! 霜みてぇなもんだ!」

 

 確かに良く見れば、巨体が身じろぎしてその体から白い粉のようなものがパラパラと落ちてくる。

 それも山より大きな巨体だからそう見えるのであって、実際には一トンを超えるような巨大な氷塊があられのように落ちてきていた。

 

「・・・」

 

 誰かが何かを言おうとして、魔王が今度は口から魔力光を吐いた。

 差し渡し一キロはありそうな極太の、そして超高密度の魔力の束。

 メルボージャでさえも戦慄を禁じ得ない。

 地平線をかすめ、星空の彼方へと消えていく光芒。

 恐らくかすった部分の大地は、数十キロにわたって溶解しているだろう。

 

「・・・ヒョウエ!」

「ああ、無事だったかヒョウエ!」

 

 光芒が途切れた次の瞬間、周囲数十キロに舞うダイヤモンドダストを透かし、モリィの目が青い鎧を捉えた。

 左手を正面に突き出し、サヌバヌールとの戦いの時同様"暗黒の星(Rahu)"を起動させて魔力吸収力場を展開している。

 安堵の息が漏れたところで魔王が身じろぎした。両手を持ち上げ、広げる。これまでの邪魔な羽虫を叩き落とすような風情ではなく、青い鎧を本格的に敵と認めた態度。

 

「来るか・・・!」

 

 ウォーミングアップは終わった。戦いが始まる。

 

 

 

 半歩、魔王が前に出た。

 3000m級の巨体の半歩。

 それだけでも烈震と言うほどの震動がモリィ達に伝わる。

 サフィアが額の冷や汗をぬぐった。

 

「これは・・・今更だがとんでもないね」

「なあに、姐さん。あいつも同じくらいとんでもねえさ」

 

 同じく冷や汗を浮かべながらもニヤリと笑ってみせるモリィ。

 

「確かに」

 

 サフィアもまた笑みを浮かべた。

 

 戦いは、二人が言ったとおりのものになった。

 星空が歪み、大地が裂ける。

 先の青い鎧と黒い鎧の戦いが前座に思えるほどの天変地異。

 魔王が空間を歪めれば、それを青い鎧が純粋な膂力で打ち砕く。

 青い鎧の渾身の突撃を、魔王が開いた両手で受け止める。青い鎧の拳はサイズからすれば紙一重――1mほどの距離を残して届かない。

 魔王の右肩が爆発し、青い鎧が暗黒の球体に飲み込まれる。

 

 それら天変地異に巻き込まれても、それでも互いに目だった傷はない。

 地上の人間たちは、そうした神々の戦いを傍観するしかなかった。

 

「おい、ババァ! これ大丈夫なのか?! 巻き込まれたら一巻の終わりだぞ!」

「安心せぇ。さっき、本体が目覚めたからの」

 

 その言葉と共に、老術師の姿が水晶の中に封じ込められていた白い魔女のそれに変わる。

 

「ババァ・・・いやセレス!?」

「この空間は月面であると共に水晶の間でもある。竜脈の制御も取り戻しましたし、あれに介入は出来なくてもこの場の面々を守ることくらいはできるでしょう。

 ――ヒョウエ! そう言う事です、やっておしまいなさい!」

 

 その声に応えて中空の青い鎧が左手の親指を立てる。

 直後、重力が反転した。

 

「にゃっ!?」

 

 ミトリカが上方に吸い上げられ、白い魔女の張った結界にピタリと張り付く。

 他の面々も浮き上がり、同様に結界の天井に吸い付けられた。

 地上に足をつけているのは白き魔女セレスのみ。

 

「なんっ・・・ですかこれは・・・!」

「上を見なさい。あの黒い球体が答えです」

「・・・!」

 

 戦慄が走る。

 中空に魔王が作り出したのは漆黒の球体。

 見た目はヒョウエの"暗黒の星"に似ているが大きさと、何より性質が違う。

 魔力を吸収する"暗黒の星"に比べて、それは周囲の全てを吸い込む暗黒の轟洞。

 いや、それは黒ですらない。向こう側の星の光を遮り、星空すら歪める「何か」がそこにあることがわかるだけ。

 

「ブラック・・・ホール!」

「メルボージャ様・・・いえ、セレス様。何ですかそれは?」

「ニホンの言葉です。命尽きた太陽が変じることがある、無限の重力のうろ。人も星も光も、何もかもを飲み込んでしまう無窮の穴・・・!」

 

 既に青い鎧の姿は見えない。

 

「そんなものに呑まれたら・・・!」

 

 顔に絶望を浮かべるセーナ。その言葉が終わらぬうちに、光の円環が無の轟洞をくるりと一周した。

 

「え? ・・・うわっ!」

 

 無明の虚が消滅する。

 天井にはりつけにされていたモリィ達が下に落ち、セレスの生んだ見えないクッションがそれを受け止めた。

 

「あいつぁ・・・」

 

 モリィの目に映ったのは、刃渡り1kmはあろうかという光の剣を手にした青い鎧。

 光の剣の柄になっているのは、ヒョウエ愛用の呪鍛鋼(スペルスティール)の杖。

 

「え、どうして!? あれヒョウエさんの鎧になってるんだよね?」

「あれはヒョウエが生み出したものじゃ。魔力さえあればいくらでも作れる」

「そう言う事ですね」

 

 アルテナの解説にセレスが頷く。

 

「もっとも、アレをどうやって切り裂いたのかはさっぱりわからんが」

「魔力は根本的に他の魔力と反発しあいます。そしてこの世の全ての現象と物質は魔力が元になっています。十分以上に収束した高密度の魔力であれば、理論上はいかなる現象も物質も消滅させられるのです。

 ――この目でそれを見ることができるとは、思ってもいませんでしたが」

 

 畏れすら感じる口調でセレスが上を見上げた。

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