毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
それから数日があっという間に過ぎ、継承の儀が行われる日となった。
リアスが正式に当主と認められる日であるから、客人も招いて盛大な宴を張る。
一族の主立った者に家臣たち。ローレンスやその父、カスミの祖父をはじめとしたカスミの一族もいる。
そして付き合いのある貴族家の客が数十人。
千五百年の歴史を持つ家はこの世界でもそう多くはない。
その伝統と格式を物語るように、伯爵家の催しには不釣り合いなほど多くの高位貴族がこの場に姿を見せていた。侯爵が五人、公爵も二人、王族まで来ている。
「皆様、ご注目を。ニシカワ伯爵家当主代行、先のダーシャ伯爵シンゲン・デカッツ・ニシカワ卿と伯爵家嫡子、リアス・エヌオ・ニシカワ卿です!」
呼び出しの者が声を張り上げると、奥の両開きの扉へ注目が集まる。
重い扉が音も立てずにすうっと開き、まずシンゲン、次いで「白甲冑」を身につけたリアスが入場してくる。
フードを被りベールを下ろしたヒョウエと、こちらは普段通りのカスミが脇を固めていた。
(ヒョウエ様はどうしてベールを?)
(まあその色々ありまして)
小声で会話を交わすカスミとヒョウエ。
今は離れているとは言えヒョウエは立派な王族である。
客の中に顔見知りは沢山いたし、なんなら家族まで来ている。
間違っても顔は出せなかった。
「おお・・・」
「あれが・・・」
客がざわめく。一族の者や家人もどよめきを完全には抑えきれない。
伝説に名高き「白のサムライ」の白甲冑。
平和な時代が続いたここ数十年では一族の人間でさえそうそうは目にできない代物だ。
兜を小脇に抱えるリアスに視線が集中する。
ちらりと伺った横顔も緊張はしているが固くなってはいない。
(この調子ならいけそうですね)
あれからの数日でヒョウエとカスミの「二人羽織」はかなりのところまで完成度を高めている。激しい動きをするのでなければそうそう見破られない自信があった。
四人の後ろで扉が閉まる。
シンゲンが軽く一礼して挨拶を始めた。
「このたびは皆様方にはお集まり頂き感謝にたえません。この継承の儀は――」
この手の儀式としては割合短めにシンゲンは挨拶を切り上げた。次はリアスが新当主に選ばれた感謝と抱負を述べ、これからも精進することを誓う。
拍手の中でリアスが頭を下げた。
その他色々な儀式や儀礼が続き、締めくくりにいよいよ
広間の中央に鎮座していた「なにか」から白い布を外すと、長い三本足のついた巨大な青銅の壺――意匠はヒョウエの知っているそれと違うものの、まさしく鼎が現れた。
80センチほどの足に同じくらいの壺本体。表面は深い青緑の
事前に聞いていたとおり随分と肉厚で、確かに一トンくらいはありそうに思えた。
ごくり、とリアスがつばを飲み込んだ。
「リアス。白甲冑を身につけていれば力は増すが、自分より重いものを持ち上げようとすると逆に自分の体が持ち上がってしまう。
横から耳を掴むのではなく、足の間に体を差し込んで下から担ぎ上げるように持ち上げなさい」
「は、はい、おじいさま」
頷き、リアスが兜をかぶった。面頬が自動的にスライドしてその顔を覆う。
リアスが一歩を踏み出した。人の波が割れ、その間をリアスが歩く。
鼎の前で立ち止まり、祖父の方を――そしてヒョウエとカスミの方を振り向いて、一つ頷いた。
シンゲンと、そしてヒョウエとカスミが小さく頷く。
目に僅かの安堵の色を浮かべ、リアスが鼎に向き直った。
(・・・)
リアスに施した術式に集中しつつ、ヒョウエがちらりとローレンスの顔を伺う。
何の細工もなくこの場に出て来たことをいぶかしむ表情と、まさかという表情がぶつかっているようにも思えた。
(一泡吹かせてやりましょう)
お嬢様扱いされた怒りと、ねちねち鬱陶しく探りを入れてきたいらだち、リアスの座を奪おうとしている事に対する義憤。
そうしたものが積み重なって、ヒョウエに悪い笑みを浮かべさせる。
「・・・っと」
リアスがしゃがみ込み、壺の下に入り込む。
その全身にぐっ、と力が入るタイミングでヒョウエが念動の力を解き放った。
「お」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
先ほどに倍するどよめき。
1トンを越えると思われる巨大な青銅器が浮いていく。
さして大柄でもない少女の手によって。
ゆっくりとそれは持ち上がり、アドバイス通り肩に担ぐような形になっていたそれを、両腕で高く差し上げる。
それは紛れもない勝利のポーズだった。
「・・・・・・・・・・・!」
ぱらぱらと拍手が起きる。すぐにそれは万雷の喝采となった。
その場の全員が手を叩くなか、ただ一人呆然とそれを見ている人間がいる。
ローレンスだ。
ローレンスについた家人でさえ手を叩いて感嘆する中、一人彼だけが違う表情を浮かべている。
「・・・どけっ!」
「!?」
「兄様?」
人をかき分けて、鼎を持ち上げたままのリアスの前に出る。
「危ないです兄様、離れて・・・」
「うるさいっ!」
叫んだローレンスのその手に、魔法のようにあの朱鞘の刀が現れた。
抜刀するのと斬りつけるのがほぼ同時。
鼎を持ち上げた姿勢のまま動けないリアスに片手で斬りつける。
「きゃあっ!」
リアスの悲鳴と甲高い音がほとんど同時に響いた。
鼎の足の一本を切り落として、刀が「白の甲冑」の胸甲を袈裟懸けに切る。
青銅の足を切り落として勢いが削がれたか、刃は胸甲に浅い傷をつけるに留まった。
「!?」
だがその瞬間リアスよりもショックを受けていたのは、あるいはヒョウエであったかもしれない。
刃が胸甲を傷つけた瞬間、念動の術が解けた。
(あの刃に・・・斬られた!?)
あらゆる魔力を喰らう呪いの刃。妖刀。
そんなものの話を聞いたことはあるが、実在は眉唾だと思っていた。
術式を無理矢理破られた衝撃がヒョウエの精神にも伝わる。
だが状況はそんな物思いにふけることを許してはくれない。
「やっ!」
倒れ込むリアスをとっさに術を用いて引き寄せる。
直後、石床を揺らして青銅の鼎が地面に落ちた。
下手をすれば足を潰されていただろう。
稼働していない白甲冑は少し頑丈な板金鎧にすぎず、1トンを越える落下物に挟まれたらひとたまりもない。
悲鳴や怒号が響く。
その中でローレンスは軽やかにバックステップして転がる鼎を回避する。
そして鼎の向こうのリアスに飛びかかろうと右足に力を入れて。
次の瞬間無造作に剣を振り抜く。
火花と金属音を散らし、数本の金属棒が弾かれて地に落ちた。
それと同時に数人の家臣がローレンスを取り囲んでいる。
いずれも手に細長い二等辺三角形のナイフ。先ほどの鋭く尖った金属棒を手にしている者もいる。
揃って黒髪で、どこか東洋風の顔立ちをしていた。
(棒手裏剣? 苦無!?)
ヒョウエが目をみはった。
リアスをかばうようにカスミがいつの間にか前に出ている。そのカスミの手にも同じナイフがあった。
(・・・忍者!)
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