毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ローレンス様!」
「お気を確かに!」
カスミの一族、忍者の末裔達が口々に呼びかける声もローレンスには届いていない。
「があっ!」
獣の様に吼えてローレンスが刀を振り抜――こうとしてその動きが止まった。
現在のヒョウエが同時に発動できる術は6つ。そのうち4つは先ほど術式を破壊された衝撃のバックラッシュで「痺れて」しばらくは使えない。
残り2つのチャンネルを使った念動の金縛り。
「今です!」
戸惑っていた忍び達がヒョウエの声に反応して一気に接近する。
その瞬間。刀が魔力の炎を吹き上げた。
「!?」
魔力感知能力を持つものにだけ見える炎のような魔力のうねり。
それは刀身から吹き上がり、あっという間にローレンスの全身を覆う。
同時にローレンスを縛っていた念動の術式を喰らい尽くした。
「ぐっ!」
「ヒョウエさん!」
「ヒョウエ様!?」
更に術を破られ、ヒョウエが両膝を突く。
顔を上げた先でローレンスが忍びたちに斬りかかるのが見えた。
「まずい!」
「痺れた」魔力のチャンネルを無理矢理励起して、念動の術を呼び起こす。
同時に閃光が走った。
武術は切り紙、現代日本で言えば剣道初段程度のヒョウエでは影を追うのが精一杯の、稲妻のような連続斬撃。
周囲を囲んだ忍び達が血を吹き出して倒れた。
「ぐうっ・・・」
限界を越えて酷使したチャンネルが体に負担をかける。
左目の端から一筋、血が流れた。
だがそうしなければ、今の一撃はいずれも致命傷になっていたことだろう。
ヒョウエがとっさに張った念動の盾が彼らの命を救ったのだ。
とは言え深手であることには違いない。
治療を受けなければ長くは持たない。
「かは。かはははは。美味い。美味いなあ、魔力。もっとだ。もっとよこせよ・・・」
血のしたたる刀を下げ、にまあ、と口が裂けるほどに笑みを浮かべるローレンス。
既に立ち上がっていたリアスが、反射的に腰の刀を抜いた。
だがそれだけだ。気圧されている。自分から斬りかかろうという意気地がない。
一歩、また一歩。
倒れた忍び達を踏み越えて、ゆっくりとローレンスがこちらに迫る。
と、その顔がいぶかしげになり、次いで再び愉快そうな凶笑を浮かべる。
「そうかそうか、その鎧、使えるようになったわけじゃないんだな。
そっちの小僧の術か? 器用な真似・・・」
「ローレンス、貴様・・・乱心しおってっ!」
シンゲンの怒声。ローレンスの言葉をかき消す意味もあったのだろう。
かはは、とどこか無機質な笑い声。
「あんたにだって責任の一端はあるんじゃねえかよ、爺様。リアスが鎧を使えなくなった時点で俺を後継者にすりゃあ良かったんだ。
けど悲しいなあ。凄まれても、もう全然怖くねえや。歳を取ったら天馬もロバ以下だ。それともリアスに斬られた傷がまだ痛むかい、かははは・・・」
「・・・」
シンゲンがぎり、と無念そうに奥歯を噛みしめる。
リアスの顔のこわばりが一段と増した。
ちらり、とカスミが後ろを見る。
固まったリアスの表情。震える剣。
「・・・お嬢様、お下がり下さい。ご隠居様とヒョウエ様のカバーを」
「カスミ!」
リアスが悲鳴を上げるが、カスミは振り返らない。
悲壮な覚悟を顔に浮かべ、苦無を逆手にローレンスの前に立ちはだかる。
「かはは。カスミ、カスミ、カスミィィィ! けなげだなあ、忠義だなあ、そして無惨だなあ! 斬られるとわかってて出てくるとはよ!」
「・・・」
カスミは無言。苦無を手にして身を低くする。
ゆるり、とローレンスの剣が持ち上がった。
両手で顔の横、垂直に刀身を立てる、右八双。
「~~~」
「キェェェェイッ!」
短くカスミが何事かを口ずさみ、同時にローレンスが剣を振り下ろす。
瞬間、広間がまばゆい光に包まれた。
「きゃあっ!」
「うわ!?」
閃光をまともに見てしまった客たちの悲鳴。
押っ取り刀で周囲を囲んでいたニシカワの家人たちも目を押さえて後ずさる。
「ぐっ・・・!」
「カスミ?!」
小さな苦鳴とともに軽いなにかが倒れ込む音がした。
目を押さえながらリアスが叫ぶ。
吹き飛ばされたか後ろに飛んだか、いずれにしても倒れ込んだカスミの肩が血に染まっていた。致命傷ではないがかなりの深手だ。
そしてそれをなしたローレンスは、やはり目を押さえて顔をしかめていた。
「ちっ・・・知ってはいたが見ると聞くとは大違いって奴だな」
あの時カスミが発動した目くらましの閃光の呪文。ローレンスの妖刀はやはりそれをも「斬った」。
だがそれでも完全に無効化はできなかったらしく、目をしばたたかせている。
「まあいい。邪魔だ、お前の魔力も残らず喰ってやる!」
「カスミ!」
悲鳴を上げて駆け出そうとするリアス。だがまだ目はくらんだままで、剣を突き刺そうとするローレンスの方が圧倒的に早い。
血しぶきが上がった。
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