毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第二章「はいるひどら」
02-13 ほら吹きサーベージ


 

 

 

「つまり真なる竜はゴジラ、亜竜は火を吐くだけのティラノサウルスだな」

「ごじらってなに?」

 

 

                     ――転生者の祖父と孫の会話――

 

 

 

「・・・と、言うことがあったんですよ」

「へ、へーえ・・・」

 

 話は現在の六虎亭に戻る。

 モリィがヒクヒクとこめかみを痙攣させた。

 

 取りあえずリアスを落ち着かせて席に着かせた後、モリィにざっと事情を説明した。

 大雑把にしか聞かせていないはずだが、どうも説明した以上の事も察したらしい。

 女の勘とも言う。

 

「そうなのです! あの時のヒョウエ様は強く! 気高く! 美しく! ああ、あの情景を絵画にして永遠に残しておけたら・・・!」

 

 まあ、女の勘は必要ないかも知れない。

 二年の間に諦めの境地に至ったか、カスミは虚ろな目で茶をすするのみだ。(さすがに冒険者の酒場と言うこともあり、立って給仕はしていない)

 

「・・・」

 

 一方でモリィは目がどんどん据わってくる。

 このまま放置しておくと非常に良くないことが起こりそうなので急いで話を変える。

 

「そう言えば何故ここに? しかも『白甲冑』をまとって」

 

 門外不出のはずの秘宝である。

 当主といえど戦場以外に持ち出すものではない・・・はずなのだが。

 

「武者修行です!」

 

 鼻息荒くリアスは答えた。

 

「はい?」

「だから武者修行です!」

「いやそこじゃねーよ! 言葉は聞こえてるよ! 伯爵家の御当主様がなんで武者修行なんて出てるんだよ!」

 

 ヒョウエが言おうとして躊躇した言葉を、代わりにモリィが言ってくれた。

 ああ、とリアスが笑顔のままで頷く。

 

「それはもちろん、わたくしが未熟だからですわ。才能は実践でこそ磨かれるもの。武の道でしたら尚更ですわ」

「ご隠居様や叔父上様や武芸指南様や私の一族の腕利きをまとめて叩き伏せる程度の未熟ですけどね・・・」

 

 ぼそりと呟いたカスミの言葉はリアスには届かない。

 

「それで冒険者ってか? ・・・まあ『白のサムライ』ともなりゃ、そりゃ腕は立つんだろうけどよ」

 

 不満そうではあるが不承不承に実力は認める風のモリィ。

 彼女とて『白のサムライ』の物語には子供の頃から慣れ親しんでいる。

 さすがにその継承者の力を疑うことはできなかった。

 

「と言うわけでお願いがあるのですヒョウエ様!」

 

 リアスが一段と声を張り上げた。

 ヒョウエとモリィとカスミが、図ったように同じ表情になる。

 

「・・・想像はつきますが、どうぞ」

「わたくしとカスミをヒョウエ様のパーティに入れて下さいまし!」

 

 ヒョウエとカスミが揃って溜息をついた。

 

 

 

「ぐぬぬぬぬ・・・」

 

 モリィが唸る。

 感情的にはなにがなんでも拒否したいが、実利的には拒否する理由がない。

 

 現在エブリンガーはヒョウエとモリィの二人パーティで、両方とも遠距離タイプ。

 ヒョウエはそれなりに接近戦もできるがやはり術師。力を発揮するのは後衛として前衛に守られている状態でだ。

 前衛として確かな実力を持つだろうリアスと、中衛として優秀と思われるカスミが入るのは戦力として理想的なバランスとも言える。

 

 が、それとは別に自分がそう言う感情を抱いていることも表だって認めたくはないのがモリィという少女であった。

 実に面倒くさい。

 そんな事を知ってか知らずか(※多分知らない)、リアスはきらきらした眼でヒョウエとモリィを見る。

 

「どうでしょう、お二方。私たちをパーティに参加させてはいただけないでしょうか?」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」

「うーん」

 

 唸り続けるモリィ。

 モリィの方をちらりと見ながら苦笑するヒョウエ。

 カスミがリアスに見えないところで申し訳なさそうに頭を下げていた。

 

 

 

「・・・まあ、いいんじゃねえか」

 

 長い息詰まるような沈黙の後、モリィが絞り出すように言った。

 ヒョウエとカスミがほっと息をつく。

 リアスもさすがに何かを察したのか、ちょっと固い笑みで頭を下げる。

 

「その、ありがとうございます」

「いいよ、別に。けど『白のサムライ』だなんて大口叩いたからには働いてもらうぜ」

「それはもう!」

 

 ぱあっとリアスの顔が明るくなった。

 立ち上がってモリィの手を取る。

 

「不詳リアス・ニシカワ、初代様の名に誓って決して足手まといにはなりませんわ!」

 

 素直にぶつかってくるリアスに悪態もつけず、モリィは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 酒場の入り口の方がざわっと軽くどよめいた。

 振り向くと小汚い老人が入って来たところ。

 適当に刈り込んだ頭髪と短く刈り込んだ髭が赤ら顔の下半分を覆っている。

 小さめのかばんを肩にかけ、染みだらけの上着とズボンに布の帯を締めている。

 左目を布で覆っており、1m程の木の杖を突いているが足取りは確かだ。

 

「師匠~!」

「師匠!?」

 

 ヒョウエが立ち上がって手を振る。

 三人が一斉にそちらの方を振り向いた。

 

「お師匠様というと魔法のですか?」

 

 目を丸くしてカスミ。

 

「いえ・・・お年の割には歩き方に隙がございませんし、武芸の方の?」

 

 興味深げにリアス。

 

「んー・・・? 誰だっけ、どっかで見たような・・・?」

 

 首をかしげるモリィ。

 

「師匠、ここです、ここ!」

「おう、おまえか」

 

 ヒョウエに気付いたのか、老人も手を振り返してヒョウエたちのテーブルにやってくる。

 そのまま無造作に椅子を引いてどっかと座り、ヒョウエがエールを注文する。

 

「すいませーん、こちらにエールを一杯!」

「はーい、ただいま~!」

「おう、すまねえな」

「いえいえ」

 

 流れるような一連のあれこれに少女たちが言葉を失う中、モリィが「あ」と声を漏らした。

 

「どっかで見たと思ったらあれか、あんた"ほら吹きサーベージ"か!」

「ほら吹きとは失礼な。おれの話は全部本当のことばかりだぞ」

 

 かっかっか、と笑う白ひげの老人。

 

「どういう方ですの、モリィさん?」

「あー、モリィでいいよ・・・あちこちの酒場に現れるじいさんでな、昔は腕利きのサムライで竜を倒しただの、悪魔を斬っただのってホラ話をしては酒代をせびる爺さんだよ。

 ただ、ホラにしても話が面白くてさあ。結構人気があるんだ。サーベージってのも本名じゃなくてあだ名らしい」

 

 ふーん、と感心したようにリアスが頷く。

 サーベージというのは昔話に出てくる緑色のドラゴンだ。

 

「ではヒョウエ様のお師匠様というのも・・・?」

「ええ。語りのお師匠様ですよ」

「あー、前に言ってたあれか。まさかこの爺さんだったとはなあ・・・」

 

 感心しているうちにエールが届き、サーベージがぐっとそれをあおった。

 ヒョウエたち四人をぐるりと見回し、からからと笑う。

 

「いやしかし、華やかだな。四人とも美人揃いじゃねえか、ええ? 両手に花どころか花畑だ」

「僕は男ですってば。そんな事言ってるとまた奥さんに怒られますよ」

 

 溜息をつくヒョウエの皮肉にも、サーベージ老人はびくともしない。

 

「いーんだよ、あんな白髪ババァ。それより練習は欠かしてねえんだろうな?

 一席やってみろよ。酒の肴に聞いてやらあ」

「もちろんですとも。それでは」

 

 ヒョウエが立ち上がって語りを始めた。




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