毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-14 語り部

 転移してきた冒険者族がいきなり小国の王に推戴される。

 ところが王国には金もない兵もない家臣すらろくにいない。

 実のところ主人公が王になったのは前の王が逃げたからで、言わば貧乏くじ。

 それをなんとかしようと、諸侯や魔女や竜や魔王と口八丁で渡り合い、最後はどうにか国を統一して妖精王の娘を妻に迎える。

 

 コメディチックな物語を語り終えると、周囲から拍手が起きた。

 彼の技量を知ってるモリィもそうだが、リアスやカスミも感嘆しきりだ。

 話の間にエールを二杯お代わりしたサーベージ老人も満足そうに頷いた。

 なお、お代はヒョウエの払いである。

 

「よしよし、上達してんじゃねえか。それじゃお代わりのエールの分、俺も一つ演ってやろう」

 

 手に持ったエールのジョッキを飲み干し、更にお代わりを注文すると、ヒョウエと入れ替わりに老人が立ち上がった。

 

 

 

 語り出して五分と経たないうち、酒場の中に響くのは老人の声だけになった。

 北の蛮人として生まれ、剣一本で諸国を放浪して冒険を重ね、ついには南の大国の建国王と成った戦士の物語。

 魔法も使えず加護もないが剣を取っては天下無敵、いかなる困難も知恵と力と勇気で乗り越えていく英雄の活躍に誰もが聞き惚れている。

 

 サーベージ老人が語るのはその中でも東方へ冒険の旅に赴いたときの物語。

 東方の風俗、町並み、そこに歩く人々の姿まで目に浮かぶような語りに、客は元よりウェイトレスやギルドの職員までが酔いしれた。

 主人公を罠にはめる悪辣な廷臣には怒りの声を上げ、主人公に襲いかかる怪物に悲鳴が上がり、不屈の意志ととっさの機転、そして鍛え上げた肉体の力で罠を打ち破った主人公に歓声が上がる。

 

 最後には悪党の廷臣が自らけしかけた怪物に食われ、主人公が怪物を両断して帰路につく。

 満場の大喝采とともに話は大団円を迎え、老人は気取って一礼し、茶目っ気たっぷりに片目をつぶった。 

 

「で、実はこの南の大国を建国した戦士というのがおれのことでな! いやはや有名になるのもつらいもんだ!」

「ワハハハハ! うそつけ!」

「バカヤロー!」

「言ってろ!」

 

 モリィの言った通りこの界隈では有名なのだろう。笑いの混じった罵声が降り注ぎ、おごりのエールのジョッキがたちまち10近くテーブルに並ぶ。

 

「いやはや気前が良いな皆の衆! これだけあってはエールの海に溺れてしまいそうだ!」

「飲めないなら手伝ってやるぜ、じいさん!」

「馬鹿言え、もらったからには全部俺のもんだ! 一滴たりともくれてやるものか!」

 

 言ってうまそうにエールをあおる。確かにジョッキの十どころか大樽丸ごとを飲み干してしまいそうな、いい飲みっぷりだった。

 

 

 

 ぱちぱちぱち、と目を輝かせてリアスが拍手をしていた。カスミも同様だ。

 モリィも満足げに笑みを浮かべているし、ヒョウエはいうまでもない。

 

「いやあ、さすが師匠! お見事でした!」

「かかか、てめえごときにゃまだまだ負けねえよ。弟子を突き放すのが師匠の役目ってもんだ」

 

 呵々大笑しながらジョッキを傾けるサーベージ老人。

 かなりのハイペースで飲んでいるはずだが、最初から赤ら顔なのを除けば全く酔う様子がない。

 

「しかし華やかなのもそうだが随分と豪華なメンバーじゃねえか。

 小僧もそうだが『白のサムライ』に『紅の影』、『雷光のフランコ』と来たもんだ。

 ちょっとしたオールスターだな」

 

 ヒョウエ以外の三人が揃って驚いた顔になる。

 最初に口を開いたのはリアスだった。

 

「よく一目でおわかりになりましたね?」

「そりゃ飯の種だからな。初代様には随分エールをおごってもらってるよ、お嬢様」

「まあ、悪し様に言うのでなければ構いませんけれど」

 

 ウインクする老人に苦笑するリアス。

 一方でモリィはカスミに好意的な驚きの眼を向けている。

 

「そうか、お前『紅の影』の血筋か。ニンジャってやつか」

「一族の末席ではございますが」

 

 カスミがはにかむように微笑んだ。

 サムライほどメジャーではないがニンジャもこの世界ではそれなりに知られた存在だ。

 

 もっとも本物を見た人間はそうはいないだろう。

 モリィの表情にはそう言う意味合いもある。

 何だかんだで彼女は曾祖父をはじめとする英雄譚が好きだし、憧れてもいる・・・表だっては決して認めないが。

 

「そう言うモリィさん・・・モリィも『雷光のフランコ』のご子孫なのでしょう? すごいではありませんか!」

「あ、ああ・・・」

 

 立ち上がり、両手を組んできらきらした眼で詰め寄ってくるリアス。

 思わずのけぞるモリィ。

 圧が強い。

 

「つってもアンタのところと違ってうちは商人に鞍替えしたからなあ。

 残ってるのは雷光銃だけだし、ひいじいさんの話とかもあんまり伝わってねえぜ?」

「そうですか・・・残念ですわ」

 

 正確には子供の頃祖父から色々話を聞いていたとは思うのだが、さすがに十年以上前の事なので記憶はおぼろげだ。

 リアスはそれを聞いてちょっと目を伏せたが、すぐに再び眼をきらきらさせ始めた。

 

「それはそれとして・・・ぶしつけとは思いますがその、名高い雷光銃を一目見せて頂けませんか? 触らせてくれとは申しません、見るだけでも結構ですわ!」

 

 きらきらした眼がいっそう圧を増す。

 

(・・・ま、いいか)

 

 一瞬迷ったが素直に雷光銃を抜き、手の中で回転させて柄を差し出す。

 顔を輝かせ、礼を言ってリアスはそれを手に取った。

 

「やけに素直に渡すじゃないですか、僕の時なんて・・・」

「あーあー、聞こえないなー。あ、そこのつまみは回すなよ。今鍵がかけてあって撃てない状態になってるけど、そこ回すと雷光が出てくるからな」

「わかりましたわ・・・見て、カスミ! あの雷光銃よ!」

「う、うわあ・・・」

 

 素直に頷いてためつすがめつ、あれこれ雷光銃を検分するリアスとカスミ。

 ヒョウエと違ってその様子はいかにも素人丸出しだったが、二人一緒にきゃいきゃいと熱中している様子は仲の良い姉妹のようで、モリィも思わず頬をゆるめた。

 何の気無しにちらりとヒョウエを見る。

 モヤモヤは取りあえず脇に置くことにしたのか、ニコニコと二人の様子を眺めている様子に何かカチンと来た。

 ヒョウエが視線に気付く。

 

「・・・何です?」

「いや別に? ただ、お前と違ってかわいげがあるなーってさ」

 

 にしし、と笑うモリィ。

 

「はいはい、どうせかわいげはないですよ。

 大体男なんだからかわいげがある必要はないでしょ」

 

 ヒョウエが口をへの字に曲げる。

 九杯目のジョッキを飲み干し、サーベージががははと笑った。

 

 

 

 その後サーベージと別れて酒場を出た。

 なお追加注文も全てヒョウエ持ちだ。

 

「さすがに甘過ぎねえか?」

「それだけの価値はあると思いますけどね」

「そりゃまあなあ」

 

 見事な語りを思い出し溜息をつく。あれに師事できるならエールの一樽くらいの価値はある、という考え方もありだろう。

 とはいえ借金でぴぃぴぃ言ってる人間がやるにはやや高くつく趣味である気もした。

 

「そんな事やってるから金が貯まらないんじゃないのか?」

「・・・・」

「おい」

 

 無言で目をそらすヒョウエに、モリィが再び溜息をついた。




 「紅の影」はもちろんカスミのご先祖で初代「白のサムライ」の相棒だった忍者さん。多分鳥を模した仮面とかつけてる(嘘)

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