毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-15 郊外の保養地(サバーブ・リゾート)

 それはともかく、彼らが向かっているのは半月ほど前にヒョウエとモリィが攻略した例のダンジョンであった。

 今では「郊外の保養地(サバーブ・リゾート)」などという名前がつけられ、比較的初心者向けの利便性の高いダンジョンとして毎月ヒョウエに多額の利用料をもたらしてくれている。

 西門を出てダンジョンへ向かう一行。すでに森を切り開いて道路が造られ、石畳の工事も始まっていた。

 リアスなどはそれを見て目を丸くしている。

 

「・・・ダンジョンへ向かう道を整備しますの?」

「極端なことを言えば、ダンジョンなんて鉱山みたいなものですからね。冒険者はフリーの鉱夫。鉱脈を見つけて魔力結晶をせっせと掘り出しては日銭を稼いで酒を飲むんですよ」

「うーん・・・」

 

 複雑な顔になるリアス。カスミも微妙に眉を寄せている。

 ダンジョンと言えば選ばれた勇者が足を踏み入れて竜や巨人と戦い、さらわれた姫を助けたり宝を手に入れたりという良くある英雄譚のイメージが強いのだろう。

 ヒョウエとモリィが顔を見合わせて苦笑した。

 

 

 

 森の中を30分歩くと、不自然にぽこりと盛上がった岩山に洞窟が口を開けているのに出くわす。周囲を兵士達が固めており、天幕やギルドの職員の姿も見える。

 

「光ー! 光売りますよー! 火だね要らず、落としても消えない!」

「幸運はいらんかねー。いざというときに身を助けてくれる幸運の魔法だよー!」

「買い忘れた冒険道具、色々揃ってますよー! 松明にランタン、ほくちにロープ、登山釘にハンマー、携帯食、お菓子! ポーションもあるよ!」

「喰らう前の毒効かずの呪文! 半日は毒が効かなくなるよ!」

「ダンジョンの攻略情報! 地図とモンスターの出現傾向だ!」

 

 周囲に群れる商人や魔法屋。軽食を売る屋台まである。

 リアスとカスミが更に呆れた顔になった。

 

 入り口で認識票を見せ、記帳する。

 ヒョウエの書いた「毎日戦隊エブリンガー」というパーティ名を見てリアスが眉を寄せた。

 

「あの、このお名前は誰が?」

「僕ですよ」

「そ、そうですか。その、いいお名前ですわね・・・」

 

 やや表情を引きつらせたリアスの肩を、ぽんぽんとモリィが叩く。

 

「なぁお嬢様。時にははっきり言ってやるのもやさしさってもんだぜ」

「別にいいですよ。どうせ僕にはセンスがありませんからね!」

(うーん)

 

 唇を尖らせたヒョウエがつかつかとダンジョンに入っていく。

 三者三様の微妙な表情を浮かべながら、少女たちが後に続いた。

 

 

 

 ヒョウエが杖の先に光を灯し、カスミも短く呪文を唱えて宙に光を浮かべた。

 予備のランタンやナイフ、マッチやポーションなどの道具類を確認。

 

 ヒョウエの周囲を金属球が回転しはじめた。モリィは雷光銃。

 リアスは刀に騎士盾を構え、カスミは右手に棒手裏剣。

 カスミは腰の後ろに刃渡り50センチほどの脇差しめいた片刃剣を差している。

 

(忍者刀かな)

 

 反りのない、短めの日本刀っぽい作りを見て、後で見せてもらおうと心に決めた。

 そんな事を考えつつ暗闇の中に足を踏み入れると、さすがにリアスとカスミの顔に緊張が浮かぶ。

 

「大丈夫ですよ。緊張するな・・・と言っても無理でしょうが、僕もモリィもいます。

 いざとなったら僕たちのどちらかだけでも大概の怪物は倒せますのでまずは慣れる事を優先してください。最悪二人は立ってるだけでも問題ありませんから」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます、ヒョウエ様」

 

 緊張が完全に取れたわけではないが、二人が笑顔で頷く。

 

「それと」

「?」

 

 ヒョウエが指を一本立てた。

 

「僕たちはこれからパーティの仲間です。様付けもさんづけもなしで行きましょう、お互いにね。いいですね、リアス、カスミ?」

「はい、ヒョウエ様!」

 

 嬉しそうに叫んで、直後リアスが固まった。

 ヒョウエとモリィが失笑する。

 顔を赤くしたリアスがもごもごと何かを呟く。

 

「そ、その・・・」

「まあなんです。徐々に慣れると言うことで」

「はい・・・」

 

 穴があったら入りたいという表情でリアスが頷いた。

 

 

 

 2x2の正方形の隊列を組む。

 前列に探索役のモリィと前衛のリアス、後列にカスミとヒョウエ。

 戦闘時はモリィとカスミが入れ替わる。

 入り口付近で少し入れ替わりの練習をするとパーティはダンジョンを進み始めた。

 

「例によって足跡の少ない方をお願いしますね」

「オーライ」

 

 朝の十時くらいだったが、既に十隊近いパーティがダンジョンに潜っている。

 このダンジョンは放射状に広がる扇のような構造をしているため、闇雲に進んでいてはよそのパーティとかち合う危険性も高かった。

 

「足跡? この岩の地面でですか?」

「《目の加護》があるんでね」

「モリィの《目の加護》は強力ですよ。闇の中でも見えるし、遠くのものも細かいものも見える。足跡を見分けるのもお手の物です」

 

 ほう、と感心した顔になるリアスとカスミ。

 何かに気付いたような顔になり、カスミが口を開く。

 

「それでは今のうちに互いの《加護》を確認しておいた方がよろしいのではないでしょうか。わたくしは《光の加護》です。正確には光の術の素質ですね」

「ニンジャなのに目立つ加護だなあ。《闇の加護》とかの方がそれっぽいんじゃねえの?」

「よく言われますが、使い方次第ですよ」

「ふーん」

 

 カスミの斜め上に浮遊している光球をヒョウエがちらりと見た。

 ヒョウエの術が杖に光を灯しているのに対し、カスミの術は自在に宙を動いて周囲を照らす光球を生み出した。それなりに高度な呪文で、見る限り動きも正確に制御されている。

 少なくとも光の術に関してはかなり高レベルの術者なのは間違いなかった。

 

「僕は《魔力の加護》。リアスは《剣の加護》でしたね」

「おー、さすが《白のサムライ》の直系だな。頼みにしてるぜ」

 

 モリィの称賛にリアスが照れて顔を伏せた。

 

「いえそんな・・・まだまだですわ」

「ご謙遜、ご謙遜」

 

 ローレンスと立ち会ったときの動きを思い出し、ヒョウエが笑う。

 それに、どのみちすぐに実力を見せてもらうことにはなるはずだった。

 

 

 

 一時間ほど歩いて、他の冒険者が入っていない分岐に入った。

 そこからさらに十分ほど歩いたところでモリィがピタリと足を止めた。

 後ろのカスミと頷き合い、練習通りに素早く位置を入れ替える。

 カスミが棒手裏剣を左手に移して腰の脇差しを抜いた。

 

「敵ですか」

「地面をカサカサ這ってるし、足音が重めだからスピア・リザードじゃねえかな」

「なるほど。確かにその様な音ですね」

「・・・!」

 

 リアスが刀と盾を握り直し、前方の闇を睨む。

 その肩に、後ろからぽんとヒョウエが手をおいた。

 

「落ち着いて。相手は1mほどのトカゲです。頭部に鋭い角がありますし、素早く突進してきますから最初は戸惑いますが、その鎧なら角は通りませんし、リアスなら落ち着いていけば何と言うことはありません」

「は、はい!」

 

 振り向いて頷いた後、リアスは大きく息を吸い、自然体で刀と盾を構え直した。




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