毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-16 ダンジョンの洗礼

 結論から言えば、リアスとカスミは十分な働きをした。

 ヒョウエが瞬間的に光量を上げ、地面を低く這ってくるスピア・リザードたちが悲鳴を上げる。

 リアスは動きの止まった先頭の一匹の首に騎士盾の下端を上から叩き込む。鈍い音がして首の骨が折れた。

 

 そいつの脇から突進して来た一匹に、すくい上げるような地摺りの一刀。切っ先が正確に頸動脈をはね斬り、血を吹き出してこちらも絶命した。

 さらに仲間の死体を乗り越えて来た一匹は顎を蹴り上げてひっくり返す。切っ先が素早く心臓に突き込まれ、短く悲鳴を上げて三匹目も動かなくなった。

 

 カスミの方もそこまで派手ではないが堅実にダメージを与えている。

 ひらりひらりと闘牛士のように突撃をかわし、カウンターで斬撃や刺突を送り込む。

 4回目でこちらも頸動脈を斬られ、絶命した。

 その合間に左手で棒手裏剣を投げ、他のトカゲどもを牽制。

 何本かは目につき刺さって、哀れな爬虫類を苦痛に悶えさせている。

 

 無論ヒョウエとモリィも全力ではないが遊んでもいない。

 空気を裂いて金属球が飛び、トカゲの頭を槍のような角ごと潰す。

 雷光が迸り、鱗に覆われた体を焼く。

 十数匹のトカゲは五分と経たずに全滅していた。

 

 

 

「すげえな。さすがは『白のサムライ』だ。そっちのおチビちゃんもな」

「いえいえまだ未熟です。そちらこそ『雷光』の継承者、見事なものですわ」

「ありがとうございます、モリィ様。お嬢様やモリィ様たちに並ぶのですからこれくらいはいたしませんと」

 

 モンスターのかりそめの肉体が消滅し、魔石結晶を生み出すまでの僅かな間。

 少女たちが互いの実力を認め合う中、一人ヒョウエはリアスの甲冑を注意深く観察していた。

 

「『白の甲冑』の動作は問題ないようですね。とは言え二年前に見たそれに比べると明らかに劣りますが・・・手加減していましたか?」

「え? あ、はい。手加減と申しますか・・・何度か装着してはみましたが、あの時ほどの動きはついぞ出来ませんでした。私の中の覚悟と言いますか、そう言うものが足りないのではと・・・」

 

 それを聞いてヒョウエが考え込んだ。

 

「ふぅむ・・・精神状態によって出力が上下するのか・・・? リアスの発する魔力が増大していたのか、それとも《剣の加護》との相乗効果か・・・」

「あ、あの・・・」

 

 ヒョウエにじろじろと見られてリアスが恥ずかしそうに身をよじらせる。

 ヒョウエとしては機器の様子を精査しているだけなのだが、装着しているのが年頃の乙女と来ては見られる方はそうもいかない。

 

「ふーむ・・・魔力の流れは問題ないようですね。装甲だけではなくインナーの方にも順調に魔力が循環している」

「い、インナーもわかりますの!?」

「ええ、最近"魔力解析(アナライズ・マジック)"の呪文を習得しまして。これを使えば範囲内の魔力の流れが手に取るように・・・ぶべっ!?」

 

 白甲冑の腰の辺りを覗き込んでいたヒョウエが後頭部を強打されて洞窟の床に沈んだ。

 無論、炸裂したのは雷光銃の柄頭(グリップ)である。

 モリィが顔を赤くして叫んだ。

 

「この変態がっ!」

「失礼な! 僕はただ魔導鎧の点検をしてただけですよ!? いくらなんでも今のはひどいとは思いませんか!」

 

 よほど痛かったのか、頭を抱えてちょっと涙目のヒョウエが抗議するがモリィの怒りを押しとどめることは出来ない。

 

「それは外してからにしろ! 女をじろじろ見るだけでも変態だってのに、下着まで覗き込むのが変態でなくてなんだっ!」

「ぬ、ぬぬ・・・」

 

 勢いに押されたヒョウエが助けを求めるようにちらりとリアスとカスミを見るが、リアスは顔を赤くしてうつむくのみ。

 カスミの方とは言えば、これは無表情に眼を細めている。その黒目がちょっと青い。

 

「その、ヒョウエ様。わたくしとしても・・・」

「少なくとも状況は考えて頂きたいところです」

「・・・ハイ、スイマセンデシタ」

 

 二人の視線と、これ見よがしにグリップを手のひらに打ち付けるモリィの脅迫にヒョウエは屈した。

 

 

 

 魔力結晶を回収すると一行は奥へ進む。

 その後もダンジョン探索は順調に進んだ。

 本気を出したヒョウエの金属球の乱舞の前にモンスターは出てくるなり破砕され、屍となって次々雲散霧消する。

 

 初めてモリィと会ったときのように二十匹ほどのゴブリンの頭が次々に砕けてはじける。

 ふいご狼(ベローズ・ウルフ)が喉に大きな穴を開け、笛のような甲高い音を立てて倒れる。

 

火の星よ(Angaraka)

 

 ヒョウエの「力ある言葉」に応じ、金属球に光る文字が浮かび上がる。

 10秒ほどの時間を置いてそれは巨大な火球となり、洞窟を数十メートルにわたってびっしりと埋め尽くす蜘蛛の群れを焼き尽くした。

 リアスとカスミは素直に感心していたが、モリィはふてくされているんだろうなと何となく察して白い目で見ていたのはご愛敬である。

 

 

 

 蜘蛛との戦闘後、ぶるっと震えてモリィがカスミを見た。

 

「しかしおめー、蜘蛛見ても全然平気だったな。正直あの手のを見ると背筋に寒気が走るんだが」

「私もですわ・・・冒険者をするなら慣れなければいけないのでしょうけど」

 

 自分の肩を抱いてリアスが同意する。

 やはり彼女もあの手のモンスターは苦手らしい。

 カスミが苦笑した。

 

「まあ、私も気持ち悪いのは同じですから。気持ち悪くても普段通りに行動できるかどうかが肝要かと存じます」

「そりゃわかるけどさあ・・・」

「言われて出来るなら苦労はしませんわ・・・」

 

 と、ここでリアスがヒョウエを見た。

 

「ヒョウエ様もその辺は平気なのですね。やはり男子でいらっしゃるからかしら」

「僕だって気持ち悪いですよ。ああ言うのが気持ち悪くないのは五歳か七歳くらいまでじゃないですかね」

 

 こちらも苦笑して肩をすくめるヒョウエ。

 前に潜ったときの事を思い出してしまったか、モリィがしかめっ面になった。

 

「気持ち悪いの度合いが違うんだよ。この前なんか巨大オサムシ山ほど念動で集めたあげく、握りつぶして汁にしたろ。あたしらにはそんな真似はできねえよ」

「モリィさん! お願いですから勘弁して下さいまし!」

 

 リアスの悲鳴が地下迷宮に響き、ヒョウエとカスミが顔を見合わせて苦笑した。

 

 

 

 一行は迷宮を進んで行く。

 いつの間にか洞窟の壁はじっとりと濡れ、ぴちょんぴちょんとしずくが垂れてくる。

 

「こんな感じのところは初めてだな」

「まあ洞窟と言っても色々ありますからね。ダンジョンだと古い館の中を歩いていたらいつの間にか地下洞窟になってたとかそう言うこともあるそうですので、このくらいならかわいいものでしょう。あ、みなさん足元には気を付けて」

「わかりましたわ」

 

 濡れた床がつるつるして、ところどころ水たまりを作っている。

 とはいえカスミの足取りに全く乱れはないし、モリィとリアスもほとんど動きが鈍っていない。一番おっかなびっくり歩いているのは当のヒョウエであったりする。

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 ぴちょんぴちょんと絶え間なく音が響く中を一行は進んで行く。

 時折ヒョウエが足を滑らせるが、それ以外は問題ない。

 

 ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。

 ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。

 ぴちょん、ぴちょん、ぴとっ。

 

「ん?」

 

 ヒョウエの隣を歩くカスミが突然立ち止まった。

 前を歩くモリィとリアスは気付いていない。

 どうしたのだと声をかけようとして、カスミの目が異常に中央に寄ってることに気付く。そして顔の真ん中にへばりつく・・・

 

「いやあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"! どっでぇえ"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"!」

「うわあああ!?」

 

 常に冷静沈着な忍者の末裔とは思えぬ、盛大な鼻声の泣き声。

 身も世もなく泣きわめくカスミがヒョウエに抱きつき、ヒョウエが足を滑らせて後ろに倒れ込む。後頭部を強打してヒョウエが悶絶した。

 カスミはヒョウエを押し倒しながらも泣きわめくのをやめず、顔の真ん中にへばりついたものを取ろうとするかのように頭を左右に振りつづける。

 

 突然のことにぎょっとして振り向こうとする前衛の二人だがその直前、モリィは前方の暗闇の中にモゾモゾと大量にうごめくものを見つけてしまった。

 恐らくはカスミに張り付いているものもその仲間なのだろう。

 洞窟の床から壁から天井からびっしりと張り付いた、小さいものは5センチほど、大きなものは5メートルを超えるであろう――無数のなめくじ。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」

「きゃああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 悲鳴が三重奏になった。




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