毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-17 カエルと蛇となめくじと

「よし、こいつはあたしが焼き払う! 焼き払うから・・・それまでの間こいつら止めててくれな!」

「ちょっと! それはさすがにあんまりじゃありません!?」

 

 言いざまに一歩後ろに飛び下がり、雷光銃のチャージを始めるモリィ。その額には大粒の汗。

 引きつりながらもやむを得ずリアスは盾を構えた。半分泣きそうな顔で。

 

「ええい、来なさい軟体動物ども! 『白のサムライ』の名にかけてここは・・・ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

 

 勇ましく名乗りを上げようとしたリアスの顔が見るも無惨に引きつる。

 こちらに向かってくる巨大ナメクジ。

 スピード自体は子犬が走るくらいの速度だが、なにせ体長5m、体高3mのそれだ。

 ゆうに5トンを超える超質量との衝突を、伝説の魔導甲冑は1メートルを後ずさっただけで耐えて見せた。

 

「早く! 早くして下さいまし!」

「わ、わかってるよ! もうちょっと待て!」

 

 涙の粒が盛上がるリアス。汗玉の数が倍に増えるモリィ。

 内心では前衛じゃなくて良かったと心底思っている。

 

「きゃあああああ! なめくじが! 大きななめくじが鎧の足を這い上がってー!」

「ひいいいいい! 実況すんな! しなくていい!」

 

 かしましく騒ぐ二人の少女。様子だけ見ているとコメディチックな光景だが、本人たちは必死だ。

 茶化そうものなら細切れにされた後雷光銃のチャージ攻撃で蒸発させられるだろう。

 

「おっしゃチャージ完了! どけリアス!」

「はいいいいいいい!」

 

 足を這い上がって来た50センチくらいのナメクジを叩き落とし、泣きながらリアスが離脱。もうひたすらにこの粘液をしたたらせる巨大な軟体から離れたいという思いしかない。盾にべっとりと付着した粘液が糸を引いているのを見て更に泣きそうになる。

 全力で飛び退いてモリィよりも更に後ろ、カスミにしがみつかれてもがいてるヒョウエよりも後ろまで逃げる。

 次の瞬間巨大な雷光が洞窟を貫き、なめくじたちはまとめて焼き払われた。

 

 なおこんな時一番役に立ちそうなヒョウエは後頭部を強打して朦朧としていたのと、ひたすら泣きわめくカスミに抱きつかれて数秒間行動不能になり、術を発動できるようになったときは既にチャージがほとんど終了していた。役に立たない。

 

 

 

「申し訳・・・申し訳ありませんっ・・・!」

 

 体を震わせて洞窟の床に土下座するカスミ。

 先ほどとは別の意味で泣き声になっている。

 三人が心底困った顔でそれを見下ろしていた。

 

「いやまあ・・・しょうがねえっちゃしょうがねえし・・・」

「忘れてましたわ、ナメクジだけはダメなんでしたね・・・」

「ほら、みんな気にしてませんから顔を上げて・・・」

 

 迷惑したのは事実なのだが三人とも、特にモリィとリアスは気持ちがわかりすぎるほどわかるだけに何も言えない。

 一方でまじめなカスミが気に病む気持ちもわかるので慰めるのも難しい。

 

「誰にでも弱点ってあるもんだなあ・・・」

 

 モリィが溜息をつく。

 結局カスミが(精神的に)復活するまでに10分ほどかかった。

 

 

 

 ヒョウエが新しく習得した"水流(ウォーター・プレッシャー)"の呪文でリアスの盾と鎧にべったりついた粘液を洗い流し、一行が再起動する。

 

「あ、すいません。ちょっと野暮用です」

「さっさと戻って来いよ」

「ええ。それでは失礼」

 

 そこから一時間ほど探索を続けたところで、突然ヒョウエがパーティから離脱した。

 さっさと道を戻り、ダンジョンの闇の中に消えてしまう。

 

「ヒョウエ様? え?」

「どういうことですか?」

 

 リアスとカスミの視線が集中し、モリィが肩をすくめた。

 

「あー、つまりあれだよ。花摘みってこと」

「ああ・・・」

 

 面頬に隠れてわからないが、僅かに顔を赤らめてリアスが頷いた。

 

 

 

 言った通りヒョウエは程なく戻ってきて、パーティは探索を再開した。

 少し行った先でオーガーの群れと遭遇する。3m近い巨躯に分厚い筋肉の束。

 動きも野生動物並みに早く、棍棒をまともに喰らえば大抵の人間は即死を免れない。

 

 だがリアスが鮮やかに二匹を切り伏せ、カスミが両目に棒手裏剣を当ててもう一匹を迅速に無力化する。金属球と雷光が残りを片付けて、初心者の壁扱いされるこのモンスターたちはあっさり屍をさらした。

 モリィが密かに唸り、ヒョウエが上機嫌で頷く。

 

 毒吹き大ガマガエル(カブキ・グレート・トード)と戦った時はもう少し簡単だった。

 毒を霧状に吹き出す厄介な相手で、目に受けようものなら最悪失明する。丸呑みされた冒険者の装備品が腹の中から見つかるというのもたまに聞く話だ。

 

 しかしヒョウエの念動の盾があれば、この手の軽質量攻撃はほぼ完全にシャットアウトできる。

 リアスに切り伏せられ、カスミの忍者刀を急所に叩き込まれ、次々と息絶えていく。

 時折大跳躍する個体があるが、それこそ金属球と雷光のいい的だった。

 もっとも虫ほどではないにしろカエルも苦手なのか、リアスは少し顔を引きつらせていたが。

 

 それから更に数時間進んで、ようやく広い場所に出た。

 差し渡しは100メートルを超えようか。

 鍾乳洞の中のような、地面から盛上がった石筍と天井から垂れた鍾乳石が無数にある。

 その中央に百を越えるリザードマンの一群がうずくまっており、熾烈な戦闘となった。

 

「あそこのくぼみまで後退します! リアスとカスミは相手をこちらに突破させないことを優先で!」

 

 一行は壁際に下がり、石筍と壁のくぼんだところを利用して囲まれないようにする。

 リアスとカスミが必死に防いでいる間に、ひたすらに金属球を飛ばして数を減らす。

 

 たとえオーガーでも腕や足を吹き飛ばされれば痛みで動けなくなるものだが、リザードマンは爬虫類であるせいか体の一部が欠損してもほとんど動きが鈍らない。

 狙いを正確にして一撃で仕留めざるを得ず、さすがにこの数では瞬殺とは行かなかった。

 

 一方でモリィの方もやや手こずっている。

 リザードマンの表皮は分厚く、通常の出力では急所を狙っても即死させるのは難しい。

 0.5秒のチャージを行って、こちらも着実に倒していく必要があった。

 幸いなのは目の前を守るカスミの背が低いため、遠慮無く頭の上を通して雷光銃を撃てることだろうか。

 そんなモリィの視線を鋭く感じたのか、カスミが一瞬だけジト目で振り向く。

 

「・・・何か?」

「いや、何でも?」

 

 モリィは口笛を吹いて誤魔化した。

 

 

 

 十分ほどの戦闘の後、ようやくリザードマン達は全滅した。

 ヒョウエが全力を出したにも関わらず十分かかったのは、当人としても予想外だった。

 

「まさか心臓ぶち抜かれても動くとは思いませんでしたよ・・・」

「マジでな。あいつら心臓が二つか四つあるんじゃねえか? それとか、心臓が体の右側にあるとか」

「心臓の場所は人間と変わらないらしいんですけどねえ。まあ野生化したリザードマンの解剖所見ですが」

 

 人間は普通右利きだから心臓は左側、リザードマンは左利きだから心臓は右側? んなアホなと思いつつ、一抹の疑いを捨てきれない。

 カスミが眉を寄せた。

 

「どこのどなたがそんな頭のおかしい・・・ええと、奇特なことを調べられたんです?」

僕たちの同族(冒険者族)ですがなにか?」

「納得ですわ」

 

 疲れたようにリアスが溜息をついた。

 




 蛇じゃなくてトカゲだけど細かい事はキニシナイ(ぉ

 作者のモチベーションは読者の皆様の評価と感想です。
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