毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「デーモン・イン・ア・ボトル」
02-21 剣客再び


 

 

 

「わかっちゃいるけどやめらんねえ!」

 

 

                     ――飲んだくれの叫び――

 

 

 

 

 例によって山のような依頼を受け、エブリンガーは王都の周辺を飛び回る。

 その日の依頼をほぼ全部片付けて、パーティはルダイン村にやってきた。

 クソン村やファール村と同じ、良くある山奥の開拓村だ。

 今は午後二時ほど。ここでの光山猫(プリズミーア・キャット)の群れの討伐を終えれば、今日の依頼は完了である。

 

「ここは温泉があるみたいですよ。仕事が終わったら入らせてもらいましょうか」

「お、いいなあ。酒もついてりゃ最強だ」

「やだ、モリィさんおじさんくさいことを・・・」

「まあ風呂に入って月見酒、なんて言うのもそれはそれで粋なものでは」

「そ、そうなんですのカスミ?」

「わたくしに聞かれましても・・・」

 

 杖にまたがっての飛行にもすっかり慣れて、リアスもカスミもそうした無駄話に興じる余裕がある。

 一行はそのまま村人の驚きの声に包まれて村の入り口に降り立った。

 なお派手な格好のヒョウエと同じくらい、白甲冑をまとったリアスは好奇と憧れの目で見られていた事を記しておく。

 

 

 

「他の冒険者?」

「ええ。依頼の件とは関係なくいらっしゃったのですが、話を聞いてしばらくご協力して下さると言うことになりまして・・・」

「それは立派な方ですね。武士道精神の持ち主ですわ」

 

 やって来た村長の言葉にリアスがうんうんと頷いた。

 なおこの世界、武士道と騎士道は(本物を知っている人間が稀少なこともあり)大体同じものとみなされている。

 本人が騎士を好むなら騎士道、サムライを好むなら武士道と言う程度のものだ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「それで、その方は今どこに?」

「片方は酒場ですが、もう片方は村の周囲の見回りに・・・ああ、戻っていらしたようです」

 

 村長の言葉に振り向くと、いかにも手練れの冒険者と言った風情の大柄な男が歩いてくるところだった。革鎧に要所を覆う金属製のプレート。腰には片手半剣(バスタードソード)、赤いぼさぼさの髪と、同色の短いひげが顔を覆っている。

 

「・・・んん?」

 

 既視感にヒョウエが眉を寄せた。

 何か、どこかで会ったような・・・。

 

「ローレンスお兄様?!」

「え? おお、リアスにカスミ! 魔導技師のお嬢ちゃんもか! こりゃ驚いたな!」

 

 盛り上がりもドラマチックさもない、それはリアスの従兄ローレンスとの再会だった。

 

 

 

「え、え? ちょっと待てよおい! コイツ死んだはずだろ!? あたしゃそう聞いたぞ!」

 

 一瞬遅れて事情を理解したモリィが再起動する。

 この場で唯一見知らぬ顔にローレンスが首をかしげた。

 

「リアス、こいつお前の仲間か?」

「え、ええ。雷光のフランコのひ孫のモリィさんですわ」

「へぇー! こいつぁどうも! 従妹が世話になってるみたいだな、ありがとよ!」

「あ、ああ、こっちも・・・じゃなくて!」

 

 ツッコミを止められないモリィに、ぼりぼりとひげに覆われた頬をかく。

 

「リアス、お前そんな事言ったのか? それとも家じゃそう言う事になってんのか?」

「そう言う事は無い・・・と思うんですけど。あの後ヒョウエ様が兄様を癒してくれていたのがわかって、傷が治った後に放逐扱いになったことは・・・」

「聞いてねーよ! 大体『私の腕の中でそっと目を閉じた』とか言われたら死んだと思うだろ、普通!」

 

 ヒョウエとカスミがあー、という顔になった。

 呆れ顔になってローレンスがリアスを見下ろす。

 

「なんだ、やっぱりお前の言葉足らずか」

「や、やっぱりとは何ですか!」

「だってお前昔から言葉が足りなくてみんなを誤解させてたろ。爺さんもオジキも親父も使用人もみんな慣れちまってただけで。お前の友達のジュリーだったか? あれに凄い勘違いさせて大騒ぎになったことがあったじゃねえか」

「うぐぐう・・・」

 

 反論したいが反論できず、顔を赤くして拳を握るリアス。

 ヒョウエたちがその後ろで苦笑していた。

 

 

 

「まあリアスさんの言葉足らずには僕もひどい目に会いましたがそれはおいておいて」

「ううう、ヒョウエ様はいじわるです・・・」

 

 更に顔を赤くしてうつむくリアス。穴があったら入りたいと言わんばかりだ。

 カスミも再度苦笑している。

 

「こんな山奥の村に一体何の御用です? まあ差し支えなければでいいですが」

 

 ヒョウエの問いかけに、ローレンスは少し無言になった。

 頭をボリボリとかいて大きく息をつく。

 

「そうだな、お前達には話さなきゃならねえだろう。この面子がまた揃ってるってのも何かの縁だ。ついでに手伝ってくれるとありがたい」

「お兄様、それはまさか」

「ああ。例の妖刀が見つかった」

「・・・・・・・・・・・・!」

 

 緊張が走り抜けた。

 

 

 

「そう言えばその辺聞いてなかったな。妖刀とやらはどうなったんだ?」

「はい、おじいさまや使用人たちにも確認してみましたが、あの後誰もあの刀を見たものはいませんでした」

「俺があの刀を手に取った時――例の事件の一年くらい前だったと思うが、その時もいつの間にか手元にあった記憶しかないんだよな・・・」

「うへえ」

 

 連れだって村に一軒だけある宿屋兼酒場に向かいながら会話を交わす。

 

「やはりあの刀がローレンスさんを操っていたんでしょうか?」

「いいわけ臭いが、少なくとも影響は受けてたんだろうなあ。否定はできねえや」

「それで、例の妖刀はどこに?」

「近くの村で依頼を受けた冒険者が斬られてな。生き残りの話を聞くと魔力を喰う、反魔力の炎を吹き上げる、朱鞘、とまあ間違いないだろう。それがこっちの方に逃げてきたらしい」

「何者がふるっていたんですの?」

「それがな・・・どうも"怪人(ヴィラン)"みたいでな」

「"怪人(ヴィラン)"・・・!」

 

 沈黙が落ちた。

 "怪人(ヴィラン)"とは言わばダンジョンの生物版・・・神の心象、想念の泡が人間に宿ってしまったものだ。

 生物、特に知恵ある生物が神の想念の泡を宿すことは少ない。魂の持つ意志の力がそれらを弾くようになっているからだ。

 しかし何らかの理由で神の想念の泡と引き合ってしまった生命体が強力な力を得て変異することがある。

 それが"怪人(ヴィラン)"と呼ばれる存在だ。

 

 人間であれば元の知性を残した者も多く、変異を隠しつつそれまでの生活を十年近く継続した例もある。

 しかしその精神はほぼ例外なく変異を遂げており、人類にとっては危険以外のなにものでもなかった。

 

「・・・強いのか?」

「らしいな。斬られた連中はもうすぐ緑になろうかって、青等級の中でも指折りの腕利きだったそうだ。それが不意を打たれたでもなく、正面からやり合って一瞬で壊滅した。

 前衛が鎧ごと真っ二つにされた、何が起こったかわからない、生き残ったのが不思議だって、(パーティ)の術師が言ってたよ」

 

 そんな事を言いながら、賑やかな酒場の中へ入っていく。

 ひなびた村、それもまだ夕方前には不釣り合いな、多くの人の笑い声とヤジが飛び交う。

 その中心にいたのは――

 

「おう、小僧に小娘ども! ここで会うたぁ奇遇だな!」

「師匠!」

「師匠!?」

 

 ヒョウエの語りの師匠、飲んだくれの大ぼら吹きの小汚い隻眼の老人、"ほら吹きサーベージ"だった。

 

 

 

「何で師匠がここに・・・!?」

 

 目を丸くするヒョウエに、ローレンスがげんなりした顔を向ける。

 

「お前らこの爺さん知ってるのか?

 どこで聞きつけたか勝手について来やがってなあ。毎日酒代をせびるわ、断ったら断ったで一席ぶってはおごりをせしめて、いやそれが悪いってんじゃないんだが・・・

 弟子だってんなら引き取ってくれよ、おい」

 

 割と本気で懇願するローレンスの眼差しに、四人揃ってさっと顔を背ける。

 ローレンスが長い長い溜息をついた。

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