毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-23 湯けむり純情

 

「・・・」

「・・・」

 

 背中合わせになってヒョウエとカスミが湯に浸かる。二人とも無言。

 五分か、十分か。沈黙に耐えきれずにヒョウエが口を開いた。

 

「えーと、そのですね・・・」

「ヒョウエ様には感謝しております」

「はい?」

 

 機先を制され、ヒョウエが首をかしげた。

 カスミが両手を組んで天を仰ぐ。

 

「ずっとお礼を申し上げたかったのです。あの頃、お嬢様は本当に苦しんでおられました。

 お嬢様が当主を継承できたのも、白の甲冑を使えるようになったのも、ヒョウエ様のおかげです。

 今でも、あなたはお嬢様の心の支えになっているのです。そして・・・いえ、何でもございません」

「・・・」

 

 むずがゆそうな顔で、ヒョウエが顔をポリポリとかいた。

 

「もちろん、だからどうこうとヒョウエ様に押しつける気はございません。

 ただわたくしもお嬢様もヒョウエ様には心底感謝していると、そうお伝えしたかったのです」

 

 カスミが笑顔で目を閉じる。

 ヒョウエが何かを言おうとして途中で止めた。

 それを何度か繰り返して、ようやく言葉を形にする。

 

「まあ、なんです。お役に立てて幸いですよ」

 

 くすり、とカスミが笑った。

 

「・・・なんです?」

「いえ。ヒョウエ様らしいお答えだと思いまして」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 何もかも見透かされているような気分になる。

 見透かしているのが年下の童女であるという事実が更に微妙な羞恥心をかき立てる。

 体を湯船に深く沈め、ブクブクと口から泡を吐き出した。

 それしかできることがなかったとも言う。

 

 

 

「さて、それではそろそろ失礼して先に上がらせて頂きます」

「あ、はい」

 

 それから十分ほどたったろうか、さすがにのぼせてきたのかカスミが湯船から立ち上がろうとした。

 その瞬間。

 

「いやー、いい月出てるじゃねえか! こりゃまたいい酒の肴だ!」

「はっはっは、わかってるじゃないか、若いの! その通り、月に花、雲に鳥! 季節季節の風景があればそれだけで酒はうまい!」

 

 風呂場の引き戸ががらりと開き、入って来たのはローレンスとサーベージだった。

 二人とも全裸で酒の瓶とお銚子を手に持っている。

 どうもあれからずっと酒盛りを続けていたようで、完全に出来上がってた。

 

「お、ヒョウエにカスミじゃねえか! どうだ、駆けつけ三杯!」

「いいねえ! かわいいお嬢ちゃんたちのお酌ともなれば酒も進むというもんだ!」

「それ以上進んでどうするんですか師匠・・・」

 

 げんなりと呟いたヒョウエの横でカスミが硬直していた。

 

「い」

「あん?」

「いやああああああああああああああああああああああ!?」

 

 涙声の悲鳴が露天風呂に響いた。

 同時にまばゆい光が視界を覆い尽くす。

 直視していないヒョウエでさえ思わず目をつぶったほどの圧倒的な光量、白い闇だ。

 

「ぎゃああああああああああ!?」

「ぐおおおおおお!?」

 

 一方でそれをまともに見てしまったらしいローレンスとサーベージは目を押さえて悶え苦しんでいる。全裸なので見苦しいことこの上ない。

 気がつくとカスミの姿はなかった。

 

(・・・もうしばらく浸かってから出ましょうか)

 

 溜息をついてヒョウエは湯船に浸かり直した。

 目の前で転がっている見苦しいものを視界から外しつつ。

 

 

 

 翌朝。

 モリィ達三人とローレンスを杖に乗せてヒョウエは飛び立った。

 酒臭い息を吐くローレンスに、リアスとカスミが嫌な顔をしていたのは余談である。

 

 付近の山を周回し、森の上から「それ」が放っているであろう魔力光を探す。

 モリィの《目の加護》と運だよりの仕事だ。

 

「いっそ青箱の人たちが襲われた現場から足跡を辿った方が良いかもしれませんねえ」

「つっても一ヶ月前の事だからなあ。さすがにどうだ?」

「一ヶ月かあ・・・それはちょっと自信ねえなあ。状況によってはイケるかもしれねえけどよ」

 

 溜息をつきつつ、地道に周囲を探す。

 一日目は何も得るところなく探索は終わった。

 なお酒臭さに我慢できなくなったリアスとカスミの抗議によって、ローレンスに探索中の禁酒令が言い渡されたりした。

 

 次の日も、そのまた次の日も成果はなかった。

 更に次の日も、そのまた次の日も。

 ヒョウエの「野暮用」がその間三回ほどしかなかったのは幸いだったと言えるだろう。

 そして一週間目、ヒョウエがリーザに手を借りようかと考え始めたころ。昼食を終えて飛び立って少し。

 くん、とモリィが鼻を鳴らした。ほとんど同時にカスミも。

 

「ヒョウエ、血の匂い・・・って言うか死体の匂いだ」

「死体ですか? 野生動物のではなく?」

「それはわかりませんがわたくしも感じました。野生動物一体の腐臭にしては強すぎます。よほど近くにあるか大量か・・・モリィ様?」

「見渡す限りでは近くにはねえな。ヒョウエ、ちょっと風上に飛んでくれるか?」

「わかりました」

 

 うなずいて高度を下げ、ゆっくりと杖を飛行させる。

 20分ほどかけて、一行はその場所に到達した。




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