毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ヒョウエ様! 金縛りを解いてローレンス様の治療を! リアス様、お願いします!」
「は、はい! わかりましたわ!」
「・・・! わかりました、念動を一段ゆるめますよ!」
再起動したリアスが渾身の一撃を振るう。
それを受け止めようとした瞬間背中を斬られて、リアスの剣を止めはしたものの怪人がはっきりとよろめいた。
同時にヒョウエが魔力経絡一つ分の念動の術を解除し、ローレンスの傷口に指先を当てる。
魔力経絡一つ分の術ゆえにいつもほどの回復力はないが、それでも着実に血は止まり、傷口も塞がる。とは言え出血がひどく、容態は予断を許さなかった。
「ちっ、大赤字だぜ」
買っておいたポーション五本を使い切ったモリィがヒョウエと入れ替わりに立ち上がり、瓶を放り投げて再度雷光銃を抜く。
「・・・」
ショッキングピンクの怪人、それと激しく斬り結ぶリアス、その周囲を跳ね回って牽制する七色のカスミ。
狙いをつけられず銃を下ろす。
ちらりとヒョウエを見る。
何度か自身やモリィを治療した時と違い、一箇所に長く指を当てている。
発せられる魔力の光も弱く、治癒の効き目が弱いのがわかった。
逆袈裟に深く斬られたローレンスの顔は、夕日の光の中でも青く血の気がない。
「・・・なあヒョウエ、やばいんじゃねえか、このままだと」
「ですが・・・」
ヒョウエが何か言おうとしたところでカスミの平静な声がそれを遮る。
「術式を全て治療に回して下さい、ヒョウエ様。その間だけなら何とか押さえ込んでご覧に入れます」
怪人と全力で斬り結ぶリアスもはっきりと頷いた。
「ヒョウエ様! わたくしからもお願いいたします!」
「~~~~っ!」
逡巡の表情を見せた後、ヒョウエが叫ぶ。
「今から3つ数えて解除します! 急いで治療しますのでなんとかもたせて下さい!」
「はいっ!」
「心得ました」
勢いのあるリアスと、あくまで平静なカスミ。
対照的な二人の返事を聞きながら、ヒョウエはカウントをとる。
「3、2、1・・・解除!」
その瞬間、怪人の動きがほとんど二倍の速さになったように思われた。
リアスの剣が強烈な一撃に吹き飛ばされかけ、カスミの分身が三体まとめて消し去られる。
同時にヒョウエの指先の魔力光が圧倒的に密度を増し、モリィが目を覆うほどになる。
「すぐに治療を終わらせます! それまで!」
「無論です!」
斬られたはらわたの中に指を突っ込み、内臓の傷を癒す。
深く斬られているだけあってそれなりに時間はかかったが、それでも今までの治療よりは遥かに早い。
だがその短い時間の間にもリアスとカスミは目に見えて追い詰められていく。
カスミの分身が二人、三人と消えていく。再出現も追いつかない。
リアスも防御で手一杯だ。刀と盾を両方防御に回して、辛うじて重い斬撃を凌いでいる。
ローレンスの治療を続けながら、ヒョウエが傍らのモリィに小声で囁いた。
「モリィ、今のうちにチャージを。ローレンスさんの治療が終わったら一発ぶちかまして逃げます」
「! 了解だ!」
モリィが腰を落とし、雷光銃を両手で構える。白の甲冑と同じ
ヒョウエが出来うる限りの出力で、しかし丁寧に内臓の傷を塞ぐ。
意識のないローレンスがうめく。その顔に僅かに血色が戻ってきているように見えた。
「こっ、の・・・!」
白の甲冑と盾の表面をガンガンと刀が叩く。古代の遺失技術で生み出された特殊合金は辛うじてその斬撃に耐えているが、衝撃は防ぎきれない。
天翔る龍が彫金された盾は既に傷だらけで、深い切れ込みもいくつかある。そう長くはもたないだろう。
白の甲冑の生み出すスピードと膂力で防御に専念するリアスをして防ぎきれない、野性の荒々しさと達人の技を兼ね備えた剣。
余りの速度に、剣が三本あるかのような錯覚を起こす。
「もうすぐです! 何とかこらえてください!」
「無論・・・カスミっ!?」
斬られるたびに再出現しながらも、ペースが間に合わずに数を減らしていたカスミの分身。
その最後の一体がついに消えた。
「カスミィィィィッ!」
リアスの絶叫が響く。モリィの顔がこわばり、ヒョウエが歯をギリッと鳴らしたその瞬間。
「え・・・?」
怪人の喉から、忍者刀の真っ直ぐな刃が突き出していた。
「姿は虚、と申し上げたはずです。忍びが何故姿をあらわにして戦わねばならないと?」
怪人の頭の後ろ、何もない空間から声がした。
一瞬遅れてすうっ、とそこにカスミの姿が現れる。
忍者刀を無造作に動かすと、怪人の首があっけなくごろりと転がり落ちる。
ふわり、とカスミが飛び降りた。
「・・・ああ、カスミ!」
感極まったようにリアスが破顔一笑する。
術の行使の疲労か、額に汗を浮かべてカスミが笑みを浮かべた。
だがヒョウエの直感はまだ何かあると訴えていた。
何だ? 何がおかしい? そこまで考えて気付く。
首をはねられた怪人の体が、まだ倒れていない!
「リアス、どけっ!」
「なっ!」
首をはねられた怪人の体が素早く振り向き、術を解いたカスミに斬りかかる。
同時にモリィが躊躇なく、カスミを巻き込んで雷光銃のチャージ攻撃を放った。
リアスは驚きながらも横に飛び退く。一瞬だけチャージ攻撃に巻き込まれたものの、白の甲冑の防御術式が辛うじて攻撃を弾いた。
「カスミッ!?」
リアスの悲鳴が響く。
童女と怪人の姿は魔力照射に飲まれて見えない。
2秒ほど経ったところで黒い影が飛び出した。
体中を焦がした怪人。
驚くべき事に、単なる鋼にしか過ぎないはずの妖刀の刀身には染み一つない。
「ちっ」
チャージ攻撃を終えてモリィが舌打ち一つ。
そのモリィに殺意を向けようとして、リアスの視界にカスミの姿が映った。
「!?」
チャージ攻撃で直線状にえぐられた山肌の中、カスミとカスミの周囲の地面だけが無事に残っている。
「カスミさんは僕の術で守らせて貰いました。モリィがきっと我慢できずに撃っちゃうと思いましたからね」
「ばーか、お前がカバーすると確信したから撃ったんだよ。信頼って奴だ、喜べ」
「ほんとかなあ」
木のふもとにうずくまる怪人から注意は逸らさず、人の悪い笑みを交わす二人。
「・・・・!」
リアスが驚きと嫉妬の入り交じった複雑な表情でそれを見比べた。
「まあ、無駄話をしている余裕はありません。カスミは動けますか?」
「何とか。ただかなり魔力を消耗しましたし、何度か幻像に剣がかすりましたから、簡単なものでも術式の起動は難しいと思います」
魔力を消耗すると言うことは、イコールで体力を消耗すると言うことだ。
幻像が消えてもすぐに復活したのは妖刀に斬られて消えたのではなく、その直前に自ら幻像を消して再度出現させていたということだろうが、ヒョウエではあるまいし術をそのように濫用してそう長く持つはずがない。
疲労困憊したカスミはほぼ戦力外。
リアス一人とヒョウエの念動による行動阻害だけで怪人を倒せるだろうか?
考えるまでもなく、勝算は薄いと言わざるを得なかった。
(だが)
一つだけ手段はある。
"
ちらりと手の中の杖を見、そしてうずくまる怪人を見る。
この僅かな時間の間に黒こげになった表面は再生し、見る見るうちにピンク色の毛皮が新生していく。
はね飛ばされた首の断面が泥のように盛り上がり、新たな頭部を形成しようとしていた。
(逃げると言う手もありましたが、もう遅いか)
チャージ攻撃が終わった瞬間に逃げを打っていたとしても、動けないローレンスがいる。不完全ながら再生した怪人に襲われて、先ほどの二の舞になった可能性は高かった。
(・・・やむを得ません、か)
「全員下がって。とっておきを使います」
「おい、まさか」
声色に含まれる何かを察したのか、モリィが焦ったような顔でヒョウエに振り向く。
「やめろ、馬鹿!」
「この際これしか手がありません。後はよろしく」
「・・・?」
顔に疑問符を浮かべつつ、リアスとカスミが後退する。
緊張を感じ取ったのか、うずくまっていた怪人が立ち上がり、炭化した表皮がポロポロとこぼれ落ちた。
怪人が剣を構え、ヒョウエが切り札を発動しようとして。
「やめとけよ、小僧」
のんびりした声が両者を遮った。
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