毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第四章「チャンバラ」
02-28 奥義促成コース


 

 

「奥義を身につけて勝てれば苦労はしねえよ」

 

 

                     ――不詳――

 

 

 

 

 朝食の後、ローレンスを乗せてヒョウエが飛び立った。

 向かう先は王都メットー、医神(クーグリ)の神殿だ。

 傷は癒したとは言え深手で体力を消耗し、その上に魔力経絡に大ダメージを受けている。治療を受けても数日は安静だろう。

 いつもにもまして形状に気を遣った「後部座席」の上で楽な姿勢をとりながらローレンスがぽつりとこぼした。

 

「すまねえな、足手まといになっちまった」

「いえいえ、そんな事は。小さな女の子が斬られたら良心の呵責が半端じゃありませんけど、ひげ面のむさいおっさんが斬り殺されても手を合わせれば終わりですからね。

 いい仕事をしてくれましたよ、ローレンスさんは」

 

 気遣って言ってくれているのはわかるのだが、それでも余りにあんまりな言いぐさにローレンスが苦笑する。

 

「まあおおむね俺も同意するが一つだけ・・・俺はまだ26だ、おっさんと呼ぶんじゃねえよ」

「僕から見れば十分におじさんですよ。何せ若いので」

「この野郎・・・」

 

 苦笑が深くなる。

 お嬢ちゃん呼ばわりした二年越しの意趣返しである。

 肩を震わせて笑っている少年の後頭部を軽くこづいて、ローレンスは目を閉じた。

 

 

 

 一方でルダイン村。

 メットーに飛び立つ二人を見送った後、モリィ達三人は酒場の中に戻っていった。

 先ほどからずっとエールを飲み続けるサーベージの正面にリアスが座る。戸惑いながら他の二人も席に着いた。

 兜を脱ぎ、深々と頭を下げる。

 

「まずはお礼を。昨日はありがとうございました、サーベージ様」

「ああ。いいっていいって。こうしてただ酒にありつけてるわけだしな」

 

 リアス達をちらりと見はしたが、手をヒラヒラさせてそのまま飲み続けるサーベージ。

 しばらく迷った後、意を決してリアスが口を開く。

 

「それでですね、その・・・あの怪人――ムラマサはまだ健在なのでしょう?」

「ああ」

 

 サーベージが関心無さげに樽から新たなエールをくむ。

 

「ムラマサを討ち取るのに、ご協力願えませんでしょうか。サーベージ様は私などより遥かに上の技量をお持ちとお見受け致します。なにとぞご助力を頂けないでしょうか」

「やだよ、めんどい。年寄りを働かせるな」

 

 リアスの方を見もせずにサーベージ。

 

「私たちを、いえ、ヒョウエ様を助けて下さったではありませんか」

「小僧を助けたのはたまたまだ。二回もやる気はねえよ。勝てねえなら諦めろ」

 

 にべもない。

 が、リアスも必死で食い下がる。

 

「どうしても討たねばならないのです! 報酬はお支払いします!」

「いらねえよ」

「ならば、せめて私に一手御指南を! あの風にそよぐ柳のような剣をお教え下さい!」

 

 そこで初めてじろり、と老人がリアスを見た。

 

「う・・・」

 

 その眼光にリアスの言葉が途切れる。

 

「一朝一夕で身につけられるわけがねえだろ、馬鹿。

 大体あんなもんは技でも何でもない。敵の太刀をさばいてるだけだ。あれが何か凄い技に見えるなら、お前さんの鍛錬が足りてないだけだろう」

「・・・・・・」

 

 リアスが沈黙する。

 完全な正論であった。

 

 老人は何か変わったことをしていたわけではない。

 杖で相手の剣を防いでいただけだ。

 ただその技量が隔絶しているために、特別な奥義か何かに見える。

 

 リアスにだって出来るのだ。技量が追いつきさえすれば。

 しかし技量が修行してすぐに上がるならば誰も苦労はしない。当たり前の話だ。

 それでも、リアスに諦めるという選択肢はなかった。

 

「それでしたら何でも構いません! 私に稽古をつけてくださいまし!」

「あのなあお嬢ちゃん。だから俺は・・・」

「稽古をつけて下さるのでしたら、今後メットーでお酒を飲まれる時は全て代金を伯爵家が肩代わりさせて頂きます!」

 

 サーベージの動きがぴたりと止まった。

 妙にまじめくさった顔でリアスの方に顔を向ける。

 

「そうだな。次代を担う若い才能を育てるのも先達のつとめの一つだろう」

「それでは!」

 

 顔をぱっと明るくするリアス。サーベージがしかつめらしく頷いた。

 

「ああ、稽古をつけてやろう。何ならどうだ、奥義の促成コースというのは」

「奥義の促成コース!?」

「ちょっと待てコラ」

 

 リアスの驚愕の声とモリィのツッコミが朝の酒場に同時に響く。ツッコミはいつだって思わず出る。

 

「なんだよ、何か文句あるのか雷光の嬢ちゃん」

「モリィだ、覚えろ! お前さんざん鍛錬が足りないだけだとか奥義じゃないとか何とか言っておいて、促成コースとか舐めてんのか! そんな簡単に奥義が身につくなら誰も苦労しねーよ! 大体タダ酒に釣られただけだろテメー!」

 

 モリィの剣幕にも老人は微動だにしない。

 静かに彼女を見据える様子は、外見だけなら――いや、技量については間違いなくそうなのだが――悟りを開いた達人に見えなくもないから不思議だ。

 

「それは誤解というもんだ。俺は彼女の才能に惚れ込んだのさ。掌中に珠があれば、磨いてみたくなるのが人情というものだろう」

「・・・・」

 

 いけしゃあしゃあとのたまうサーベージに、もはや反論する気力すら湧かない。

 大丈夫かコイツ?という目でモリィがリアスを見た。カスミも。

 それにひるみながらもリアスは頷いた。

 

「それでは、御指南頂けるということでよろしいですのね?」

「よろしいとも。丁度良い、腹ごなしだ。表に出な」

「はいっ!」

 

 鼻歌を歌いながら席を立つサーベージと、緊張した顔でその後に続くリアス。

 その二人を見送った後モリィとカスミは顔を見合わせ、深々と溜息をついた。

 

 

 

 一時間ほどしてヒョウエが戻ってきた。

 

「・・・何がどうなってああなったんです?」

 

 酒場の外を振り向きつつモリィ達に訊ねる。

 

「リアスが酒飲み放題を提示したらじいさんが奥義を三日で教えてやろうとかそんな感じのことを言い出したんだよ。それよりあれ何やってんだ? 魔力生成の練習か?」

「ああ」

 

 酒場の裏、林との間にある空き地で二人がやっていたことを思い出してヒョウエが頷いた。

 一抱えほどもある石にリアスが腰掛けて手と足を組み、目をつぶっている。

 その後ろをサーベージがうろうろしており、時折手の杖でリアスの肩を叩いていた。

 

「ザゼンという精神修養法の一つです。ただ者じゃないとは思ってましたけど、オリジナル冒険者族か、少なくともその教えを継ぐ筋の人ではあるみたいですね」

「冒険者族の技ってことか」

「まあそんなところで」

 

 本の虫であり、高度な教育を受けたヒョウエをしてこちらの世界で座禅という言葉を見た記憶は無い。サーベージ老がオリジナル冒険者族である可能性はそれなりに高かった。

 

(オリジナル冒険者族だとしたら、古武道か何かの人かなあ)

 

 向こうの世界で武術を極めた上で何か強力な加護を持っているなら、あの強さも納得できなくはない。

 だとしても桁が外れているとは思うが。

 

「で、あたし達はどうする?」

「とりあえず今日一日は休養で。僕にしろカスミにしろかなり消耗してますからね。リアスさんの修行もありますし、そのへんはお昼にでも話しあいましょう」

「オーケイ」

 




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