毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
『ガアアッ!』
そんな
だが雷光のような踏み込みがなければ、その脅威度は飛躍的に低下する。
前衛が動きを拘束できる程度の機動力であるならば隊列が機能する。
後衛が全力を発揮できる――!
「オラオラオラオラオラッ!」
雷光銃の乱射。
だが一見そう見えて、放たれた雷光はそのほとんどが怪人の左膝付近に集中して命中している。
高速再生できる怪人とは言え、傷を修復する時間がゼロな訳ではない。
機動力を更に失い、カスミにも余裕が生まれる。
前回の戦いではリアスとカスミ、怪人がめまぐるしく体を入れ替えて斬り結んでいたために、モリィでも誤射の危険を排除しきれなかった。
しかし今怪人ムラマサは大幅に機動力を削がれている。
であれば、モリィの腕なら十分可能なこと。
わかっていれば射線に入らなければいいだけなので、カスミが誤射されることもない。
前衛のカスミ。動きを
完全にパーティが機能してムラマサを押さえ込んでいる。
理想的な膠着状態と言えた。
だが。
「・・・おい、こいつ動きが速くなってないか?」
はじめに気付いたのは、やはり《目の加護》を持つモリィだった。
「まさか」
カスミは疑いつつも否定しきれない。
「僕にはわかりませんが、モリィが言うならそうなのかも・・・まさか、慣れて来てる?」
ヒョウエのつぶやきが正しかったのは、十分ほど後になって明らかになった。
「おいヒョウエやっぱりだ! こいつ少しずつ速くなってんぞ!」
「同意いたします! あきらかっ、に! 剣が鋭い!」
ムラマサの剣を危ういところでかわし、紫のカスミもモリィに同意した。
技量でカスミに劣るヒョウエにも、今は僅かながらそれが見える。
「・・・この短時間でこれに対応しますか。やはり剣士としては飛び抜けてますね」
力や素早さといったムラマサの肉体的なスペックが上がったわけではない。
枷をつけたまま効率的に戦う動きを学習し、見る見るうちにそれに熟練しているだけ。
(天才ってレベルじゃないでしょう!)
自分が同じ事をさんざん言われたのを棚に上げて、心の中で悲鳴を上げる。
とはいえ、実際この学習速度は天才にしても異常だ。
それなりの才能の持ち主でも、片腕に鎖鉄球をぶら下げたまま使える剣法を編み出せなどと言われたら数ヶ月、あるいは一年以上の時間を要するだろう。
あるいは過去の達人の霊でもついているのだろうかとどうでもいいことを考えながらも、ヒョウエは自分の仕事を続ける。
念動の枷をはめる場所をこまめに変えてみるが、それでもやはり怪人は前ほどに混乱はしなくなっているし、踏み込みも速くなっている。
ちっ、とモリィが舌打ちした。
「どうすんだよ、これ。身一つで逃げるようには言ったが、村の連中の足じゃそう遠くには行けてないぞ」
村人には当然老人も子供もいる。逃げ出せと言われてすぐにそうするような人間ばかりでもない。
山に逃げ込むように指示は出しておいたが、下手をすれば今ようやっと全員村を出たくらいのものだろう。
「あと一つカスミの分身が消えたらこちらも逃げます。奴に見える様に空を飛んで誘導できれば・・・」
「!?」
ヒョウエの言葉が途切れる。その瞬間、三人が同時に絶句した。
紫のカスミがかわせないタイミング、かわせない軌道で剣を振るムラマサ。
だがどうということはない。
当たる直前に幻像を消し、新しく出せば済むこと。
そうならなかったのはその後。
紫のカスミを「斬った」勢いを止めず、剣が360度回転する。
フィギュアスケーターが空中で回転するように。
バレリーナがつま先立ちで綺麗な回転を見せるように。
後ろから怪人を斬ろうとしていた青いカスミを、妖刀が今度こそ存分に斬った。
「うぐぅっ!」
カスミの苦痛の悲鳴。
これまでの戦闘で初めて妖刀の直撃を受けた幻像が歪んで消える。
幻像を作り出していた術式が破壊され、魔力が妖刀に吸い取られて消えていく。
それはあたかも、カスミが妖刀に喰われたようだった。
「撤退っ! 二人ともこっちに!」
即座に決断し、同時に念動の枷をムラマサの首に移す。
『!?」
さすがにこれは意表を突いたようで、一瞬ムラマサの動きが止まった。
同時に最後に残った藍色のカスミが正面から特攻する。
「くっ!」
幻像が斬られて消えると同時にヒョウエの横にカスミの姿が現れ、ヒョウエの腕にすがりついてぐったりする。
更に雷光銃が顔面に向かって連射され、両目を含めて顔面をズタズタに引き裂く。
それを見ることもなく、ヒョウエは全力でカスミ・モリィとともに空に舞っていた。
「よっしゃっ!」
ヒョウエにしがみついたまま、モリィが快哉を叫ぶ。
大粒の汗の玉を浮かべ、呼吸も乱れてはいたが、カスミも大きく笑みを浮かべた。
一瞬にして10m以上を上昇し、そのまま上昇を続ける。
あの怪人であればこの距離でも跳躍してくるかも知れないが、ただ跳躍するだけの相手に空中機動で負ける気はしなかった。
(・・・ん?)
ぐんぐん小さくなる怪人が、刀を鞘に収めた。そのまま腰を落とし、刀の柄に右手を、鞘の鯉口に左手を添える。
ぞくり、とヒョウエの背中に強烈な悪寒が走った。
ムラマサが抜いた。
雷光の如く鞘走る神速の抜刀。
ヒョウエが針路を急転換したその瞬間、見えない「何か」が通り過ぎた。
「っ!」
苦悶の悲鳴を無理矢理にかみ殺す。
見えない鋭い何かはヒョウエの背中をばっさりと切り裂いていた。
「ヒョウエッ!」
「ヒョウエ様!」
二人の悲鳴が響いた。
血が吹き出し、術式が破壊されて一行を支える念動の魔力が途切れる。
大木の枝をへし折り、三人は地上に落下した。
「つつ・・・」
「ヒョウエ!」
「大丈夫ですかヒョウエ様!」
大木の枝によるブレーキと、最後の最後でギリギリ再発動に成功した念動の術によって、三人は何とか軟着陸していた。
杖を片手に立ち上がるヒョウエに少女達の声がかかるが、本人は二人の方を見ていない。
その視線の先には、毒々しいショッキングピンクの怪人。
("
杖を顔面の前に立て、即死だけを回避しながら"
どくん。
魔力の波動が響く。
「ヴァッ!」
そして、それは10m以上離れたムラマサにも感じ取れたらしい。
僅かに腰を落とす。距離を一瞬に詰めてヒョウエを切り伏せる準備動作。
だがそれを為そうとするより半瞬前。
「見えない何か」が両者の間を駆け抜けた。
「!」
『!?」
一直線。
数十メートルを超える一本の線に沿って、下草が切断されて宙に舞った。
ムラマサの左奥に生えていたナナカマドの木から、一抱えはある枝が静かに離れて地面に落ちる。
ヒョウエとムラマサの双方が動きを止めたところに、のんびりとした声が掛かった。
「よせと言ったろぉが。人の話を聞かねえ小僧だな」
肩をすくめながら三日前のように現れたのは、謎の老人サーベージ。
そして白甲冑をまとったリアスだった。
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