毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
王都メットーの住人でこのファンファーレを知らぬものはいない。
風より早く、巨人よりも強く、雲より高く飛ぶその姿を知らぬものなどいない。
青い全身甲冑。風になびく真紅のケープ。
人々の自由と平和を守るヒーロー。
"青い鎧"。
ショッキングピンクの巨人が起き上がる。
見たところダメージを受けているようには見えない。
実際今の一撃は村を戦場にしないための「押し出す」攻撃だった。
それでも1km、人間サイズに直せば10mを軽々と吹っ飛んで山を削るだけの衝撃は受けているはずだが、その影響は見られない。
ならば、と青い鎧はうなずく。
今度はその体を貫いてやろう。
その姿が、青い閃光となって
「?!」
次の瞬間、その場の全員が目をみはった。恐らくは青い鎧本人も。
閃光となって怪人を貫いた青い鎧が、本当に怪人の巨体を貫いた。
まるで手応えなく、巨体に10mを越す大穴が空く。
ピンク色の土くれのような肉片?がバラバラと散らばった。
だが巨人は何ら痛痒を感じないかのように腕を振る。
青い鎧がかろうじてかわしたほどにその一撃は鋭い。
「!」
距離をとってもう一度攻撃を仕掛けようとした青い鎧が目を見張った。
たった今貫いた胴体の大穴が、あっという間に小さくなっていく。
地面の穴に泥を注ぎ込むように、10mの穴が見る間に塞がってしまった。
『グヲオオオ!』
巨人の二発目、三発目。それを大きく下がってかわしつつ、青い鎧の瞳が燃える。
「・・・なら!」
再び、青い閃光が
『ガッ!?』
ピンクの巨人の右の二の腕部分がはじけ飛んだ。
鋭角的にターンして青い閃光がもう一本
後ろからの直撃を受け、頭部が吹き飛んだ。
もう一度。もう一度。もう一度。もう一度・・・
無数の青い直線が乱反射してピンクの巨体を貫き、その肉体をえぐり取っていく。
ピンク色の泥が周囲に散らばり、緑色の野山にペンキをぶちまけたような有様になっていた。
青い乱反射がやんだ。
巨体を誇っていた人型は既にその形をとどめておらず、ピンク色の泥沼が広がっている。
動きを止めてそれを見下ろしていた青い鎧がぴくりと動く。
次の瞬間、燃える光の筋が二本、ピンク色の泥から突き出された。
双方ともに狙うのは上空の青い鎧。
だが一瞬早く動いていた青い鎧の動きを捉えきれず、燃える光線はむなしく宙を切る。
それと同時にピンク色の泥沼が盛り上がり、周囲の草木が枯れていく。
茶色に変わる風景の中で、泥沼があっという間に巨人の姿を取り戻した。
「・・・!」
モリィ達が息を呑む。
再び立ち上がった巨人。両手から発するのは二本の燃える光線。
ゆらゆらと揺れてはいるが、固定化されたそれは光の剣のように見えた。
モリィの《目の加護》がその燃える光の正体と、更にその発生源に気付いた。
「ありゃあ・・・あのカタナの発してた魔力を喰らう炎か!」
「妖刀の・・・炎ですって!?」
「あ、今はおまえ達も見えてんのか・・・いやそんなことより! あれがあのカタナの魔力を喰らうタネだ! つうか腕の先っちょに折れたカタナが一本ずつ埋まってんぞ!」
「ンだとぉ!」
顔をしかめたリアスやサーベージが目をこらすが、《加護》無しでは到底見えない。
カスミが右目の前に両拳で望遠鏡を作り、呪文を唱えた。
「・・・確認いたしました。モリィ様の言われる通り、両拳の先端に刀身が見えます」
「うん? ああ、光を拡大したのか。便利な呪文持ってんな」
「ありがとうございます。光の系統だけですが」
巨人が燃える光の剣を振った。続いてもう一振りも。
青い鎧は華麗な軌道でそれをひらりひらりとかわす。
妖刀に宿っていた「もの」は成仏したか消滅したか、その振りに先ほどまでの達人の技量はない。だがそれを支えた馬鹿げた膂力と速度は微塵たりとも衰えていなかった。
剣筋は荒いが早く、鋭い。防御に徹していればいずれ一撃を受けるだろう。
そして妖刀の魔力を喰らう性質は恐らくそのまま。
直撃しても即死と言うことはなかろうが、ごっそりと魔力を持って行かれるのはまちがいない。
魔力とは生命力の一形態だ。周囲の生命力を喰らって成長再生する巨大怪人が"
「おいじいさん、あれどうにかなんねえのか?」
「どうにかつったってなあ・・・」
珍しく苦り切った表情でサーベージ。
「普通の"
その場合は精神的に干渉して安定化させるか、怪人の体を完全に破壊し尽くすしかない」
「しかしサーベージ様、破壊し尽くすと言っても・・・!」
粉々に砕いてなお再生する存在をどうすればいいのか。
「・・・これをあいつに貸したら、どうにかなんねえかな?」
「雷光銃か。それならあるいはとも思うが・・・いくら
「くそっ!」
悔しそうに顔を歪めるモリィ。
「ヒョウエ様、その、青い鎧があれを砕いたところで、モリィさんがチャージ攻撃で焼くというのはどうでしょう?」
「あたし程度じゃ到底威力が足りねえ。かと言ってあいつが出すでかい火の玉でも20mくらいだしな・・・焼いた端から回りの生命力喰われて再生されておしまいだ」
「・・・」
リアスが拳を握る。白い籠手はかすかに震えていた。
だが1km離れた青い鎧は、その二人の会話を聞き取っていた。
その脳裏に、前世で聞いた伝説が甦る。
大地の神の子たる巨人を、生身で絞め殺した怪力無双の大英雄。
半神である不死身の巨人を、英雄はいかにして打ち倒したか?
(それだ!)
一旦距離をとる。
しかし巨人は両手を伸ばし、光の剣で追撃してくる。
(おっと!)
それ自体には驚いたがむしろ好都合。
少し攻撃をかわした後、両方の腕を素早く弾いて絡ませ、一瞬の隙を作る。
その一瞬の間に青い鎧は再び閃光と化して飛んだ。
「馬鹿っ! 同じ事を・・・っ!?」
「おおっ?」
《目の加護》でそれを見てとったモリィと、こちらは素で見えているサーベージが驚きの表情になった。攻撃ではなく、最初の一撃と同じ「押し出す」攻撃。
ただし横にではなく、体の下に潜り込んで真上に持ち上げる。
「!?」
「ヒョウエ様、何を・・・?」
10万トンの巨体が、音速を超えるスピードで上空に持ち上がっていく。
あっという間に青い姿は見えなくなり、ピンクの人型もモリィとカスミ以外には小さな粒にしか見えなくなった。
高度一万メートルで、青い鎧はショッキングピンクの巨人を突き放した。
ゆっくりと自由落下を始める巨人に、太陽を背に相対する。
「運が悪かったな、お前。夜なら・・・あるいはこの周辺に大きな地脈が走ってたらどうにもならなかったかもしれない。けど、ここならお前が吸収できる生命力も魔力もない。
そしてここには光がある。お前を焼き尽くせるだけの光が」
『オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ !』
薄い空気の中、あらん限りの声で咆哮する大怪人。
その両手が伸び、魔力を喰らう燃える炎の剣が青い鎧に迫る。
だがその直前に、青い鎧が右手の手刀を頭上から一回転させ、宙に円を描く。
その瞬間、青い鎧の周囲が闇に包まれた。
『ヴォッ!?』
青い鎧の背中に見える太陽や空が一瞬にして暗黒に塗りつぶされると同時に、伸ばした両腕の手首から先が「焼失」する。
漆黒の世界の中でただ青い鎧だけが浮き上がっている。いや、その瞳に燃える赤い光はなんだ?
膨大な魔力と限界突破した九つの連動術式が作り出した、直径10kmの念動力レンズ。
それによって収束させた光を両目から(正確にはその10センチほど前方から)放つ。
10センチの虫眼鏡でさえ、焦点温度は紙の発火温度を越える。
それが直径10kmとなれば?
「太陽よ、我に力を貸し与えたまえ! "
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!』
焦点温度六千度の灼熱の視線。
まさしく太陽に等しい熱に全身を焼かれて、巨人は断末魔の悲鳴を上げる暇もなく熱分解され、消滅した。
地上。
青い鎧と巨人が消えた空の上で、一瞬何かが光った。
リアスが焦ったように後ろの二人を振り向いた。
「カスミ、モリィさん、何がありましたの?」
「申し訳ありません、お嬢様。私の術ではさすがに詳しいことは・・・ですが」
「あのピンクのデカブツは消えてなくなった。そいつぁ確かだぜ」
「ああ・・・!」
モリィが男前な笑みを浮かべて親指を立てる。
リアスが感極まったように両手を胸の前で組み、カスミが安堵の息をついた。
「目玉の嬢ちゃん。あの刀はどうなった?」
「いい加減名前覚えろよ! 後目玉って言うな! ・・・腕の先っぽが消えてなくなってたからな。多分一緒に消し飛ばされただろうよ」
「そうかい」
サーベージは、短くそう言ったきりだった。
一分ほどして青い鎧が降りてきた。
鎧を分解・解除し、中からヒョウエが現れる。
「―――――!」
「本当に、青い鎧の正体がヒョウエ様だったのですね・・・」
改めて二人が驚く。
既に見た事のあるモリィはにやにやとその様子を眺めていた。
「何を笑ってるんですかモリィ・・・師匠はどうしました?」
「え?」
「あれっ!?」
「そんな・・・たった今までそこに」
飲んだくれの語り部、ヒョウエの師匠、武芸の達人にしてオリジナル冒険者族。
開けた耕作地の中、その姿はもうどこにも見えなかった。
「最後の最後まで訳のわかんねえじいさんだったなぁ・・・」
モリィの溜息が、その場の総意のように響いた。
「まあどうせそのうちどこかでひょっこり出て来ますよ。何ならメットーじゅうの酒場を調べればどこかにはいるでしょう」
「ですわね・・・」
この三日間で、村の酒場のエールを倉庫半分飲んでしまった飲んべえの老人の姿を思い出しつつ、リアスが頷く。
ふう、と杖に体重を預けてヒョウエがうなだれた。
「それよりも、流石に疲れました。宿に戻りましょう・・・」
「あー、おんぶいるか?」
「お願いします」
「え?」
眼を白黒させるリアスとカスミの前で、モリィが手際よくヒョウエを背中に担ぐ。
「ちょ、ちょっと何をしているんですのモリィさん!?」
「あー、これこれしかじかであれを使いすぎると体が動かなくなりまして・・・ほら、ローレンスさんの件の後『心臓が止まったけど息がある』という状態になったでしょう? あれですよ」
「・・・ああ!」
それで腑に落ちたのか、二人が納得した顔になった。
いや、リアスは理解はしたが納得はしていない。
「ですがその、モリィさんがおぶわれるのはうらやま、いえお辛いでしょう? 白甲冑を着た私のほうが力がありますわ!」
「お嬢様・・・」
下心ダダ漏れの女主人に、カスミが顔を片手で覆った。
聞かなかったふりをしてヒョウエが丁重にお断りする。
「モリィでいいでしょう。どうせ今回大して働いてないんですし・・・痛い痛い痛い」
「ん~。この口かぁ~? 人におぶわせておいてナメた事言うのはこの口かぁ~?」
意地悪な笑みを浮かべながらヒョウエの口をつねりあげるモリィ。
ヒョウエも何とかガードしようとするが、"
「ひ
「あ~、聞こえないな~。どこかの貧弱くんがさえずってるけど何言ってるかわからないな~」
「モリィさん、いい加減になさいませ! 私にも・・・じゃなかった、私にお代わりなさい!」
「お嬢様・・・」
賑やかに、そして和やかに一行はあぜ道を歩いて行った。
日輪の力を借りて、今必殺の! サン! アタァークッ!
今回ググって調べてみたんですが、どれだけでかいレンズで光を集めても太陽の表面温度より高い温度にはならないようで。
(ただし高い温度にならないだけで、レンズが大きければ熱量は相応に集まる)
レンズマンの太陽ビーム砲とかドクターヘルの太陽レンズ(桜多吾作版)とか否定されちゃったよ!
熱力学の第二法則が云々とのことですが、文系には頭がスポンジですわw
あともう一つ驚いた事。太陽の表面温度って8000度じゃなかったの!?(現在だと摂氏5500度~6000度らしい)
作者のモチベーションは読者の皆様の評価と感想です。
評価と感想よろしくお願いします。