毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
03-01 スラムの冒険者たち
「ともあれまずは炭だ。炭屋に土下座して前借りしてこい」
――とある飲んだくれの鍛冶屋――
ルダイン村で
その南西に位置するスラムの奥に一行は足を踏み入れていた。
「こっちお前んちの近くだよな。その鍛冶師ってお前んとこのやつなのか?」
「まあお給料は自治会から出てて、自治会に資金出してるのは僕なのでそうと言えなくもないですが、お抱えとかではないですよ」
「・・・このスラムって丸ごとヒョウエ様の土地だったんですのね・・・」
「それは伯爵家のまかない程度で足りるはずもありませんか・・・」
二年前の会話を思い出しつつ、リアスとカスミが呆れたようにぼやいた。
そしてそこに現れる不審者一名。
「りょーうーしゅーさーまーっ♪」
「むぐっ」
いきなりヒョウエに抱きつく20才ほどの色っぽい女性。
「気さくなお姉さん」という単語を人の形にしたような娼婦、ナヴィだ。
「んー、やっぱりこのほっぺ、いいわねー」
「だからやめて下さいと言ってるじゃないですか」
幸せそうに頬ずりするナヴィを、迷惑そうにしてはいるがヒョウエも止めない。
顔なじみのモリィもだ。
が、初対面で箱入り娘のリアスにはいささか刺激が強すぎたようだ。
「ななななな、何をなさってるんですの! ヒョウエ様から離れなさい!」
「あら、かわいいお嬢さんね。領主様の新しいお仲間?」
「そうですけど・・・ふわーっ!?」
「ああ、きめ細やかな肌! 綺麗な金髪! もうかわいいわねえ!」
抱きついて頬ずりされたリアスが硬直する。
こちらも一瞬硬直した後、あわててカスミが止めに入った。
「あの、お嬢様! リアス様はそう言う事に不慣れですのでその辺にして頂けると・・・!」
「え、お嬢様って私のこと? やだ、凄い新鮮!」
「あー、ナヴィ姐さん。そいつ一応伯爵様だから。一応」
モリィも投げやりに制止するが、テンションの上がったナヴィは聞いてない。
「なに、あなたもかわいいじゃない! メイドさんよメイドさん!」
「ふぁーっ!?」
再び標的を変えたナヴィが、今度はカスミを抱きしめて頬ずりする。
敏捷さが売りの彼女をして回避できない、必中のハグ。
リアス以外の人間にこう言う事をされるのは馴れてないのか、先ほどのリアス以上に混乱し、硬直していた。
そこでリアスがはっと再起動する。
「そ、そこまでですわ! ヒョウエ様はまだしも私以外の人間がカスミを愛でるのは許しません!」
「えー、けちー。じゃあ一緒に堪能しましょうよ」
「そう言う問題ではありませんわ!」
「愛でてんのかよお前・・・」
モリィの呆れた声がむなしく響く。
ぽこん、とヒョウエの杖がナヴィの頭を叩いた。
「いったーい。何するのよ領主さまー」
「はいはいそこまで。僕の仲間なんですから加減して下さい」
「うーん、いけずぅ。でも領主様に言われたらしょうがないわねー」
最後にひとしきりカスミの抱き心地を堪能して、妖怪ほっぺすりすりは去っていった。
「何ですのあの方は! いきなり抱きついてきたと思ったら私のカスミにいかがわしいことを!」
「その伝で行くとリアスがカスミにしていたのもいかがわしいことになりますが」
「あの、リアス様もヒョウエ様も、もうそのへんで・・・」
「お前も大変だな・・・」
リアスはぷりぷりと怒っていた。肩を怒らせながら街路を歩いて行く。
「まあ見ての通りの人ですよ。何故か僕にしょっちゅう絡んできますが、基本的にはいい人です」
「・・・ヒョウエ様がおっしゃるならそうなのでしょうけど」
まだ納得していない様子でリアス。どこかすねてるようにも見える。
カスミを取られたのがよほど悔しくあるらしかった。
しかし一難去ってまた一難(?)。すぐに一行は次なる試練と出くわしたのだった。
「あ、ヒョウエさまだ!」
「女の子沢山連れてるぞ!」
「はーれむってやつだな、おれはくわしいんだ!」
「ねーねーヒョウエさま、どれがせいさいでどれがあいじんなの? それともあれかな、どろどろのさんかくかんけいってやつ?」
「ちっこいのは違うだろ」
「いや、俺聞いたことがある! そういうのゲンジボタルって言うんだぜ!」
「それなんか違くね?」
「・・・・・・・・」
ヒョウエの回りにたかって好き放題言いまくる子供達。
先ほどのナヴィとはまた別のタイプの傍若無人さに、育ちのいいリアスが硬直する。
カスミも子供達の勢いにちょっと押されていた。
「ともかくあなたたちお黙りなさい! わたくしたちはヒョウエ様の
えー、と残念そうな声を上げる子供が半分。おおっ、と目を輝かせる子供が半分。
大体前者が女子で後者が男子だ。
「それにそんな事、いちいち聞くことではありません! 私が正妻でモリィさんが愛人に決まっておりますわ!」
「はたくぞコラ」
「ああでもカスミはどうしましょう。本気でヒョウエ様の事をお慕いしているなら許して上げなくも・・・」
「お嬢様、だからそれは誤解だと・・・!」
妄想にひたり込むリアスにはカスミの訴えも届かない。
周囲の子供達からは何故かおー、と感嘆の声が上がっていた。
「ほら、その辺にしておいてください。今日は用事があるんですから」
「そうでしたわね。そう言う事ですのであなた方・・・」
と、ヒョウエが促してその場を立ち去ろうとしたところで子供の一人が気付いた。
「そういえばねーちゃんの鎧って何かサムライっぽいな!」
「ヒョウエさまの人形劇にでてきた奴ににてる!」
「『白のサムライ』のこすぷれだ!」
ヒョウエがしまったという顔になる。何かを言おうとしたが、リアスの方が早かった。
「失礼な! 私はリアス・エヌオ・ニシカワ! 『白のサムライ』イチロウ・ニシカワさまの直系にして『白の甲冑』の纏い手ですわ!」
思わず叫んだリアス。周囲が一瞬シンとなり、次の瞬間爆発した。
「すっげー! すっげー! 本物の『白のサムライ』だぁ!」
「マジか! マジか! スッゲー!」
「いやあ、流石ヒョウエ様だ。『白のサムライ』の末裔を仲間にしなさるとは!」
「え? え?」
いつの間にか露店のおっさんや井戸端会議をしていた主婦たちまで集まって、周囲に人垣を作っていた。
握手やら何やらを求められ、困惑するリアス。
モリィが肩をすくめ、ヒョウエがあちゃあと額に手を当てる。
結局一行はその場を離れるまで二十分近い時間を費やすことになった。
そこから更に十分ほど歩いて、スラムの奥の壁ぎわ。
他のスラムの家とは違い、比較的広い敷地に建つ石造りの家があった。
余り寒くならないこの辺には珍しい、大きな煙突がある。
「ナパティさん、ハッシャさん、いますかー?」
大声で呼ばわりながら入っていくヒョウエに、他の三人も続く。
「うっ」
「げっ」
「これは・・・」
一歩中に入った途端、ヒョウエ以外の三人が顔をしかめた。
手前が土間、奥が一段上がった板間になっており、板間の手前に履き物が転がっているところを見ると日本風の入り口で履き物を脱ぐタイプの家らしい。
が、奥の板間はテーブルの上に酒瓶やつまみの食べ残し、周囲に汚れた服や書き損じの丸めた紙らしきもの、酒樽、貸本らしい
「きったねえ家だな・・・」
「ヒョウエ様。あの流し場を片付けてよろしいでしょうか。正直見るにたえません」
「あー・・・それは後でね。ん、鍛冶場の方かな」
ヒョウエが右側、話し声の聞こえる方にスタスタと歩いていく。
少女たちも取りあえず目の前の光景から目をそらして後についていった。
この世界には源氏物語も孫子も論語も史記も椿説弓張月もプルタアク英雄伝もあります(ぉ