毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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03-02 鍛冶師と細工師

「えっ」

「嘘・・・」

 

 土間を伝って別棟に入った一行が見たのは、最初の板間とはまるで違う整然とした鍛冶場だった。

 鍛冶仕事になどまるで詳しくない三人だが、それでも「プロの仕事場」という雰囲気を感じる。

 

 だが、三人が驚いたのはそれにではなく、その中央で言い争いをしている二人だった。

 片方は身長190cm、しなやかな褐色の長身に黒髪、笹のような細く長い耳をした男。

 もう一方は同じく褐色肌に茶髪茶ひげの、身長150cmほどながらたくましい体躯の男。

 

「エルフと・・・ドワーフ」

「初めて見たぜ・・・」

「エルフの細工師にドワーフの鍛冶職人とは凄いですね・・・」

 

 ただ、その感動も二人の言い争いの内容に気付くまでだったが。

 

「乳! 尻! ふともも! 偉大なる先人も言った通り、それこそが女の魅力! それが何故わからんハッシャよ!」

「お前こそわかってねぇんだよ、ナパティ! グラマーなんてただのデブだ! 胸も尻も薄い、ノミで極限まで削り上げたような精妙なバランス! それこそが究極の女体だ!

 それはそれとしておっぱいとケツも大好きだが!」

 

 少女たちが固まった。ヒョウエは毎度のことなのか無表情に聞き流している。

 なお上がエルフで下がドワーフのセリフである。

 

「あー、もしもし・・・」

 

 インド舞踊のような綺麗な動きでエルフがくるくると回転し、ドワーフにぴしっと指を突きつけた。

 

「そもそも乳とは子を育てるためのもの! 尻とは子を生むためのもの! 大いなる神の作りたもうた機能美が美しくないと言うことがあるか! どうだ!

 具体的には『ルタシュ』のイーシャちゃん! お前も結構散財してただろう!」

「クッ、あの娘を引き合いに出されるとつれぇが・・・だがそれでも俺は自分を曲げねぇ! 自分を曲げる時は男としての俺が終わる時だ!

 同じ『ルタシュ』のラレーナちゃんでどうだ! あのスレンダーなボディに匂い立つ色香! 貴様も一時期お熱だったよなあ!」

「ぬぐっ!」

「あのー?」

 

 どうやらひいきの一座(グループ)歌姫(アイドル)らしい名前を互いに挙げる両者。

 彼らの間では一種の勝負らしく、熱中する二人にはヒョウエの声も届かない。

 

「ところでナパティ。おっぱいが子を育てるためのもの、尻が子を生むためのものとするなら太ももはなんだ?」

「む・・・」

 

 ハッシャの問いかけにナパティが考え込む。

 くどいようだがグラマー推しがエルフのナパティで、スレンダー推しがドワーフのハッシャだ。

 

「・・・顔を挟んで圧迫して貰う?」

「それだ!」

「それだじゃねえよ!」

 

 ここでようやっと、硬直していたモリィが再起動した。

 年頃の娘らしい恥じらいより、ツッコミの衝動の方が勝ったらしい。

 二人もようやくこちらに気付いたようだった。

 

「誰だ嬢ちゃん・・・あれ、ヒョウエの若旦那?」

「やっと戻ってきましたか。さっきから呼んでたんですが」

「それは済まなかったな。取りあえず立ち話も何だ。居間で茶でも淹れてやろう」

 

 ナパティが頷いて一歩踏み出すが、そこにモリィの冷たい声が掛かる。

 

「居間ってのがあのゴミためのことなら慎んでお断りするぜ」

「あれは女の子を招待するところじゃありませんよ、ナパティさん」

「むう、善意を拒否された! ナパティ悲しい!」

 

 またもや片足でくるりと一回転して妙なポーズ。

 動き自体は綺麗なのが妙に腹立たしい。

 そこで改めて、ナパティは一行を見渡した。その鋭い目に感嘆の表情が現れる。

 

「ふむ・・・ヒョウエも色を知る歳か」

「そう言うのじゃありませんから」

 

 真顔で否定するがナパティは聞いていない。

 

「謙遜をするな! 蓮っ葉巨乳! パツキン女サムライ! クール系ロリメイド! 何とも見事なラインナップ! ところで教えて欲しいのだがどの辺まで行っているのだ?

 最後までは行ってないようだが接吻くらいは・・・待て、落ち着け、話しあおうではないか」

 

 両手を上げて冷や汗を浮かべるナパティ。

 目の全く笑っていない笑顔でリアスが腰の刀に手をかけていた。

 腰を落とし、抜き打ちに首を飛ばせる間合いである。

 

「ナパティさんですわね? 私リアス・エヌオ・ニシカワと申します。以後お見知りおきを」

「おお、これはご丁寧に・・・」

「思うのですけどナパティさん。淑女の前でするような話かそうでないかははっきりと区別する必要があるのでは?」

「うむ、おっしゃるとおりだな、うむ」

 

 ナパティがこくこくと素直に首を振る。背中は滝のような汗。自分に向けられた殺気の意味をはっきり理解している。

 ふと、その目が僅かに見開かれた。

 

「ん・・・ニシカワ・・・まさか、『白のサムライ』か!」

「なにっ!?」

 

 ナパティの叫びに鋭く反応したのはハッシャだった。

 

「え・・・ちょっと?」

「おお、素晴らしい・・・」

「モノホンの『白の甲冑』だぜ・・・!」

 

 二人して目の色を変え、リアスににじり寄るナパティとハッシャ。

 リアスが怯えたように後ずさった。

 

「おお、伝説の白甲冑よ! 今私の手の中に!」

「待て、俺が先だ!」

「ひいっ!」

 

 次の瞬間、鈍い音が二つしてリアスに飛びかかろうとしていた二人がひっくり返った。

 思わず手を出そうとしたリアスや、雷光銃のグリップで殴り倒そうとしていたモリィの動きが止まる。

 二人の額を直撃したのは、ヒョウエの懐から飛び出した二つの金属球だった。

 

「はあ・・・すいませんね、リアス。二人とも腕はいいんですよ、腕は・・・」

「い、いえ、ありがとうございました」

 

 頭を下げるヒョウエに気を取り直して礼を言うリアス。

 雷光銃のグリップを左の手のひらにぱしぱしと叩き付けつつ、モリィが白い目でヒョウエを見る。

 

「言っとくがな、ヒョウエ。いつぞやのリアスの下着をじろじろ覗いてたお前も、今のこいつらと大差ないからな?」

 

 ヒドラと出会ったダンジョン探索で、ヒョウエが"魔力解析(アナライズ・マジック)"でリアスの鎧を(リアスが着たまま)調べようとした時の事である。

 

「それはひどくないですか? 僕は・・・」

「失礼ながらヒョウエ様、私も同意見です」

「・・・」

 

 カスミにも白い目で見られてヒョウエは沈黙した。

 

 

 

「いててて・・・」

「ひどいぜ若旦那・・・」

 

 ぶつくさぼやきながら二人が再起動した。

 女性陣の白い視線にさらされているのだが、それを全く気にしていない。

 その白い視線が若干自分の背中にも刺さっているのを感じつつ、ヒョウエが口を開いた。

 

「それで、二人に白甲冑の修理に手を・・・」

「心得た! 大船に乗ったつもりでいるがよい!」

「ドンと任せとけ若旦那!」

 

 ゼロコンマ二秒。

 一瞬唖然として苦笑する。

 

「まあ職人なら当然ですか・・・」

「こう申し上げたら何ですが、二年前ニシカワ家にいらしたヒョウエ様も大体このようなものであったかと存じます」

「うぐぅ」

「か、カスミ!」

 

 カスミの冷徹なツッコミにヒョウエが再度へこんだ。

 まあスキップしながら古代の魔導甲冑を堪能していた人間には確かに反論できない。

 

 

 

 居間は流石に汚いと言うことで、テーブルと椅子を持って来て鍛冶場で話をすることにする。

 二人の淹れる茶は女性陣が嫌がったので、ヒョウエが香草茶を用意した。

 

「カスミ、兜を」

「はい、お嬢様」

 

 荷物の中から布包みを出してほどく。

 中には真っ二つになった白の甲冑の兜と、切り落とされた肩鎧、同じく切り落とされた飾り。

 

「むう」

「こいつぁすっぱりとやられたな・・・」

 

 それを見た途端、ナパティとハッシャの表情が職人のものになる。

 それまで半信半疑だった三人も、この表情で随分と評価を改めたようだ。

 

「魔力の残り香があるな。防御術式を発動した状態で切られたのかこれは?」

「ええ、妖刀を持った怪人にばっさりと」

「うへえ、想像したくもねえな。飾りはチョチョイのチョイだが兜と肩鎧は面倒だな。

 魔力の経絡線を繋がないと・・・何だよこれ、びっしりと線走らせすぎだろ! これ全部繋ぐのかよ!?」

「まあ真なる魔法の時代の遺物ですからねえ。現代のものとは根本的に作りが違いますよ。それでですね、装甲の修復自体は僕がやりますので・・・」

 

 職人同士の会話を交わす三人。

 少女たちは茶を口にしつつ、手持ちぶさたながら頼もしそうにそれを見ていた。

 しばらく後、話が一段落したようでヒョウエがリアスのほうを振り向いた。

 

「それでですね、装甲の緊急排除機能を使ったのでアンダーの方も・・・あっ」

「何ですの、ヒョウエ様・・・あっ」

 

 リアスが自分の姿を見下ろして悟る。

 今回白の甲冑は装甲からアンダーまで全て修復する予定だ。

 なのに白の甲冑はリアスが身につけている。

 

「すいません、あらかじめ言っておくべきでしたね」

「いえ、全部修理すると言われたのですから私が気を付けておくべきでした。ついいつものクセで・・・」

「まあしょうがない。風呂場ででも着替えてくるとよい」

「絶対に嫌です」

 

 きっぱりとリアスが断った。

 憤慨したのか、ナパディが反射的に立ち上がってクルクルとつま先立ちで回転し、ポーズを決める。

 

「何故だ! 我らがのぞきをするとでも思うのか!」

「あれだけ下品な話をしといて言えた義理かボケ!」

「そちらはかろうじて信用するとしても、部屋をあんなに汚くしてる人たちが、風呂場だけ綺麗なわけがないでしょう! そんな所で着替えるなど死んでもごめんこうむりますわ!」

 

 本気で嫌がるリアスに、ナパティとハッシャが顔を見合わせた。

 

「・・・そんなに汚くはないはずだな?」

「ああ、半月前・・・少なくとも一月前には掃除したはずだぜ」

 

 ぶちん、と。血管か堪忍袋の緒か、そんな何かが切れる音がした。

 リアスとカスミが同時に席を立つ。

 

「宿屋に戻って着替えてきますわ!」

「それがよろしいかと存じます」

 

 白い目・・・いや、青くなりかかった目でカスミも同意する。

 こちらもしゃーねーなと立ち上がって、モリィが何かに気付いた顔になる。

 

「そうだヒョウエ。おまえんちで着替えさせてやったらどうだ? 確かすぐ近くだろう」

「あ、そうですね。リアス、よければ」

「えっ? ヒョウエ様の家に!?」

 

 一瞬でその顔面に血が昇る。

 

「・・・お嬢様。今何をお考えになりました?」

「考えてません! 何も考えてません! だから眼を青くしないで!」

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