毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
その日を境に王都中で謎の通り魔事件が連続して起こるようになった。
最初は二日か三日に一回くらいだったのが、やがて毎日になり、ひどい時には一日数回起きるようになった。
そのたびに青い鎧が駆けつけるのだが、現場到着にはどうしても数分はかかる。
現場で青い鎧が見るのは、常に切り裂かれた犠牲者だけだった。
ならばと冒険者を休業して、青い鎧のまま一日中上空をパトロールしてもみたのだが、そんな日に限って通り魔は出てこなかった。
情報紙で「
「やれやれ、ですね。パトロールしていれば出てこないけど、それはそれで経済的に痛すぎる」
ヒョウエが溜息をついた。
ヒョウエ、リーザ、サナ、モリィ、リアス、カスミ、関係者が全員揃って食堂で作戦会議中である。
「なーんか、ジャリーさんが事情を知ってそうな気はするんですけどね・・・」
あれから半月ほど、ジャリーはあの日以来姿を見せていない。
出会った時から胡散臭いとは思っていたが、あの一件でその印象が不動のものになった。
「ともあれ今はインヴィジブル・マローダーですね。勘が鋭いのか、身を隠す能力を持っているのか、それとも僕たちの行動を予測ないし観察できるのか・・・」
「うーん・・・少なくとも何かに見られたり聞かれたりしてる感覚はないかな。ヒョウエくんをずっと見ているとかだとわからないけど」
「リーザが言うなら最後の線はないか・・・モリィは何か気付いたことは?」
「本当にちらっと見ただけだからなぁ。極端な話、全く無関係まであるぜ」
ヒョウエが視線をリーザに戻した。
「リーザ、襲われた人の『声』は具体的にはどんな感じなんです?
襲われる前に悲鳴を上げたりとかは?」
「あ・・・そう言えば、そう言うのはなかったと思う。みんな思うのは『切られた』『痛い』って事ばかりで、犯人の姿を見て驚いたり怖がったりって声はなかった」
「ふむう」
ヒョウエが考え込む。
不思議な事に、今まで死者は一人も出ていない。
多くの者は放っておけば助からないような傷を負っていたが、逆に言えば即死したものは一人もいない。
リアス(既に白の甲冑を再びまとっている)が口を開いた。
「被害者は全員一般人ですわ。気付かれないように襲えるなら、簡単に殺せるはず。
被害者が三十人近いのに死者が一人もいないのは、殺す気が無いのでは?」
「同意いたします。どう考えても殺そうとしていない」
厳しい顔でサナが頷く。
本物の暗殺者を何度か相手にしたことがあるだけに、その言には説得力があった。
「話を戻すと、現場にいて影を見たのがモリィ一人だけというのが気になるんですよね。
飛び跳ねているなら、リアスやカスミも何か見たくらいはあってもよさそうなものですが」
「まあそうだな。特にカスミは目も冴えてっかんな」
ちらりとカスミを見てモリィ。カスミがうなずく。
「屋根の上を飛び跳ねていたなら、何かいた位のことは気付いたと思います」
「なので、その時既に"インヴィジブル・マローダー"が透明化なり擬態なりの視覚を誤魔化す能力を発動してたんじゃないでしょうか。透明だったからモリィにだけ見えたんです」
「なるほど」
ふうっ、と複数の人間が息をついた。
「そうなると打つ手がありませんね。ヒョウエ様に常時警戒して頂き、その間にリーザ様の《加護》でしらみつぶしに『声』を集めて頂く――くらいしか思いつきません」
「ヒョウエくんが魔力を供給してくれないと、同時に聞けるのは2、3街区ぶんくらいだから・・・まぐれ当たりを期待するのはかなり辛いと思う、サナ姉さん」
リアスがカスミを見た。
「カスミ、あなたたちの一族ならどうにかできないかしら?
ニンジャは情報を集めるのもお手の物なのでしょう?」
「・・・一族のものを駆り出せば、情報集めはできると思います。
ただ今回の場合だとそもそも目撃者がこの広いメットーで、それもどれほどいるかと言うことになってしまいますので、有益な手掛かりを得られるかどうかは・・・」
「だめかぁ。ちょっと期待してたんだけど」
「申し訳ありません、リーザ様。ニンジャと言えども人間ですので・・・」
複数の人間が溜息をつき、再び沈黙が落ちる。
「あー、しょうがねえなあ」
頭をボリボリとかいて、モリィがテーブルに突っ伏した。
意外そうな顔でヒョウエがそれを見る。
「何か心当たりがあるんですか?」
「心当たりっつーか、当てっつーか・・・絶対に行きたかないんだがなあ」
もの凄く嫌そうな顔。
全員が何とはなしに視線を集中させる中で、ヒョウエが口を開く。
「モリィ。お願いできますか」
「わーったよ畜生め。まあ、ほっとけないだろこれは」
大きな溜息をつくモリィに、全員が多かれ少なかれ頬が緩む。
「モリィのそう言う所、僕は大好きですよ」
「だからそういう事を口にするんじゃねえよこのスットコ!」
「あっはっは、痛い痛い」
顔を赤くしたモリィの拳が、
「本当について行かなくて大丈夫ですか?」
「心配性だな、お前はあたしのオフクロかよ」
「モリィを放っておくといつ爆発するかわからなくて不安なんですよ」
「本気で殴るぞ?」
「まぁまぁ、ヒョウエ様もモリィさんもその辺で」
目が据わるモリィをなだめるのはリアス。
屋敷の玄関先である。
「ヒョウエ様も真剣に心配してらっしゃるのですから・・・」
「真剣だから逆にむかつくんだよ! コイツ本気でそう思ってるって事だろ!」
つい、とヒョウエが目をそらす。
更にモリィの目が据わる。
それに気付いてか気付かなくてか、リアスがふっと胸を張る。
「それにたとえモリィさんが暴発しても私がついておりますわ。
ヒョウエ様におかれましては、大船に乗ったつもりでご安心下さいまし」
「・・・・・・・・・・・・・」
もっとモリィの目が据わっただけだった。
慌ててカスミがフォローに入る。
「ほ、ほらそろそろ上空の警邏に出ませんと。ヒョウエ様が警邏しておられれば、少なくとも被害者は出ないんですから」
「そうですね、それでは失礼します」
スタスタと妙に早い足取りで屋敷の中に戻っていくヒョウエ。
長居してなにが起こるかわからないほどには彼も愚かではない。
その後ろ姿をちょっと睨んだ後、モリィが振り向いた。
「チェッ、ったく、あいつはよ、人の気も知らないで無神経で・・・」
唇を尖らせてすねてる様にしか見えないとカスミは思ったが、もちろん口には出さない。
「まあいいや、それじゃ行こうぜ。さっきも言ったがしゃべるのはあたしに任せろよ」
「わかっておりますわ。餅は餅屋ですわね」
「はい、お任せします」
歩く事三十分。メットーを南北に走る中央の大通りから二つ東に入った通り。
それなりに賑わう繁華街のようだが、午前中の今は人通りも多くはない。
酒場の店員たちも目を覚まし、店の前の掃除や開店の準備を始めている。
そんな店の一つにモリィ達は近づいていった。
店の前を掃き掃除している若い男がそれに気付く。
「お客さん、開店はもうちょっと待ってくれよ。今時分で飲みたいなら通りの・・・」
モリィの右手が素早く動いた。
指を二本立てて拳を半回転。そのまま三回振って拳を握る。
「ああ、『常連さん』だったか。なら一杯飲んで行きな。値は張るがね」
「知ってるよ」
にやりと笑みを交わす。顎をしゃくってついてくるよう促し、モリィは店の扉をくぐり抜けた。二人も緊張しながらそれに続く。
小走りで追いかけて、リアスがモリィの耳元に囁いた。
「それではモリィさん、ここが・・・」
「ああ」
モリィも小声で返す。
「盗賊ギルドだ」
ちなみにモリィとリアス17才、ヒョウエ16才、カスミ12才です。
関係ないが「ふぁいやーまんずぎゃりー」と打つと「ファイヤー萬子ギャリー」と出てくる私のPC。なぜだ。