毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
バイオリンの悪魔の目がぎょろりと動いた。
『ハーディ・・・気付かれたぞハーディ・・・』
ひげの下の口が動く。闇の奥底から響いてくるような声。
(とうさん!? こんなところで!)
『ハーディ・・・お前のつとめを思い出せハーディィィィィ・・・!』
(ソアラとレアもいるんだよ!?)
『はぁぁぁぁぁでぃぃぃぃぃ・・・!』
「とうさん、ダメだとうさん・・・」
何かをぶつぶつと呟いて頭を抱えるハーディ。
バイオリンの悪魔は、彼以外の目にはただの木の彫刻のままだ。
「お兄ちゃん?」
「ハーディ・・・?」
気取られないように、自然に杖をたぐり寄せる。
だが一瞬遅い。
「きゃあっ!?」
「ソアラ!?」
座っていた妹をはじき飛ばし、ハーディの手が「悪魔のバイオリン」を掴む。
そのまま窓の木戸をはね飛ばして、少年の姿は外に消えた。
「ハーディ! ・・・くっ!」
即座に追おうとしたヒョウエだったが、足を止めてはじき飛ばされたソアラのかたわらにしゃがみこむ。
幸い怪我などはしていないようだった。
「大丈夫ですか? 痛いところは?」
「だ、だいじょうぶ・・・でも・・・」
「・・・」
まだ混乱している。レアも同様だ。
「お兄さんを連れ戻してきます。それまで部屋から出ないように。いいですね?」
「は、はい」
かろうじてレアが返事をするのを確認すると、ヒョウエも窓の外に飛び出した。
外に飛び出すと同時に飛行の呪文を発動する。
"
一瞬で路地に消えたが見間違いようがない。
屋敷にいる幼なじみの少女の顔を念じる。
(リーザ! リーザ!)
(ヒョウエくん? 言っておくけど・・・どうしたの?)
(怪人、おそらくインヴィジブル・マローダーが見つかりました。僕と同じくらいの年格好、こげ茶色の髪の少年です。頭のついた杖のような楽器を持っています。
現在「ほうれん草とカッテージチーズ」通り、"
(う、うん、わかった!)
モリィには"
既に接続が確立しているヒョウエとサナに比べるとやや時間はかかるが、確実にモリィ達に伝わるはずだった。
そこで接続を切って追跡に専念。三階の高さを維持しつつ、東に飛ぶ。
(・・・速い!)
通りを矢のように走り抜けていくハーディ。
最初に大きく離されたとは言え、ほぼ全力で飛行するヒョウエが未だに追いつけない。
それでも少しずつ距離を詰めていくうちに、奇妙なことに気付く。
通りを走り抜けるハーディに、誰も気付いていないのだ。
すぐ横を通り過ぎても風を感じる程度で、大半の通行人は存在自体に気付かない。
(やはり透明化してるのか? オーラ感知の呪文がなければ、僕も見つけられませんでしたかね、これは・・・・む)
通りの向こうからカスミが駆けてくるのが見えた。かなり後方にはモリィをかついで走るリアス。一人で先行してきたらしい。
(白の甲冑着てるリアスはわかりますけど、やっぱりカスミって何か特殊な修行してますよねえ・・・っ!)
カスミがヒョウエを視認した。
直後ハーディがカスミとすれ違い、カスミが驚いた顔になる。
そしてその一瞬後、ハーディは東西に走る「ほうれん草とカッテージチーズ」通りから、南北に走るノーマン司祭通りを北に曲がった。
舌打ちして地上のカスミに手を伸ばす。
「きゃっ!?」
カスミの体がふわりと浮いて、ヒョウエの腕に収まった。
そのまま杖の前に乗せて急旋回。
「二人を待ってたら見失いかねません。このまま追跡を続けます!」
「は、はいっ!」
頷くカスミの頬が僅かに赤い。
そのまま二人は飛んだ。
「先ほどのが怪人だったのですか!?」
「む・・・やはりカスミにも見えなかったんですか?」
「はい。念のために透明化を見破る術も使っていたのですが」
飛行して追う二人。
いまや距離は100mを切っている。
通りの先の方、走るハーディを指さす。
「あの辺にいますが、見えますか?」
「・・・見えません。周囲の人の動きで何かいるのはわかりますが」
目をこらすがやはりカスミには何も見えない。
ヒョウエも、この頃には自分が見ているハーディは彼の形をした霊気であり、ハーディの肉体自体は見えていないことに気付いている。
無言で速度を上げる。
75m、50m、25m・・・いよいよ距離が詰まる。
「術で捕縛します。援護を」
「かしこまりました」
高度を下げ、右手を伸ばす。
「っ!?」
七重八重に絡みつく、不可視の念動の糸。ハーディの動きが止まった。
同時にカスミが飛び降りてクナイを抜き、降りてきたヒョウエをかばう位置に立つ。
「"
呪文を発動し、ヒョウエがハーディにゆっくりと近づく。
魔力を分析する呪文の効果は、ハーディの体の中に明白な魔力の核・・・安定化したコアがないことを示していた。
周囲がざわつき始めた。いきなり空から降りてきた魔法使いと小さなメイド。
ただ、彼らにはハーディの姿が見えないために何をしているのかは理解出来ない。
それを横目でちらりと見て、再度念動の手応えを確認する。
怪人だけあって高い魔力を持っているようではあったが、ヒョウエの術を弾けるほど並外れたものでもなければ、ムラマサのように魔力を喰らう力を持っているわけでもない。
「カスミ、これから彼のコアを安定化させて、引き抜いてみます。
うまく行けば怪人化を解除できるはず」
「お一人でですか? 危険では」
「大丈夫ですよ。どのみち安定化は一人ででしかできませんし」
「ですが・・・」
心配そうに見上げてくるカスミの頭にぽんと手を置いてにっこりと笑う。
軽く撫でた後手を離し、振り向いて左手をハーディの体に当てた。
その時。
「え?」
ぎょろり、と悪魔の目が動いた。