毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「こんな世界なんて」
03-14 偽りの王都


 

「神様が何で世界と人間を作ったかって? さあねえ、寂しかったんじゃないかな」

 

 

                          ――無名の旅の神官――

 

 

 

 

 

 気がつくと、ハーディが消えていた。

 周囲の通行人たちも、何事も無かったかのように流れている。

 さらに夕暮れ時だった空は昼とも夕方とも、くもりとも晴れともつかない、うすぼんやりとしたものになっていた。

 

「ふむ。となると・・・」

「ヒョウエ様、これは一体?」

「カスミ!?」

 

 ヒョウエが驚いて振り向いた。

 今まで立っていた同じ場所に、やはり困惑した顔でカスミが立っている。

 

「カスミも一緒に・・・? しかし、この状況を考えるとそれしか・・・」

「あの、できれば状況を説明して頂けるとありがたいのですが」

「おっと、すいません」

 

 考え事に没頭してしまうのは我ながら悪い癖だと思いつつ、以前ダンジョンコアに取り込まれた事をカスミに話す。

 

「規模が違うとはいえ、ダンジョン・コアと怪人(ヴィラン)のコアは同じもの。神の想念の泡です。

 同じ事が起きてもおかしくありません。ただ、接触した僕だけじゃなくカスミまで飲み込まれたのは少し意外でしたが」

「ではここは王都の通りそっくりのなんというか、作られた世界と言うことでしょうか。この人々も?」

 

 やっぱり理解が早いなと微笑みつつヒョウエが頷く。

 

「多分そうだと思います。どういう理由でそうなったのかはわかりませんが」

「では?」

「ええ。とにかくコアの中心にたどり着いて、安定化させます。

 それがこの世界から脱出する、今のところ唯一の方法でしょう。ついてきてください」

 

 身を翻し、歩き始める。

 カスミがとてとてとついてきた。

 

「そちらにコアがあるのですか?」

「いや、適当です。彼の家がそっちにありますからね。

 ここは王都そっくりだけど王都じゃないから、どっちに進んだら中心に向かうかはわからないし、多分どっちに進んでも中心にはたどり着けるんです」

「そういうものですか・・・」

「なにぶん前例が少ないもので。本でも具体的な事はほとんど書いてないんですよね」

 

 なるほどと頷いた後、カスミが少しためらってから口を開いた。

 

「そのですね、ヒョウエ様」

「はい」

「今彼とおっしゃいましたが、インヴィジブル・マローダー・・・いえ、怪人の事をご存じなので?」

「あー・・・そう言えば説明していませんでしたよね」

 

 少し重い溜息をつきつつ、ヒョウエはハーディのことを説明しだした。

 

 

 

「そうでしたか・・・話を聞く限りでは本当に普通の方にしか思えませんが」

「悪人だから怪人になる、と言うわけではありませんからね。

 ただ、精神的に異常のある人がそうなる確率は高いようです」

 

 無人のノーマン司祭通りを南に歩きつつ、二人が話す。

 

「もしくは一時的にでも理性が飛んでいたり、生死の境にいたり、病弱だったりして抵抗力の・・・うーん?」

「どうかなさいましたか?」

 

 歩きながらヒョウエが周囲に目をやる。

 

「いや、さっきの話のダンジョンコアではしばらく歩くと過去の情景が・・・」

 

 言葉の途中で周囲が白く染まった。

 

 

 

「この馬鹿が! 何度間違えれば気が済む!」

 

 ひげ面の男が10才くらいの少年をひっぱたく。少年の髪はこげ茶色。

 

「ご、ごめんなさい父さん・・・」

 

 打たれた頬を抑えて少年がうつむいた。

 その横には「悪魔のバイオリン」。

 

「もう一度だ! 最初から!」

「は、はい」

 

 語気荒く命じる男の右手は激しく震えている。手の甲から肘にかけてひどい傷跡。

 かつては腕利きの楽士だったのかも知れない。

 その手で人を感動させる音色を紡いでいたのかもしれない。

 だが今その手は、楽器を弾く弓を持つ事すらできそうになかった。

 

 情景が変わった。

 みすぼらしい一室、中央に12才くらいのハーディが立っている。

 邪悪な笑み。別人かと思うほどの。

 

 伸ばした手の先には異臭を放つ白煙を上げる、なにかどろどろしたもの。

 どこか人の形をしているようにも見える。

 布きれや、靴の皮の切れ端のようなものがどろどろした何かに浮かんでいる。

 

 後ろには涙を浮かべて震える赤と青の姉妹。

 邪悪な笑みを浮かべたハーディが振り向く。

 びくっと、姉妹が身をふるわせた。

 

「が・・・がが・・・!」

「お兄!」

「お兄ちゃん!?」

 

 ハーディの動きが止まった。

 苦悶の表情で頭を抱え、その場に崩れ落ちる。

 ソアラとレアが駆け寄った。

 

 

 

 ハッと二人が白昼夢から醒めた。

 顔を見合わせる。

 

「今のは・・・」

「ハーディの過去の記憶、ですね」

「あのドロドロに溶けていたのはもしやとは思いますが・・・」

「流れからしてハーディのお父さん、でしょうか? 断定はできませんけど」

 

 言ってからしまったと思った。

 カスミの顔から血の気が引いている。

 

「・・・」

 

 いかに忍び、いかに才能豊かといえども、まだ12の少女である。

 ずっとリアス付きだったならば、修羅場や無惨な死体に接した経験が豊かというわけでもないだろう。

 

(配慮が足りませんでしたね)

 

 一瞬目を閉じて、カスミの前にしゃがみ込む。

 

「すいません、カスミ。気遣いが足りませんでした」

「いえ、そんな・・・きゃっ」

 

 しゃがみ込んだまま、カスミを抱きしめる。

 その体は僅かに震えていた。

 抱きしめたまま、優しく肩を叩く。

 

「大丈夫、大丈夫ですよ、カスミ。僕がついてます」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 カスミは何かを言おうとしたが、結局口にはしなかった。

 目を閉じて、ヒョウエの抱擁に身を委ねる。

 しばらく二人はそうしていた。

 

 

 

 カスミの震えが止まってしばらくしてから、ヒョウエは抱擁を解いた。

 どちらからともなく身を離す。

 カスミが少し頬を染めて頭を下げる。

 

「その、ヒョウエ様。ありがとうございました」

「いえ、僕も無思慮でした。ただ、恩に感じてくれるなら一つお願いを聞いてくれませんか」

 

 うん?とカスミが首をかしげた。

 

「構いませんが、なんでしょう?」

「今の事はリアスにはないしょにして置いて下さい。リアスを差し置いてカスミを抱きしめたとなったら、嫉妬に狂った彼女に斬り殺されかねませんからね?」

 

 ヒョウエのウィンク。

 

「・・・はい、かしこまりました」

 

 一瞬唖然とした後、カスミが可憐に微笑んで頭を下げた。

 

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