毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
その後も何度か白い光が走った。
流れる情景のほとんどがリアス絡みだったが、指摘はしなかった。
それでも自覚はあるのか、カスミはますます身を縮こまらせていたが。
やがて何度目かの白い光が走ると、微妙に雰囲気が違う場所に出た。
「ここは・・・貴族の館のようではありますが」
「ニシカワのお屋敷ではありませんね。私が覚えてない時代のお屋敷という可能性もありますが・・・」
首を振りつつ歩き始める。
しばらく歩くと、扉が光っていた。
「・・・ここに入れと言うことでしょうか?」
「これまでのそれとは違うと言う事かもしれませんね」
頷きあって、ヒョウエが扉を開ける。
白い光が走った。
部屋の中は館の主の居間だった。
内装からしてそこそこ裕福な貴族の家。
館の主人らしい40がらみの男、息子らしい14才ほどの金髪の少年。
テーブルを挟んで庶民らしい20才ほどの若い痩せぎすの男。
少し離れた所に召使いらしき赤髪の若い女性が座っていた。
当主らしき男が頭を下げる。
「頼む、ゲイロ。お前しかおらんのだ。うんと言ってくれ」
「・・・若様が手をつけた女性を引き取れというのですか」
「デイビットには未来があるのだ! 召使いに手を出して孕ませたなどと!」
黙って聞いていた少年がたまりかねて口を挟んだ。
「嫌だよ父さん! 僕は彼女を愛しているんだ! 一緒にいたいんだよ!」
「黙れ痴れ者が!」
「あうっ!」
当主が息子に平手打ちを食わせた。
息子は頬を手で押さえて黙り込んでしまう。
(どこかで見たような・・・若い男の方も)
ヒョウエが首をかしげている間にも話は進む。
「わかりました、この話お受けいたします」
「おお、やってくれるか! この借りは忘れないぞ! ユーリもそれでいいな?」
こくん、と赤髪の女性が首肯する。
「ユーリ!」
悲痛に叫ぶ少年。赤髪の女性、ユーリがそれを見やった。
その顔にはどんな表情も浮かんでいない。
「その辺にしておかれませ、坊ちゃま。あなたとのことなど所詮は遊びです。
まあ色々と頂きまして懐が温かくはなりましたが」
「そんな・・・!」
淡々と告げるユーリ。
少年は気付いていないが、膝の上で握った拳が震えている。
だがゲイロの方はそれに気付いたようだった。
「そうかそうか、ユーリはわきまえておるな! お前を手放すのは惜しいぞ!」
こちらも気付いてないのだろう、上機嫌の当主。
ユーリが無言で頭を下げる。
「うぐっ!」
「ぐうっ!?」
その瞬間、金髪の少年とユーリが短い悲鳴を上げて身を折った。
少年は胸を、ユーリはおなかを押さえている。
「む?!」
顔をしかめていたヒョウエが目を見張った。
カスミも僅かに眉をひそめている。
「ヒョウエ様、今魔力が・・・」
「カスミも感じましたか」
光の術専門のカスミにも、僅かながら魔力感知能力はある。
逆に言えばそれは、今起きた現象が並外れた魔力を放出していたと言うこと。
ヒョウエが"
その瞬間、理解した。
少年と女性の中の胎児に飛び込んだ魔力の塊、それが《想念の泡》であること。
ゲイロはハーディの父、デイビットと呼ばれた少年は吟遊詩人ジャリーであり、女性の腹の中の子供はハーディであると言うことを。
「!」
女性を中心として光が広がる。
周囲の光景が歪んで消え、何もない真の闇になった。
その真の闇の中にぽつんと二人、ヒョウエとカスミ。そしてサッカーボールほどの光の塊がゆらゆらと揺らめいて浮いている。
「これは・・・お話にあったダンジョン・コアの?」
何もないのに足元に確かな感触。
そのギャップに戸惑いながらもカスミがヒョウエを見上げた。
「はい。少なくとも非常に良く似た状態ではありますね。光がかなり小さいですけど、これはダンジョン・コアと怪人のコアの内包する魔力のスケールの差と見るべきでしょうか」
言いつつ、ヒョウエが無造作に光の玉に歩み寄っていく。
「今からコアを安定化させてみます。
強い意志で押さえ込むのがコアを安定化させるコツのようですので、僕が失敗したらお願いします」
「ヒョウエ様!」
「はい?」
意外な強い調子に振り向くと、カスミがヒョウエをきっ、と睨んでいた
「お言葉ですがヒョウエ様、戦いの前に不吉は禁物です。
意志と意志の戦いなのであれば尚更のこと。自分が失敗したら後がない、くらいの気持ちでお臨み下さい」
「・・・」
目を丸くした後破顔一笑する。
「なるほどリアスが妹のようにかわいがる気持ちがよくわかりましたよ」
「いえその、そういうことではなく!」
少し頬を染めながらも語気は強い。
笑いながら再び背を向けた。
「わかってます。僕が必ず安定化させてみせますよ。二回目でもあることですしね」
「はい、その意気です」
後ろからの視線を感じつつ、杖から手を離す。
笑みを浮かべた頬を両手で叩いて気合を入れ直した。
(・・・よしっ!)
精神を集中させ、ゆらゆらと揺らめく光を両手で挟み込む。
白い光が走った。