毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
民衆たちの歓声が爆発する。
「やりましたわ!」
「はい、さすがです」
それはリアス達も同じことだ。
「・・・」
「いや、待て・・・おかしかねえか?」
その中で、付き合いの長いサナとモリィだけが違和感に気付いた。
一瞬遅れてジャリーも異常に気付く。
「何がですの・・・あっ!?」
「!」
言いながらリアスとカスミも気付いた。
青い鎧が、ヒョウエが戦闘態勢を解いていない。
『ぐはははは! はははははははははは!』
高笑い。
映像を逆再生するかのように悪魔が再生する。
ものの数秒で、山のような巨躯が復元していた。
『ここは精神世界だ! 体を砕こうとも精神がある限り再生する! そしてこの俺が! 生まれて以来闇の中に閉じ込められてきた俺の怨念が! こんな事で消えるものか!』
(魔力量は減少している・・・削って削りきれないわけではないが)
魔力知覚で相手の内包する魔力量を量るヒョウエ。
だがまがりなりにも相手は神のカケラ、ヒョウエに"
「・・・」
モリィが険しい顔で眉を寄せる。
その足元でハーディがピクリと動いた。
巨人と巨魔の殴り合いが続く。
とは言っても巨魔の攻撃はほとんど効いていない。
巨人の拳に弾かれ、あるいは厚い胸板に当たってむなしく砕けるのみだ。
だが。
「!」
青い鎧が足元を見てわずかに動揺した。
その隙を狙って繰り出された悪魔のパンチを右腕でガード。
青い鎧の目に赤い光が灯る。
「"
灼熱の視線が巨人と巨魔の足元を焼き払う。
王都の郊外、無人の田園風景と共に焼き払われたのは木の根のような無数の触手。
悪魔は青い鎧と戦いながら、密かに根を伸ばし、王都の人々の精神を喰らってその肉体を我がものにしようとしていたのだ。
『グググ・・・気付かれたか。だが次は地面の中を這わせてやるぞ。肉体を得られれば俺の勝ちだ・・・!』
「・・・」
青い鎧が無言で拳を握った。
巨人と巨魔との戦いは続く。
何度も巨魔が砕け散るが、そのたびに時間を逆行させたかのように復活する。
根を這わせるのを警戒しているのか、時折青い鎧が巨魔を持ち上げては投げつけ、可能な限り王都から遠ざけようとしていた。
それら全てをハーディは見ていた。
体?は街路に横たわったまま、不思議な事に意識は覚醒して周囲を知覚していた。
(あれは・・・僕に取り憑いていた悪魔・・・)
自分の中にいた存在だと一目見た瞬間にわかった。
(これで僕も奴から解放される・・・父さんから・・・ぐっ!?)
刺すような痛みが脳裏に走った。
(思い出すな。決して思い出すな。今まで通りの生活を続けていきたいなら)
どこからかそう言う声がする。
だが同時に別の声もしていた。
(思い出せ。思い出さなくてはならない。そうでなければ、一生後悔するぞ)
相反する声。
どちらが正しいのか判断が付かない。
どちらも正しい。
どちらも間違っている。
どちらも、どちらも、どちらも・・・。
(うううう・・・!)
意識のハーディが頭を抱えて唸る。
それをやめさせたのは巨大な悪魔の咆哮だった。
『俺を生んだのは奴だ! ハーディだ! 臆病者の奴ができない事を俺がしてやった!
奴が望んだとおり父親を消し、邪魔な妹どもも消そうとしてやったのに!』
がつん、と来た。
頭が割れるような激しい頭痛。
「うわあああああああああああっ!」
痛みで覚醒した。
意識が肉体?と同期し、横たわっていたハーディの額から血が一筋流れる。
周囲の人々が驚いたように話しかけるが耳には入っていない。
激しい頭痛をこらえながら、身を起こして彼方の戦いを見る。
『もう俺は自由だ! ハーディの影じゃない! ハーディを殺して俺が唯一の人格になるんだ!』
「させるかっ!」
青い鎧の激しい殴打。
文字通り山をも砕くそれがバイオリンの悪魔の顔面を打ち抜き、何度目かの崩壊を誘発した。
青い鎧が"
『グググ・・・ハハハハ・・・ハハハハハ! そこにいたか、ハーディ! 目を覚ましたな、ハーディ!』
「!?」
悪魔の視線がハーディを射貫く。ハーディがそれを呆然と見返した。
「僕が・・・僕が父さんを殺したの?」
『ハハハハハ! そうとも! お前が望んだ! だができなかった! だから俺が生まれたんだ! お前の代わりに殺してやったんだ! 代価をよこせ! 体をよこせ!』
うそだ、とは言えなかった。
それが真実だと理解した。
そうであることを既に知っていた。
「・・・・・・・・・」
ただ呆然と立ち尽くす。
『ハハハ! ハハハハ・・・ブゴォッ!?』
青い鎧の、両手を組んだ渾身のダブルハンマーパンチが悪魔の顔面を叩きつぶした。
「お前、少し黙れ」
怒気の籠もった青い鎧の言葉。
ハーディを見て軽く頷く。
(お前は俺が守る)
そう言っているかのように。
立ち尽くすハーディの肩を、ぽんとモリィが叩いた。
「なに、心配すんなって。ちょいと手こずってるがあいつは負けねえ。
あいつに任せておけばどうにかなるさ」
にっ、と笑みを浮かべて親指を立てる。
ジャリーも笑みを浮かべてそれに頷いた。
「もう君が心配することは何もない、少年。無事に帰って、妹さんたちを安心させて上げることだけを考えたまえ」
「・・・なんです」
「うん?」
ジャリーがハーディの顔を覗き込んだ。
うつむいて表情はよくわからないが、固く唇を引き結んでいる。
「少年?」
「だめなんです! 僕が・・・僕が行かないと!」
振り向いて、ジャリーを見上げるハーディ。
その目に籠もる意志の強さに、僅かだがジャリーが圧された。
「・・・!」
「すいません!」
ジャリーの手を振り払って駆け出すハーディ。
その先には今も地響きを立てて殴り合う巨人と巨魔。
「バカ、何やって・・・」
駆け出そうとしたモリィを、ジャリーの手が遮った。
「すまない、行かせてやってくれないかね」
「えぇ・・・?」
「何をお考えなのですか?!」
「・・・」
戸惑うモリィ。詰め寄るリアス。サナは無言。
カスミが静かに尋ねた。
「よろしいのですか?」
「男なら、走り出さなければいけないときはあるさ。
私たちにできるのは、その背中を見守ってやることくらいだ」
「・・・」
遠ざかるハーディの背中を見やりつつ、ジャリーはいつもの微笑みで答えた。