毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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四の巻「四つ辻の物語」
プロローグ「王宮の姉妹」


「泣く子と地頭には勝てない」

 

                          ――日本のことわざ――

 

 

 

 王都の北西、昼前の高級商店街。

 いつもの四人が大通りの歩道を歩いていた。

 (メットーを升の目に区切る17×17の大通りには車道と歩道がそれぞれ作られている。ちなみにオリジナル冒険者族(日本人)が作っただけあって、車道は左側通行だ)

 

 歩いているのは貴族や召使いが多いが、冒険者らしき人々もちらほらと見かける。

 とは言え彼らもそれなりに小綺麗な格好をしていて、ギルドの酒場の隅っこで万年赤板(最低ランク)をやってるような薄汚れた、あるいはガラの悪い連中はいなかった。

 

「存外に早く終わりましたねえ」

 

 ギルドから名指しで頼まれた貴族相手の厄介な依頼だったが、思いがけず早く完了して時間ができてしまっていた。

 

「まあこう言うこともあるだろ。どうする、この後は解散か?」

「そうですね。働きづめですし、半日休みにするのもいいでしょう」

 

 相変わらず、普通の(パーティ)なら数日がかりの案件を一日に数件という、非常識なオーバーワークを続けている毎日戦隊エブリンガーの面々である。

 

 ヒョウエは借金持ち、モリィは実家を買い戻すために貯金中。

 リアスは金銭的には困っていないが、武者修行のために怪物と戦うのは望むところ。

 カスミもそんな主の方針に異を唱えることはない。

 そんなわけで"インヴィジブル・マローダー"の騒ぎが終わった後、一週間で30を越える依頼を達成。その後一週間警備依頼につき、たった今それが終わったところだった。

 

「そう言えばモリィ達も青等級になったことですし、今日はお祝いでぱっとやりましょうか? 丁度その辺に美味しい料理を出す店が沢山あることですし」

「ああ、それはいいですわね! カスミの喜びそうな、甘い物があるところならなおよしですわ」

「いえその、お嬢様、わたくしは・・・」

 

 顔を赤くするカスミ。

 ヒョウエは微笑ましげに、モリィはにやにやと、リアスは愛でるような表情で。

 三者三様にカスミの様子を楽しんでいると、突然ヒョウエが帽子を深く被って顔を隠した。

 

「どうした?」

「そのまま話を続けてください。周囲から気取られないように」

 

 小声での指示に、モリィは頷くこともなく笑顔で会話を続ける。

 視線だけは鋭く、油断無く周囲に注意を払って。

 

「甘いのはあたしも食いてえな。リアスはここらへんでうまい店って知ってるのか?」

「え? ええ、そうですわね、確かお父さまに連れて行っていただいた"プラ・クリプ"という英雄譚をモチーフにした店が・・・」

「派手な店でございましたね。従業員がみな劇の登場人物のような格好をしていました」

 

 ぎこちないながらもリアスがそれに合わせ、カスミは如才なく相槌を打つ。

 

(・・・それっぽいのはいねえな。何があった?)

 

 回りから悟られないようにキョロキョロせず、視線だけを動かして周囲を確認する。

 

「そういやぁバラのジャムの揚げドーナツ、結局食わずじまいだったな。

 飯食った後、おやつに食いに行こうぜ」

「それは楽しみでございますね!」

 

 カスミに話しかけるように自然に首を動かし、後ろもちらりと確認するがやはりそれらしき脅威は見つからない。

 

(どうだ?)

(なんとも)

 

 笑顔を浮かべるカスミにアイコンタクトで訊ねてもみるが、やはり成果はない。

 もっとも強力な《目の加護》持ちのモリィが見つけられないものを、鍛えているとは言え人間の域を出ないカスミが見つけるのは難しいだろう。

 

(・・・ん?)

 

 そのまま歩いていると、程なく一台の馬車が車道の端により、一行と速度を合わせてゆっくりと併走し始めた。

 四頭立ての大きな乗用馬車。装飾も手が込んでおり、並の貴族や商人が使う代物ではない。

 

「・・・!」

 

 馬車の紋章を見たリアスが目を見開く。僅かに遅れてカスミも。

 首をかしげたモリィが口を開こうとしたところで馬車の窓から上品そうな女性の声が降ってきた。

 

「そこの術師、帽子を取りなさい」

「ハテ、ダレカトオマチガエデハ?」

 

 作り声でヒョウエがごまかそうとするが、声の主には一切の躊躇も容赦もなかった。

 

「帽子を取りなさい、ヒョウエ。私たちの顔を見て素通りするつもりかしら?」

「・・・・・・・・・・・・・・はい、姉上」

 

 大きく溜息をつく。

 観念したようにヒョウエが帽子を脱いだ。

 いつの間にかヒョウエたちの足も馬車も止まっている。

 馬車の窓から顔を出したのはくすんだ金髪の20才ほどの貴婦人だった。

 

「あら、まあまあまあ。年頃になって男の子らしくなってるかもと思ってたけど、とんでもない。もの凄い美人さんになったじゃないの、ヒョウエ?」

「勘弁してください、カレン姉上」

 

 ヒョウエが顔をしかめたところで馬車のもう一つの窓が開いた。

 

「兄様! ヒョウエ兄様!」

「久しぶりですね、カーラ」

 

 顔を出したのはカレンによく似た八歳くらいの少女だ。喜色満面に力一杯手を振っている。

 こちらには素直に笑顔を浮かべ、ヒョウエも手を振り返してやった。

 眼を細めてそれを見ていたカレンが頭を垂れて控えるリアスに気付く。

 

「あら、リアス卿。お久しゅう」

「お、お久しぶりでございます、カレン殿下、カーラ殿下」

「え」

 

 モリィがあんぐりと口を開ける。

 貴族社会には縁のない彼女だが、それでもこの国の王女の名前くらいは知っている。

 そして今更ながらに思い出したことだが、馬車の紋章はこの国の王家の紋章ととても良く似ていた。

 そんなモリィにちらりと視線をやってから、カレン――ディテク王国第二王女――は視線をリアスに戻す。

 ちなみにカーラは第四王女だ。

 

「家を出て冒険者になったと聞きましたが、まさかヒョウエと?」

「はい。武者修行も兼ねてヒョウエ様のお供を務めさせて頂いております」

「そう、弟を助けてくれてありがとう。今おつけになっているのが噂に名高い"白の甲冑"かしら? 眼福をさせていただいたわね」

「恐縮です」

 

 ちらり、とモリィとカスミに視線。

 それに気付いてリアスが二人を紹介した。

 

「カレン殿下、カーラ殿下。こちらがモリィ。"雷光のフランコ"のひ孫に当たる方で、当代の雷光銃の継承者ですわ。こちらはカスミ、私づきの侍女です。

 モリィ、カスミ、こちら第二王女カレン殿下と第四王女カーラ殿下でいらっしゃいます」

「よろしく、二人とも。それにしても"雷光のフランコ"とは。

 それに剣を下げているところを見ると、カスミの方も冒険者なのよね?

 冒険者族っぽい名前でニシカワ家に仕えているということは、ひょっとして噂に名高い"紅の影"の血筋のものだったりするのかしら?」

「お目もじ恐悦に存じます、モリィです」

「カスミです。ご慧眼、恐れ入ります」

 

 ややぎこちなくはあるが、モリィが礼儀正しく挨拶を返した。

 蓮っ葉な印象の彼女ではあるが、それなりの家の生まれであるから多少の作法は仕込まれている。

 一方でカスミはごく自然に貴人に対する礼を返した。

 カーラの相手をしてやっていたヒョウエが口を挟んでくる。

 

「カレン姉上のあだ名は『地獄耳』ですからね。いとこの中では一番こわい人ですよ」

「まあ、失礼ね」

 

 扇で口元を隠して笑うカレン。裏がありそうでもあり、なさそうでもある。

 

「ともかく久しぶりに会ったのだから乗りなさい。色々と積もる話もあるし」

「え!」

 

 カーラがパッと顔を輝かせる。

 

「あなた方もご一緒にどうかしら? 色々と弟の話を聞きたいの」

「は、はあ」

 

 リアスが戸惑い、モリィとカスミが目を見交わした。

 ヒョウエは困った顔。

 

「今これからですか?」

「私たちに一言も無しに姿を消して四年間音沙汰無し。あなたには説明責任があると思わない?」

「いや、僕も色々忙しくてですね・・・うっ」

 

 カーラが不安そうな顔でこちらを見ているのに気付き、ヒョウエのいいわけが途中で途切れる。

 

「乗りなさい、ヒョウエ」

「・・・はい」

 

 にっこり笑う姉のドスの利いた声と、妹の懇願の眼差しにヒョウエは屈した。




億が一この作品がアニメになったら、カレンの声優さんは甲斐田裕子さんにお願いしたい(何故)
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