毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第一章「一の辻・金板(ゴールドプレート)の男」
04-01 君の行いがいけないのだよ


「《健康の加護》? 悪い事は言わねぇ、冒険者はやめとけ。

 《健康の加護》持ちが冒険者として成功した例なんざ――ああいや、一人だけいたか」

 

                          ――元冒険者――

 

 

 

「兄様!」

 

 馬車に乗るとカーラが飛びついてきた。

 

「相変わらずカーラは甘えん坊ですね」

「兄様が悪いんだもの。四年間お話しもできなかったんだから!」

「はいはい、それは僕が悪かったですよ」

 

 カーラを抱き上げて、額にキスをしてやる。

 嬉しそうな顔をして、カーラがヒョウエの頬にお返しのキスをした。

 

 そのままヒョウエが六人がけの座席の御者側、カレンと正面から向き合う場所に座る。

 カーラはそのままヒョウエの膝の上に。ヒョウエの横にモリィとカスミ。カレンの右隣にはヒョウエとも顔なじみの侍女が座っている。

 リアスはヒョウエの横に座ろうとしたが、一瞬躊躇して結局カレンの左隣に座った。

 

「リアス卿はおやさしくていらっしゃるわね」

「そんなのではございませんわ」

 

 くすくすと、楽しそうな笑みを浮かべるカレン。

 

「皆様、そんな怖がらなくても大丈夫ですわ。取って食べたりしませんよ」

「はい、お姉さまはお優しいです!」

 

 満面の笑みでカーラ。

 そんなカーラの頭を撫でながらヒョウエが溜息をついた。

 

「そりゃカレン姉上はカーラにだけは優しいですからね。カーラはそう言う感想になるでしょうよ」

「あら、あなたの事も随分とかわいがって上げたと思うのだけれど?」

 

 面白そうに眼を細めるカレン。ヒョウエが笑みを浮かべる。

 

「ええ、『かわいがって』いただきましたとも、それはもう」

「???」

 

 微妙なニュアンスの違いを理解出来ないカーラがキョロキョロと二人の顔を見比べた。

 

「だいたい僕なんかに構ってる暇があるなら旦那さんでも捜したらどうです」

 

 この世界、20は嫁き遅れに足を突っ込みつつある年齢である。王侯貴族なら尚更だ。

 せめてもの反撃であったが、不用意な一撃には強烈なカウンターが待っていた。

 

「それがねぇ、あなたに振られてから、それ以来話が無いのよね」

「「えっ!?」」

 

 愕然、と言った感じでモリィとリアスの喉から声が漏れる。

 モリィとリアス、そして声を上げなかったカスミをちらりと見るカレン。

 

「・・・どこからそんな話を聞いたんです。陛下からですか、それとも父からですか」

「さてねえ。私は地獄耳だものね?」

 

 扇で口元を隠して目だけで笑うカレン。

 カーラはよくわからなかったらしく、ハテナマークを浮かべている。

 

「お姉さま、『ふる』って何ですか?」

「私とヒョウエが結婚することになってたのに、ヒョウエが嫌がったってことよ」

「ええぇっ!? お姉さまずるい! 私もお兄様と結婚したい!」

 

 腕を振り回して怒るカーラ。ずり落ちそうになるのを慌ててヒョウエが支える。

 

「安心しなさい、あなたも振られたから。あなたとの結婚話もあったのにヒョウエが嫌がったのよ」

「ちょ、カレン姉上!?」

「・・・・!」

 

 姉の言葉にショックを受けるカーラ。

 ヒョウエを見上げる目に、見る見るうちに涙が盛上がる。

 カレンの額に汗が噴き出した。

 

「やば、やりすぎた」

「やりすぎたじゃないですよ! どうするんですこれ?!」

「お兄様、カーラのこと嫌いなの・・・?」

「そんな事はありませんよ! カーラのことは大好きです!」

「そうよ、カーラ。今のは冗談! ヒョウエもお姉様もあなたの事は大好きなんだから!」

 

 泣きそうな妹を必死でなだめる姉と兄。

 残りの三人が何とも言えない目でそれを見つめ、侍女が溜息をついていた。

 

 

 

 二人の必死の努力の甲斐あって、何とかカーラは機嫌を直してくれた。

 こぼれそうだった涙もヒョウエがハンカチでぬぐってやっている。

 ただし。

 

「意地悪なこというお姉様なんか嫌い!」

「ああああああああ」

 

 ヒョウエの胸元にしがみつく妹は、頭を抱えてわかりやすく落ち込む姉に目もくれない。

 

「自業自得ですよ」

 

 溜飲を下げたヒョウエが悪い顔で笑った。

 その手は止まることなくカーラの頭を撫でてやっている。

 むふう、とカーラが満足の溜息を漏らした。

 

「ヒョウエお兄様は大好き! カレンお姉様と違って!」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

 

 カーラが大輪の笑顔でヒョウエの胸に顔を埋める。

 頭を抱えて悶え転がる姉にはやはり目もくれない。

 

(これを天然でやれるあたり、やっぱりカレン姉上の妹なんですねえ・・・)

 

 現国王には正室と2人の側室がいるが、カレンとカーラは第三夫人の生んだ同母姉妹だ。

 他に同腹の兄弟姉妹はおらず、年が離れていることもあってカレンはカーラを猫かわいがりしている。

 カーラも非常に懐いているのだが、今回は盛大に地雷を踏んでしまったようだった。

 

「その、大丈夫ですか、殿下・・・?」

「だ、大丈夫です。大丈夫ですわ・・・」

 

 頭を振ってショックを回復しようとするカレン。

 

「つーん」

「ううっ!」

 

 これ見よがしに視線を逸らしてみせる妹に追加打撃を喰らうが、大丈夫、まだ許容範囲。

 

「そう言えばあなた達、どうしてあんな所を歩いていたの? 依頼の絡みかしら?」

「そんな所です。守秘義務があるので具体的にはお話しできませんけど。

 後、僕以外の三人が赤から青等級に上がったのでお祝いにその辺の店で食事でも、と考えてたんですよ」

「まあ」

 

 カレンが目を僅かに見開いた。隣に座るリアスに視線をやる。

 

「私の記憶に間違いがなければ、確かリアス卿が冒険者になったのは一月ほど前でなかったかしら?」

「は、はい。おっしゃるとおりです」

「凄いですね。赤等級から上がらずに終わる方も多いのでしょう?」

「おおよそはヒョウエ様のおかげですわ。私などまだまだです」

「はいはい、ご謙遜。毒龍(ヒドラ)や怪人と渡り合った当代の『白のサムライ』が何をおっしゃいますかね」

 

 ヒョウエが笑いながらからかうと、リアスは頬を染めて俯いてしまった。

 

「お兄様、ヒドラってなに?」

「あそこの建物と同じくらい大きくて、九本の首があって毒を吐く、怖い怪物ですよ」

 

 説明してやると、カーラは目を輝かせた。

 

「すごーい! さすがリアス卿は『白のサムライ』の後継者でいらっしゃるのね!」

「恐縮です」

 

 素直な賛辞に、今度ははにかみ笑いを浮かべるリアスである。

 

「さて、それじゃその時のことを話してあげましょうか・・・」

 

 

 

「かくして怪人は打ち倒され、妖刀は白のサムライの振るう剣によって真っ二つにされたのでした・・・めでたしめでたし」

 

 ヒョウエの語りが終わり、ぱちぱちぱち、と馬車の中に拍手が響いた。

 えぐいところやニシカワ家の内情、「青の鎧」の活躍などは抜いて、ヒドラ退治と怪人退治の下りをざっと語ったが、とりわけカーラには好評だったようだ。

 目を輝かせて拍手し、リアス達に対する目もこれまでとは随分違うものになっていた。

 

「相変わらず・・・いえ、随分と上達したわね」

「お褒めにあずかり恐悦至極」

 

 茶目っ気たっぷりにヒョウエが礼をしてみせると、カレンがクスクスと笑った。

 

「そう言えば毒龍(ヒドラ)で思い出したけど知ってる? 今ディテクに『星の騎士』が来ているらしいのよ」

「えっ!?」

「本当ですか?」

「マジかよ、星の騎士ってあれだろ、ライタイムの金(等級)だろ? 一体全体何で・・・あ、申し訳ありません」

 

 思わず素が出たモリィが慌てて頭を下げる。

 

「構わないわ。私たちだけだもの――理由は判らないわ。でもちょっと前にトラルまで来てたらしいし、もうすぐメットーに来るんじゃないかしら?」

「うーん・・・」

 

 西のライタイム王国は東のディテク王国と並ぶ、大陸の二大国家の一角だ。

 ディテクの更に東方には謎めいた帝国アグナム、南方には八人の大魔道士が統べるゲマイ魔道共和国、北方の草原にはダルクと呼ばれる部族制の騎馬遊牧民の国がある。

 トラルはディテク第四の都市で、メットーの西十日ほどの所にあった。

 

 そして大陸全土でも十人いない金等級冒険者の一人が、今名前の上がった『星の騎士』グラン・ロジストだった。

 「星をまとった冒険者」「盾の英雄」「騎士の中の騎士」「守護者」。

 無数の二つ名を持ち、神より賜った金剛不壊の盾を持つ男。

 そして歴史上唯一、強力な《加護》を持たずに金等級まで上り詰めた冒険者。

 

 授けられる《加護》で最も多いのは《健康の加護》というのは前述した。

 彼の《加護》もまた、何の変哲もないその他大勢と同じ《健康の加護》。

 冒険者としては大成しないと言われる中で、彼は自らの技量と機転で名を上げ、高潔な人格とカリスマで人を惹きつけ、大部隊の冒険者グループをまとめている。

 

 そして百二十年前、一時はライタイムを滅亡の縁に陥れた「真なる毒龍(ヒドラ)」を討伐したことによって、彼は伝説となった。

 ライタイムの貴族位を授かり、それでいながら今も怪物や犯罪者と戦っている。

 金等級の中でも最も尊敬される英雄。全ての少年の憧れ。それが「星の騎士」だった。

 

「あれ? お兄様、でもその人が真なるヒドラを討伐したのが百二十年前なんでしょ? リアス卿みたいに代々継承者がいるの?」

「いいえ、彼は特別です。自分を磨いた彼は《加護》も極めています。《健康の加護》が極まると、どうもほとんど歳を取らなくなるらしいんですよ」

「すごい! エルフみたい!」

 

(間違ってもカーラをナパティには会わせられませんね)

 

 純真無垢な妹の夢を壊してはならないと固く決意して、ふと周囲の異常に気付く。

 

「あれ? どこへ向かっているんです? 王宮とは道が違いますよね?」

 

 いやな予感を覚えつつ姉に尋ねると、口元を隠したカレンが目だけでニマァと笑った。

 

「もちろんジュリス宮殿よ。叔父様にも久しぶりに会わせて差し上げたいしね。

 おっと、逃げようとするのは無しよ。あなたは私たちに説明をしなきゃならないんだから。その場所がたまたまあなたの実家と言うだけで」

「はかったな! 姉上、はかったな!?」

「ほーっほっほっほ!」

 

 顔色を変えるヒョウエ。扇で口元を隠したまま、カレンが高笑いする。

 残りの五人――カーラすら含めて――が、呆れた顔でそれを見ていた。




ディテク→ディテクティブ・コミックス(DC、スーパーマンの版元)
ライタイム→LYTIME→TIMELY(マーベルコミックスの前身)
アグナム→AGNAM→MANGA
ゲマイ→GEMAI→IMAGE (アメリカ第三位のコミック会社)
ダルク→DALK HORSE(アメリカ第四位のコミック会社)
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