「
同室の彼女にわくわくした心で質問を投げる。
「どうせサークル長あたりが似たようなの持ってくるからいらないでしょ。それに
「むう…」
淡々と冷静に返された。けれど確かにって感じではある。
明日はわたしたちのサークルの懇親会を兼ねたキャンプがある。なので今は寮の同室の友達である奏と一緒に荷造りの最中だ。
奏はご両親が元々アウトドア好きということもあって、何度かキャンプの経験があるらしい。反対にわたしは全くの初めて。というわけで色々と教えてもらいながら荷物を詰めている。
正直、もうこの時点で楽しい。
「でも意外だったなぁ」
「何が?」
荷物を詰めながら問いを投げる奏。
「奏がキャンプしたことあるっていうの。あんまりイメージわかなかったから」
「そう?」
「うん。どっちかっていうと部屋でずっと本読んでるイメージあったから」
奏はいつでも片手に本を持って知識と対面している。もしくはパソコンと向き合って事務作業なり、レポートなりをやっている。
そんな姿ばかり見ているから、アクティブな奏というものに想像がつかなかった。
すると奏は
「あー…」
と、納得したように声を伸ばした。
「まあ確かにそうかもね。経験があるっていっても本当に昔だし。高校上がってからは忙しくなったせいであんまり行かなくなったし」
今度はこちらが納得した。道理であんまり想像がつかなかったわけだ。
「けど楽しかったのは覚えてる。今でもそう思う。いつもと違う場所、いつもと違う食事、いつもと違う暮らし。新鮮なことばかりで、ずっとワクワクが止まらなかった。自然の中は癒しに溢れてて、私の心をリフレッシュさせてくれた」
古い本のページをめくるように、奏は思い出のひとつひとつをかみしめる。
伏した目の奥には、遠い遠い記憶が映画のフィルムのように巡っていることだろう。
「だから私も実は楽しみなの、久しぶりのキャンプ。大人数は初めてだし、それに…」
そこで奏はわたしの方に目線を流した。
「玲那と一緒に行けるっていうのもあるしね」
どきりとした。心臓の跳ねる音が聞こえた。
それはすぐにわたしの心に熱をもたらした。
奏の唐突な言葉に、照れがふつふつと湧き上がってきたせいだ。
「わたしも!奏と一緒に行けるの嬉しい!」
そう言うと、奏はふっと笑った。
「じゃ、荷造り早く済ませて、今日は早めに寝ないとね」
うん、と元気よく返事をする。
明日のキャンプが、より一層楽しみを増した。
そしてわたしたちは、各々の荷造りに戻る。
「あ、そうだ。ねえねえ奏」
ん、と声だけで奏は返事をする。
「虫除けスプレーって、やっぱり要りそう?」
「あー…夏だし要ると思う。虫すごいよ」
うげぇ、と苦虫を噛み潰したような声が出た。虫は大の苦手だから。
「わかった…どこあったっけ」
と、探し始めようとしたところで奏が
「はい」
と瓶を差し出してきた。
それはピンクの小さな瓶。ボトル部分にはブランド名がプリントされていて、キャップは花束のような形をしている。
だが当然ながら、この瓶の中身は虫除けなんかじゃないことは知っている。
「これ、奏がいつもつけてる香水じゃん」
笑って返すと、奏は片眉をぴくりと上げて、
「あら、だから虫除けよ?」
と悪びれることもなく、そして冗談めかした様子もなく返した。
そしていかにも悪戯な笑みを浮かべて、彼女は続けた。
微笑の中で、奏の目のその内奥には、その言葉に一切の揶揄のないことを秘めていた。
ゆえに続く言葉の意味を、理論を一足飛ばしにして理解してしまった。
「
明日のキャンプ、どうなってしまうんだろう。
最後ちょっと布川っぽさあるよね