意外にも似合っていて女子以上の注目を浴びてしまう。
その時の恥ずかしいけれど嫌ではない気持ちが忘れられない中、ある日「治験」に協力することになり…。
ほぼエロなし、あくまでも二人の「一時の体験」として軽い感じになるよう書きました。
単行本の文化祭話を読んで書かずにはいられませんでした。
書き物自体が初めてなので拙い文章と所々の解釈違いはご容赦頂ければ幸いです。
クラスの女子の策略によって、文化祭の喫茶店でメイド服を着ることになってしまった男子たち。中でも「かわいい」と持て囃されたのはゆうたとみなとの二人であった。二人は、このときのなんとも言えない感情を文化祭が終わって数日経っても忘れられずにいた。
――――――
無事に自分たちの出番も終わり、二人は更衣室で着替えながらこんなやり取りをしている。
「やっと終わった…さっさと着替えよう…」
「うん、けど少し名残惜しいような…」
「お、おい、みなと…目を覚ませ!!」
一方、まひろも少し遅れて着替えようと更衣室に向かっていた。
「さぁてオレも着替え~」ガラッ
「「ひゃん!」」
「おわっ!……って今の、男子だよな…?」
~~後日、研究室にて~~
なゆた「―――ということがあったのです」
ちとせ「フム…興味深い…ちょっと協力してもらおうか」
――――――
本音では、ゆうたも着替えるときに妙な名残惜しさを感じていた。そう、もう一人の"かわいい"自分から普段の自分に戻ってしまうような、寂しいとは少し違う言い表せないそれを。
実際、文化祭から一週間程経った今も、持て囃されたときの高揚感と羞恥心が入り混じった妙な感情を忘れられずにいた。
ある日、ゲームの話やらクラスの女子で誰が一番かわいいかという他愛もない話をしながら下校していたゆうたとみなとであったが、白衣を着たいかにも科学者然とした女性に突然呼び止められる。
「君たちが、ゆうた君とみなと君かな?」
「は、はいそうですけど、お姉さんは…」
「ある研究をしている者…というのは格好を見てしまえば当たり前かな。そうそう、まひろちゃんの知り合いといえば君たちにも分かるかな?」
実は、ちとせは身体測定の際にまひろのデータを収集するために保健医として学校に入ったことがあるが、女子担当であったため男子である二人とは初対面である。
「緒山の…」ゴクリ
まさに今、クラスの女子で誰が一番かわいいかという話題で出ていた名前だ。緒山まひろは、非の打ち所がないその見た目はもちろん、端々に見せる男子のツボを捉えた仕草とそれでいて他の女子とは違ってどこか親しみやすく壁のない態度から、クラスの男子たちには大人気であった。
「さて、君たちにちょっとだけ協力して欲しいことがあるんだけど、どうかな?」
「「…」」怪訝な様子で顔を見合わせる二人
「もちろん報酬も弾む。それに…もしかしたらまひろちゃんとの気持ち的な距離が縮まる…かも?ある意味ね」
「「!?」」
男子中学生が憧れの"女子"の名前を出されて「距離が縮まる」と言われてしまえば興味を持たないわけがない。
「内容次第なら…」
「ぼ、僕もそれ次第で…」
「これを飲んでほしいんだ。大丈夫、"悪いこと"は起こらないのは保証するよ。万が一、"何か"が起きても次の日には治るはずだ」
その科学者とやらと名乗る女性は栄養ドリンクのような見た目の瓶を二人に差し出した。
「君たちの人生がおしまいになることはないから怖がることはないよ(…たぶん)」
その一言もあってか、覚悟を決めたようにグイッと一気飲みするゆうたと、それを横目に見て決心を決めて飲み始めるみなとであった。
「何も起こらないぞ…?」
「そうだね」
少し拍子抜けしているようなやり取りをする二人。
「まあまあ、とりあえず今日は普通に過ごして普通に寝てくれて大丈夫。あ、そうそう、万が一"何か"が起きたらこの紙袋を開けるといいよ」
何かが入った紙袋を二人に手渡すちとせ。
(フム、とりあえず…経過観察といこうかな)
――――――
翌朝、ゆうたは目が覚めるとどこか普段と違う感じがしていた。
「ふわぁ~あ…さ…か、ん?声が…それに俺のシャツってこんなに伸びてたっけ」
「パンツの中も妙にスースーするような…」
違和感を覚えながら半身を起こすと、ベッドの横の窓ガラスには自分ではないけれど見覚えのある姿の"女の子"が映っていた。
それはまさしく、文化祭のときに女子に面白がってウィッグを被せられた自分だった。違うのは、メイド服ではなくサイズの合わない男物のシャツとトランクスを着ていることだが。
あることが頭によぎったゆうたは、まさかと言わんばかりに大慌てでトランクスの中をのぞく。
「ついてない!!」
ってことは…
「女子になってる!?!?!?!?!?」
一体何が起こったのか自分でも理解できていないゆうたであったが、ある一言をふと思い出す。
(「万が一、"何か"が起きたら―――」)
一心不乱に紙袋の封を解く。
「…は?女子の服?」
「俺は男だ、もうあんな格好は二度と…」
(―――「かわいい~!」「全然似合ってるよー」)
「ま、まあこの体では何も着ないわけにもいかないよな…それにもしこのまま鏡なんて見たら」ゴクリ
男女の服の構造の違いに苦戦しながらもなんとか手探りで着替えた後、ふと窓ガラスに映った自分を見ると…。
「か、かわ…………
いや、俺は男だ!!何をやってるんだぁ…」
「って、そういや今日みなとのやつとゲーセン行く約束してた…」
「これで行く、しかないか…」ゴクリ
~~ショッピングモールにて~~
「お前、まさか…みなとか?」
「うん…」
「これって…昨日の変な薬のせい、だよな」
「だろうね…」
「と、とりあえずゲーセン行こうか…」
メイド服というコスプレではない、れっきとした"女の子"の姿になった友人をみて少しかわいいと思ってしまったが、決してお互い口には出さない二人であった。
「見て見て!あの娘たちかわいい~!」「姉妹かな?」「お友達かな?」
思わぬ注目を浴びてしまい、赤くなった顔を俯けながら歩いている二人。二人は文化祭のときに感じたあの感情を再び体験していた。
――――――
「相変わらず女の子は買い物が長いなぁ…」(といいつつ最近は一緒に楽しめてしまっているオレがいる)
…「!?」
「どうしたの?お兄ちゃん」
「い、いやー、なんでもー…」アハハ
(少年たちよ…趣味に目覚めてしまったかぁ…!!…あれ?にしては胸も少し…気のせいか)
――――――
~~「女子限定!盛り映えシールコーナー!」~~
「な、なあみなと、せっかくこんな姿なんだし、入ってみないか…?」
「そうだね」
「…これは普段入れない未知の世界への探検だからな!!」
「そ、そうだそうだ」
『それじゃ撮るよぉ~! 3・2・1☆』
『フレームとスタンプを選んでねっ』
果たして興味本位でのただの探検なのか、それは二人にもわかっていなかった。
――――――
「さすがに寝るときは、な」
その体に似つかわしくないサイズの男物のシャツとトランクスに着替えるゆうたであった。
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ガバッ
「良かった、ついてる…夢か?」
「でも、そんなに悪くなかったな…また………いやいや!何考えてるんだ俺は」
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(どうやら、あの薬の短期版の治験は成功だったようだね)
部屋の隅に無造作に置かれた紙袋の底に入ったメモにはこう書かれていた。
『また協力する気分になったらここに連絡してくれたまえ!―――』