きんいろモザイク ~plus α Road Days~ 作:T93
前回のあらすじ。しのが風邪をひいた。
「というわけでアリス、俺の首を斬ってくれ」
「突然なんで!?」
「すまん、説明が足りなかった。切腹するから介錯してくれ」
「説明聞いてもわかんないよ!!『切腹』って『腹切り』の事だよね!?なんでそんなことしようとするの!?」
「しのに風邪ひかせた原因は俺だ。それどころか下手すると怪我をさせる所だったんだ。そんな奴はもうしのの前に現れない方がいい。だから責任取って切腹をする。その介錯をしのの事を1番大事に思っているお前に頼みたいんだ」
こうして、俺という存在は消えた。これでしのも平和に楽しく過ごせるだろう。しの、お前やアリス達との日々は結構楽しかったぜ。今までありがとう。
※しの達のこれからを見たい人は、原作『きんいろモザイク(著:原悠衣)』をご覧下さい。短い間ご愛読ありがとうございました。
「………いや終わらないよ!!何勝手な文章打ち込んでるの!?」
「…すまん。確かに今のは卑怯だった。お前に首切りなんて残酷な事はやっぱりさせられないかと思ってナレーションで伝えようと思ったが、やはりきちんと描写しないといかんよな」
「そういう事じゃないよ!!まずそんな事わたし、したくないからね!?」
「しかし、俺はしのに風邪をひかせてしまう様な男だぞ?特にお前は許せないんじゃないのか」
「………確かに今回シノが風邪をひいた原因はシュンにあるかもだけど、それはわざとじゃない事も、シュンがシノの事を大切な友達だって思ってる事も、わたしはちゃんとわかっているからね?それはもちろん、シノ本人が1番わかっているハズだよ」
「アリス…」
お前…、俺の事そんなふうに思っててくれてたのか…。
「…へへっ、会った頃のお前からなら、とても聞けそうにない言葉だな」
「そ!そんな事は…ない…と思うけど……、えへへ…」
「ありがとうアリス。そう言ってくれて俺は嬉しいぞ。これで少しは悔い無く消えれるぜ」
「あれ!?まだ消える気だったの!?」
「アリス、俺がいなくなった後、しのに彼氏でも出来た時、その時はお前がきっちり見定めてくれよ」
「うん、任せて!………じゃなくて!!だから消えようとしないでよー!?」
「騒がしいわねー。
「あ、イサミー!シュンの自殺を止めてーっ!!」
「もう一度言うわね?何事っ!?」
アリスとリビングにやってきた勇さんによって、鹿ヶ谷峻の消失は阻止された。
今の現状を説明すると、学校で高熱を出したしのを俺が保健室に連れて行って先生に診てもらった後、風邪薬を飲ませて暫くしのを寝かせた後にしのの両親に連絡をして迎えに来てもらい、しのを病院で診てもらって、薬を貰った後しのを自宅へと帰し寝かしつけて、そして今俺達はしのん家のリビングに居て今に至る訳である。
「まったくもー、風邪ぐらいで大袈裟なのよ。それぐらいで峻君がそこまで思い詰める必要はないのよ。忍にはさっき謝罪して、気にしてないって言われたんでしょ?」
「そうなんスけど…、それじゃ俺の気が済まなくて…」
「…しょうがないわね。峻君がどうしても申し訳ないって思うのなら、じゃあ私が峻君の処罰を決めてあげるわ」
「イサミ!?」
「こうなると峻君は引きずっちゃうからねぇ。変な所で意固地だから、ただ口で許すよりも何かでハッキリ償いをさせてあげた方がいいのよ」
「そうなんだ…」
「峻君本人だと重すぎる罰を考えそうだから私が罰を決めるわ。そうねぇ…。じゃあ忍の風邪が治ったら、この夏の間は大宮家全員分のハー○ンダッツを毎日提供するってのはどうかしら?」
「イサミ!ハーゲ○ダッツを、シノを含めたシノの家族全員分毎日提供は結構重いバツだと思うよ!?」
「安心して。アリスの分もちゃんと含めてるから。アリスももう、ウチの家族なんだから」
「わーい!…いや違う!嬉しいけど今はそういう話じゃなくて!!」
「うふふっ、わかってるわよ。冗談よ」
「もう、イサミったら。シュンに変な事言わないでよー」
「あそこのバイトが時給960円で1日3時間やって2880円。俺は週にそれを3回やるから合計8640円。ハーゲン○ッツ1個が大体350円として、それをアリスも含めた大宮家5人全員に1週間毎日提供をすると、12250円。くっ!足りねぇ!こうなったら、バイト増やすか…!!ブツブツ…」
「ほら本気になっちゃってるよ!!やめて!自分で稼いだバイト代はもっと自分のために有意義に使って!!」
結局、俺への罰は大宮家それぞれのリクエストのアイスを週に2回提供するというところに落ち着いた。あと、勇さんのはカップアイスなら溶けかけにして提供するというオプションが付いた。
※ ※ ※ ※ ※
翌朝。今日は朝から雨が降っていた。天気予報だと、お昼を過ぎてもやみそうにはないらしい。
普段はしのの家の前で学校に行くためにしのとアリスを待っている俺だが、今日はしのの様子を伺う為に家に上がり、しのの部屋へとお邪魔させてもらっていた。
「しの、具合はどうだ?」
俺はしのの容態を確認する。
「昨日より熱は下がりましたよ…」
「わたしがついてなくて、本当に大丈夫?」
アリスも心配して、しのに語りかける。
「お母さんが家に居ますから、大丈夫です…。ほら二人共、綾ちゃん達を待たせてしまいますよ…」
「あ、ああ…。じゃあ、行くぞアリス」
「うん…。シノ、いってきます」
「はーい。気をつけて下さいねー」
しのと挨拶を交わし、俺とアリスは部屋を出て登校していった。
※ ※ ※ ※ ※
「じゃあ、やっぱりしのは風邪で休みなのね」
綾達と合流して登校し、学校の昇降口を通った所で綾としのの事で話をしていた。
「わたしも休んで看病してあげたかったんだけど…」
「病院には行ったんでしょ?1日寝てれば良くなるわよ」
「でででも、学校に居る間もしものことがあったらと思うと…っ」
しのを心配するアリスを綾が宥めるが、アリスは顔を真っ青にして胸を「キリキリギュュュン」と鳴らしていた。キリキリはともかくギュュュンってなんだ。
「心配しすぎよ。それにあんまり心配してると、そこのメンドク重ったるい男子が罪悪感感じすぎて潰れかねないわよ?」
「誰がメンドク重ったるい男じゃ。確かに罪悪感は感じてるけど」
「あああっ!シュン、大丈夫!シノは絶対に元気になるから、気を落とさないでね?」
「もうっ。アリスが貴方に気を使っちゃって、しのの心配も出来なくなってるじゃないのよ。わかったら峻もあんまり引きずらないようにねっ」
「うっ…。はい…」
綾にそう言われ窘められてしまった。情けねぇ…。
「綾!どうしよう!聞いて!」
捻った足もすっかり治り、下駄箱に先に着いてた陽子がドタドタと騒いでこっちにやって来た。
「春が来たー!!わっほーい!」
「もう夏ですが」
「どうしたの。熱でもあるの?流行ってるのかしら」
なんだか舞い上がっている陽子に俺と綾は冷めた眼でそう答えた。
「これを見たまえ!」
陽子が手に持ってた紙の何かを綾に渡して見せつけてきた。
「手紙?」
「わっ!バカ、声がでかいよ綾!」
「フツーのボリュームだけど」
「なんだ?どっかに出すのかこれ」
「違うよー!それ、ゲタ箱に入ってた!」
下駄箱に手紙?……てことは、まさか…。
「それって、ラブ…」
「バカ!!声がでかいよ!!」(≧▽≦*)
「うるさいわね」
「そしてうぜぇ」
明らかに俺達よりも五月蝿い声で喋り、更にテンションを上げていた陽子に俺達は再度冷めた眼で吐き捨てた。
「WAO〜、Love Letter?」
「ナイス発音!」
アリスの後ろに居て顔をヒョコっと覗かせたカレンが、ネイティブな「ラブレター」の発音をして陽子を驚かせた。
「ラブレター!?スゴイね!ヨーコはやっぱりモテモテなんだね!」
「えー、何かテレるなー」( ̄∇ ̄*)ゞ
アリスが陽子に感心をし、陽子は満更でも無さそうに照れていた。
ふと、カレンの方を見ると何やら考え事をして動かないでいた。
そして数秒経つと何か納得したような顔をした。
「スゴイデスヨーコ、モチモチデスねー」
「それは褒めているのか!?」
どうやら『モテモテ』の意味が分からず『モチモチ』と同じ種類の言葉だと思ったらしい。
「じゃあ、「モテモテ」ってどういう意味デス?」
カレンが俺に聞いてきた。
「ああ、シャンプーのCMで「てもてーてもてー」って言ってるアレだ」
「そりゃ『テ○モテ』だろ!!てゆーか、そのネタは最低でも昭和後期か平成初期生まれの人じゃないとわかんねーだろ!!」
「そういう
俺は『ら○☆すた』で知ったが。
「話を戻すけど陽子、まだ中見てないんでしょ?ラブレターかどうか、分からないわよ?」
綾が話を手紙の件に戻した。
「えー?でもゲタ箱だよ?他に手紙で伝えることってある?」
綾の意見に陽子は納得がいってない様子だ。
「うっ。色々あるじゃない」
「例えば?」
「た…例えば、そう、不幸の手紙とか」
綾のその回答を聞いたアリスが顔をまた真っ青にして、
「今すぐその手紙燃やしてー!!」(((〣゚Д゚)))ガタガタ
ガタガタと震えだし「はぎゃー」と怯えだした。
「例えばの話よ!」
「じゃあもしくは…、果たし状とか?」
「oh!ヨーコ、誰かと"ケットウ"するデスかー?」
「なるほど。そっちなら納得だわ」
「しねーし、納得すんなよ!!」Σ( ̄□ ̄;)
俺の発言に賛同したカレンと綾に陽子がツッコミを入れた。
「そうだよみんな!これが果たし状なはずないよ!」
「アリス…!」
「日本じゃ決闘は、今は法律で禁止されているんだよ!それにもし果たし状だったらご祝儀袋みたいに、たとう包みになっていて、表に「果たし状」って筆で書いてあるはずだよ!」
「あー、それもそうか」
「えー?ケットウ、ダメなんデスかー!?」
「そうだよ!ね?ヨーコ!」
「……ああ…、そうだな…」
俺達に熱弁をした後アリスは陽子に自信満々に尋ね、陽子はそれに頷いた。「違う、そうじゃない」みたいな顔をしながら。
「じゃあ、ソレはやっぱりLoveLetterなんデスかー?」
「…!と、とにかく中を確認すれば分かることだわ」
綾はそう言って、陽子から受け取ってた手紙の封を開こうとした。いや、待て待て。
「アヤ、だめだよ!それはヨーコにあてた手紙なんだから、勝手に読んだらだめだよー!」
アリスが綾の行動を制止した。
「あ…。それもそうね」
「ぬるっと開けようとしたな」
それはもう、夫の浮気を疑う妻の如く。言うと綾が暴発するから黙っている。
「ごめんなさい」
「じゃあ、後でこっそり読むよ」
綾は陽子に謝り、手紙を手渡した。──が。
「…放してほしいんだけど」
「めっちゃ気になってる顔してるやんけ」
綾が気になるオーラを出しながら、手紙をなかなか離そうとしなかった。
ま、あいつなら気になってしょうがないだろうしな。
※ ※ ※ ※ ※
昼食を食べ、掃除を終えてお昼休みに入った今、俺は電話をかけていた。
「はい…。はい…。わかりました、ありがとうございます」
「ん?峻、どこかに電話?」
通話が終わり、携帯を切った所に陽子がやって来た。
「ああ、しののお母さんにしのの様子を聞いてたんだ」
「それで、どうだった?」
心配した様子でアリスが聞いてきた。
「お粥食べさせた後は、落ち着いてスヤスヤ寝てるって。熱も大分下がってきたそうだ」
「そっか!よかった〜。でも、早く帰って看病してあげたい!」
「そうだな。ところで陽子」
「なに?」
「その背後霊は、なんだ」
「私が聞きたい」
陽子の後方から
「何…?」
「何でもないわ」
「じゃあ、なんで今日1日中ずっと私の事見てるんだよっ」
どうやら綾は今だけでなく、手紙の件があった朝からずっと陽子の事を見つめていたらしい。
「みっ、見てないわよ!」
「えー、見てたじゃんーっ!職員室に行ってた時もトイレに行ってた時もさーっ」
「みっ!みみみみ見てないっ!!」(//口//)
陽子と綾の会話を聞き、俺は綾に一言言いたくなった。
「綾」
「なに?」
「陽子の事、刺すなよ?」
「刺さないわよ!?」
友人がヤンデレやメンヘラの道に進むのだけはやめてほしい。
「ラブレター、誰カラー?」
A組からやって来たカレンが陽子に聞いた。
「あー、まだ見てないんだ」
「そうなのか?」
「早く見るデス!」
「名前書いてないんだよねー」
「中に書いてあるんじゃない?」
「かもなー」
「女の子からかもデスねー。ヨーコって男の子より女の子に人気ありそうデスしー」
「えーっ」( ˘•ᯅ•˘ )
「確かにお前、男勝りだし、突然男子顔負けなイケメンな行動や発言をしたりするしなぁ」
「男勝りは百歩譲ってしょうがないとして、そんな行動や発言は私した覚え全くないんだけど!?」
「自覚がない分、余計にタチが悪い」
カレンと俺の発言に陽子は不満げな反応をした。
因みにそんな俺達の会話を聞いてた綾はそれでも気分は沈んでいた。まあ、こいつからしたら男でも女でも、どっちにしてもショックな事には変わりないだろうし。そもそもこいつがその、陽子に惹かれた女子筆頭だし。
「私にだって女らしい一面はあるよ!」
「ほーう、例えば?」
「えーと、あ!ほら、こないだ体育で野球した時、スライディングしたら足をひねったし!」
「そうだったな」
「で、それが何?」
「かよわさアピール!あれは痛かったー!!」
「かよわい女の子はスライディングしないと思うわ」
「あん時のお前、なんの怯みもせずに全速力で走って足伸ばしてたぞ」
ドヤ顔でアピールした陽子に俺と綾は白けた顔でそう指摘した。
「そんなに言うんならお前、誰か心当たりのある奴とかいるのかよ?」
「えっ?…うーん、そうだなー。他の男子達とはたまに運動部の助っ人とかで交流するくらいで、教室とかではそんなに喋った事ないしー。親しい男子っつったらせいぜい峻ぐらい………はっ!?」
「ヨーコ?」
「どーしたデス?」
「………まさか峻、お前が私に」
「その可能性は絶対に100%神に誓って輪廻転生ありえねえ」
「ちょっと冗談で言ってみただけだったのに、そこまで拒絶する事ないだろーっ!!」
即否定した俺に腹が立った陽子は、1台の机を中心にぐるぐると俺を追っかけ回した。
「うーんっ、私ももう少しおしとやかにならないとなー」
「おしとやかってキャラじゃないでしょ」
陽子の発言にそう指摘した綾を、陽子がじーっと見つめていた。
「綾はおしとやかで女らしいよな…」
「へっ?」Σ(⸝⸝•ㅁ•⸝⸝)
「えっ?」Σ((¯⌓¯ ;))
陽子の発言に綾と、そして俺も動揺した。
「………峻、今の「えっ?」はどういう意味かしら…?」
「ナンノコトヤラ」
俺が綾に
「よし決めた!私、綾っぽく振る舞ってみるよ!」
「は?」
「え?それってどういう…?」
俺も綾もイマイチ陽子の言っている意味が分からずにいた。
陽子は善は急げと言わんばかりに何かをしだした。
自分の席に戻ったと思ったら、綾の様に髪を結んでツインテールにして(陽子はショートヘアだからムリヤリではあるが)、教科書を手に持ち、目を若干ジト目にしてクールさを装った顔立ちになった。
綾っぽく振る舞うって、形から入るのかよ。
それにしても、普段の陽子を知っていると今の陽子は気味が悪く見える。ほらみろ、陽子の隣の席に座っていた女子生徒もお前の豹変ぶりに顔真っ青にして、思わずショーペン落っことしちまってるじゃねぇか。
シャーペンが落ちたのを見た陽子(綾のつもりモード)は、それを拾い上げた。
「シャーペン、落としたわよ」
陽子は普段のサバサバとした喋りではなく、凄いおしとやかな喋り方と声のトーンで女子生徒にシャーペンを渡した。
「あ…、ありがとう」
女子生徒は戸惑いながらシャーペンを受け取った。
「いいのよ、気にしないで。お互い勉学にはげみましょー。ウフフ」
「私そんなんじゃない!」
一部始終を見ていた綾が我慢の限界を迎え、陽子の胸ぐらを掴んで「やめて!!」と止めに入った。
「えーっ!似てると思ったんだけど」
「いや全然ダメだ陽子。綾だったらこういう時、「ふんっ!シャーペンを落とすなんて貴方はダメダメねっ!」と言ってゴミを見る目で相手を見下しあだだだだだだだっ!!綾っ!冗談!冗談だから無言でコブラツイストかけてくるのはやめろ━━っ!!」
昼休みの終わる頃、とあるクラスで1人の男子生徒の悲鳴がこだましたと言う。
※ ※ ※ ※ ※
5時限目の英語の授業が終わった休憩時間。
「痛てて…っ。さっきは本気で折れるかと思ったぞ」
俺は綾の
「自業自得よ。…まあでも」
「?」
「貴方に元気が戻ったようで安心したわ」
「え、あ…」
綾はしのの件を気に病んでた俺を気にかけてくれたようだ。
「貴方が気にし過ぎてると、しのの方がかえって気にしちゃうわ。峻に責任を感じさせすぎてしまったって…。そうしてた方が、しのも安心して過ごせるわよ」
「………おしとやかかどうかはともかく、おめーはいい女だよな」
「それはどうも。ふふっ」
俺と綾はその場で軽く笑いあった。
「そんじゃ、次はおめぇの話でもするか。何も分からない小路さん?」
「ちょっ!その呼び方はやめて!?」
先程の英語の授業で烏間先生に解答を問われた時、綾は顔に両手を覆い、「分からない、何も分からないんです!!」と叫び、クラスをざわつかせたのだ。
関係ないが、烏間先生はジャージを着ていなかった。さすがにこの季節にジャージは暑いだろうしな。
「おめー、陽子の手紙が気になってしょうがないんだろ?」
「なっ!?そ!そんな事は…!」
「今さらとぼけようとすんな」
「………別に陽子がどう返事しようが、私には関係ない……のに、もやもやするのよね…」
「……じゃあ、関係なくないんじゃないのか?」
「え?」
「例えばの話だ。アリスがどこかの男性とお付き合いをする事になったとする」
「しのが許さないんじゃない?」
「だから例えばだって。そうなったらお前はどうする?しのは置いといて」
「…うーん、どんな相手かにもよると思うけど、「おめでとう」って言ってお祝いすると思うわ」
「じゃあ、陽子がそうなったら?」
「え…。………も、もちろん同じように「おめでとう」……って………」
「気持ちよく言えないだろ?」
「そ………んな事は……」
綾は俯いて考え込んだ。
「俺だって、もししのがどこか他所の男と付き合うなんて事になったら、喜んで「おめでとう」なんて言える自信ねぇよ。つまりそれと同じだよ」
「んん……。ん?ちょっと待って?」
「なに?」
「……それじゃまるで、私が陽子の事好きみたいじゃないのよ!?」
「"まるで"じゃなくて、そうなんじゃねーのか?」
「ち!ちちちちち違うわよっ!!バカーッ!!!!」
「ぶげっ!!」
綾は顔を真っ赤にしながら、丸めたノートを俺の脳天に叩きつけた。
※ ※ ※ ※ ※
キーンコーンカーンコーン
今日の全ての授業が終わり、放課後を迎えた。
「あー、終わった終わったー」
「早く帰ろうー。シノが心配!」
陽子とアリスがそう言い、帰り支度を始めた。
そんな2人…というか陽子の様子に、綾は「え!?」と驚いた反応を見せた。
「おい陽子、手紙の件はどうなったんだ?」
綾の代わりに俺が陽子に訊いた。
「手紙?あー、忘れてた」
「忘…っ」
あっけらかんとそう言った陽子に綾は絶句した。でもこれには俺もちょっと引く。
「……お前…、もし昼休みに来てくれとか書いてあったらかなりの人でなしだぞ…」
「ヨーコ、オトコをもてあそぶ悪いオンナデスね…」
「人聞き悪い事言うなっ!?」
俺とカレンの発言に陽子がツッコミを入れた。
「でも忘れられて放置とかマジでシャレにならんぞ」
「そ、そうだな。何か大事な事、書いてあるかもしれないし、一応読んだ方がいいか」
「あ…、陽子…」
陽子が手紙の封を開こうとした瞬間、綾の瞳に涙が溜まっていくのが見えた。
「…………お…、おめでとう!」(´;ࠏ;`)
「え…、何が?」
「綾、早い早い」
陽子が手紙の内容を読む前に、綾が涙を流して祝いの言葉を述べた。
まだ中の便せんに手を触れてすらないぞ。
「今日はどうしたんだ?綾のやつ」
陽子が綾の様子に疑問を抱く。
………はぁ……。
「綾はな、お前がラブレターの返事をどうするか気になってしょうがないんだ」
「ちょっ!峻!」
「?なんで私宛ての手紙に綾が気にするんだ?」
「ん〜、そうだなー。綾はお前が誰かのもんになるかもしれなくて、それで気にしてんだよ」
「えーっ!?……なんだ、そんな事で?」
「そんな事って……っ!!」
陽子の発言に綾は怒りかけたが、陽子が言葉を続けた。
「何かカン違いしてない?」
「え?」
「手紙は嬉しいけど、最初から断る気でいるよ」
「どっ、どうして!?」
淡白に言う陽子に綾が疑問を投げかける。
「相手が良かったら考える、とかないのか?」
俺も陽子に問いかける。
「相手が誰であっても、綾の方が好きだからさ!」
「!~~~~~っ!」(///ᯅ///)
………あらァ〜。まさかの回答。
笑顔で言い放った陽子の発言に、綾は過去一くらい顔を真っ赤にさせて震えた。
「…と、とっとと開けなさいよ!」
綾はそう言って、いつもの調子に戻った。
ふと外を見ると、朝からずっと降りっぱなしだった雨が嘘のように晴れていた。まるで綾の気持ちと天候がリンクしたかのように。
それにしても陽子がそこまで綾の事を想っていたとは思わなかったな。
「何の話してるデス?」
カレンが陽子に問いかける。
「ん?友達っていいなって話ー」
「ガクッ」
俺は口で言いながら、陽子の発言に軽くコケた。
「ん?どうした峻?」
「…お前なに?その手紙は友達になって下さい的な文章の内容だと思ってるわけ?」
「そういうわけじゃないけど、ほらよく言うじゃん?愛情より友情って!」
「それ逆だ。逆」
その言葉はドロドロの恋愛ドラマの女が言うやつで普通は「友情より愛情」って言うんだ。あれ?普通ってなんだったっけ?
綾がそっぽ向いてて今の一連の会話を聞いてなくてよかったわ。
「はぁ…、もうこの際なんでもいいや。はよ開けろ」
「ああ!じゃ読むよー」
陽子が手紙を開いて中を読むのを俺達4人は黙って聞いた。
~See you, next time!~
「って、ここで終わんの!?」
という訳で変な所で終わってしまいました。すみません。
私はいつもなんとなく、1話につき8500字前後ぐらいにして投稿してるのですが、冒頭でオリジナルをやり過ぎましてこれ以上やると文字数が10000を超えてしまいますので陽子の手紙の話のオチは次回に持ち越しになりました。
これの続きの話は明日には投稿しますのでどうか。
あと言うことといえば、峻の言葉に綾がときめいたりする事はありません。あの二人はその、相棒とは違いますが、遠慮なく物事を言い合える仲と言ったカンジなんです。