きんいろモザイク ~plus α Road Days~   作:T93

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今回の話とはそんなに関係ない話ですが、この小説を書く時はなるべく物騒というか、暗い単語は使わないように心がけています。

それでは、前回の続きをどうぞ。


第17話~おねえちゃんといっしょ~

 前回のあらすじ。

 

 俺達はしのん家に集まって勉強会をやっていた。

 

 あらすじ終わり。

 

 

「「「「「「「ごちそうさま(ー!)」」」」」」」

 

 綾が作ってきた薄あ……弁当を食べ終え、食器などを片付ける。あ、ちゃんと完食しましたよ?調味料とか少々使いはしたけど。

 

「じーっ…」

 

「?勇さん?」

 

 ふと顔を上げてみると、勇さんが空になった重箱を片付けている綾を見つめている事に気がついた。

 

「綾ちゃんは和服が似合いそうねー」

 

「えっ?」

 

 勇さんの一言に、綾は「そんなこと初めて言われた」とでも言いたげな表情になっていた。

 ふむ。しのとかならともかく、綾に和服が云々とか俺や陽子達が言った事は無かったかもな。モデルならではの視点ってやつか?

 

「この服、似合わないでしょうか」

 

「そんなことないわ。自分に似合う服を選んで着れてると思う」

 

 比較的後ろ向き(マイナス)思考の綾は、勇さんの一言を自分が今着ている洋物の服が似合ってないのではと捉えていたが、勇さんはそれを直ぐやんわりと否定してフォローをした。

 

「やっぱり似合う服を着るのが一番だと思うわ…」

 

 フォローをした後勇さんは、そう言いながら遠い目でとある人物に目を向けた。それは、今この場で一番浮いた格好をしていた自身の妹にであった。それはまるで遠回しに「あんたも自分に合った服を着なさい」とでも言いつけているかのように。

 

 姉の目線が自分に向けられていると気づき、先程までの会話を聞いていたしのが取ったリアクションは…。

 

「照れてる!?」

 

 (勇さん)言葉(願い)(しの)には伝わらなかった。

 

 前向き(プラス)思考な外国かぶれ娘は「そんなに似合います?」とでも言いたげな照れ顔で、勇さんの台詞を良いように捉えていた。

 

 あの2人、お互いの思考を少しでも分け合ったら丁度よくなるんじゃないか?

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 昼食の片付けを終えた俺達は、部屋に戻って勉強会を再開した。

 

「……………ん」

 

 数十分ぐらいして、俺は勉強を中断して立ち上がった。

 

「しの、ちょっとトイレ借りてもいいか?」

 

「どうぞー」

 

「あ。それナラ私もー」

 

 しのに許可をとり、俺はカレンと一緒に部屋を出てトイレへと向かった。

 

 

 数歩歩いた程度で、2階のトイレに着いた。

 

「じゃあ俺は1階のトイレ借りるから、お前は2階(ここ)のを使え?」

 

「ハーイ!」

 

 カレンは元気よく返事をし、トイレの個室に入っていった。

 

 それを見届けて俺は1階のトイレへと向かっていった。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 トイレで用を足した俺は部屋に戻るため2階に続く階段を上っていた。

 

「ん?あいつ何やってんだ?」

 

「失礼するデース…」

 

 俺はカレンがしのの部屋の隣の勇さんの部屋へ入っていくのを目撃した。

 

 カレンが部屋に入った後、俺は部屋の中を覗き込むと、勇さんは不在のようで、カレンは部屋中を見渡していた。

 

「わ〜〜、カッコイイカメラデス」

 

 部屋を一通り見た後カレンは、机の上に置いてあった結構良さそうなデジタルカメラに見とれていた。

 

 ……あ、そうだ。いい事思いついた。

 

 俺は、抜き足差し足忍び足で勇さんの部屋に入りながらカレンの背後まで歩いていった。

 

 そして今にもカメラに触ろうとカレンが手をのばしているところでカレンの背後に立った俺は静かに息を吸って…。

 

「動くなっ!警察だ!!」

 

「No━━━━━ッ!!?」Σ(||゚Д゚)

 

 背後から出した俺の大声にカレンは心底驚いて悲鳴をあげた。

 

「うはははっ。びっくりしたか?いや、見りゃ分かるか」

 

 そうしてカレンは俺の方に振り向くと、不安そうな顔から状況を理解していって、だんだん頬を膨らませて怒った顔になっていった。

 

「~~っ!モーっ!シュン、サイテーデス!ヒドいデス!!」

 

 カレンはそう言ってプンプン怒りながら、俺の胸板をポコポコ叩いてきた。

 うん、全然痛くねえや。もし綾だったら本気で殴ってきただろう。

 

「アハハハ。悪ぃ悪ぃ、ほんの悪ふざけだって。でもお前も人の部屋に勝手に入ったらダメだぞー?勇さんに見つかったら大変な事になるからな?」

 

「私がなーに?」

 

「「ギャ━━━━スッ!!?」」Σ((||゚Д゚))Σ((゚Д゚||))

 

 部屋の入り口にいつの間にか居た勇さんの声と姿に今度は俺もカレンとあわせて悲鳴をあげた。

 

「二人共、何してるのー?私の部屋で」

 

「すっ、スミマセン!勝手に…!」

 

「いやその、別に俺達はやましい事があって入った訳じゃなくてですね…!」

 

 俺とカレンは青い顔で慌てて、勇さんに弁明した。すると…。

 

 プルルルル♪

 

 突然着信音らしきものが鳴り、勇さんが服のポケットにしまっていた自分の携帯を取り出した。

 

「Noーッ!ケーサツは…、ケーサツだけはご勘弁をー!!」

 

「ハーゲンダッ〇もう1個、いや2個買ってきますからあっ!!」

 

「友達からの電話よ」

 

 ああ、そうか。いくらなんでも準備が早すぎると思った。動揺しすぎて冷静な判断出来なくなってたわ。

 

「うん、うん。………じゃあまた学校でね〜」

 

 ひととおり話して電話を切って携帯を仕舞うと、勇さんは俺達の方へと向き直した。

 

「カレンちゃん、そんなに怯えなくても私別に怒ってないからね〜。確かに勝手に入るのは良くないけど、今回は許してあげるから」

 

「ア…アリガトデス…!」

 

「でも峻君はダメ」

 

「えっ!?なんで俺だけ!?」

 

「秘密がいっぱいの乙女の部屋に、男の子が勝手に入るのをそう簡単に許すわけにはいかないわ〜?」

 

 勇さんは片目をつぶって人差し指を口にあてて「シー」のポーズをとってそう言ってきた。

 

 言ってることはわかるが、なんか理不尽だ…。

 

「勝手に入った事に関してはすみません。でも俺、別に勇さんの何かを探る気なんて一切ありませんからね。というか勇さん、探られる様な色事なんてなんにもな」

 

「峻君。少し頭冷やそうか?」

 

「わたくし調子に乗っておりました。大変申し訳ございませんでした。どうかご勘弁くださいませ(早口)」

 

 勇さんのドスが効いた声に、俺は間も無くその場で土下座をし謝罪した。

 勇さんの口からあんな台詞聞かされたら、色んな意味で謝るしかない。そりゃもう全力全開で。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「帰りが遅いと思ったら、そんな事が…」

 

 勇さんも連れて、部屋に戻ってきた俺達は、遅れた理由を皆に話していた。

 

「お姉ちゃん、カメラ買っていたんですね。それもお高そうな」

 

「勇姉の仕事って撮られる側の方なのに、なんでカメラ持ってんの?」

 

「撮られるのも嫌いじゃないけど、撮る方はもっと好きなの」

 

 勇さんが部屋からそのまま持ってきたデジカメに皆が興味を抱いていた。

 

 それにしても…。

 

「なんで皆カメラ持ってるんだ?」

 

 ちょっと前に聞いてみたんだが、こないだ持ってきていた陽子だけでなく、なんと今この場にいる俺以外の全員が自身のカメラを持っていた事が判明した。

 

 機械オンチのしのでさえデジカメを持っていた。勇さんのよりは安いやつではあるが。でもよく思い返せば、イギリスのホームステイの時に持って行ってて、その写真見せてもらってたっけ。

 

「逆になんで峻は持ってないのよ」

 

「いや、そんな必要あるとも思えないつーか。ていうか携帯のカメラで事足りるんじゃないか?」

 

「あら。ちゃんとしたカメラで撮った方が、鮮明でキレイに撮れるわよ?」

 

「そんなもんですかね?」

 

 俺にはよくわからん。

 

 そう思っていると、勇さんがカメラを持ってキョロキョロしていた。

 

「誰か被写体に…。はいっ、綾ちゃん。ポーズ」

 

 勇さんはそう言って、綾にカメラを向けて構えた。

 

「えっ私!?」

 

「笑って笑ってー」

 

「あ…う、あの…。あわわ」

 

 突然、被写体に選ばれた綾は案の定パニクっていた。

 

 もはや当然のように綾は恥ずかしがって顔を赤くさせ、その臨界点がそろそろ突破すると思われる次の瞬間に、勇さんがカメラのシャッターを押して写真を撮った。

 そうして撮った写真を確認をする。俺も横から見せてもらう。

 

 撮れた写真はというと。

 

「…あれ?」

 

「なにこれ、ミスディレクションの瞬間?」

 

 そこに写っていたのは綾ではなく、笑顔でピースしていた陽子だった。いや、綾も写ってはいる。ただ凄いスピードで動いた様子の残像を作って陽子の後ろに隠れていた。あいつ運動出来ないくせに、こういう時は無駄にすごい動きするな。

 それにしても陽子もよく反応してピース出来たな。…ああ、綾の行動が読めてたからか。さすがだ。

 

 

「私もモデルみたいに撮ってほしいデス〜」

 

「いいわよー」

 

 目をキラキラさせながらカレンがお願いすると、勇さんは快く承諾をした。

 

「ここじゃなんだし、近くの公園行きましょうか」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

「え。いやあの、勉強会は?」

 

 勇さんの提案に皆が賛成の声を上げ、俺は1人困惑していた。

 

「もうそろそろ日も暮れてくるだろうし、この辺で終了にしても良いんじゃないかしら?」

 

「そうですね!しのの追試の範囲も教えましたし」

 

「綾ちゃん、忍の勉強を見てくれてありがとうね」

 

「い、いえそんな…!えへへ…」

 

 綾と勇さん、一日で大分仲良くなったな。

 

 …ま、勉強で凝った体をほぐすのに丁度いいという事にするか。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 という訳で、やって来ました近くの公園。

 

「懐かしいです。小さい頃、お姉ちゃんや峻君とよくここで遊びました」

 

「あー、最近は来る機会めっきりなかったもんなー」

 

「そーなんだー」

 

 そんな会話をしのやアリスとしていると、勇さんが何やら俺達、厳密に言うと俺としのを見つめてきていた。

 公園(ここ)の懐かしい思い出にでもふけっているのだろうか?

 

 そう思った矢先、勇さんが俺としのの頭に手を乗せて撫でてきた。

 

「忍も峻君も大きくなったわねぇ…」

 

「何ですかー、突然」

 

「ちょっ!勇お姉ちゃん、恥ずかしいからやめて!」

 

「「「勇お姉ちゃん?」」」

 

「あっ」

 

 俺が口にしてしまった単語に、何も知らない綾とアリスとカレンが反応し、それで我に返った俺は顔を赤くさせた。

 

「おー!峻のその勇姉の呼び方、懐かしいなー!」

 

「そうですね。確か、会ってからしばらくはその呼び方だったんじゃないですか?」

 

「そうなのよー。小学校6年生辺りから「勇さん」に変わっちゃってー。私はそのままでよかったのにー」

 

「「「へ〜、そんなんだ〜(のね〜)(デスか〜)」」」

 (´º∀º˶`)(⩌∀⩌˶ )(ㅍ∀ㅍ˶ )

 

「だーっ!!黙れ黙れ、うるさーいっ!!」

 

 陽子、しの、勇……さんから俺の恥ずかしい話を聞いたアリスと綾とカレンがニヤニヤしながら語りかけてきて、俺は恥ずかしさで語彙力を失いながら腕をぶんぶん振って話を一掃しようとした。

 

 

「あーっ、もういいだろ!公園や俺の話は!それより、写真撮ってもらうんじゃなかったのかカレン!」

 

「Oh、そーデシタ。イサミ、お願いするデス!」

 

 俺は話題の切り替えも兼ねて、皆に当初の目的を思い出させた。

 

「それじゃあ、準備はいい?」

 

「ハイッ」

 

 2人が配置に着き準備が整うと、撮影が開始された。

 

 まず最初に1枚撮られ、その内容のカレンはベンチを右足で踏み(ちゃんと靴は脱いでます)、その曲げた右足の膝に右腕をかけ、ドヤ顔で決めたような感じになっていた。これはカレン的には、カッコよさがテーマの写真なのかな?

 

 次にもう1枚撮られ、今度は何やら両手を拳銃の形にし、片方の腕は(カレンから見て)正面に真っ直ぐ伸ばし、もう片方は腕を曲げて上に向けてあった。これは……、なんだろう。

 

 と言う具合に、勇さんはある程度写真を撮ったのだったが。

 

「もっと自然体で…」

 

「そんな!!」Σ(-₀ - ;;)

 

 勇さん的にはあまりお気に召さなかったようで。

 

「なあカレン、最後のやつ何だったんだ?ヒットマン?」

 

「可愛いポーズデスヨ!?」

 

「えー?………ああ、貴方のハートを撃ち抜きます、みたいな?」

 

「…………ナルホド、このポーズにはそういう意味もあったんデスネ」

 

「ポーズの考案者が教えられたらダメだろ」

 

 

「勇姉も一緒に撮ろうよ!」

 

 カレンとやり取りをしていると、陽子が勇さんと一緒の写真を撮ろうと提案をしていた。

 

「いいわよー。じゃあ峻君、シャッターお願いしてくれる?」

 

「いいですよ」

 

 勇さんのお願いを承諾し、俺は勇さんからカメラを手渡された。

 

 綾も加わって、3人がカメラの画面に収まる位置まで俺は下がった。

 

「じゃあ撮るぞー。はい、名犬チー」

 

「あっ!ちょっと待ったー!」

 

「おい、別に大したことない小ボケだったが、それでも途中で潰されるとすげえ恥ずかしくなるんだぞ。なんだ陽子、どうした」

 

「いや、モデルと並ぶと顔の大きさが目立って恥ずかしいなと思ってさ」

 

「お前にそんなもんを気にする意識があったとは驚きだ」

 

「最近お前、私をなんだと思って見てるわけ?」

 

「ぶくぶく太っても気にしなさそうな食いしん坊娘」

 

「いくら何でも私だって太るのは嫌だっつーの!!」

 

「まあまあ陽子、落ち着きなさい?それよりも、私達は勇さんよりもちょっと後ろに下がりましょう」

 

 そう言って綾と陽子は勇さんの後ろに下がり…、下がり…、下がり…………。

 

「OK〜〜」

 

「おーい」( ̄ㅿ ̄;)

 

 勇さんの遥か後方、5mぐらい後ろに2人は立っていた。そんな2人に勇さんは呆れながら呼びかけた。

 

 お前らこそ勇さんの顔どんな大きさに見えてんだ。

 

 

 

「ほーら、峻君もそろそろ写真に写りましょう?」

 

「えー…」

 

 あの後、陽子と綾が勇さんと普通に一緒の写真を撮り、そうしたら勇さんが俺に写真を撮ろうと言ってきた。

 

「いいですよ…。別に今日なんか特別な事あった日とかでもないんですし…」

 

「あら?皆で勉強会やったじゃない?」

 

「そんな特別でもなくね?そんなんでいちいち写真撮ってたらキリないって」

 

 つーかそれなら勉強やってる時に撮ろうや。

 

「でもさあ、シュン」

 

「ん?」

 

 突然アリスが話しかけてきた。

 

「こういう、いつもと "ちょっとだけでも違う一日" を写真として残しておくのも、悪くないんじゃないかな?シュンにとってはそこまで特別じゃあないかもしれないけれど、そんな写真を数年後とかに思い返しながら見たりするの、わたしは好きなの!」

 

 アリスは微笑んでそう言った。

 

「私も、皆さんとのこんな1日の思い出を残していくの、大好きです!」

 

「私もー!1人でラーメン屋に行った時も、思い出として写真に撮ったデス!」

 

「あー、カレンが大人になった記念日!」

 

「何だかその名称、語弊があるわ…」

 

「ふふっ…」

 

 アリスに続いて、しの、カレン、陽子、綾がそう主張しながら話す様子を見て、俺は何だかその光景を微笑ましく感じた。

 

「それで、どうなの?峻君」

 

「………わかりましたよ。写ればいいんでしょ、写れば」

 

「よろしい♪」

 

 勇さんの問いかけに俺は、面倒そうな振りをしながら返した。勇さんには見抜かれてそうではあったが。

 

 

 

「なにも、わざわざ全員で撮らんでも…」

 

「まあまあ、いーじゃん!」

 

 何故か俺だけでなく、しの達5人も一緒の写真に写って撮る事になった。まあ、しのの隣りに立てたから良しとしよう。

 

「それじゃあ、撮るわよー!」

 

 勇さんの合図とともに、シャッターが押された。

 早速撮った写真を、皆でデジカメの画面を見て確認をする。

 

 それは、何処か珍しい所に行ったわけでも、何かのお祝いごとでもあったわけでもない、近所の公園にいつもの6人が集まっただけの、撮ろうと思えばいつでも取れそうな内容の写真だった。

 

 

 ………でも何故だろう。この写真、凄く良い…。

 

 

 しのと隣同士で写れたから?それとも勇さんのカメラの腕が良かったから?

 

 それとも……、皆と一緒に写ったから…?

 

 

 両手でピースを作っているアリス。

 

 右手でピースしてそれを前に出してる陽子。

 

 カメラを前に少々恥ずかしがっている様子の綾。

 

 元気いっぱいに、はしゃいでいるカレン。

 

 アリスの肩に両の手を添えて微笑んでいるしの。

 

 …そして、そんな皆に囲まれながら、とりあえずでピースを作った俺。

 

 

 ほとんどいつもと同じ光景であったが、俺の目にはそれが凄く尊い光景に映って見えた。

 

「どーお?峻君」

 

 勇さんが写真の感想を聞いてくる。

 

「……んまあ……、良い…んじゃないですかね…」

 

「ふーん?」

 

「……………ま、デジカメ買うの…、考えてもいいかもですね…」

 

 照れくさそうにそう発した俺の返答に勇さんは、嬉しそうに「ふふっ」とただ笑っていた。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 日が暮れてきたので、しのの家まで戻ってきて勉強道具を回収してきた俺達は、そのまま今日はこれで解散する事にした。

 

「今日はありがとうございました」

 

 綾が勇さんに挨拶をする。

 

「出来た写真は忍に渡すわね」

 

「良かったら、モデルのカメラマンに見せて頂きたいと…」

 

 カレンはそう言って、「もしかしたら目に留まるカモ…」と呟きながら期待の目を輝かせていた。

 いつぞやのしのとアリスみたいになってるな。

 

「うーん、そうねぇ」

 

「イサミ!!」

 

 勇さんがどう返そうか悩んでた時、突然アリスが話に入ってきた。

 

「何卒、よろしくとお伝え下さい」

 

「お前もまだ諦めてなかったんかいっ」

 

 カレン同様に期待の目を輝かせていたアリスに、俺はすかさずツッコミを入れた。

 

「「イサミー!」」

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 皆を見送った後、俺は勇さんにアイスを献上する為にコンビニへ行って、アイスを購入して帰り道を歩いていた。辺りは大分夕日が隠れてきて薄暗くなっていた。

 

「ん?」

 

 すると俺は、道端でとあるものを見つけた。

 

「!!」

 

 それは、前足2本で逆立ちをしている猫だった。

 

「(写真撮って、皆に送ってやろう)」

 

 そう思い、俺は携帯を取り出して写真を撮ろうとする。

 

 ところが携帯を開いた次の瞬間、

 

 

『サーンサーン、3人、サーンサーン、さーんぽ♪』

 

「!?」

 

 携帯に着信が入った。

 

「誰だこんな時にっ!陽子!?」

 

 俺は文句を言いながら電話に出た。

 

「もしもし、なんだ!?」

 

『あ、峻?さっき気づいたんだけどさ、私らアイス買ってもらってなかったじゃん!勉強終わったら買ってくれるって言ってたのに!』

 

「どーでもいい事で電話してくんなや!明日買ってやっから!!」

 

『ホントだな!?約束だからなっ!』

 

「へいへい、もう切るぞ!?」

 

 俺は半ば投げやりに返事をして電話を切った。

 

「ふーっ、やれやれ…。変な時に電話よこしやがって…。さて、急いで猫を」

 

『流星回転、ルーレット、rally go round!♪』

 

「だぁーっ!!今度はカレンかよっ!もしもし!?」

 

『シュンーッ!さっき思い出したのデスが、勉強終わった後にアイス買ってくれる約束が──』

 

「明日買ってやっから、今日はもう大人しく飯食ってあったかくして寝ろ!!」

 

 さっきとほとんど同じ内容の電話に俺は半ばヤケクソ気味に返事をして電話を切った。

 

「えーと、猫猫…」

 

 さっきの場所を見ると、猫はまだ逆立ちをしていた。

 

 多分そろそろ猫は逆立ちをやめてしまう。急いで写真を撮らねば。

 俺はそう思い、携帯のカメラ機能を急いで立ち上げる。………が。

 

『アッタマテッカテーカ、さえてピッカピーカ♪』

 

「……ってなあああっ!違う!!」

 

 慌ててたもんだから俺はカメラ機能ではなく、音楽機能を立ち上げてしまっていた。

 

 俺は音楽を停めて、急いでカメラ機能を作動させた。

 

 今度こそ、ちゃんとカメラになったのを確認し、俺はさっきの猫の方へと携帯を向けたが…。

 

 ………………猫は四足歩行に戻っていて、遠くの彼方へと歩いていってしまい、俺はそれをぽつねんとただ見ている事しか出来なかった…。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 あの後、帰路に戻った俺は、勇さんにアイスを渡すために大宮家の玄関まで来ていた。

 

「…………勇さん」

 

「………なに?」

 

「…………俺今度、デジカメ買いますわ」

 

「………それは良かったけど、いったいなにがあったのよ…」

 

 落胆している俺の様子を見て、勇さんはそう口をこぼした。

 

 

 

 

 [おまけショートこぼれ話]

 

 ~勇Side~

 

 ──小さな頃、忍はいつもボンヤリした子で、大丈夫かなとよく心配したものだけど、最近は熱中できるものを見つけたからか、昔に比べるとしっかりしてきたように思う。

 

「勇さん、そんな遠い目をしながらモノローグしてもなんの説得力もありませんよ?」

 

「次はこっちを着てください♡次はドレスを…。はあはあ」

 

 峻君から指摘をされつつ、頬を紅潮して興奮した様子でアリスを着せ替え人形にして楽しんでいる忍を見て、私は思った。

 

 ──妹の将来が心配です。

 

「峻君、あれどうにか出来ないの?」

 

「勇さんがどうにも出来ないものを俺がどうにか出来るわけないじゃないですか。ましてや着替え中ですし」

 

 まあそれはわかるんだけどさあ。

 

「…将来的な事を考えると、そろそろどうにか出来ててほしいのよねえ」

 

「え?今なんて言ったんですか?」

 

「なんでもないわ」

 

 ──弟の将来も心配です。

 

 ~See You, next time!~




はい、というわけで、アニメ5話は一旦これで終わりです。

陽子とカレンの着信音は、

陽子→太陽→サン、
というわけで『サンサンたいそう』。

カレン→東山奈央→ニセコイ、
というわけで『Rally Go Round』。
そこ、東山奈央さんの歌じゃないんかい(笑)

因みにヤツが『ぼくドラえもん』聴いてた事には特に意味はありません。ただ好きなだけです(笑)

それではまた、できるだけ近いうちに。
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