きんいろモザイク ~plus α Road Days~ 作:T93
「おはよう、勇さん」
「あら、峻君おはよう」
朝の7時半。俺はしのの家の前まで来て、これから学校に向かうであろう勇さんと会った。
「しのは?」
「さっきやっと起きて今ご飯食べてるわ。今日も待つ?」
「はい。どうせ他にも待ってる奴らいるんで」
「ごめんね。毎日面倒かけて」
「もう慣れっこっすよ」
「ふふ、そっか。じゃあね、峻君」
「うん」
そんなやり取りをし、俺は勇さんを見送った。
因みに勇さんは、俺やしの達とは違う学校だ。
しのが若干寝坊して、起きて支度して朝食を食べるのを俺が待つ。それはもう小学校からの俺の習慣になっており、高校に入っても変わることはなかった。
〜20分経過〜
……おかしいな、いつもならもうそろそろ出てくる頃なのだが。
「…お邪魔しまーす…」
俺はしのの家の玄関を開けることにした。頼むから玄関先で二度寝(もしくは三度寝)だけはやめてくれよ。
俺が玄関の戸を開けるとそこには…。
「わー。全部英語だ〜」
「……何やってんの、しの」
しのが玄関の上がり
「あ、峻君!おはようございます」
「うん、おはよう。…で、何してんの」
俺が再度聞くと、しののお母さんが奥からやってきた。
「忍!あんた学校は!?」
「すみません、直ぐに連れて行きますので!!」
「こっちこそ、うちの娘がいつもごめんね!!」
俺はしのを連れ出して、大宮家を後に学校へ向かった。
※ ※ ※ ※ ※
「あ、やっと来た」
「しの、峻、遅ーい」
俺としのが急いで向かっていると、俺達4人が出掛ける時や登校する時の待ち合わせにしている、駅前の大きな木の前で、綾と陽子がそこで待っていた。
「はぁ、はぁ、すまん。しのが手紙読んでたらしく、それで遅れた!」
走りながら聞いたのだが、しの曰く玄関先に自分宛の手紙が置いてあり、それを読んでいたとのことだった。
「手紙?」
「これです」
「あ!エアメール?」
しのが持っていた手紙はエアメール、外国の人に送るトリコロールカラーの縞々模様が付いたやつだった。
「もしかして、昔イギリスにホームステイした時の?」
「はい、アリスからです!」
「おー!不思議の国かー!」
「イギリスね」
陽子の天然発言に綾がツッコミを入れた。
「確か、同年代の金髪の女の子だったっけ?」
「はい。でもこの手紙、全部英語で書かれていて、読めなくて困ってたんです」
「「読んでたんじゃないんかい!」」
俺と陽子は揃ってツッコんだ。
「ちょっと見せてー。おお、ホントに英語だー!えーと、dear Sinobu…」
「陽子ちゃん、私は大宮忍ですよ」
「おい高校生」
これぐらい知っとけよ。外国好きなら尚更。ほら、道行く見知らぬお姉さんにちょっと笑われたぞ。
「!も、もう後にして!早く行くわよ!」
綾もお姉さんに気づき恥ずかしがった。
※ ※ ※ ※ ※
暫く歩いていると、俺達がこの春から通っている高校、《県立もえぎ高等学校》に着いた。
「手紙来たの初めてなんだ」
陽子がさっきの話を再開させた。
「はい!何が書いてあるんでしょう?」
「仕方ないわね、見せて」
しのが困っていると綾が英語の訳を買って出た。
でも、あの顔はそこまで自信があるわけじゃあなさそうだ。
「えーと…、"日本に来る"って書いてあるわ。(…多分)」
あの顔は『多分』って顔だ(笑)
「すごーい!綾ちゃん英語が読めるんですか!?続きはなんて?いつ来られるって書いてますか?」
キラキラした瞳で綾を見るしのに綾はたじろいだ。
「フッ…。しのの期待を裏切るな?綾」
「よっ、綾大先生ファイトー(笑)」
「よ、陽子、峻、うるさい!!」
困っている綾を俺と陽子でからかった。
いつも良いリアクションをする奴だ。
「ていうか、峻は英語の成績は確か私より良かったはずでしょ!?あんたが読んであげたら!!」
「あ。俺、図書室に借りたゾ◯リの本返しに急がにゃならんから。じゃ、後頑張れよ〜」
「こら〜っ!逃げるな〜〜っ!!」
綾の叫喚を背に、俺はしの達と別れ図書室に向かった。
※ ※ ※ ※ ※
図書室で本を返した俺はふと、もの思いにふけった。
それにしても、しの達と知り合ってからもう、7年近くか。
綾とはまだ数年程度だが、最初の頃と違って、今さっきの様に気のおけなく話し合える仲にもなった。他の変化と言えばツインテールが昔より長くなって、腰辺りまで伸びたぐらいかな。
陽子とは、本人のボーイッシュな性格もあって、時には悪ノリし、時には周りのボケにツッコミし合う仲。身長は昔は俺と同じくらいだったのが、今は俺より1cm、ほんの1cmだけ上だ。これは俺の身長が低いのではなく、陽子が女子の平均よりも背が高いだけである。その証拠に平均的なしのと綾より俺は身長は上だ。…かろうじて…。そして陽子の身体的変化と言えば、やっぱり大きくなったむn……何処かの黒髪ツインテールにぶん殴られる気配がしたのでこの話はもうやめよう。
そして、俺達の中心人物と言える女の子、忍こと、しの。髪は昔に比べて少し伸びたが相変わらずのおかっぱヘアー。たまにぼんやりしてて、素っ頓狂な事も言ったりしてるが、おっとりしてて優しい笑みを浮かべてるのがほぼ常だ。俺がこの街に引っ越して最初に知り合った女の子で、俺はその子…しのに………。
「誰かいるんですか?」
「ぅわっひゃいっ!!」
俺が物思いにふけっていると図書室の外の廊下から、誰かが顔を出し図書室を覗いてた。
サイドテールをシュシュでとめた髪型をしている女性だ。スーツを着てるから、見たところ先生かな?
「もう、
「は、はいっ!すみません!」
結構厳しそうな先生だ。美人ではあるが。
時計を見ると本当にそろそろ時間だった。ちょっと考え過ぎていたか。少々急がねば。
俺は速歩きで教室に戻って行った。廊下を走ったらまた、怒られてしまうからな。
「…………そこまで怖がらなくても……」
帰り際、後ろから何かボソッと聞こえた気がしたが、先を急いでいた俺は気にせず歩く事にした。
※ ※ ※ ※ ※
「金髪の女の子に会った?」
時間ギリギリで自分のクラスに着いて、HRが始まる直前に綾と陽子からそんな話を聞いていた。因みにしのは今、授業の道具を整理中だ。
「そうなのよ。峻としのがいない時に下駄箱近くの廊下で…」
「しのがいなかったのは何で?」
「あー。しのの奴、外靴のまま学校に入って戻って行ったんだよ。で、その時にその子が来たんだよ」
「あの子、しのを探してる様子だったんだけど、すぐ先生に呼ばれちゃってて…」
随分タイミングが良いというか悪いというか…。
てか、しのを探してる金髪の女の子?
それにさっき綾が断片的に読んだ手紙の内容的に、まさか…。
「ねぇ、綾、峻、しのの事なんだけど…」
おっ、陽子も流石に気づいたか?
俺も陽子に続く。
「その女の子、しのを探してたんだよな?」
「えぇ、うちの制服着てたし。だからもしかしたらあの子…」
「いや、そんなことより私は、しのがこけしにしか見えないんだけど」
「そっち!?」
「なんの話だ!!」
陽子はやっぱり陽子だった。
どうも、さっきの女の子はしのを探す際、こけしを取り出し、この人形にそっくりな子を探してると言ったそうな。いや、俺も最初に会った時思ったけど、直接言っては失礼だろう。いや、本人には言ってないみたいだけど。
なんて話していると、このクラスの担任の
「おはようございま〜す」
「先生!おはようございます!」
「大宮さん、今日も元気ね〜」
「はい!」
「カータレットさん、いらっしゃい」
烏丸先生はしのと挨拶を交わした後、廊下に向かって呼びかけた。すると女の子が一人入って来た。
その子は背は低かったが、日本人離れした青い瞳に、ピンクのカーディガンを羽織り、ウェーブのかかったツインテールに簪を指し…、そして金髪だった。
「あ!」
「さっきの!」
「……アリス……!?」
綾と陽子としのは、それぞれ金髪少女に驚いていた。
そして金髪少女がしのを見つけると、笑顔が高揚していき…。
「シノブ!シノブー!!」
しのに抱きついた。
「わぁ、アリス!本当に日本に来たんですね!!」
「うん、シノブに会いに来たよ!」
「アリス!日本語!?」
「いっぱい勉強したよ〜」
「なぁおい、さっき会った子って」
「うん、あの子だよ」
しのとアリスと呼ばれてる子が喜びあってる中、俺は確認の為、陽子に聞いた。
てことは、やっぱりあの子がしののホームステイの時に仲良くなった女の子だったらしい。
それにしても日本語上手いな。しのの驚きようからすると、会った頃はおそらく喋れなかったんだろう。しかし、今少ししか喋ってないが、外人特有の片言日本語等でもなく流暢に日本語を喋り、全く違和感を感じなかった。
「カータレットさん、先ずは自己紹介からね?」
「あ!ごめんなさい!」
アリスは先生に言われ謝罪した。
先生が黒板にアリスのフルネームを書くと、アリスは自己紹介を始めた。
「はじめまして。アリス・カータレットと申します。イギリスから編入してきました」
「……えーーーっ!!」
「いや、今かよ!!」
「気づくの遅!!」
驚愕したしのに俺と綾はツッコんだ。
「手紙に書いたよ?」
「英語だったので…」
「そう思って二枚目はローマ字で書いたよ」
「えぇっ?」
アリスの言葉に今度は綾が驚いた。
「綾」
陽子が冷めた目で名前を言い。
「まぁ、そういう時もあるさ。次、頑張れ」
俺は綾の肩にポンと手を置き、生暖かい目でねぎらいの言葉をかけた。
「あんたに言われると腹立つわ!!」
心外だ(笑)。
※ ※ ※ ※ ※
休み時間になり、アリスは他のクラスメイトから転校生の必須イベントの質問攻めにあっていた。ましてや海外からの留学生だからなあ。
暫く質問攻めにあっていたアリスはフラフラしながらもしのの所に漸く来れた。
「アリス、大丈夫ですか?」
「ううっ、やっとシノブと話せるよ〜」
「それにしても高校入学早々、外国の友達ができるなんてなー」
「あ、貴方方は!先程はありがとうございました!」
アリスが綾と陽子に気づき、丁寧に挨拶を交わした。
「そんなに畏まらなくて良いわ。私は小路綾」
「私は猪熊陽子。あと敬語じゃなくていいよー」
「コミチ…アヤ。…と、イノ…クマ?」
「イノシシにクマで猪熊!ちょっと強そうでカッコイイでしょ?」
陽子は得意気に言ったが、それに対しアリスは。
「ワ…ワタシ、食ベテモ、オイシクナイノデ…」
「カタコト!!」
青ざめて、さっきの流暢な日本語はどこへ行ったのやら、片言で喋りながら後ずさった。
「大丈夫、大丈夫。陽子は確かによく食べる子だけど、流石にそこまで雑食じゃあないから」
俺はすかさずアリスにフォローをいれた。
「フォローになってねーよ!半分馬鹿にしてるだろ峻!」
「ソンナコトナイデスヨ」
「お前がカタコトになっても可愛くねーよ!!」
俺の友人達は打てば響くから楽しいわ。
……ん?
「ジーーー……」
アリスがこちらを見てきていた。
「あぁ、すまん。俺は鹿ヶ谷峻。よろしく」
「……貴方もシノブと親しいの?」
「え?おう。陽子よりは短いが小学校からの付き合いだからな」
「へー…」
な、なんだろう…。アリスがやけにこっちを睨んできてるような…。
「…………ひょっとして、」
「?」
「シノブのBoy Friend…?」
「………………………………なぁっ!!!?」
「はい!峻君は私のボーイフレンドです!」
「びゃあっ!!!?」
アリスのトンデモ発言としのの仰天発言に俺はそれぞれ驚愕した。
「し、しっしししししししの!?俺達何時からそんな関係に!?」
「え?嫌ですねぇ。私達会った時からずっとお友達じゃないですか〜」
………………ん?
「ねぇしの、ボーイフレンドの意味分かってる?」
「もう綾ちゃんたら、流石に私もボーイとフレンドくらいは知ってますよ。"ボーイ"は"男の人"で、"フレンド"は"友達"ですよね?峻君は私の大切な"男友達"です!」
………………。
えぇ、わかってましたよ。
どうせそんなこったろうなんじゃないかと思ってましたよ。
だってあのしのだもんよ。
だから全然がっかりしてねぇよ?
「あのね、しの?ボーイフレンドっていうのはね?」
「はい?」
綾がしのに正しいボーイフレンドの意味を教えると、しのの顔がだんだん赤くなっていった。
「ち、違います!アリス!私と峻君はただの友達です!」
ただの友達。
「全然そんなんじゃ全くありませんから!」
そんなんじゃ全くない。
「ね?峻君、私達お友達ですもんね?」
「ソウデスネ」
「なんで峻君もカタコトなんですか!?」
しのの精神攻撃(無自覚)に俺が耐えている中、陽子はしのと同じくわけのわかんないような顔をしていて、綾はプルプル震えながら笑いを堪えていた。
はっ倒すぞコラ。
「……そっか!ごめんなさい、わたしてっきりシノブを狙う"不埒な輩"かと思っちゃった!」
何処で覚えんだ、そんな日本語。
「改めまして、わたしの名前はアリス・カータレットです!"シュン"、だったよね?宜しくお願いします!」
「お、おう。宜しくアリス」
俺の勘が正しければコイツは、しの大好きっ娘だ。今は仲良くしてくれてるっぽいが、しのに下手な事すれば逆鱗に触れかねん。
ちょっと前途多難だわ…。
そう考えてると綾が俺の肩に手を置いてきた。
「これから色々大変だろうけど、そういう時もあるわ。まあ頑張りなさい♪」
「さっきの仕返しかコノヤロー!!」
※ ※ ※ ※ ※
アリスとの自己紹介が済んだ、次の休み時間。
「それにしてもアリス、日本語上手いよなぁ」
「とてもしののホームステイ時、喋れなかったとは思えん」
「すごいですねー」
「本当に全く喋れなかったの?」
俺達はそれぞれアリスに思い思いの言葉を発した。
「うん。アリガトと
「私はハローくらいなら喋れました」
「……他には?」
「………ガッツポーズ!とか」
「それ、和製英語!!」
「しの…、中学生でそれは…」
「いやいや、流石にそれはないだろ。でないとこの二人、ホームステイをその単語だけで乗り切ったことになるだろうが」
俺は冗談のつもりで言ったのだが、
「え?いけましたよ?」
「「「マジかよ!?」」」
しのの発言に俺達3人は驚愕した。
〜忍とアリス、イギリスホームステイ回想録〜
〘出会い。〙
「ハロー、大宮忍です」
「コ、コニチワー」
〘ふれあい。〙
「ハロー」
「アリガト」
〘別れ。〙
「ハロー!ハロー!」
「コニーチワー!!」
〜ホームステイ回想録、Fin.〜
「こんな感じでちゃんと会話になってましたよ」
「「「なってない(ねぇよ)‼」」」
しのとアリスの奇天烈昔話に俺達はツッコんだ。
「よくそれで一週間もって仲良くなれたなオメーら!!」
「いやあ、それ程でも」
「褒めてねぇよ!!」
「あ、あはは…。それにしてもアリスの髪と瞳、凄く綺麗ね。お人形さんみたい」
確かに金髪のウェーブの髪も透き通るような青い瞳も、とても綺麗だった。
その意見にしのも賛同した。
「分かります。ドレスを着せてショーケースに入れて一日中眺めたいですよね。なーんて♪………あれ?」
しのの発言に俺達3人はおろか、アリスでさえドン引きした。
「そ、そんなことしません!ジョークですので笑って下さい!!」
しのは笑う所です!と慌てて弁解した。
「あ…、本気だと思った」
「お前、昔から外国と金髪が好きだったからつい…」
「だからってそれはあんまりです!実際は近くにおいて眺め続けます!!」
「それもどうなんだ」
「ねぇ、アリス。その簪、可愛いなー」
陽子がアリスの髪に刺してある簪について触れた。
「あ…。これはホームステイの時、シノブがくれたものなの…」
「!そういえばプレゼントしましたね。あの時のものを今も大事に…。でも、私簪って刺すものだと思ってました。人を」
「怖えぇ!!」
「仕事人か!」
「………ああ!ひょっとして、あん時のあれか!」
「あれ?」
「ほら、お前が簪の件で俺に電話してきた…」
「ああ!そうです!峻君に使用法を聞いたんでした!」
確かそん時ホントにアリスの首に刺して怯えられたとか言ってたな。…ホントによく仲良くなれたなこいつ達。
「あー。峻がしのから電話来て嬉しそうにしてた時のやつかー!」
「黙れ猪熊」
「名字!?」
「……シュンは本当にシノブに変な気とかないんだよね?」
ほら見ろ、陽子のせいでアリスにまた疑いを掛けられちまった!
「もー、アリスは心配性ですねー。さっきも言いましたけど、峻君は私の大切なお友達です。これまでも、そしてこれからも、ずっとお友達、ズッ友ですよ!ね?峻君。…あれ?峻君ったら、どうしてこの世の全てに絶望したかのような顔をしているんですか?」
「ベツニ。オレオマエズットトモダチ」
「カタコト、流行ってるんですか!?」
※ ※ ※ ※ ※
放課後。
「みんなー、帰ろーぜー!」
「ういー」
「はい!」
陽子の呼びかけにそれぞれ答える。
「そういえばアリスは今どこに住んでるの?」
「久しぶりにアリスのお母さんにも会いたいです!」
「あ、私一人で
「!?」
「じゃあ日本に居る間はどこに住むの?」
「えっとー、シノブの家にホームステイを…」
アリスは照れくさそうにそう言った。
てことは、しののお母さんこの事知ってたな。
「アリス!!」
「?」
しのが突然声を上げた。
「そんな…。たった一人、住む所もなく…」
「え?」(゜∆゜;)
どうやらしのはアリスが路頭に迷ってると思っているらしい。
「おい、しの。ちゃんとアリスの話聞…」
「私の家に来ていいんですよ!何もない家ですが!!」
しのはそう言ってアリスに抱きついた。
「あのっ、そのつもりで…!」
アリスは困惑し、その二人の様子に陽子は笑い、俺と綾は呆れていた。
「じゃあ、私達はここで」
「しのー、峻ー、そしてアリスー、またなー!」
5人で暫く通学路を歩き、俺としのの家の方角に続いていく横断歩道の前で、綾と陽子と別れた。
「シュンは同じ方向なの?」
「あ、はい!峻君は私とは一番ご近所さんなんですよ!」
俺の代わりにしのが答えた。
「ふーん…」
アリスがまたこっちをジト目で睨んできた。
それぐらいは勘弁してくれ…。
そんなこんなでしのの家の前に着いた。
「アリス、今日からよろしくお願いしますね?」
「ふ、不束者ですが、宜しくお願いシマス!」
緊張してるなアリスのやつ。
「それでは峻君、また明日です!」
「おう。アリスもまたなー」
「うん!さようならー。………ふっ…」(-ω´-*)☆
別れ際にアリスがドヤ顔してきた。
アレか、ご近所よりも一緒に住んでいることの方が仲良しだから私の勝ちとでも言いたかったのだろうか。
まあアイツのドヤ顔、大人ぶりたい年頃の幼女とかにしか見えなかったから全然イラつかなかったけど。
…綾じゃねぇけど、これから更に騒がしくなりそうだ。
[おまけショートこぼれ話]
次の日の休日の朝。
俺は外へ出て新聞を郵便受けから取る何やら近くからバシャバシャと水の音がした。
門から出て周りを見渡すと、しのの家の前でアリスが半纏を着ながら何やら水を撒いていた。
「何やってんの?」
俺はアリスに近づき話しかけた。
「あ、シュン!おはよう!」
「うん、おはよう。で、お前は何してんの?」
「水撒きだよ!日本の朝の風習なんだよね!」
「せめてもう少し暑くなってからにしろよ」
4月とはいえまだちょっと肌寒いから見てるこっちが寒くなる。
「で、どうだった?しのの家は」
「ん?うん!シノブもシノブの家族も優しくて、とっても良くしてもらってるよ!」
「そうか、そいつは良かった」
アリスは得意気に答えた。
「しのの家、全室フローリングな上しのが無類の外国好きなもんで殆ど洋風で囲まれてるから日本らしくなくてガッカリしてるかと思ったよ」
「…………ソンナコトナイヨ」
アリスはガッカリを隠しきれなかった。
まあ、俺だってもしヨーロッパに行って住む所が田舎のじいちゃん家みたいな家だったらガッカリするけどさ。
「あ、そうだ。シュンにもシノブ達にあげたお土産一つあげるよ」
「おー、ご丁寧にどうも」
「空港で買ったどら焼きだよ!」
「メイドインジャパン!!」
~See you, next time!~
ギスギス系は私は嫌なので仲を悪くはしませんが、アリスならこんな感じになるのでは?という思いもあるので最初は若干距離があるカンジです。すぐに親しくなりますんでご心配なく。