きんいろモザイク ~plus α Road Days~   作:T93

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前回の続きをどうぞ。


第21話~いざ、みんなで川遊び~

「綾、お願いだ!」

 

「!?」

 

「私、綾と一緒なら何でも出来る気がするんだ!」

 

「えっ!?なによ突然?」

 

 1人の少女はもう1人の少女の手を取り、真剣な眼差しで想いを告げ、そのまま引き連れ走り出した。

 

 

 ……飛び込みポイントである浅めの滝の前まで。

 

 

「だから共に飛び込もう!」

 

「行けるわけないでしょー!!」

 

「……お前らなにしてんの」

 

 恋愛ドラマみたいなノリで川に飛び込みたがっている陽子とそれに巻き込まれかけてる綾を、俺は呆れながら見ていた。

 

 

 そんな訳で、山の渓流に来ていた俺達は釣りをして昼食を終えた後、川の周りで遊んでいたのだった。

 

 

「あー、こんなことなら水着持ってくれば良かった!」

 

「そんなに泳ぎたいの?」

 

「小さい子供じゃあるまいし、眺めを楽しもうぜ」

 

「…………………いや…………」

 

 陽子は一拍置いた後、

 

 

「そんな格好してる奴に宥められたくねーよ!!」

 

 

 海パン(トランクスタイプ)1枚に青いシャツを羽織った状態になっている俺を見てそう叫んできた。

 

「ずるいぞ!水着持ってきてたのか!」

 

「ふっ。女子と違って男子の水着は海パンひとつでさほど荷物にはならないからな」

 

「くそうっ、私も空太(陽子の弟)から海パン借りてくれば良かったー!!」

 

「いや、空太まだ小学三年生だからサイズ合わんだろ」

 

「大丈夫、いける!」

 

「いけないわよ!というか、サイズ合ってたとしても着させないわよ!!」

 

「くっ!こうなったら峻、せめて飛び込んだ時どんな感じだったかだけでも教えてくれ!」

 

「え?飛び込まないけど」

 

「なんでだよっ!?」Σ(¯□¯;)

 

「いや、持ってきたはいいんだけど、あらためて皆泳がない中1人だけ泳いで満喫するのは些か申し訳がないなあと思ってさ」

 

「じゃあなんで着替えた!?」

 

「これなら涼めるから。ほら、普段着で半裸に前開けたシャツ1枚の状態だとなんとなく変態ぽくない?でもその点、水着姿でシャツ羽織って前開けてもそんなにおかしくない」

 

「……………………確かに!」

 

「納得!?」

 

 俺の説明で陽子は納得してくれたが、綾は微妙に疑問らしい。

 因みに全身に虫除けスプレーもまんべんなくかけ、虫対策も抜かりないぜ。

 

 

 

「あーあ。せっかく川にいるのに眺めてるだけなんてなー」

 

「そうだなー」

 

「お前は泳げるだろー」

 

「だから申し訳ないんだって」

 

「それデシタラ!」

 

 陽子とくっちゃべっていると、突然カレンが靴を脱いで川の浅瀬へと進んで行った。

 

「ここは水遊びで我慢しまショー!青春っぽいデス!」

 

「わっ!」

 

「うおっ!」

 

「冷たっ!」

 

 カレンが両手で川の水を俺達に飛ばしてきた。

 

「……よーし!」

 

 それに感化され陽子も靴を脱いで川へと入っていった。

 

「ひゃー!冷たー!ほら綾、気持ちいいぞ!」

 

「ほら呼んでるぞ」

 

「べ、別に私はいいわよ。貴方も行ってきたら?」

 

「そーかい」

 

 そう言い俺も靴を脱いで川へと入っていく。

 

「わぁっ!やったなー!」

 

「ヨーコ、隙ありデース!」

 

「そういやカレン、しのとアリスは?」

 

「あー。あっちで蟹さんを見てたデスヨー。ひゃあっ!?」

 

「お返しだー!」

 

「反則デスー!シュンが話しかけるカラー!」

 

「俺のせいかよ。ん?」

 

 陽子とカレンが水のかけあいっこをしていると、後ろから誰かが川に入ってくる音がしたので振り向くと、そこには綾がいた。

 

「す、少しだけ、付き合ってあげるわよ…」

 

「……そーかい」

 

 俺は口角を少し上げてそう呟いた。

 

 

 

「おーい、青春ごっこ2名追加なー」

 

「おう!よーしカレン、峻を狙うぞー!あいつはどんなに濡らしても問題ないから一切容赦はいらん!」

 

「OKィ!全力全開!一斉射撃デース!」

 

「ぶほぉっ!お、おい!お前らそんなに水ぶっかけてくんな!水着ではあるが、シャツも羽織ってんだし!ぶばはぁっ!おいこら陽子!お前さては水着持って来れなかった腹いせに攻撃してるなごぼはぁっ!綾!お前さっきまで水遊びにそんな乗り気じゃなかったくせになんでこういう時はノリノリなんだよ!ぶおっ、ちょっ、お前ら、や、やめ…!やめろゴラァッ!!」

 

「怒ったー!」(/`ヮ ´*)/キャー

 

「逃げろー!」ε=(ノ*>∀<)ノ

 

「………っ」ε=(˶⩌`− ⩌)

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「はーっ…!年甲斐にもなくはしゃいでしまった」

 

「年甲斐って歳でもないでしょう」

 

 陽子達とひとしきり川遊びを堪能した俺は、綾と一緒に近くの手頃な岩に腰掛けて休んでいた。シャツは絞って天日干ししている。

 

「はい峻」

 

「ん?」

 

 綾が突然紙コップに入った麦茶を渡してきた。

 

「私が持ってきた麦茶よ。一応、朝のお礼をと思って」

 

「……おう、サンキュ…」

 

 俺は麦茶を受け取って口に含んだ。

 

「1杯80円ね」

 

「ブーッ!!ケホッケホッ!金取んのかい!?」

 

「冗談よ」

 

「んなとこまでお返しせんでいい!値段がリアルだったから信じちまったじゃねーか!」

 

「ごめんなさい。クスクス…!ほら注ぎなおしてあげるから」

 

「ったく…」

 

 イタズラが成功してご満悦な様子で、綾は紙コップに再びお茶を注いでいた。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「おーい、峻ー!」

 

「滝の前で写真撮って下サーイ!」

 

 まだ川遊びをしていた陽子とカレンに呼ばれた。

 

「ほら、呼ばれてるわよ?」

 

「ったく、元気なやつらだ。あいよー、カメラ取ってくるからちょっと待ってろー!」

 

 俺は麦茶を一気飲みし、鞄を置いてある所に行くとそこからカメラを取り出し、陽子達のもとへと向かった。

 

「撮るぞー」

 

「「イエーイ!」」

 

 掛け声とともに、滝を背景にした陽子とカレンの写真を撮った。

 陽子は両手を挙げてバンザイのポーズ。カレンはいつかの勇さんに撮られた時にやってたヒットマン(俺主観)みたいなポーズをしていた。

 

「よーし、もっと近くで撮ろうぜ!」

 

「撮りまショウ!」

 

「おい、あんま近づき過ぎて深い所に行くなよ?川をなめてると河童も川流れするぞ」

 

「カッパ?」

 

「河童は日本の妖怪、オバケみたいなものね。『河童の川流れ』はそれになぞらえた有名なことわざよ。河童は泳ぎが得意なんだけど、そんな人…いや、河童は人じゃないわね。動物?…まあとにかく、そんな生き物でも失敗する事があるって意味よ」

 

「川からオバケが流れてくるデスカ!?」

 

 綾の解説を聞いたカレンは顔を青ざめて、怯える様子を見せた。

 

「単なるおとぎ話だよ。んなもん実際は流れては…ん?」

 

 カレンを落ち着かせようと宥めている時、ふと足元の方を見てみると…。

 

 

 

 

 

 河童じゃなくて、こけしが流れてきた。

 

 

 

 

 

「シノー!!」

 

「─って!なにやってんだお前は!?」

 

 上流の方からやってきたアリスの悲鳴で改めてよく見ると、それはラッコの様に川に流されていたしのだった。

 

 

 

「もう一度言う。なにしてんだお前は!?」

 

 しのを川から引き上げ、問い詰めた。

 

「飛び石の上を歩いていましたら、うっかり足を滑らせてしまいまして…。ううっ、服が水を吸ってすごい重さに…」

 

「そんなことより早く着替えろ!!また風邪ひくぞ!」

 

「この前と違って今回は真夏でカンカン照りだからそんなに慌てなくても多分大丈夫じゃないか?」

 

「峻、完全にしのの風邪ひき事件がトラウマになっているわね」

 

「シノ大丈夫?ケガは無い!?」

 

 俺がしのの心配をしていると、アリスもしのの安否を確認する為に駆け寄ってきた。

 

「あっ」

 

 すると次の瞬間アリスは足元を滑らせ、しのの方へと倒れかかってきた。

 

「ひゃあっ」

 

「Oh?」

 

「えっ」

 

「ん?」

 

 その反動でしのも後ろへと倒れかかり、しののすぐ後ろにいたカレンにぶつかった。すると更に、その近くにいた綾にカレンが倒れてきて綾もバランスを崩し、綾は思わず近くにいた陽子の服を掴んでしまいその陽子もバランスを崩した。

 

「危ねぇっ!」

 

 このままでは足元の川の中に入ってしまい全員ずぶ濡れになってしまう。そう思った俺は全員を支えようとしのとカレンの間に入ろうとした。…が。

 

「あらぁっ!?」

 

 足を滑らせてしまい川へと顔から入ってしまった。

 

 その結果、しの達を支えることが出来ず、その場にいた全員が川へとダイブしてしまう羽目になった。

 

 川や川の近くで走ると危険ですのでやめましょう。

 

 

 

「も~~~~っ」

 

「ごめんね、みんな…」

 

「HAHAHAHA!」

 

「ゴボゴボゴボゴボ」

 

「あはは。まー、夏だしすぐ乾くよ!」

 

「でも汚れてしまった服は戻らないです〜!」

 

「ああっ。しのの純白の服が泥だらけになってるわ!」

 

「ガバゲベゴボガバッ」

 

「そんな服着てくるから!」

 

「ショックです…」

 

「泣かないで!服なんてなくてもシノは妖精だから大丈夫だよ!」

 

「ゴボガバゲバベヴァガボゴボ!!」

 

「……なんかさっきから変な音聞こえね?」

 

「音…というより、声っぽいような…?」

 

「あー、それはさっきからシノがお尻でシュンの頭を押さえつけているノデ、シュンが川カラ起き上がれなくなっているカラデスネ」

 

「ガバゲベゴボボゴバボベゴゴボバガアッ!!!」

 

「えーっ!?峻君ごめんなさい!!」

 

「ていうかお前も気づいてたんなら早く言えよ!」

 

 

 

「ゼーッハーッ!ゼーッハーッ!!」

 

 危うく川と尻に殺されかけた俺は酸素をめいいっぱい取り込んでいた。

 

「大丈夫シュン!?」

 

「大自然と肉厚の脅威をこれでもかと感じた」

 

「に、肉厚って言わないで下さい!」(///>ㅁ<//)︎՞ ՞

 

 しのは照れながらお尻をおさえた。

 

「あっ!そういえばシュン、カメラも水に浸かっちゃったんじゃ!」

 

「ああ、それは大丈夫だ。こんな災難にあうこともあるだろうと思って防水かつ丈夫なやつを買ったから」

 

「自分をよく理解出来ているわね」

 

「その分高くついたがな。なにせ自分のバイト代や小遣いの前借りまでして買ったからな。おかげで今年の夏は今日と夏祭り以外はほぼバイト三昧の日々で終わる事になった」

 

「シュンの目がうつろに!!」

 

「峻君…、もうウチにアイス届けなくてもいいですよ?」

 

「まあそんなことよりもほら、皆びしょ濡れじゃねえか。全員早く着替えろ?いくら夏でもこのままじゃ本当に風邪ひくぞ」

 

「………………」

 

「?陽子、どうしたのよ?滝の方じっと見つめて」

 

「……まさか…。おい陽子、ちょっと待」

 

「うぉ━━━━っ!!」

 

 俺の制止も聞かず、陽子は先程の滝の方へと走って行った。何度も言うが水辺で走ってはいけません。

 

 そして陽子は飛び込みポイントの滝の上まで登って行くと、

 

「わあ━━っ!!」

 

 ドボォーンッ!

 

 そこから思いっきり飛び込んで川の中へと入っていった。

 

「うひゃーっ!気持ちいい!」

 

「なにやってるのよ陽子!」

 

「だって、どうせびしょ濡れになっちゃってるから楽しまないと!」

 

「私も飛び込むデース!」

 

「ああっ、ちょっとカレン!…もうっ!」

 

 カレンも陽子に感化され、滝の方へと向かって行った。

 

「どうしよう?」

 

「もう、ほおっておきましょう」

 

「そうだな。あいつらなら風邪ひかんだろうし」

 

「おい聞こえてるぞ峻!それどういう意味だ!」

 

 

 

「ほら、陽子もカレンも充分楽しんだだろ?早く着替えろ」

 

「おう!」

 

「ハーイ!」

 

「じゃあ峻、着替えるからどっか行っててちょうだい」

 

「あいよ。カレンのお父さんに伝えた後、頂上にでも登って時間潰してるわ。せっかくここまで登ってきたわけだしな」

 

「ああ!!」

 

「!?シノ、どうしたの?」

 

「私、着替え持ってきてませんでした!」

 

「ええ!?シノ、それじゃあ本当にまた風邪ひいちゃうよ!」

 

「困ったわね…。私、着替えは1着分しか持ってきてないし…」

 

「私も…」

 

「私もデス」

 

 綾も陽子もカレンもしのに貸せる余分の服は持ってきてなかったようだ。

 

「こ、こうなったら!シノ!わたしの着替えを着て!わたしに構わなくていいから!!」

 

「構うわよ!それじゃあアリスが風邪ひいちゃうでしょ!」

 

「ていうかサイズ絶対合わないだろ!」

 

「でも、このままじゃシノが…!」

 

 アリスはどうしようかと困っていた。

 

「ったく、しょうがねえなあ…」

 

 俺は自分の鞄から、替えの服にと持ってきていたフード付きの半袖パーカーと短パンを取り出して、しのに渡した。

 

「ほらしの、これ着ろ」

 

「えっ…。いいんですか?」

 

「ああ。俺はさっきの服に着替えりゃいいだけだし。お前に風邪ひかれると本当に困るからな」

 

「……ありがとうございます。では、お借りします」

 

 そうして、しのに服を手渡した後俺は、タオルで体を拭いた後さっき干していたシャツを羽織ってその場から離れた。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「おー。こんな低い山でも頂上からの景色ってのは良いもんだなあ」

 

 しの達が着替え終わるまで俺は頂上まで登って景色を見たり写真を撮ったり堪能していた。山頂が低いのとカンカン照りのいい天気だったのもあってこんな格好でもそんなに寒くはなかった。すると、

 

『~♪』

 

「お」

 

 俺の携帯に着信音が鳴り、開くと『もう来ていいわよ』という文章のメールが綾から送られてきていた。

 

 

 メールを読んだ俺は登ってきた道を戻り、しの達の居る渓流まで戻ってきた。

 

「おーい」

 

「あっ、来たわ」

 

「シュンー、お待たせしまシター!」

 

「おう。山頂の眺め、わりと良かったぞ」

 

「マジで?じゃあ後で私達も登りに行こう!」

 

「わたし、ヤッホーって叫びたい!日本の登頂した時の伝統儀式!」

 

「それは別に儀式ではないわアリス」

 

「………………」

 

「ん?しの?」

 

 各々が会話をしている中、ただ1人しのは大人しくしてた。というか何やらもじもじしていた。

 

「どうした?男の服着るの抵抗あったか?」

 

「いえ…。そういう訳ではなくてですね…。というか峻君、あまりこっちを見ないでほしいです…」

 

「え、なんで?」

 

 なんかしのの奴、顔も赤くなっている。まさか本当にまた風邪をひいたんじゃ…!

 

 

 

「あー、あのデスネ。今シノ、シュンが貸した服の下はスッポンポンの状態なのデスヨ」

 

 

「…………………………え"っ」

 

 

「しの、服の着替え持ってきてないから下着の替えも持ってきてなかったのよ」

 

 …………………えっと……。じゃあ、つまり…、今しのは、俺の服を地肌で着てる、触れてる状態、という事に……???

 

 

「わあっ、なんだ!?急に峻から煙が出て全身真っ赤になったぞ!?」

 

「ええっ!熱中症!?」

 

「WAO〜!ギア(セカンド)みたいデス!それとも界王拳?」

 

「言ってる場合じゃないでしょ!今すぐ峻を川にほおり投げて熱を冷まさせるのよ!!」

 

 

 

 そんなこんなで最後の方色々あったが、俺達6人のお出かけ登山は楽しく終わったのであった。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 ~数日後~

 

 

「おはようございまーす」

 

「あ!峻君おはよう!」

 

 俺はバイトをしに『Restaurant Mathubara』へと来ていた。

 

「カレンちゃんから聞いたよ。皆で山登りに行ったんだよね!」

 

「え?あ、ああ。まあ山登りっつってもそんな大したもんじゃあなかったけどな」

 

「楽しかった?」

 

「…まあそれなりに。あ、写真見るか?」

 

「えっ、あるの!?」

 

「営業時間になるからちょっとだけだぞ」

 

「あ、デジカメ!買ったの?」

 

「まあな。ほれ」

 

 俺はデジカメを操作して画面をアルバムモードにすると穂乃花に手渡した。

 

「わあ〜!いい景色〜!緑も川も綺麗だね〜!どれもよく撮れてるよ〜!」

 

 俺の撮った写真を穂乃花が賞賛をくれた。初めてだったからちょっと心配だったが褒めてくれてよかった。

 

「釣りも楽しそうだし、魚も美味しそう。川遊びも楽しそうで…。んっ!?」

 

「?どうした穂乃花」

 

 突然穂乃花が動きを止め、画面を一点に見ていた。

 

「しゅ…、峻君、こ、これ…!」

 

 俺は穂乃花が指す画面の写真を見た。

 

「ああ、このカレンの写真か?川遊びしてる時に撮れたんだけど、我ながら綺麗に撮れたなと思った」

 

 そこに写っていたのは水かけをしているカレンの写真。だがそれは自分で言うのもなんだが、普通の写真ではなかった。

 水しぶきや逆行、そしてカレンの金髪などがいい感じにキラキラと反射していて、カレンの表情も普段の元気いっぱいな感じとは違い慈愛を感じさせるかのような微笑みの表情になっており、神秘的な雰囲気をかもし出していた。言うなれば "奇跡の1枚" な写真だった。

 

 自分でもこの写真を見て、写真家を目指せるんじゃないかとちょっと自惚れそうになったぐらいだった。

 

「……………峻君」

 

「なんだ?」

 

「………今、手持ちに5000円しかないんだけど、どうか今はこれで!」

 

「いらんいらん!!やるよ欲しけりゃ!!後でプリントアウトしたるから!!」

 

 大金を取り出そうとする穂乃花を俺は慌てて阻止した。

 

 

 因みにこの写真にお金出して買おうとした者は穂乃花で2人目だった。

 

 1人目は誰かと言うと。……いや、言わんでもわかると思うけど。

 

 

 

 ~その頃、大宮家では。~

 

 

「はぁ~~~~っ♡」

 

「……忍、何してるの?気味悪いんだけど」

 

「失礼ですね。ほら見てくださいお姉ちゃん!峻君からプリントアウトして貰ったカレンの写真です!」

 

「あら、いい写真ね」

 

「ですよね!こんな素敵な写真をタダで貰うのは失礼かと思って、私のお小遣い全てをはたいて払おうとしたのですが、峻君に拒否されてしまいまして…」

 

「でしょうねえ」

 

「ああ!カレンの金髪がいつも以上に煌びやかに輝いていて、もう何時間眺めていても飽きないですよ!いえ、飽きるはずありません!」

 

「(ああ、さっき向こうでアリスがなにか拗ねながら宿題してるように見えたのはそれが理由ね)……あら?」

 

「どうしました?」

 

「忍、あんたそんな服持ってたっけ?今着てるの」

 

「え?ああ、これですか?登山に行った時に着替えがなかった私に峻君が貸してくれた服なんですけど、峻君がそのまま貰ってくれと言いだしまして…。私はちゃんと洗って返すと言ったのですが、こないだ買ったばかりでそんなに着てないから気にするなと言い通されてしまいまして…。」

 

「…………(確か忍はあの時、下着の替えも持っていってなかったわね)」

 

「お姉ちゃんどうかしましたか?」

 

「なんでもないわ。峻君は健全だけど度胸というか根性がないわねって思っただけだから」

 

「?」

 

 

 

 [おまけショートこぼれ話]

 

 夏休みのとある日。俺はアリスを自分家に誘って一緒に夏休みの宿題をしていた。因みにしのは外出中でいなかった。

 

「シュン、ここで計算ミスしてるよ。こう計算して割るとこうなるから…」

 

「ああなるほど、サンキュ。あ、アリス。鎌倉幕府は前は1192年だったけど、今は1185年だからな?」

 

「そっか、変わったんだっけ。ありがとう!」

 

 こんな感じで互いに教えあったりしていた。まあ割合だとアリスに教わってる方が多いが…。

 

「ふー、ちょっと休憩。シュン、トイレ借りるね」

 

 そう言ってアリスは部屋から出ていった。

 

 するとその拍子にか、机の上に置いてあったアリスのノートが一冊落ちて中が開いてしまった。

 

「おっとっと。なんのノートだこれ?……こ、これは…!」

 

 

 『沢では、たくさんの魚が釣れました。

  シノはわたしの焼いた魚をおいしい

  って言って食べてくれました。

  今度は富士山に登ってみたいです。

 

 

 という文章とともに、この間の渓流釣りの様子の絵がなんとも可愛らしい絵柄でそこに描いてあった。どうやらこれはアリスの日記帳、いや絵日記帳だったらしい。…それにしても微笑ましい絵だ。まるで女児が描いたよう…

 

 

「ただいまー……、わぁーっ!?なに読んでるの!!」

 

 トイレからアリスが戻ってきた。

 

「すまんすまん。落ちた拍子に中身が見えてしまって、そのまま読んでしまってた」

 

「ううっ…!シノだけじゃなくシュンにまで…!」

 

 しのにも見られてたのか。

 

「こうなったら、シュン!お返しにシュンの日記もわたしに見せて!」

 

「すまん。俺日記はつけてないんだわ」

 

「そんな、ずるい!」

 

 いや、ずるいって言われても。

 

 

「わたしの恥ずかしいところを見たんだからシュンもなにかわたしに見せてよ!!」

 

「よーしアリス一旦落ち着け!!お前今とんでもない台詞口走ってたからな!今このタイミングで誰か来てたら確実に勘違いされ…!……あ」

 

 

 部屋の出入口の方を見ると、おやつと麦茶を持ってそのまま固まっていた俺の母さんがそこに居た。

 

 

「……最近小さい女の子への性的犯罪者が増えてきてるってニュースで聞くけど、まさかウチの息子がその内の1人だったなんて…」

 

「誤解だ!!!」

 

 奇しくもアリスの俺への反撃が本人の意思とは関係なしに成功していた。

 

 

 皆、人の日記は間違いでも勝手に見たらダメだぞ。

 

 

 ~See you, next time!~




おそらく今年の投稿はこれでラストでしょう。

なるべく執筆頻度を上げるようにいたしますので皆様、来年もどうか長い目で宜しくお願いいたします。
m(_ _)mペコリ

それでは良いお年を!
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