きんいろモザイク ~plus α Road Days~   作:T93

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今回でアニメ第2話の分は終わりです。

アニメでカットされた原作のネタも、少々入っていたりします。


第4話~○○になりたい~

 アリスが来てから、もう一ヶ月以上経つ五月某日のある日。

 

「進路希望の紙、明日までですよぉ〜」

 

 HR(ホームルーム)で、担任の烏丸先生が生徒全員にそう呼びかけた。そう、今クラス全員には中高生の必須イベントとも言える、進路希望用紙が渡されていた。

 

 先生の言葉に一部の生徒がボソボソと少し困ったような声をあげていた。まだ決まっていない人達だろう。かくゆう、俺もだが。

 

 するとしのが先生に質問した。

 

「質問です〜。先生はどうして教師になろうと思ったんですか?」

 

「先生は…。そうねぇ、気付いたらなってたわぁ。その場のノリ?」

 

「「「「「参考にならない!!」」」」」

 

 しの以外の生徒全員がツッコんだ。

 

「でも学生時代が一番楽しいわよ。学生で大変なことと言えば、睡魔との戦いくらいだものね…」

 

 そう言った烏丸先生は最後の方は目をショボーとしながらそう言った。

 

「あの、今も眠そうなんですけど!!」Σ( ´ロ`lil)

 

「先生、こっち見てくださーい」( >∀<)ノシ

 

「あ、はいー…」(⊃ωー`)

 

 

 

 HRが終わった休み時間。

 

「進路なんて考えたこともないよ…」

 

 アリスが進路希望用紙を見て、うーんと唸りながら悩んでいた。

 

「そんなに悩まなくても大丈夫ですよ」

 

 しのがアリスに話しかける。

 

「自分がどうなりたいか、考えればいいんです」

 

「はっ。(シノすごい)」

 

 しのの言葉にアリスは感心していた。

 

「はっきりとは決まってないけど、人の役に立てるような人間になりたいな」

 

「ほう、立派だな」

 

 アリスの言葉に俺は素直に感心の言葉を述べた。

 

「そんなことないよ、曖昧だし」

 

「なるほど。つまりこういうことですね…」

 

 しのはアリスの進路希望用紙の第一志望の枠に、『人間。』と書いた。

 

「大事な部分が抜けてるよ!!」Σ( ̄口 ̄〣)

 

「アリスは妖怪人間だったのか」

 

「混じり気なしの人間だよ!!」

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「ヨーコは決まってるの?」

 

 アリスは陽子に、進路について聞いた。

 

「んー、そうだなあ。アイドルになって武道館でライブかな」

 

 陽子は冗談のつもりで言ったんだろうけど、その発言にアリスは感心するように目を輝かせていた。

 

「ヨーコならきっと叶うよっ!わたしも応援するからね!」

 

 興奮しながらアリスはそう言ったが。

 

「え?嘘だよー。ジャパニーズジョーク!そこは「無理やー」ってツっこむところ!あははは!」

 

 陽子の言葉にアリスは落胆した。

 

「でも陽子がアイドルって、俺は案外ぴったりだと思うがなあ」

 

「え!そう?」(〃' ᗜ '〃)

 

 俺の発言に陽子は少々照れた。

 

「バラエティで芸人達とコントやったり、クイズ番組でトレンドになる珍回答連発しそう」

 

「それ完全にネタ枠じゃねーか!!」ヽ(`Д´#)ノ

 

 続く俺の発言に陽子はキレた。

 

「もう、駄目ですよ峻君。陽子ちゃんも本当は女の子なんですから」

 

「しの、そのフォローの仕方なんかおかしくね?」

 

「あっ!」

 

 陽子がしのの発言に疑問を持ってる最中、アリスがしのの進路希望用紙を見て何かに気づいた。

 

「シノもう書いてるよ!」

 

「はい。私、小さい頃からの夢があるので…」

 

「何て書いたんだ?」

 

 俺がそう聞くと、しのは嬉々として進路希望用紙を見せながら、

 

「通訳者です!」

 

 と言った。

 

「………ああ…、宇宙人の?」

 

 ああ、納得。

 

「違いますよ!?」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp。はいしの、どーぞ?」

 

「だから違いますって!?」

 

「つーかそれ、宇宙語でもなくね?」

 

「外国人の通訳者ですよ!」

 

「つってもお前、英語の成績良くないだろ。まあ、英語に限らずだが…」

 

「最近は、アリスに英語習ってるんです。心配ご無用ですよっ」

 

「ほーう」

 

「それじゃ、アリスの英語通訳してみて!」

 

「いいですよー」

 

 陽子の提案でアリスは英語を喋りだした。

 

 当たり前だろうけど、やはりアリスの英語はちょっと英語が喋れる日本人とはレベルが違っていた。

 その横でしのはと言うと、「えーと、「私は…」、あの…」等とあまり翻訳できてない、というかほとんど理解できていない。

 

 するとしのは突然アリスの口を塞いだ。

 

「訳す前にどんどん喋らないで下さい!!」

 

「えぇーっ!」( ̄口 ̄;)

 

「そういう問題でもない気がする」

 

 

 

「今度は一語づつ話すね」

 

「いちご?私、苺は好きですよ」

 

 そう言いながら自分の席に戻っていくアリスとしのを見て俺達三人は「先は遠いな」と思った。

 

「で、綾お前はどうだ?進路希望の紙」

 

「綾は「お嫁さん♡」とか書きそうだな」

 

「かっ、書かないわよ」

 

 そう言って綾は進路希望用紙の第一志望の部分に書いてあった所を消しゴムで消した。

 

 ホントに書いてたのか…。

 

「消してるじゃん」

 

「消すわよ消しゴムだものっ!誤字を消す為の道具だもの!!」

 

 綾は誤魔化すように消しゴムを出してそう言ったが、その後机を叩いてこう叫んだ。

 

「もうっ、だったら何て書けばいいの!?」

 

「開き直った!!」

 

「とりあえず一旦落ち着け!」

 

 その後、綾はふぅ…と落ち着いた。

 

「理想のプロポーズとかなら悩まずに書けそうなのに」

 

「突然どうした」

 

「乙女モード全開になってるな」

 

 こういう時の綾は絡みづらい、というかメンドくさい。

 

「ねえ、峻ならどんなプロポーズが良いと思う?」

 

「そこでいきなり俺にふってくんのかよ」

 

 まあ、とりあえず付き合ってやろう。

 

「えーと…「俺の人生半分やるから、お前の人生半分俺にくれ!!」とか」

 

「私は男らしく、ストレートがいいと思うのよ」

 

「遠回しに却下しやがったな!?エド○ード・エルリックの作中屈指の名台詞を蔑ろにするな!!」

 

「エ○が言うのは良いけど、あんたが言うと胡散臭いわ」

 

「どういう意味じゃ!!」

 

「じゃあ、あんたは特定の誰かさんに告白する時そう言うってことでいいのね?」

 

「…………」

 

 コノヤロウ。

 

 つーか、あいつにこう言った時点で絶対理解できないと思う。

 

「なんの話?」

 

 意味が分かってない陽子が会話に入ってきた。

 

「なんでもないわ。それより、陽子は何か思いついた?」

 

「えー?うーん…、あ。例えば」

 

 陽子は最初綾に振られて面倒くさそうにしてたが、何かを思いついた後、綾の顎に手を添えて…。

 

「『俺の嫁になれ!』とか?」

 

 めちゃくちゃ決まった顔をしながらイケボで綾にそう言った。

 

 その発言と行動に綾は一瞬で顔を真っ赤にさせた。

 

「な!?や、やめてよバカッ!!」

 

「痛ぇ!」

 

 綾は照れ隠しに、陽子の肩を何回も叩いていた。

 

 …俺もあいつみたいに男らしくした方がいいのかなぁ。

 

 俺はちょっとシミュレーションをしてみる事にした。

 

 

 ~妄想~

 

「し、しの!お、おおおおお俺の……………よ………よ……………」

 

 ~強制終了~

 

 

 駄目だ!すげぇ恥ずかしい!!

 

「いててて…。ん?峻どうした?」

 

「陽子、俺ぁお前みたいに恥を捨てる勇気が不足していたみたいだ」

 

「私を恥知らずみたいに言うな!!」

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

「で、あんたは?」

 

「は?なにが」

 

「進路よ!散々人に色々言っといて、自分は何かないわけ!?」

 

「ああ、それね。んー…俺はアリスとも違って、明確に何がやりたいかーとか決まってないんだよねー。それに俺は先の事より今目の前の問題の方が先に考えなきゃならなくて…」

 

「目の前の問題って?」

 

 アリスが聞いてきた。

 

「フッ…。俺が所持する決められた与えられし鉱物が今、俺の収納ボックスから底を尽きつつ…」

 

「ああ、財布にお金が無いのね。」

 

「あっさり要約すんな!!」

 

「綾は峻の通訳が上手いな」

 

 かっこつけて言った文章を綾にあっさり解読された。

 

 するとアリスが申し訳なさそうにした。

 

「そ、それってもしかしてこの間のクレーンゲームでお金無くなっちゃったから!?だったらわたしお金返すよ!」

 

「いやいやいや、あれは俺が勝手にやっただけだから、返すも何も無いって!」

 

「でも、あれってわたしに取ってあげようとしてやったんだよね?」

 

「そうだけど、それとこれとは話は別だ。俺はお前が喜ぶといいなと思ってやってた事なんだから、まあ取れなかったけどさ」

 

「……なんでそこまでしてくれたの?」

 

「え?いやなんでって、俺達その、あの、もう…友達じゃん?だから、何かしてやりたかったっつーか…」

 

「!……シュン…」

 

「…………友達だよな?俺だけ?そう思ってんの」

 

 最初の頃ちょっと警戒されてたし、ちょっと不安に思えてきた。

 

「ううん!シュンはわたしの友達だよ!!」

 

 アリスにそう言われ、俺はホッと安堵した。

 

「シュン、言いそびれちゃってたけど、わたしの為に取ってくれようとしてくれて、ありがとう!」

 

 アリスは満面の笑みでそう言った。

 

「…そう言ってくれるだけでもやったかいがあったと思うよ」

 

 俺的にはもう仲良くしてるつもりではあったが、今改めてちゃんとアリスと友達になれた気がする。

 

「不器用だけど、なんだかんだで峻は優しいからなー」

 

「こういう所をもっと別の所でも生かせればいいのに」

 

「うっせえな!」

 

 そこの二人、やかましいぞ!!

 

「シノ、シュンって昔からこうなの?」

 

「はい。話し方はちょっとぶっきらぼうにはなりましたけど、本当は優しくて友達思いな所は昔からおんなじなんですよ」

 

「やめてくれなんかすんごい恥ずかしいから」

 

 しのにそう言ってもらえるのは嬉しいけどさ!

 

「そうだ!じゃあそういう仕事はどうかな!」

 

「うん?」

 

「シュンは優しいから、その気持ちを生かせる仕事が良いと思うよ!」

 

「あ、だったら保育士さんとかどうかしら?峻は中身が子供だから、子供達と難なく接せると思うわ」

 

「綾、お前今日俺にあたり強くね!?」

 

「失礼ね。いつもこんなもんよ」

 

「それはそれでどうなんだ!!」

 

 俺そろそろ泣いていいかな!?

 

「シノ、ヨーコ、アヤとシュンは仲悪いの?」

 

「いえ、そんな事はないです」

 

「あの二人はあれでいいんだよ」ꉂꉂ(˃ᗜ˂*)

 

 

 

「で?結局お小遣いの問題はどうするのよ?あんた確か、ショッピングの少し前に貰ったばかりだったって言ってたじゃない」

 

「それなんだけど、母さんに来月分の小遣い前借りして、それからバイトでもしてみようかな〜って思ってんだよね。短期間でもいいから」

 

「へ〜。何のバイトするの?」

 

「母さんの行きつけのお店で最近バイトの募集を始めたらしいって母さんに聞いたから、そこにしようかと思ってる。実は今日の下校後、そこの店に面談というか、顔合わせに行くんだよね」

 

「そうなのか。あ!それじゃあ…!」

 

「絶対来んな」

 

「先を読まれた!?」

 

「陽子の言い出しそうな事なんてすぐに分かるわ」

 

「確かに、単純で分かりやすいわ」

 

「お前ら私にもあたり強くない!?」

 

 こいつらに俺のバイト先知られたら絶対弄ってくるからな。絶対教えない。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 ~アリスSide~

 

 お昼時間。

 

「たまご焼きー♡」

 

 わたしがそう呟きながら嬉しそうにたまご焼きを食べていると、

 

「きたきつね」

 

 とシノが言った。

 

「ねりわさび」

 

 続いてアヤがこう言い、

 

「えーと、び…び…ビリヤード」

 

 ヨーコも続く。

 

「ど…、ドンジャラ。はいアリス、ら」

 

「え…!?ら…ら…」

 

 そしてシュンまで来て一周して、わたしにきた。

 

 何故いきなりしりとりに!

 

 どうしようでてこない!

 

 それから15分経過。意外としりとりが白熱してまだ続いていた。

 

 どうしよう、このままじゃお昼ご飯食べてる時間なくなっちゃうよ〜。

 

 わたしがそう思っていた時。

 

「み、み、みかん!…あっ!!」

 

「陽子ちゃん、「ん」が付きましたね〜」

 

「あちゃ〜」

 

 良かった〜これでしりとりは終了だね。

 

 わたしがそう思ってた時、シュンが。

 

「ンガウンデレ(※カメルーン中北部の都市)」

 

 続行!!? Σ( ̄ロ ̄〣)

 

 ~アリスSide、OFF~

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 お昼休憩のとある時間。

 

「ん?」

 

 俺は廊下を歩いていると、窓際でアリスが頬杖をついているのを見つけた。

 

「おーいアリスー」

 

 俺は声をかけてみたのだが、アリスは返事をしない。

 

「?おーいアリスー。何ぼーっとしてんだー?」

 

 俺はアリスの近くに行き、横から見てみた。

 

 すると、なんとアリスは!!…………眠そうにしていた。

 

「…………」

 

 俺はアリスのほっぺを引っ張ってみた。おお、なかなかやらかい。

 

「いひゃいいひゃい!もう、何するのシュン!」

 

「いくら背が低くても、こんな所で寝たら危ないぞ」

 

「背が低いは余計だよ!!でも心配してくれてありがとう!!」

 

 怒られながら感謝された。他のメンバーだとあんまりないタイプのツッコミ方だ。

 

「進路の事考えてたら、ちょっと眠くなっちゃって」

 

「まあ、ここで必ず先の人生決めるって訳でもないし、きままに考えるといいよ」

 

「うん、そうだね。ありがとうシュン」

 

 ん?今遠くから何か視線を感じた様な…?

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 アリスが次の授業に備えて予習していた時。

 

「あっ…」

 

 アリスが消しゴムを落とした次の瞬間。

 

「消しゴムがっ!私が拾うよ!」

 

 陽子が大袈裟に消しゴムを拾いに行った。

 

 

 

 五時限目の古文の授業中。

 

 アリスが古文を朗読してる時。

 

「春は…あげぽよ…」

 

 いくら日本語が上手くても、古文は難しいか。

 

 そう思っていた次の瞬間。

 

「その問題はアリスには難しすぎます!私に答えさせて下さい!!」

 

 綾が勢い良く立ち、名乗り出た。

 

 助けるのはいいが、ちょっと大袈裟じゃね?

 

 

 

 古文の授業が終わった休憩時間。

 

 アリスは何やらぼーっとしていた。進路の事でも考えているのだろうか。

 

 さっきはああ言ったが提出は明日までだから、まあ悩むよな。

 

 するとしのがアリスに顔を近づけた。

 

「アリス!イギリスが恋しくなったらいつでも言って下さいね!」

 

「え?」

 

「私の秘蔵の英国民謡全集を貸してあげます!」

 

 英字新聞の時といい、学校に何持って来てんだあいつは。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 今日の授業が全部終わった放課後。

 

「日誌持っていくぞアリスー」

 

 実は今日の日直は、俺とアリスだった。

 

「あ、ゴメン。ちょっと先に行ってて」

 

 見るとアリスは荷物を片付けてる様子だった。

 

「分かった。急がなくてもいいからなー」

 

 俺は先に職員室に向かった。

 

 

 

 職員室まで後、数十メートルまで来た頃。

 

 何やら後ろからぜえぜえと声が聞こえてきた。

 

「ん?アリス?」

 

 振り向くとそこには疲れた様子のアリスがいた。

 

「どうした?急がなくてもいいっつったのに」

 

「シ…、シノ達に、追っかけられて…」

 

「は?」

 

「なんか…、シノ達の様子が、おかしい…」

 

「うん、それは俺も思ってた」

 

 なんつーか、いつも以上に過保護すぎている。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 俺達は職員室に入った。

 

「先生、日誌をどうぞ」

 

 俺は烏丸先生に日誌を渡した。

 

「鹿ヶ谷君、アリスさん、ありがとう。あ、そうだ!アリスさんは猫だと思う?うさぎだと思う?」

 

「え?う…うさぎ?」

 

 烏丸先生の突然の訳の分からない質問にアリスは意味も分からずとりあえず答えた。

 

「やっぱりうさぎよねぇ」

 

 そう言って烏丸先生は、アリスの頭にうさ耳のカチューシャを取り付けた。

 

「…………シュン、なにこれ」

 

「俺も分からん」

 

 先生が学校に何持って来てんだ。まだしのの英国民謡全集の方がマシだと思ってしまう。

 

 

「アリスさん、日本の学校にも慣れたみたいでよかったわぁ。お友達もたくさん出来て」

 

「トモダチ!」

 

 アリスは烏丸先生に言われた事に少しばかり疑うように言って固まった。恐らく、最近の自分の扱いに自分は友達として接してくれてるのか疑問に感じているのだろう。

 

「違うの?」(´・ω・`;)

 

 そんなアリスの様子に烏丸先生は困惑していた。

 

「おーいアリス。気持ちは分かるが、お前はしの達とはちゃんと友達だよ。たまにマスコットや小動物みたいに扱ってる風に見える事もあるが、そういうのもひっくるめてだって」

 

「……シュンも?」

 

「いや、俺はむしろ今日までお前に友達かどうか思われてるかも疑問だったし。お前がそう思ってくれてるのなら俺だってそうだよ」

 

「…………そっか、そうだね!」

 

 俺の言葉にアリスは嬉しそうに笑った。

 

 ……因みに俺はたまにアリスを妹みたいに接している時があることは秘密だ。

 

「ふふふ…。仲が良くていいわねぇ」

 

 俺達の様子を烏丸先生は微笑ましそうに見ていた。

 ……猫耳のカチューシャを持って。

 

「貴方も自重して下さい」

 

「あ、着ける?」

 

「断固拒否します。」

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 職員室からの帰り。

 

「あ!やっべー、そろそろ顔合わせの時間になる」

 

 今から店に向かわねーと間に合わないかも。

 

「アリス、わりーけど俺このまま帰る……アリス?」

 

「……みんなはわたしのことどう思ってるんだろー」

 

 アリスは不意にそう呟いた。

 

「…そんなに気になるなら、直接聞いてみたらどうだ。心配する事ねえと思うけど」

 

「………うん、わかった。思い切って聞いてみる!」

 

「そっか。んじゃま、頑張れよー」

 

 俺はそう言って校舎を出て、面談に向かって行った。

 

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

 

 面談という顔合わせを終えた俺は帰路についていた。

 

 結果はまあ合格と言ったところである。来週辺りから、バイトを始めるつもりだ。

 

「ん?あれって…」

 

 暫く歩いていると、道端でしのとアリスが突っ立っているのが見えた。

 

「おーい、しの、アリスー」

 

「あ、峻君」

 

「お前らまだこんな所にいたのか?」

 

「スカウト待ちをしてました!」

 

「は?」

 

 どうやらここでモデルのスカウトが来るかもと20分も突っ立ってたとか。そういやしののお姉さんの勇さんはファッションモデルをやってるんだが、スカウトされたのってこの辺って聞いたな。

 

「なんだお前ら、モデルになりたいのか?」

 

「なりたいというか、憧れてますね」

 

 まあモデルはともかく、スカウトって誰でも憧れるかもな。

 

「で、アリス。どうだった?」

 

「うう、中々声掛けられないよ…」

 

「あ。いや、そっちでなくて」

 

「え?………あ!うん!みんな、大事な友達って言ってくれたよ!うさぎやハムスターよりも!」

 

「そうか」

 

 うさぎとハムスターのくだりがよく分からんが、満面の笑みでそう言うアリスに俺は満足した。

 

「よかったです。アリスのホームシックが治って」

 

「なんのこっちゃ」

 

 その後、夕飯の買い出しに行ってたらしい陽子と綾とも合流した。

 

「そういえば、私にはもう一つ夢があったんですよ?」

 

 歩いてる途中しのが突然そう言った。

 

「大人になったらもう一度イギリスに行って、アリスに会いたいと思ってたんです。でもアリスが会いに来てくれたので夢が叶っちゃいました」

 

「シノ…!」

 

 しのの言葉にアリスは嬉しそうにした。

 

「おっ、飛行機雲」

 

 ふと見上げると、夕焼けの空に飛行機が飛んでいるのを見かけた。

 

「あの飛行機、イギリス行きかなー」

 

 そう言うアリスとしのはその飛行機を見て微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは多分東京行きよ。方向的に」

 

「空気読めよ!」

 

「爽やかな顔しやがって!」

 

 KYツインテールに陽子と俺はツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 [おまけショートこぼれ話]

 

 

「きゃ━━━━━━っ!!」

 

「おおうっ!?なんだ!!?」

 

 突然飛び起きて叫んだアリスに俺はびっくりした。

 

「どうしたアリス。怖い夢でも見たか」

 

 陽子も心配してアリスに話しかける。

 

「しのの顔でも見て落ち着きなよ」

 

 そう言って陽子はしのを連れてきた。まああいつの顔はぼんやりしてるから癒し効果もないことも…、ん?アリスのやつ、なんか余計に怯えてないか?

 

 後から聞いたが、しのが金髪になってしまう夢を見たのだとか。飛び起きる程か…。

 

 ~See you, next time!~




えーという訳で、これで峻とアリスが完全に仲良しになったと思います。

安心するのも束の間、次回からあの子が来ます(笑)

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