へんたい賢者はメイド幼女に踏まれたい   作:ももいっぷ

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謎多き幼女

 

「うーん……こんな代物は見たことねぇな」

 

 オークによく似た体格を持つ大男はそう呟き、難しそうな顔で剣を見つめる。

 自身の所持する道具で武器自身を傷付けないよう、細心の注意を払いながら鞘を抜こうとするもビクともしない。

 

 ……ここは武器屋『アネモネ』。彼はその店主の親父さん。

 開店一番やって来た常連客のぼくに、しばし試行錯誤していた親父さんが首を横に振って応える。

 

「ダメだな。少なくとも力や道具でどうこう出来るモノじゃない。賢者様の言う通り強力な魔法が施されていやがる」

「んー、そっかぁ。ありがとう親父さん」

 

 シャルルちゃんが屋敷にやって来た翌日。

 ぼくは彼女の所持する剣――彼女曰く "聖剣" を借りてこの場にやって来ていた。

 

 勇者シャロ……物語に登場する英雄の末裔を語る子供なんてどこにでも居そうな物だけど、この聖剣に施されている封印とやらと、小さな身体からは想像もつかない力を持っているシャルルちゃんは別だ。

 

 もちろんぼくも色々見てみたんだけど、情けないことによく分からない。確かに何らかの魔法は掛けられているんだけど……。

 

「へんたい。ウチで駄目なら余所行っても無駄」

 

 久しぶりに顔を合わせたもんもん。

 ぼくはこの店と二人を信用しているし、その二人が言うんだから間違いないだろう。

 

 でも、シャルルちゃんはがっかりするだろうなぁ。

 剣を渡された時、今すぐには難しいって言った時も悲しそうな顔をしていたし。

 

「しっかし勇者の剣ねぇ……。その子は一体何者なんだろうな」

「それが、何を聞いても自分は勇者の末裔だ、としか言わなくてね」

 

 さすがに絵本の中の登場人物を信じろと言うのは無理がある。

 けれどこの剣は確かに扱いに困るもので、実際にシャルルちゃんにはとてつもない力があるんだよね。これはどう説明がつくんだろうか……。

 

「とにかく、ありがとう。自分でも何か出来ないかもう一度調べてみるよ」

 

 今日の所は引き上げるほかないだろう。

 やはり重過ぎる剣を抱え、ぼくは帰途に着く。

 

 

 

 

 家に着くと辺りに食器の破片が散乱していた。

 ぼくは慌てて呆然と突っ立っているアリスちゃんへ駆け寄る。

 

「アリスちゃん、大丈夫!?」

「ご、ごしゅじんさま……おさらが……」

 

 どうやらアリスちゃん自身は無事なようだ。

 しかし、毎日家事をこなしているアリスちゃんがこんなミスをするとは考え難い。

 訳を聞こうとすると、おずおずといった様子でシャルルちゃんが現れた。

 

 昨日はもう夜遅いから家に泊めたんだけど……一体どうしたというのだろう?

 

「ごめんなさいぃ……。まさか、お皿がこんなに脆いと思わなくて」

「シャルルちゃん、ケガはない? 何があったの?」

「わたし、力の制御がまだ上手く出来ないの。それでよくこうなっちゃって」

 

 どうやら食事の片付けを手伝おうとしたところ、この有様になってしまったようで。

 アリスちゃんは余りの事に呆然となってしまったらしい。まあ、家事で使用する道具たちに一種の愛着が湧いてるみたいだったからね……。

 

 ひとまずその場はぼくが片付け、しょんぼりしてるシャルルちゃんとアリスちゃんを慰める。

 剣の事も伝えて、これから何とか出来ないか調べてみると伝えたところ、シャルルちゃんは首を横に振る。

 

「いいの。これ以上ここに居たらまた迷惑を掛けちゃいそうだし……。また機会があったら来るわ!」

「シャルルさん……」

「アリス、今日はごめんなさい。今度来るときはお詫びに美味しいものを持ってくるわ!」

 

 シャルルちゃんは最後にそう言うと、剣を携えて屋敷を去って行ってしまう。

 

「残念だったね、アリスちゃん。せっかくお友達が出来たのに」

「きっとまたあえます。でも、いったいなにものだったんでしょう……」

 

 アリスちゃんの言う通りだ。結局何も分からなかったけど……。

 次に会う時には力になれるよう、ぼくも色々調べておかなくちゃなぁ。

 

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