へんたい賢者はメイド幼女に踏まれたい   作:ももいっぷ

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おねがい

 

「ごしゅじんさま、おねがいがあります」

 

 ある秋の日の昼下がり。

 読書の秋という建前のもと、アリスちゃんベッドの上で深呼吸を数秒ごとに行い寝転びながら読書をしていたぼくに、アリスちゃんご本人はそう言ってきた。

 

「なんだいマイハニー」

 

 ぱたん、と本を閉じてアリスちゃんの目を真っ直ぐに見据える。

 ああ、かわいい。白くすべすべな彼女のほっぺを今すぐつんつしてみたい。

 

「まじめなはなし……なんですけど」

 

 ぼくのいやらしい――もとい、鋭く観察的な視線にむずがゆさを覚えたのか、アリスちゃんの表情がぼくを睨みつけるような形となる。

 アリスちゃん的には威嚇みたいなものなのだろうけど、ぼくにとってソレはご褒美です。

 

 じー。

 

 こんな風に睨んでもらえるのならば、ぼくはいつまでも君のほっぺを凝視し続けていてあげよう。目の保養にもなるしね。

 

「……らちがあかないので、このままつづけますよ」

 

 アリスちゃん、どうやら僕の心を読み解いたらしい。いつものように "死んでください!" と言う事も無く、呆れたように首を振る。

 それにしても珍しいな。アリスちゃんが自分からぼくの所へやって来て、しかもお願い事をするなんて。

 

「いいよ。何でも言ってごらん」

 

 普段のアリスちゃんは、口調こそ若干尖っている(ぼくがそうさせた)ものの、自分から要望を言い出すことはほとんど無い。

 せっかくだし、出来る限り叶えてあげたいよね。

 

 ……けれど、彼女が頼みそうな事って何だろう。おもちゃだろうか、大きな飴だろうか。

 女の子らしく可愛い衣装が欲しいとか?

 そ、それとも「やっぱりごしゅじんさまをふみふみしたいです……」的な――!?

 

「その……まちの外に、つれていっててくださ――」

「よっしいいよ! いつでも踏んで!」

「――!? な、なんなんですかっ、なにをきいていたんですかっ! やめてください! ふく! ふくぬがないでくださ――あ、みえますっ! みえ」

 

 

 閑話休題。

 

 

「……なるほど。話をまとめると、アリスちゃんは冒険に出てみたいと」

「まとめるもなにも、はじめからそれしかいってません……」

 

 まだ頬を上気させながら、アリスちゃんはぽそっと肯定する。

 それだけの仕草なのにどこか色っぽくて、今のぼくが手足を自由に動かせていたら、思わず抱きしめてしまっていたくらいに魅力的で魅惑的だった。

 

 惜しむらくは、ぼくの両腕両足はシーツによって縛られ、床に寝転がされている状況である事だろう。緊縛の技術なんていつ身につけたのかしらん。

 ちなみに、アリスちゃんはベッドの上でぼくを見下ろす構図となっている。ああ、いい……。

 

「別にいいけどさ」

「ほ、ほんとですかっ」

 

 アリスちゃんの目が目に見えて輝く。

 

「でもどうしてまた、ダンジョンなんかに?」

「よくぞきいてくれました」

 

 何故かどこか得意気に、えっへんと無い胸を張る。

 かわうぃ。

 

「このせかいにへいわと、ちつぞっ……ちつじょをとりもどすためですっ!」

「へえ」

 

 ……。

 …………?

 

「はい?」

 

 秩序、と言おうとして噛んでしまったアリスちゃんが愛おしくて納得しかけてしまったけれど。

 よく聞いたら今、すっごく意味の分からない発言をしたぞ、アリスちゃん。

 思わず聞き返してしまった。

 

「で、ですからっ。せかいの」

 

 先程までのえっへんはなく、少し取り乱し始める。

 

「……平和と秩序? それはいいんだけど、理由があまりにも唐突過ぎるというか、ね」

「う、うたがってるんですかっ! わたしをっ! へんたいなのにっ!」

 

 ありがとうございます!

 

 ……じゃなくて。

 どうも、アリスちゃんの様子が怪しい。

 あわあわと両手を振って露骨に慌てているのも、ぼくにセクハラされる以外で頬をこんなに染めるのも、朝ベッドに勝手に潜り込んでいた時の動揺っぷりも、何だかしゃんとしない物がある。

 

「……ん?」

 

 と、そんな時に目に飛び込んできたのは幼女ちゃんのベッドの下。

 ぼくが床に寝転がされたからこそ、そんな所に視線を移す事ができた。

 そこにあるのは、ベッドの影に隠れた一冊の本。

 ……ここからなら、ギリギリタイトルが見えるかな。えっと、なになに――

 

 

"ゆうしゃシャロのぼうけんかつげき"

 

 

「……」

 

 絵本だった。

 児童に合わせて偉人のエピソードが載せられているシリーズもの。

 

 ちなみにこの作品のメインは勇者シャロ。まだ世界が荒れていたころ冒険に出て魔王を討った……という設定のキャラクターである。

 世の女性の中には、格好良く剣を振るう物語のシャロさまに憧れを抱く者は確かに少なくない。

 

「ふむ」

 

 恐らく、急に町の外に行きたいとか言い出したのはこの為だろう。

 アリスちゃんもシャロのようにバッサバッサと敵を切り刻みたいのだ。

 創作の物語に影響を受けやすいのは、この頃の歳の子によくある事だね。

 

 ……とりあえず、タイトルを声に出して呼んでみる事にする。

 

「なにをして……あっ」

「勇者シャロの――」

「わーーーーーーーーっ!?」

 

 いつにも増して真っ赤な顔で、大慌てでぱたぱたと絵本を回収すると、ぽふぽふと枕を叩いて顔を沈める幼女ちゃん。

 

 ぽふぽふぽふぽふ……。

 

「……」

 

 うん、かわいい。

 率直に言うと、天使だった。

 

「……これは、いける」

 

 一通りアリスちゃんかわいい成分を保管すると、ぼくは、まるで幼女を見つけた変質者のごとく妖しく舌なめずりをした。

 妙案を思い付いたのだ。

 

「まずは武器屋に行こうか、アリスちゃん」

 

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