ある戦車兵の運命   作:ジュネープ

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ある戦車兵の記録

ここは北米大陸の小さな田舎町。

 

住民たちがのどかに過ごしていたであろうその土地には僕ら軍人しかいない。

この町に展開している部隊は戦車一個小隊と歩兵一個小隊で、全員が緊張感の欠ける雰囲気でカードゲームや飲酒をしている。本来であれば注意するはずの上官も敵が『来ないもの』だと思っているのか何も注意しない。

 

 

突然の宣戦布告、それによって引き起こされた大量虐殺と『革新的な兵器』により、僕たちが所属している軍は大きな打撃を受けた。

それから暫く後、敵軍が支配地域拡大のために侵攻を開始したのが3月1日。僕たち北米方面軍が防衛しているキャリフォルニアが無血占領されたのが2日前の3月11日。

司令部の防衛作戦計画に則り、北米最大の軍事基地があるニューヤークに侵攻予想されている複数のルートに軍を展開している状態だ。その中のルート上に存在する小さな町に僕たちは防衛線を構築した。

 

『軍人は常に最良の行動を』

 

士官学生だった時に教官から口酸っぱく言われたセリフだ。僕も着任当初はそんな理想の軍人になろうと努力していたが、実際の現場では平和の中で忘れ去られてしまった。

僕らの敵は大義と信念を併せ持った狂人連中・・・開戦から2カ月が経とうとしてるのにカードゲームに興じている彼らは、確証はないが僕たちの軍の多数派なのだろう。

敵が迫ってきているのに何を吞気な・・・と思うだろう。仕方がない・・現実感がないのだ。半世紀以上戦争をしてこなかった僕たち軍人にとっては戦争なんて『フィクションの出来事』なのだから。

 

 

「少尉・・・そろそろ戦車に戻ってください」

「あぁ伍長か。そうだな、長居し過ぎた。今戻るから待っていてくれ」

 

そう言って僕は自身の戦車に戻っていった。僕の搭乗する戦車は搭乗員数2名、多連装型の砲塔を備え、最先端の電子機器と連携する事で地上の敵を一掃する事が出来る『陸の王者』だ。

しかし、敵が開発した『革新的な兵器』の中に電子機器を封じることのできるジャミング兵器があり、僕たち陸軍も敵に苦戦しているらしい。

 

 

【こちら司令部、敵の小規模部隊がそちらに向かっている。至急対応してくれ】

【こちら第15混成部隊・・・了解した。吉報を期待してくれ・・オーバー】

 

 

「少尉・・・とうとう来ますね」

「あぁ・・お互い階級は違えど実戦経験なしのルーキーだ、気張っていくぞ」

 

 

【先ほどの無線は聞いたな?敵がどんな兵器を携帯しているかわからないが、貴様らは所定の位置で待ち伏せを行え。行くぞ!!!】

 

 

威勢のいい指揮官から通信が届き、部隊員たち各々が声を上げて自身を鼓舞している。それとは対照的に僕たちが搭乗している戦車は沈黙が支配していた。

 

 

「なんでほかの人たちはこんなに士気が高いんでしょうね?」

「僕だってわからないけど、怖いんじゃないかな?・・・エンジンを始動して待機だ。くれぐれもエンジンストールを起こすんじゃないぞ?」

 

「わかってますって、この戦車はこの部隊唯一の5型・・・最新戦車ですから、慎重にやりますよ。」

 

そう言って伍長が戦車の起動スイッチを押すと、エンジンが低く唸り始め稼働状態となった。

 

この瞬間、陸の王者が目覚めた。

 

 

 

 

作戦はこうだ。

 

敵軍が来たら町の中におびき寄せ、建物内に潜む歩兵が攻撃。僕たち4両の戦車小隊は攻撃開始と共に隠れている場所から躍り出て、町の進路上に1両、退路上に2両で進路を封鎖する。

僕たちの戦車は進路上の封鎖が突破された際、気が緩んだ敵軍に対して鉛玉を浴びせるため町の外れに戦車用の塹壕を作り、その中で待機している。

 

貴重な5型を失いたくない指揮官曰く『もしものための保険』として大切にとっておく・・・との事らしい。

 

 

【全員配置についたな?敵はそろそろ視界に入るが、俺の命令あるまで絶対に発砲するな。『例の新型兵器』2体と戦車2両、歩兵部隊が20人程度の混成部隊だそうだ。新型兵器なんぞに遅れをとるんじゃないぞ!】

 

 

「少尉・・・例の新型兵器って艦隊を壊滅させたあの?」

「きっとそうだろうな。ここの防衛作戦は穴がない。敵の退路上に配置している戦車を1両にしたのも、指揮官殿が殲滅を狙っているのではなく敵の撤退を狙っての配置なんだろう。あの新兵器が想定の範囲外に強くない限り、僕たちに負けはないはずだ。」

「そうだといいのですが。何か嫌な予感がします。」

「奇遇だね。僕もだよ」

 

 

 

どんなに完璧な計画を立てたとしても、実践では様々なイレギュラーが発生するもの・・・と士官学校の教官殿は仰っていた。悩み損になることを祈るしかない。

 

 

「・・・・少尉。何か音が聞こえませんか?」

「少し待て・・・ソナーで確認する。」

 

 

伍長からの知らせに僕は、備え付けられたソナーで周囲を探索すると、ノイズ交じりに何かが聞こえてきた。

 

「聞き覚えのない音だな・・・可能性としてはそれが敵の新型兵器なのかもしれない」

「建物が邪魔で何も見えないですね。」

「それはそうだ。視認性がいい場所なんて、敵からも見えてしまうからな」

「確かにそうですね。」

 

 

 

【敵部隊見えました・・・・大きい・・・あんなものが動くのか・・・】

【10メートル以上はあるぞ・・・ロケットランチャーで仕留めることができるのか?】

 

【無線での私語は慎め!・・・確かに大きいが、所詮大きさに物を言わせた木偶の坊だ。命令あるまで待機しろ】

 

 

ほかの部隊員が緊張していることがわかる。ピンと張りつめた状態が極限にまで達したその時。

 

【全員攻撃開始!】

 

 

指揮官の号令の下、一気呵成に歩兵の射撃音と戦車部隊の移動と攻撃音が町中に鳴り響いた。味方の砲撃、発砲音に混じって聞き覚えのない重厚な射撃音が聞こえてくる。

 

「少尉。この音って砲撃音ですか?にしては相当な連射性能だとおもうんですが・・」

「情報にあった、新型兵器が携帯しているマシンガンの連射音なんだろう・・・一発当たっただけで僕たちの車両は大破する威力らしい・・」

 

「町の仲間は大丈夫ですかね・・・」

「大丈夫心配するな・・きっと大丈夫だ」

 

 

【こちら第二分隊!敵戦車部隊は全滅したが、敵の新型と歩兵の勢いが強すぎる!!】

 

【嘘だろ・・・封鎖していた味方戦車がやられた・・・もうおしまいだ!!】

 

 

「すまない・・先ほどの言葉を訂正する、大丈夫ではないな・・・防衛線の突破に備えるぞ!」

「了解!」

 

 

暫くすると、町中から銃撃音が聞こえなくなり、沈黙が支配してた。

 

 

【・・敵歩兵部隊と戦車部隊は全滅したが・・・新型2体が防衛線を突破した・・・私は・・・足が無くなって・・・もう無理だ・・・残りは貴様らの搭乗している5型で何とかしてくれ・・・・】

 

 

ノイズ交じりの無線から、おそらく亡くなりかけているであろう指揮官の無線連絡が途切れ途切れながら聞こえてきた。

 

「こちら5型、了解しました。初弾発射後は独自の戦闘行動に移ります。オーバー」

 

「・・・・」

 

 

先ほどまで話していた伍長は緊張感から何も話さなくなった。かく言う僕も何も話さずにただじっと敵の姿が視認できるまで待機した。

 

 

「・・・?!あれが、新型なのか・・・」

「大きい・・・」

 

暫くすると、重厚な移動音と共に敵軍の新型2体が姿を現した。無線で味方が話していた通り、10メートル以上・・・いや、20メートル近くある

『人型の兵器』だった。

 

 

「敵の大きさが、表示された。全高18メートルだそうだ・・・」

「そんな大きな機体で味方が・・・」

 

「僕が射撃後、スモークディスチャージャーを発射する。敵が適当な所に射撃している隙に塹壕から移動するぞ」

「了解。」

 

 

敵は、こちらに気づいていないようだ。人型兵器の頭部にある一つ目がせわしなく左右に動いているのを見るに、それで周囲を把握していると悟った。

 

「・・・射撃まで、3、2、1・・・発射!」

 

自身のカウントダウンと同時にトリガーを引いた。その瞬間、陸の王者が低く、しかし堂々とした唸りが響き渡った。

連装型の砲身から放たれた2発の砲弾は教本通りの軌道で敵人型兵器に吸い込まれるようにして命中した。

 

ボン!!

 

内部から小さな爆発を起こした敵は地面に倒れこんで動かなくなった。

 

 

「スモークディスチャージャーを発射する!」

 

 

もう一体の反応を確かめることなく、間髪入れずにスモークディスチャージャーを使用して僕たちの車両は煙に包まれた。

 

瞬間、敵人型兵器から発射されたであろうマシンガンの弾が周辺に着弾した。

 

「少尉!・・敵の攻撃が妙に正確です!!もしかしてサーマルスコープが搭載されているんじゃないでしょうか?!」

「その可能性、大いにありえそうだ。伍長!塹壕から急いで出てくれ!蛇行運転で町に向かうんだ!その間に僕が行間射撃を行って相手を倒す!」

「・・・了解!」

 

僕たちの5型を塹壕から躍り出て味方部隊が壊滅した町・・・敵兵器のいる方向に向かって走り出した。車内は戦闘による高揚感よりも、死ぬかもしれない恐怖に支配されていた。そんな中、僕はスモークディスチャージャーを継続的に発射しながら砲撃を加えた。が、しかし敵の兵器は見た目に似合わない俊敏さで全ての砲撃を回避した。

 

「少尉!!ちゃんと当ててください!!」

「蛇行運転中に命中させるなんて至難の業なんだ!文句があるなら生き残ってから聞いてやる!」

 

僕たちの戦車は徐々に敵に肉薄しているが、僕には考えがあった。敵のセンサーが頭部にしかないのであれば、真下からの攻撃には対応することが難しいのではないか?・・と

 

「・・・肉薄して敵の攻撃範囲外からやるしか方法がないんだ!!頑張ってくれ、伍長!!」

「ああ!どうにでもなれ!!!」

 

 

その瞬間、戦車が先ほどより若干スピードを上げた。

 

(これなら・・・いけるはずだ)

 

 

そう確信したその瞬間。人型兵器の背面から大きなブースター音が鳴り響き・・・・空を飛んだ。

虚を突かれた僕は、それに対応することができず戦車の砲塔旋回範囲外まで上昇する事を許してしまった。

 

 

車内のモニターから消え失せた敵を探すために急いでハッチを開けて真上を見上げた。

 

 

・・・・降下してくる敵兵器の一つ目と目が合った。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

急いでハッチを閉めた瞬間、今まで経験した事のない地揺れが戦車を襲った。

 

 

「少尉!!!左にっ!!!!」

 

「?!・・・・ぐぁ!!」

 

 

僕たちの戦車の真左に降り立った敵はサッカーボールを蹴る様にして戦車にキックを食らわせた。

それによって戦車は何回転もして横転した。

 

 

 

薄れゆく意識の中、僕たちが搭乗している61式戦車5型に近づいてくる新兵器を見て呟いた。

 

「これが・・・ザクなのか」

 

 

 

 

 

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地球連邦軍

北米方面軍

第四師団

第15混成部隊

61式戦車小隊所属

 

トーマス・ウォーカー少尉:MIA

ドミニク・パットン伍長:MIA

 

詳細:敵新型兵器、通称「ザク」数体を含む部隊と交戦中、行方不明。

公式撃破記録:ザク1体。

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ガンダムってロボット作品だから戦車とかをメインで書いている作品が少ないんだよなぁって思って書いてみました。
誤字脱字などあったら、ご報告お願いします!

追記:誤字報告と添削してくれた方、ありがとうございます!
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