ドラゴンボール外伝   作: 沢渡限

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サタン世界チャンピオンへの道!! 第24回天下一武道会~後編~

(二時間か……今のうちに食事を済ませておくか)

 

 控室で思い立ったウパは、食堂へと向かった。

 思えば聖地カリンを飛び立ってから、精神統一を続けていたため今まで何も食べていない。

 流石に空腹を覚えたため、今のうちに食事を済ませておこうと考えたのだ。

 

「ジュエールさまああああ!!」

 

「サインください!!」

 

「僕を取り合わないで。さあ、順番にサインを書いてあげるよ」

 

 一方、ジュエールは女性ファンたちに囲まれ、そのファンサービスとして一人ずつ丁寧にサインを書いていた。

 そんなジュエールの前に、一人の巨漢が現れる。

 

「へへへ!! おいジュエール、女の前でいい顔できるのも今のうちだぞ!?」

 

「君は……次の試合でボクにやられるプンター君だね?」

 

「その減らず口、試合で叩けなくしてやるぜ!!」

 

「いいよ。ボクの拳法に勝てるヤツなど、この世には存在しないんだ」

 

 二人の闘気(とうき)が炎のようにメラメラとぶつかり合う。

 どちらもこの時代の格闘技界では有名かつ実力派の武道家であり、ゆえにお互いがお互いを邪魔な存在だと思っていた。

 それから二時間が経って、ようやく準決勝第一試合が始まろうとした時、事件は起きた。

 

「えー、ここで皆様にお知らせ致します。準決勝第一試合にてミスターサタン選手と対戦定のウパ選手ですが、さきほど食中毒により病院へ搬送されたとのことです。従いまして準決勝第一試合はミスターサタン選手の不戦勝となります!!」

 

 なんと、ウパが小腹を満たすために摂った食事が裏目に出てしまったのだ。

 

(いてててて。な、なんてことだ……まさか、こんな形で試合に出られなくなるとは!!)

 

 これもまた、サタンがチャンピオンになれた原因の一つであった。

 実力的には常識の範囲内では強者に入るミスターサタンだったが、明らかに彼よりも実力は上であろう人間はこの世に沢山存在する。

 それはクリリンやヤムチャはもちろんのこと、過去の参加者と比較しても、サタンが勝てそうな相手は、せいぜいランファンと男狼くらいのものであろう。あるいは体臭に耐えることができればバクテリアンにも勝てるかもしれない。

 つまり、ミスターサタンの素の実力とはその程度なのだ。

 ナムやギランはおろか、パンプットにも及ばない、本当に普通の人よりちょっと強い程度。

 それなのに何故サタンが世界大会を制してきたのか。

 

 ━━それはサタンが並外れた強運の持ち主だったからだ。

 

 加えて桃白白との戦いから得た教訓によって、自分に勝ち目のない勝負は仮病などを使って逃れてきた経緯もある。

 今回もサタンは、殆ど奇跡のような勝ちを得たということである。

 

(な、なんだかよくわからんが、とにかく私は生き残れたぞ!! ジュエールかプンター、どっちが勝ってもアイツらなら恐らくなんとかなるぞ!!)

 

 ミスターサタンは調子を取り戻していた。

 最大の難関であるウパには戦う事なく勝利したため、残ったジュエールとプンターなら実力で倒せると判断したからだった。

 こうして始まった準決勝第二試合。

 

「それでは、始めてください!!」

 

 ゴングが鳴り、ジュエールは最初から本気で構えた。

 

「さあ、かかってこいプンター」

 

「その鬱陶しい笑み、二度と浮かべられなくしてやるぞ!! はぁーっ!!」

 

 プンターはその巨体に見合わぬ俊敏さを持っていた。

 繰り出される連打は威力、スピード共になかなかのものだったが、ジュエールはそれを華麗に受け流していく。

 

「はっ!!」

 

 そしてジュエールは大地を力強く踏みつけ、飛び上がってプンターの顔面を蹴り、その反動を使ってさらに大きく跳躍。そしてプンターの顔面を踏みつけ続けた。

 

「ジュエール選手、凄まじい空中殺法です!!」

 

「くっ、この野郎ォッ!!」

 

 プンターはジュエールの足を掴み、ジュエールを投げ飛ばした。

 しかしジュエールは投げ飛ばされた先で綺麗に着地して、突進してくるプンターを待ち構えた。

 

「おーーーっと!! ジュエール選手、なんとか体勢を立て直しましたが、武舞台ギリギリだ!!」

 

「きゃああああジュエールさま!!」

 

「そこにいては危ないわ!! 逃げて!!」

 

 

 プンターの突進は会場のみんなが思う以上に速かった。

 

「そのまま場外に押し出してやるぜ!!」

 

 瞬く間に迫るプンター。

 しかしジュエールは直前になって微笑んだ。

 そしてプンターの体に触れて、受け流すようにプンターの加速を手伝った。

 

「うわああああああっ!?」

 

 

 それがプンターの勢いをつけてしまい、逆に場外へ落とされる結果となってしまった。

 

「じょ、場外!! プンター選手、落ちてしまいました!! よって決勝進出はジュエール選手です!!」

 

 まさに柔と剛の対決。力が利に破れた結果となった。

 勝負の女神は武術としての柔を使ったジュエールに微笑んだ。

 

「く、クソォ……」

 

「プンター、君の欠点は力任せなことだよ。力は君のほうが上だった」

 

 そう言いながらジュエールは武舞台から降りて、控室に入ってミスターサタンをすれ違いざまに見つめた。

 

(このジュエールという男、想像以上にできるようだ……本気でやらねば)

 

(見てろミスターサタン、このオレがお前を倒して世界チャンピオンになってやる)

 

 そして三十分の休憩を挟んで、遂に第24回天下一武道会の決勝戦が始まろうとしていた。

 

「さあいよいよ決勝戦です!! 世界格闘技王ミスターサタン選手対イケメン拳法家ジュエール選手。天下一はどちらか、さあ始めてください!!」

 

 サタン、そしてジュエール、二人は構えたまま数十秒ほど睨み合った。

 

(流石はミスター・サタン……打ち込む隙がない)

 

(三大会制覇がかかっておるのだ。こんな優男に負けられるか……ッ!!)

 

 先に仕掛けたのはサタンのほうだった。

 殴打を浴びせようとするが、ジュエールはそれを受け止め、カウンターの手刀を放つが、サタンはそれを見事に受け止め、前蹴りを放ったもののジュエールはそれをガードしてみせた。

 衝撃で吹っ飛ばされたものの、ジュエールに殆どダメージはない。

 

「流石にやるね。これほどの手応えは久しくなかったよ」

 

「ジュエールとやら、結構やるようだがこの私には敵わないぞ!!」

 

「言ってくれるね。それなら、これはどうかな……ッ!!」

 

 手を回しながらジュエールは構えを取ると、手刀を構えてサタンへと突進する。

 

「バカめい、正面からきおったな!!」

 

 サタンが反撃のパンチを繰り出す。

 しかしジュエールは寸前で脚を止め、高く宙へ舞ったのだ。

 

「きぃやあああああああああああッ!!」

 

「ぐ、ぬぅ!?」

 

 それはプンターを苦しめた空中殺法。

 サタンは受けの中でも最も強靭とされる十字受けにて、なんとかジュエールの攻撃に耐えた。

 しかし少しずつだがサタンの受けが崩れ始め、足腰が下がってきた。

 

(ま、まずい。このままじゃ……破られる!!)

 

 遂にサタンのガードが崩れる。

 

「これで終わりだ、ミスターサタン!!」

 

 そんなサタンに、すかさずジュエールは強烈な足刀蹴りを浴びせる。

 顎を射抜かれたミスターサタンは白目を剥き、その場に倒れ込んでしまった。

 

「ダウン!! サタン選手、強烈な蹴りを食らってダウンです!! カウントを取ります、1……2……」

 

 アナウンサーがカウントを取り始めると、ジュエールは両手を合わせて一礼した。

 

「カウントするだけ無駄だよ。僕の蹴りを食らって立てたヤツは、まだいないからね」

 

「……9……お、おっと!!」

 

「なんだと……ッ!?」

 

 しかしジュエールは驚愕することになる。

 これまで百発百中、必殺の一撃だった自身の足刀蹴りを食らってもなお、サタンはフラフラとした足取りだが立ち上がって構えたのだ。

 サタンの強み、それは桁外れの耐久力であった。

 

(桃白白とかいうヤツの拷問のほうがよっぽど痛かったぜ……)

 

 あの拷問があったからこそジュエールの必殺の一撃を食らっても立ち上がれたし、その後に手加減されていたとはいえ、セルの一撃を食らっても絶命を免れているのだ。

 そう、ミスターサタンの耐久力はギャグマンガ並みだった━━。

 

「フフフ、効いたぞ。だがこの私を最も苦しめた者の攻撃に比べれば、まだ甘い!!」

 

「小癪な!! ならばこれはどうだ!!」

 

 ジュエールは飛びかかり、ミスターサタンに閃光のような連撃を浴びせる。

 サタンはそれを防御するだけで精一杯だったが、その瞳からはまだ闘志は消えていない。

 それでもジュエールの連撃はじわじわとサタンのスタミナを奪っていき、少しずつだがサタンのガードが下がってきた。

 サタンの腕が降りた瞬間。

 

「チェストォー!!」

 

 ジュエールの鋭い突きが、サタンの頬に突き刺さる。

 

「な、なに!?」

 

 しかしジュエールの腕に感じたのは、サタンからの力だった。

 サタンはジュエールの殴打に耐え、首の力だけで拳を押し戻していた。

 

「どりゃああああああ!! サタンミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトンパンチ!!」

 

 サタンのタフネスに驚愕し、呆気に取られていた一瞬の隙だった。

 サタンの剛腕が振るわれ、その拳が深々とジュエールの鼻っ柱を貫く。

 サタンの強烈な一撃をモロに食らったジュエールは、意識が飛んだまま仰向けに倒れた。

 

「サタン選手、起死回生のカウンターだ!! カウントを取ります!! ワン、ツー、スリー……」

 

 サタンは息切れを起こし、もはや立っているのもやっとの状態だった。

 そんなサタンに幸運が訪れる。

 ジュエールは今の一撃で失神したまま、立ち上がることができなかった。

 

「テン!! ダウン!! ジュエール選手、立ち上がれませんでした!! よって第24回天下一武道会、優勝はミスターサタン選手!! 悲願の三大会制覇、伝説的な瞬間です!!」

 

 サタンは、実力で強豪ジュエールを叩きのめした。

 明暗を分けたのは、サタンの肉体の頑丈さだった。

 

「へっ……勝ったの? ……は、はーーーーーっはははは!! ナンバーワーーーーン!!」

 

 左手を腰に当て、右手でピースサインをしながらサタンは豪快に叫んだ。

 

「すごいぞー!!」

 

「三大会制覇なんて初めて見たぞ!!」

 

「サーターン!! サーターン!!」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 こうして第24回天下一武道会は、ミスターサタンの優勝で幕を下ろした。

 少年の部ではサタンの愛娘・ビーデルが優勝し、親子優勝を果たしたことも話題となった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……なんだべ、コイツ?」

 

 パオズ山の孫悟空の家にて、チチはテレビの前で呆れかえっていた。

 

「なんでも天下一武道会で優勝した、格闘技の世界チャンピオンらしいだ」

 

 牛魔王が呆気にとられているチチに、サタンの正体を説明する。

 

「こんなのが優勝するだなんて、レベル低いだなー今の武道会って」

 

「そりゃあ悟空さや武天老師さまたちが参加してねえだ。こんなもんだべ」

 

「おっ(とう)、出ればよかったべ? 優勝間違いなしでねーか」

 

「病人を差し置いて武道大会なんて出れねーべさ」

 

「それもそうか……それにしても悟飯ちゃんったら、今頃どこほっつき歩いているだか。宿題もたくさん残っているっていうのに」

 

 ミスターサタンのことなど、チチたちにとってはどうでもよかった。

 今は一刻も早く心臓病に犯された悟空が回復し、そして最愛の息子である悟飯が帰ってくることがチチの望みだった。

 

 

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