絶望への反抗!! 誇り高きサイヤ人の王子、ベジータの最期!!
これは悟空達が生きた時代よりも未来の話。
「ご、悟空さ……嘘だ、嘘だべ?」
「お父さん……っ!!」
「孫くん……」
「悟空っ!!」
エイジ764年末。
この日、孫悟空はその生涯に突然、幕を下ろすことなってしまった。
ウイルス性の心臓病に肉体を蝕まれ、いくら戦闘で鍛えたサイヤ人の肉体と言えども、病魔には勝つことができなかったのである。
チチ、悟飯、クリリン、ヤムチャ、ブルマ、家族や仲間たちは深い悲しみに暮れることとなる。
そしてもちろん、この男も━━。
「か、カカロット……戦闘民族サイヤ人ともあろう者が、心臓病なんかで死にやがって……ッ!!」
拳を力強く握り、全身を震わせていたのは誇り高きサイヤ人の王子━━ベジータだった。
「クソッタレがァァァーーーーーーーーーーッ!!」
その瞬間、ベジータが黄金のオーラに包まれた。
髪は金髪となって逆立ち、瞳はエメラルドグリーンに変色する。
「カカロット……このオレ様との決着もつけないまま死にやがって、くそォォォオオオッ!!」
そんな自分の変化にも気づかぬまま、ベジータは咆哮し続けていた。
「べ、ベジータさんが……ッ!!」
ベジータの変化に気付いたみんなの中で、いち早く悟飯が反応した。
そんな悟飯の肩に、緑色の逞しい手のひらが置かれた。
「ピッコロさん?」
「
そこでピッコロはこみ上げてくる感情を押し殺しながら、固唾を飲む。
「だが、せっかく孫に並ぶ力を手に入れても、もうベジータは……」
孫悟空とベジータはライバル関係にあった。
初めて戦った時はベジータが圧倒的に優勢だった。だが界王拳という底力を見せつけられ、下級戦士と見下していた悟空の強さを目の当たりに、ベジータのプライドはズタズタに砕かれた。
そしてナメック星での戦いで、ベジータは各段に戦闘力をあげていった。
しかしそれから常に、悟空はベジータの一歩先を歩んでいった。
ギニュー特戦隊を圧倒した時も。
フリーザとの戦いでも。
そしてスーパーサイヤ人への覚醒も。
そして今回━━悟空に並ぶ力を得たのは、皮肉にも悟空を失ったことがキッカケだった。
それからしばらくは平和な時を過ごしていった。
ベジータとブルマの間にはトランクスが生まれ、悟飯は学者になるために勉学に励みつつも、ピッコロが悟飯に稽古をつけていた。
クリリンはカメハウスで亀仙人たちと暮らし続け、天津飯とチャオズは修業の旅を続け、ヤムチャはプロ野球選手として巨額の富を得ていた。
しかしこの平和は、まさしく束の間の平和に過ぎなかった。
『緊急事態が発生しました!! 謎の二人組によって北の都が突如、破壊されてしまいました!!』
人造人間17号と、人造人間18号の出現だった。
ドクター・ゲロによって生身の人間をベースに改造された二人は、ドクター・ゲロを恨んで生みの親である彼を殺害。
そして人間そのものに恨みを抱いた兄妹は、人類を殺戮することで快楽を得ていた。
「おぎゃあ!! おぎゃあ!!」
「おーよしよしよし……それにしても大変なことが起きたわね。孫くんが生きていれば……」
そうブルマが呟いた瞬間だった。
「……カカロットだと?」
突然、ソファーで寝転がっていたベジータが声をあげたのだった。
「孫くん孫くんって、病気で死にやがった下級戦士のカカロットに何ができる!!」
「ちょっとベジータ!! そんな言い方ってないじゃない!!」
「うるさい!! 人造人間だかなんだか知らないが、このオレ様がぶっ壊してやる」
そう叫んでベジータは廊下を駆け抜け、外へ飛び出していった。
ブルマはトランクスをたまたま近くにいた使用人に任せ、ベジータを追いかけた。
「ちょっとベジータ待ちなさい!! アイツら得体が知れない。あんた一人で行くなんて無謀だわ!? ピッコロたちと一緒に戦うべきよ!!」
ブルマはなにか、嫌な胸騒ぎがしていた。
悟空亡き今、ベジータはこの地球で最強の戦士と言える。
しかし悟空亡き今、そのベジータはさほど修行に身が入っておらず、カプセルコーポレーションで毎日怠惰な生活を送っていた。
最低限のトレーニングはしているため、強くなったわけでも、弱くなったわけでもない。
だが今のベジータはピッコロとさほどレベルは変わらない。
だからこそブルマは保険として、悟空とピッコロがラディッツと戦った時のように、ベジータとピッコロでタッグを組むべきだと考えた。
そうすればきっと、謎の人造人間に勝てると考えた。
━━しかし。
「ピッコロだと? ふん、オレ様は戦闘民族サイヤ人の王子、ベジータ様だ。あんなヤツと組んで戦うくらいなら、一人だけで戦って死んだほうがマシだ!!」
そう言ってベジータはスーパーサイヤ人に変身し、瞬く間に舞空術で飛んで行ってしまった。
「ちょっとベジータ!! 待ちなさいよ、ベジータ!! ……ベジータ」
ブルマは遠ざかるベジータの姿を見ながら、一抹の不安を覚える。
だが、彼女にできることは祈る事だけだった。
きっとベジータは人造人間を倒し、世界の平和を守ってくれる。
そう信じるしか、ブルマにはできなかった。
「キサマらか、噂の人造人間とやらは……ククク、なんだガキじゃないか」
二人の人造人間は北の都を破壊しつくしていた。
破壊行動を楽しんでいたため、ベジータにあっさりと発見されたのだ。
「なんだいアンタ? アタシたちに何か用かい?」
「お前は……なるほど、ベジータか」
「ほう、このオレ様を知っているようだな。だったら話は早い、キサマらを破壊してやるぜ」
そう言ってベジータは気を高めた。
眩い黄金の光に全身が包まれ、大地が、空気が、大きく揺れ動いた。
「こんなヤツ、さっさと殺しちゃおうよ17号」
「まあ待てよ。こいつの相手はオレにさせてくれよ」
「なんだい。アンタ独り占めするつもりかい?」
「いいだろう? 孫悟空はどうやら死んでしまったらしいからな。この世界じゃこのベジータとピッコロが二大強者ってことだ。オマエにはピッコロのほうを譲ってやるよ」
ニヤニヤしながら17号は18号の説得をする。
「ふーん、まあいいわ。じゃあそのピッコロってヤツはアタシにやらせてよ」
「そういうことだ。オマエの相手はオレがしてやるぞ」
「フン。すぐに二人がかりでかかってこなかったことを後悔させてやるぜ。はぁーッ!!」
ベジータは気を高め、17号目掛けて突進した。
ベジータの殴打を受け止める17号だが、ベジータは突きや蹴りの嵐を何度も17号に放つ。
17号も手足を出して、二人はラッシュの打ち合いをする。
しかしベジータの攻撃を避けた17号は、ベジータの背中を殴打する。
吹っ飛ばされたベジータを追撃しようと、17号はとてつもないスピードでベジータに迫ったが、待っていたと言わんばかりにベジータは片手を開いた。
そして手のひらに気を集中して、狙いを17号に定める。
「喰らえ!! オレ様の新必殺技、ビッグバンアタァーック!!」
「━━ッ!?」
凄まじいエネルギーの塊が手のひらから飛び出し、17号は動きを止めた。
躱しきれるタイミングではなく、ベジータのビックバンアタックは17号に直撃する。
「……フン、他愛もなかったな」
ベジータはニヤリと口元を釣り上げた。
「━━それはオマエの攻撃のことかな?」
「なに!?」
だが一瞬の喜びに過ぎなかった。
17号は自分の周囲に緑っぽいオーラを纏い、無傷で手のひらを開いてベジータを見て不敵な笑みを浮かべた。
17号はバリアで自分の身を守ることができたのだった━━。
「なるほど……確かに生身の人間にしては強い。だがオレ達が警戒するほどではないな」
「なんだと!? キサマ、このベジータ様が警戒するほどではないだと!? サイヤ人は戦闘種族だ、ナメるなよ!!」
それからベジータは気弾の連射を浴びせた。
何度も何度も、17号が避けきれないほどの弾幕を張ったつもりだった。
しかし17号は俊敏に動いて、残像を残しつつ徐々にベジータに迫った。
そして━━。
「なにっ!?」
「バーカ」
17号の鋭いパンチがベジータの腹部にめり込み、それはベジータの背中を盛り上がらせるほどに協力なパンチだった。
呼吸困難に陥り、咳き込むベジータ。
すかさず17号は強烈な蹴りを叩き込み、ベジータは建物の残骸に叩きつけられた。
「が、はッ!?」
吐血しながら、全身に広がる痛みに苦悶するベジータ。
「どうした、戦闘民族サイヤ人の王子が聞いて呆れるぜ?」
「この野郎……ッ!! ちゃあああああああーーーッ!!」
ベジータは再び黄金のオーラをまとい、17号に向かって飛びかかった。
殴打の連撃を繰り返すが、その全てを見切った17号は全て躱してしまう。
「ふぉおおっ!?」
そしてベジータの鳩尾に、17号の膝蹴りがめり込んだ。
「ベジータ、もっと楽しませてくれよ」
指先で顎を持ち上げ、ベジータを挑発する17号。
その17号の強さに恐怖を覚えるベジータに対し、17号は強烈な殴打を顔面に浴びせた。
ぶっ飛ばされたベジータだったが、なんとか空中でとどまった。
口、そして鼻から流れる血液を拭い、純白のグローブが鮮血に染まった。
「ハァ、ハァ、ハァ……このオレが、たかがガラクタ人形ごときに!!」
「どうした、もう終わりか? だったら殺すけど、いいな?」
「このオレはサイヤ人の王子、ベジータなんだ!! キサマらガラクタ人形なんぞに、ナメられてたまるかァァーーーーーーーーーーッ!!」
咆哮するベジータ。
そしてベジータと17号による、凄まじい打撃戦が始まった。
(力が僅かに増した……データの通り、サイヤ人は感情が高ぶると力が増すのか)
ベジータはプライドを傷つけられ、激しい怒りによって自分でも気づかないうちに気を解放していた。
その結果、さっきまで掠らなかった攻撃が17号を捉えつつあった。
ベジータの攻撃を17号は防いだため、一発も届くことはなかったが、確実に避けられる攻撃は減っていた。
サイヤ人の底力に少々関心した17号だったが、不敵な笑みは崩さなかった。
(だが、たったそれだけのこと。力の差を埋められるほどじゃない━━)
そう思いながらベジータと17号の攻撃が激しくぶつかり合い、少しだけ間合いが離れた瞬間だった。
17号が両手を合わせ、放ったエネルギー波がベジータに直撃したのだった。
ただのエネルギー波ながら、基礎戦闘力の違いからなのか、その威力はベジータが本気で放つビッグバンアタック以上のものがあった。
地面に叩きつけられ、仰向けに倒れるベジータ。
「くそぉ……ッ!!」
なんとか上体を起こそうとするものの、思うように体が動かない。
(潮時か。まあ、思ったよりは楽しめた……か)
ニヤリと笑い、17号は全エネルギーを込めたエネルギー波を放った。
「━━ッ!?」
閃光に包まれるベジータ。
もはやベジータにはソレを避ける体力など残されていなかった。
エネルギー波を食らい、激しい熱が全身を襲った。
(か、カカロッ……ト)
走馬灯のように蘇る、悟空との戦いの記憶。
(ふ、フフフ……待っていやがれカカロット、必ずキサマを、あの世で倒してみせる━━)
誇り高きサイヤ人の王子ベジータ、遂に人造人間17号の前に力尽きる。
死に際に思い浮かべた、悟空の姿。
しかし皮肉なことに、ベジータは死後の世界で悟空と再会することはできない。
これまでたくさんの命を奪ってきた極悪人であるベジータは、魂となって地獄へ送られるのだ。
━━戦闘民族サイヤ人の報われない最期であった。