ドラゴンボール外伝   作: 沢渡限

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絶望への反抗!! 悟飯にすべてを託して、ピッコロとクリリンの最期の戦い!!

「武天老師様、とんでもないことになりましたよ……」

 

「わかっておる……ベジータが、ベジータの気が」

 

 ベジータの気が一気に膨張し、そして完全に消滅したことに、戦士たちは気づいていた。

 

「ウソだろ……ベジータのヤツ、ブルマを残してやられちまったのか!?」

 

 戦士たちは各々、ベジータの死について心情を吐露していた。

 

「天さん……」

 

「それにしてもベジータを()ったヤツは何者なんだ」

 

 悟空亡き今、最強の戦士と思われるスーパーサイヤ人ベジータが破れた。

 それはベジータに対する個人的な感情を抜きにしても、戦士たちにとっては衝撃的な出来事であり、何よりそれほどの脅威が地球に存在することを思い知らされた。

 それはもちろん、パオズ山で修行をしていた悟飯とピッコロも同様だった。

 

「そんな……ベジータさんの気が」

 

「あのベジータを殺すとは、とんでもないヤツが地球に現れたものだ」

 

「ピッコロさん、一体何者なんでしょうか?」

 

「そりゃあおみゃあ、人造人間の仕業だがや!!」

 

 突然の大声に、悟飯とピッコロが反応して振り返る。

 そこにはクルマから降りて、ふてぶてしい表情で佇むヤジロベーの姿があった。

 

「ヤジロベーさん!!」

 

「どういうことだ、説明しろ」

 

「オレもカリン様から聞いただけだがよ、人造人間っちゅーヤツらが北の都で暴れてよ、ソイツらどえりゃー強くてな、ベジータのヤツはアッサリ殺されちまったよ」

 

 ヤジロベーの言葉には信憑性があった。

 彼が暮らすカリン塔には、カリンという猫の姿をした仙人がいる。

 カリンは下界の様子を探ることができるため、カリンを通じてヤジロベーは大方の事情を把握していた。

 そのことを悟飯もピッコロも知っていたため、ヤジロベーの説明を真に受けて拳を握り締めた。

 

「人造人間だと……ソイツらということは、複数いやがるのか?」

 

「人造人間は二人だがや。ベジータを殺した後も、ヤツらは破壊を楽しんどる」

 

「人造人間……街を、人を、破壊しまくっているだなんて……なんとかしなきゃ!!」

 

 悟空が病気で死に、ベジータが人造人間との戦いに敗れ、戦死した。

 そして人造人間は破壊と殺戮を楽しんでいる。

 そんな現状を聞いて、悟飯の心の中では正義感が燃え上がっていた。

 

「待て悟飯。ベジータがやられるほどの相手だ……無策でぶつかってもオレ達に勝ち目はない」

 

「そんな!! それじゃあ僕たちはどうすれば……」

 

「勝てる可能性があるとすれば、オレとお前が強力な一撃をヤツらに与えること。だが二人の人造人間がベジータを上回るとするなら、オレたち二人ではとても無理だろう」

 

 しかしピッコロは考えていた。

 ベジータに匹敵する自分はもとより、自分達以上の力を秘め、その潜在能力は父である孫悟空を超える悟飯の底力であれば、もしかしたら人造人間を出し抜けるかもしれないと。

 そのためには人数が必要であると。

 

「悟飯、お前はヤジロベーとカメハウスへ向かえ。クリリンもそこにいるだろうしな」

 

「ピッコロさんは?」

 

「オレは天津飯とチャオズ、そしてヤムチャを探してくる……」

 

 彼らは自分たちより実力的には劣るものの、特にクリリンは戦闘経験が豊富でトリッキーな戦術が得意であり、格上相手に立ち回れるずる賢さと身のこなしがある。

 天津飯には気功砲という必殺技があり、格上にも通用する威力を秘めている。

 ヤムチャとチャオズは……作戦の成功には頭数が多いほうがいいだろうと、ピッコロは考えた。

 

 ━━こうしてピッコロはその日のうちに全員を集め、カメハウスで作戦会議が行われた。

 

「なんだよピッコロ、人造人間を倒す作戦っていうのは」

 

 クリリンが質問をすると、ピッコロは瞑っていた瞳を開けた。

 

「二人の人造人間は、どうやらベジータを超える力を持っているらしい」

 

「おいおい、そんなヤツをオレたちが倒せるのかよ?」

 

 ヤムチャは全身の毛が逆立つような恐怖を覚えながら、ピッコロにそう質問した。

 

「お前たちはもとより、オレでも無理だろう。だが一つだけ手がある」

 

「その手ってのはなんだ、ピッコロ。もったいぶらずに教えろ」

 

 天津飯がピッコロに説明を求める。

 

「オレの魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)は、相手のほうが強くても多少のことなら通用する技だ。悟飯もオレとの修行でそれを会得している。悟飯の魔貫光殺砲でヤツらを貫く作戦だ。だが最大パワーの魔貫光殺砲は気を溜めるのにやたら時間がかかる。お前たちにはオレと共に、ヤツらを足止めして欲しい」

 

 かつてナッパとの戦いにおいて、ピッコロがクリリンと悟飯に指示した作戦とほぼ同一の作戦だった。

 あの頃は悟飯の未熟さと、ナッパの凄まじい戦闘力を前に失敗している。

 しかしサイヤ人やフリーザとの戦いを経て、悟飯は肉体的にも精神的にも見違えるほどに成長している。

 クリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズの四人では、人造人間には歯が立たないだろう。

 そこに自分が加われば、二人の人造人間を相手になんとか立ち回れる。

 人造人間を直接見たわけではないが、ヤジロベーから聞かされたベジータの戦いぶりから、殺されない程度には持ちこたえられるのではないかと推測した。

 そう考えた理由は単純だ。

 ピッコロはベジータの気から、ベジータの実力を察していたのだ。

 

 ━━気の大きさは今の自分とさほど変わらないことを。

 

 つまり今の自分は、ベジータとほぼ同等の実力があると考えていた。

 

「オレたちが、足止めか……サイヤ人との戦いを思い出すな」

 

「だけどクリリン、相手はベジータより強いんだぜ? そんなことできるのかよ」

 

「だがピッコロの言うことは一理ある。今ヤツらを倒せる可能性があるのは、悟飯とピッコロしかいないのだからな」

 

 天津飯とクリリンは覚悟を決めていた。

 

「ボク、戦うよ。天さんの役に立ちたい」

 

 チャオズも天津飯と運命を共にする覚悟だった。

 

「天津飯、クリリン、チャオズ……しょうがねーな、オレもやってやるぜ!!」

 

「ああ、やるだけやってみよう。ピッコロも一緒に戦ってくれることだしな!!」

 

「決まりのようだな。では作戦は明日だ……せいぜい英気を養っておけ」

 

 ピッコロの一言によってその日は解散となり、戦士たちは来るべき決戦に備えて休養をとった。

 また天津飯とチャオズのように、修行をして決戦に備える者たちもいた。

 ちなみに情報を伝達してきたヤジロベーはというと……。

 

「オレは闘わねーぞ!! この世が滅びる前にうんみゃーモノ食うんだ!!」

 

 いつものように戦いを拒むのであった。

 そして亀仙人はというと。

 

「ワシがいてもお荷物になるだけじゃろう。悔しいが、お主たちからの吉報を待っておる」

 

 己の無力さを痛感しつつ、ピッコロたちが人造人間を倒すことを祈っていた。

 

 ━━翌朝。

 

 戦士たちは集合した後、人造人間が暴れているという北東方面へと向かった。

 そしてカメハウスでは亀仙人とウーロン、そしてプーアルが戦士たちの健闘を祈っていた。

 そんな時、一機の飛行機が降り立った。

 

「お、お主……」

 

 それは黒い喪服に身を包んだブルマであった。

 

「ブルマよ、お主……大丈夫なのか?」

 

「ええ……一晩中泣いてたら少し落ち着いたわ」

 

 よく見るとブルマの目元は赤く腫れあがっていた。

 殆ど家族を顧みなかったものの、それでも最愛だった夫を失った辛さを物語っていた。

 

「おいおい、葬式中なんだろ? いいのかよ抜け出してきて?」

 

「葬式は明日よ。葬式といっても、ベジータの遺体なんて無いんだけどね……」

 

 そう呟くブルマの瞳から、また涙がこぼれ始めていた。

 

「ブルマさん、これ使ってください」

 

 プーアルがブルマにハンカチを渡した。

 

「ありがとう、プーアル……ううっ」

 

「それでブルマよ、ワシに何か用かの?」

 

「ええ、昨日ヤムチャから聞いたわ。今日、みんな人造人間と戦いに行くってね」

 

「なるほどの……」

 

 一人で祈りより、みんなで祈りたい。

 ブルマの心境としては、そんなところだろうと亀仙人は察したのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「これはこれは……揃いも揃って、大名行列のようだな」

 

「なんだいアンタたちは? 鬱陶しいんだよ……全員殺すよ?」

 

 人造人間17号は不敵な笑みを浮かべ、人造人間18号は不快そうに啖呵を切った。

 そんな二人の前で、ピッコロら戦士たちは構えをとっていた。

 

「ほざけ……死ぬのはキサマらのほうだ」

 

「ピッコロ大魔王ごときが何を言っている? ……よし18号、オマエにピッコロを任せよう」

 

「アンタはどうするんだい?」

 

「その他大勢と遊んでやる。5対1だ、少しはゲームらしくなるだろう?」

 

「アンタは遊び好きね。まあいいわ、遊んであげるよ……ピッコロ大魔王」

 

 戦いの火蓋は、ピッコロが放ったエネルギー波によって切って落とされた。

 17号と18号は二人は二手に分かれ、18号がピッコロを襲った。

 

「たぁっ!! たたたたたぁ!! じゅうえんッ!!」

 

 激しくぶつかり合うピッコロと18号。

 ベジータと同等の戦闘力を有するだけあって、ピッコロは18号を相手に引けを取らぬ戦いぶりを見せた。

 そして17号はクリリンたちへと襲い掛かる。

 

「悟飯!! お前は作戦通り、退避して気を溜めるんだ!!」

 

「はい!!」

 

 悟飯は返事した後、飛び退いて物陰に隠れ、人差し指と中指を額に当てて気を溜め始めた。

 ピッコロ直伝、魔貫光殺砲である。

 

「頼んだぜ悟飯……よし、みんな行くぞ!!」

 

「狼牙風風拳、久しぶりにお見舞いしてやるぜ!!」

 

「行くぞ、チャオズ!!」

 

「はい、天さん!!」

 

 17号を相手に、四人は果敢に飛び込んでいった。

 しかしそれは地獄の幕開けであった。

 

「ぐはっ!?」

 

 17号の戦闘力は圧倒的だった。

 クリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズの四人で束になっても、まるで歯が立たなかった。

 少しはマシな戦いができるかと四人は思っていたが、17号の強大な力を前に四人は一方的に弄ばれてしまう。

 

 ━━そして遂に悲劇は訪れた。

 

「そんな、ボクの超能力が効かない……ッ!!」

 

「鬱陶しいガキだ。ふんっ!!」

 

 17号が放ったエネルギー波によって、チャオズは跡形もなく消し飛んでしまった。

 

「そんな。ちゃ、チャオズが……やられちまった」

 

 チャオズだった残りカスが降り注ぐ中、クリリンは青ざめた表情でその方向を見つめた。

 

「チャオズ!! ……おのれ、許さん!! 絶対に許さんぞ、キサマァーッ!!」

 

「おい天津飯!! 待て、一人じゃ無理だ!!」

 

 チャオズを殺されたことにより、怒り狂って突撃する天津飯。

 そんな天津飯を援護しようと、ヤムチャも一歩遅れて飛びかかった。

 しかし━━。

 

「うるさい!!」

 

「━━ッ!?」

 

 17号のエネルギー波が、天津飯の腹部を貫いた。

 

「が、は……ッ」

 

 天津飯は薄れる意識の中、ヤムチャが立ち向かうのを見る。

 それが天津飯が生涯、最期に見た光景だった。

 

「くっそぉぉぉ!! よくも天津飯を……特大の操気弾だッッッ!!」

 

 ヤムチャは右手から気の弾を出し、それを手の動きに合わせて操作した。

 これがヤムチャの切り札、神様をも驚かせた操気弾である。

 何度か17号を横切る気弾。

 それには一切目を向けず、17号は涼しい顔でヤムチャを見つめ続けた。

 

「はああああ!! たりゃあ!!」

 

 操気弾は17号に直撃し、激しい爆発を起こした。

 爆風を身に浴びて、クリリンは腕で顔面を覆った。

 

 ━━しかし。

 

「ご、ぉあっ!?」

 

 ━━次の瞬間、ヤムチャの胸をエネルギー波が貫いていた。

 

「あ、ああ……そんな、ヤムチャさんまで…………っっっ」

 

 爆炎の中から姿を現す、手を張り出した17号。

 不敵な笑みのままクリリンを見下していた。

 

「とうとうオマエ一人になってしまったな?」

 

(クソッ!! みんなやられちまった……どうする? オレなんかが勝てる相手じゃない!!)

 

 クリリンは腰を落として構えを取りながらも、冷や汗を流して歯を噛み締めていた。

 横目で18号とピッコロの戦いを見る。

 

「うふふ、そろそろスタミナが切れてきたようね」

 

「ハァ、ハァ、ハァ……くそ、化け物め!!」

 

 18号は一切疲れを見せていないが、ピッコロは息を切らし始めていた。

 

(まずい、このままじゃ全滅してしまう……なんとかしないと!!)

 

 クリリンは焦っていた。

 そして必死になって策を練ろうと、頭で色々と考えていた。

 しかし戦闘経験豊富な彼をもってしても、何をどう頭を捻っても、17号に対して有効な攻撃を浴びられるビジョンが見えない。

 それでも17号をなんとか躱して、ピッコロを援護しなくてはまずいと思った。

 

(ドラゴンボールさえあればナメック星に行ける……それで殺されたみんなは生き返るんだ。だからピッコロは、ピッコロだけは死なせちゃいけない!!)

 

 クリリンは覚悟を決めた。

 なんとか17号の動きを封じ、ピッコロに加勢をする覚悟を。

 

「どうやら覚悟はできたようだな。それじゃ、死んでしまえ━━」

 

 17号は猛スピードでクリリンに接近してくれ。

 

(しめた……アイツ、一直線に飛び込んでくれた!!)

 

 クリリンと17号の実力差は明白である。

 しかし経験豊富なクリリンは、これをチャンスだと捉えた。

 何故なら、あの技が有効な状況だからだ。

 そしてそろそろ悟飯の気も溜まる頃合い。

 17号の動きを封じ、ピッコロに加勢し、そして悟飯が17号に攻撃する最大にして最後のチャンス。

 開いた手のひらを頭の横に、クリリンは腰を落として目を瞑った。

 

「食らえッ!! 太陽拳!!」

 

 刹那、眩い閃光に大地が包まれた。

 

「うわっ、なんだ!?」

 

 突然、視界を奪われた17号は、ただひたすら目を覆うことしかできなかった。

 

「今だ悟飯!! やれーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 そう叫んでクリリンは気を解放し、17号の前から戦線離脱。

 一直線に飛んで、ピッコロと18号に近づいていく。

 

「もうつまんないね……これで終わらせるよ!!」

 

「クソ、ここまでか……ッ!?」

 

 ピッコロはかなり疲弊していた。

 息を切らし、18号の猛攻になんとか耐えていたが、いよいよ限界が近づいていた。

 ベジータとさほどレベルが変わらない手前、ピッコロ単独では17号に匹敵する18号には勝ち目などないのである。

 しかし18号の背筋が凍る。

 嫌な予感を感じた18号は空を舞い、ソレを間一髪で避けた。

 円形の鋭い気の刃が18号の髪を数本、切断して遠ざかっていく。

 

「……あの野郎」

 

 ピッコロは思わず口を釣り上げ、表情を明るくした。

 

「クソッ!! あと一歩だったのによ……ッ!!」

 

「なんだいアンタは? 17号はどうしたんだい?」

 

「17号はもうすぐやられるさ……ピッコロ、加勢するぜ?」

 

「キサマに手助けされる日が来ようとはな……行くぞクリリン!!」

 

「おう!!」

 

 ピッコロの窮地を救ったクリリンは、そのまま18号との戦いに加勢する。

 そして視力を奪われた17号だったが、ぼんやりとその視力が回復しようとしていた。

 

「くそっ、あのハゲ頭……ッ!!」

 

「食らえ!! みんなの仇だ……魔貫光殺砲!!」

 

 次の瞬間、物陰から飛び出た悟飯は一点に集めたエネルギーを指先から放出した。

 高圧のエネルギーが超高速で17号に襲い掛かる。

 

「17号!!」

 

 それを見た18号も、思わず17号の安否を心配して叫んだ。

 

「クソ……さっきの光で目が見えないっ!!」

 

「悟飯!!」

 

 ピッコロが叫ぶ。

 

「やれ、ごはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」

 

 クリリンが目を瞑り、精いっぱいの声で悟飯に声援を送る。

 みんなの期待を込めた、ピッコロ直伝の魔貫光殺砲は、17号の反射神経をもってしても避けきれるタイミングではなかった。

 

 ━━しかし魔貫光殺砲は17号に届かなかった。

 

 17号は直撃する寸前、バリアの展開に成功したのだった。

 17号のバリアは非常に強力であり、あの二倍以上もの戦闘力に差があったラディッツさえ貫いた魔貫光殺砲を、なんと弾いてしまったのである。

 

「そんなぁ……ッ!!」

 

 悟飯は情けない声を漏らす。

 

「ご、悟飯……くそ、通らなかったか!!」

 

 ピッコロが悔しそうに咆哮する。

 

「そんな。悟飯の気はすさまじかった……マトモに食らってたら、悟空だって危うい技なのに!!」

 

 青ざめた表情で、クリリンは戦慄していた。

 

「今のは危なかった。マトモに食らっていたら怪我はしていたかもな」

 

 17号は衣服についた埃を払いながら、悟飯の技を称賛する。

 しかしその称賛は三人にとって、全く嬉しくない称賛だった。

 ピッコロとクリリンは飛んで悟飯の周りへ降り立ち、悟飯を守るように悟飯の前で構えた。

 

(悟飯は、悟空の息子だ……サイヤ人だしな、とてつもないパワーを秘めてる)

 

 クリリンは歯を食いしばながら、悟飯をチラ見して考えた。

 

(今のオレたちにヤツらは倒せない。だが悟飯……あるいはベジータが遺したあのガキなら)

 

 そしてピッコロは窮地に陥って、逆に微笑んでいた。

 自分の愛弟子にして孫悟空の息子であり、サイヤ人の血を引く孫悟飯。

 そしてベジータとブルマとの間に生まれた、もう一人のサイヤ人の血を引く子━━トランクス。

 

 ━━希望はこの二人だけだと、クリリンとピッコロは同時に思った。

 

 悟空やベジータのようにスーパーサイヤ人に覚醒し、いずれ悟空やベジータを超える超戦士になりえるのは、悟飯とトランクスだけであろう。

 だがトランクスはまだ赤子。

 悟飯はまだ子供、しかしピッコロたちから戦い方はある程度、学んでいる。

 今の悟飯に勝ち目はない。

 そして悟飯まで死なせてしまっては、トランクスも戦士として育たない。

 

 ━━クリリンとピッコロは、覚悟を決めた。

 

「おいピッコロ。おまえ、悟飯と一緒に逃げろよ」

 

「バカを言え。キサマ一人では時間も稼げなかろう」

 

「ピッコロさん、クリリンさん……」

 

 二人の背中を見て、悟飯は不安げに二人の名前を呼ぶ。

 

「悟飯。オレとピッコロが飛びかかるから、その隙にお前は逃げるんだ。いいな?」

 

「そんな……二人を見捨てられません!! ボクも戦います!!」

 

「悟飯。逃げろ、これは命令だ」

 

 ピッコロが厳しく目を光らせ、それには流石の悟飯も狼狽えた。

 

「お前は孫悟空の息子だ。そしてサイヤ人の血を引いている……お前は生き延び、スーパーサイヤ人となり、そしてベジータのガキのトランクスを戦士として育て上げ、二人で人造人間を倒すんだ。いいな? これはオレからの命令だ」

 

 希望をここで消すわけにはいかない。

 そんな意志だったが、ピッコロは最後に微笑んだ。

 

「悟飯……オレと初めてマトモに喋ってくれたのは、お前だけだった。お前のことはたとえ死んでも忘れん。だから生きろ……生きて、平和を勝ち取ってオレたちの仇を取ってみせろ。そして夢を叶え、学者になってオレたちを安心させてくれ……頼んだぞ」

 

 その優しい笑顔を最後に、ピッコロとクリリンは17号と18号に突撃していった。

 

「生きろよ、悟飯!! うおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!!」

 

「クリリンさん!!」

 

「行け、悟飯!! はあああああああーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

「ピッコロさん……うわあああああああああああああッッッ!!」

 

 その日、悟飯はどうやって家に帰ったのか、全くと言っていいほど記憶になかった。

 ただひたすら泣き叫び、大粒の涙を拭いながら、必死になって空を飛んだ。

 クリリンとピッコロが、自分の身を犠牲して救ってくれたこの命、決して無駄にしてはいけないという気持ちで、悟飯はひたすら飛び続けたのだ。

 決して後ろを見ず、前だけを見て、悟飯は激しい怒りと悲しみに耐えながら飛んだ。

 

「う、ううぅう……クリリンさん、ピッコロさん…………うわあああああああっ!!」

 

 その時だった。

 悟飯の中で、何かか目覚めたのは。

 

「許さなあああああーーーいっ!! 人造人間、絶対に許さないぞ!! うわあああーーっ!!」

 

 悟飯が黄金に輝いた。

 髪が亜麻色に逆立ち、瞳の色まで宝石のように変色した。

 

 ━━悟飯はこの日、スーパーサイヤ人に目覚めた。

 

 ━━そしてピッコロとクリリンは悟飯を逃がすため、壮絶な戦死を遂げるのだった。

 

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