ドラゴンボール外伝   作: 沢渡限

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ドラゴンボール超で未来ヤジロベーが生存していますが、その経緯を考えてみました。


絶望への反抗!! 最後の仙豆を届けよ、ヤジロベーとカリン様の決死の作戦!!

 人造人間17号と人造人間18号は、あまりにも強かった。

 僅か二日間の間にベジータ、ピッコロ、クリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズと、殆どの戦士たちは圧倒的な強さの前に破れ、そして命を落としてしまった。

 残された戦士は悟飯と、まだ生まれたばかりの命━━ベジータの子・トランクスのみ。

 

(ピッコロさん……クリリンさん……ヤムチャさん……天津飯さん……チャオズさん……ベジータさん)

 

 パオズ山の奥。洞窟の中にて、悟飯は気を高め、それを一気に解放した。

 一瞬だが、悟飯はスーパーサイヤ人に覚醒した。

 だが、本当に一瞬。すぐに力尽きてしまい、悟飯は四つん這いになって息を切らした。

 

「はあ、はあ、はあ……ダメだ。今のままじゃ、スーパーサイヤ人を維持できない」

 

 ピッコロとクリリンの死によって目覚めたスーパーサイヤ人。

 しかし悟飯まだスーパーサイヤ人に自在に変身したり、長時間変身することができずにいた。

 

(もっと、強くならなくちゃ……みんなの仇を討つんだッ!!)

 

 地面を殴り、悟飯は固く誓った。

 

「お父さん……どうかボクに力をください」

 

 そして悟飯の修行の日々が始まった。

 

 ━━それから7年。

 

 人造人間は破壊と殺戮をゲーム感覚で楽しんでおり、じわじわとではあるが確実に地球人口は減少しつつあった。

 もちろん、人類はただ人造人間に黙ってやられようとしたわけではない。

 人造人間に抵抗しようとする者たちはいた。

 

『国民の皆様、落ち着いてください。二人の人造人間は必ずや王立軍が討伐してみせましょう』

 

 キングキャッスルの国王が軍隊の派遣を決定。

 二人の人造人間に対し、軍隊が何度も何度も襲撃を行ったものの、結果は言うまでもない。

 軍隊は一年のうちに組織的な戦闘能力を失い、以降は王立軍の残党やレジスタンスによるゲリラ戦が中心となった。

 もちろん、腕に覚えのある達人たちも人造人間討伐に名乗りを上げた。

 

「聞けーい!! この格闘技世界チャンピオン、ミスターサタンが人造人間などとふざけた野郎どもを破壊してくれるわい!!」

 

 ミスターサタンも立ち上がった。

 軍隊が壊滅した今、第24回天下一武道会を含めた三大会制覇という快挙を果たした、サタンが人類にとって最後の頼みの綱であった。

 この宣言の後、サタンは人造人間の討伐へと向かった。

 

 ━━以降、サタンは消息不明となってしまう。

 

 サタン以外にも襲撃された地域の達人たちが、人造人間に立ち向かっていった。

 

「このギランさまをナメるなよ!! グルグルガムを食らってみろ!!」

 

「フン、これがどうしたというんだ?」

 

「鬱陶しいんだよ、この怪獣野郎が」

 

「ギィエエエエエエエエエッ!!」

 

 かつて天下一武道会で孫悟空と戦ったギランが殺された。

 

「この私がどうにか時間を稼いで見せる……受けてみよ、天空×字拳(てんくうぺけじけん)を!!」

 

「意味のないことを……波っ!!」

 

「無念━━ッ!?」

 

 ナムも、村を守ろうと立ち向かったが、敵うはずもなく一瞬で消滅させられてしまった。

 人造人間は、あまりにも強すぎたのだった。

 ピッコロやベジータでも勝てない二人に、もはや地球人類など成す術もなかったのである。

 

 ━━こうして7年間の間に、およそ達人と言われる地球人類はほぼ消滅していた。

 

 せいぜい戦闘力の高い人類はカメハウスを離れ、潜水艦の中で生き延びていた武天老師と、襲撃を受けていないパオズ山のチチや牛魔王、コソコソと物陰に隠れて生き残った鶴仙人と桃白白くらいである。

 レジスタンスによる抵抗活動は続いていたが、結果は虚しいものだった。

 

「もっと張り合いのあるやつらはいないのかい?」

 

「どうやらピッコロやベジータ達以外に、面白そうな戦士はいないみたいだな」

 

「もういっそのこと、さっさと全員殺しちゃおうよ、17号」

 

「まあ慌てるなって。人間の恐怖に引き攣る顔が面白いんだろ? じわじわと時間をかけて、人間が恐怖に怯える姿を楽しみながら絶滅させていこう」

 

 この時点で地球人類の人口は全体の7割ほどに減少していた。

 しかし人造人間の戦闘力からすれば、進行は遅いほうである。

 これは特に17号の意思によって、ゲーム感覚で人殺しをしていたためである。

 彼らは恐怖に引き攣る人間の顔を楽しんでいたのだ。

 

「それにしても、もうこの街には人類は生き残っていないようだな」

 

「最後にド派手に花火にしちゃおうよ、17号」

 

「そうだな。この街、最後の輝きということにしてしまおう」

 

 そう言って二人は空高く飛び、二人は手のひらを壊滅した街へと向けた。

 エネルギーを込めて、完全に都市を消滅させてしまおうとした━━瞬間だった。

 

「はあああああああああああーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 17号が、何者かによって蹴り飛ばされたのであった。

 

「な、なんだいアンタは!?」

 

 それは若き青年であった。

 山吹色の道着に身をまとい、その中には半袖の紺色のインナーを着用していた。

 背中には大きく飯の文字が刻まれ、黒髪短髪の黒目の青年は、憎悪に満ちた表情で17号と18号を睨みつけていた。

 

「孫悟空!? ……いや違う、貴様は何者だ?」

 

 その容姿は悟空を彷彿とさせるものだったが、別人であることを17号はすぐに見抜く。

 

「オレは……おまえたち人造人間を倒す者だ。はあああああああああっ!!」

 

 青年は気を目いっぱい高めると、その髪と瞳が明るく変色した。

 逆立った金髪、エメラルドグリーンの瞳、そして全身をまとう黄金のオーラ。

 17号と18号は、その姿に見覚えがあった。

 

「17号、こいつどこかで見覚えないかい?」

 

「ベジータと同じ変身をしている。ということはサイヤ人……そうか、わかった。オマエは孫悟飯だな?」

 

 この時、悟飯17歳である。

 立派な青年に成長し、幼かったあの頃よりも戦闘力をあげている。 

 

(7年前……オレは家族を捨てた。そしてピッコロさんたちの仇を討つため、必死に修行を重ねてきたんだ。7年前の恨みを晴らし、平和を勝ち取ってみせる……ッ!!」

 

 悟飯はますます気を高めていく。

 

「なるほど、7年前の戦いでピッコロとクリリンが捨て身でオマエを逃したんだったな」

 

「相当修行したみたいだね。でも金髪になったくらいじゃアタシらには勝てないよ」

 

「まあいいだろう……少しだけ遊んでやるか。いいだろ18号?」

 

「またアンタの遊び好きかい。好きにしな?」

 

「そういうことだ、オマエの相手はこのオレだ」

 

 17号はニヤニヤ笑いながら両手を広げた。

 

(シメたぞ。2対1じゃ厳しい戦いでも、1対1なら……まずは17号を倒す!!)

 

 こうして戦いの火蓋は切って落とされ、悟飯は17号に対してもてる力の全てをぶつけて、激しい猛攻を繰り返した。

 しかし悟飯の殴打も、エネルギー波も、どれ一つとして有効打にはならない。

 むしろ17号は不敵な笑みを崩さず、悟飯の攻撃を楽しんでいる様子だった。

 

「が、はぁっ!?」

 

 悟飯は膝蹴りを食らい、蹲ったところで背中に激しい打撃を受け、地面に落とされた。

 膝と手をつきながらもなんとか持ちこたえ、悟飯はフラフラしながら立ち上がった。

 

「なるほど、確かにパワーをあげたようだな……だけど7年前のベジータと差は無いな」

 

「なんだと!?」

 

「ふん、オマエ程度なら本気を出さなくてもラクに殺せるぞ」

 

「くそぉ!! 魔閃光!!」

 

 手のひらを頭の前で合わせ、激しいエネルギー波を17号に向かって撃つ。

 躱されてしまったが、これは悟飯も想定の範囲内で、悟飯は魔閃光を放ってすぐに高速で移動して、17号の懐に入り込んだ。

 

「もう一発!!」

 

 すかさず17号に向かって魔閃光をもう一発放った。

 直撃したかに思われたが、17号は悟飯の魔閃光を右腕一本で弾き飛ばしてしまった。

 

「なに!?」

 

 悟飯は人造人間に対し、心底恐怖を抱いていた。

 全身の震えが止まらず、嫌な汗が次々と吹きだしてくる。

 まだ勝てない━━人造人間との実力差を痛感し、絶望していた。

 

「スゴいよ、流石はサイヤ人。生身でよくここまで力をあげたものだな」

 

「くっ……!!」

 

「だけどオマエはそれで限界だ。見せてやる、エネルギー波とはこう撃つんだ!!」

 

 刹那、17号はぱっと開いた手のひらから閃光が走った。

 瞬く間にそれは悟飯のところへ到達し、悟飯に当たったソレは大爆発を起こした。

 

「うわああああああああああああーーーーーーーーーっ!?」

 

 悟飯の道着がボロボロになり、全身傷だらけになってしまった悟飯は仰向けのまま地面へと落下してしまい、力なくスーパーサイヤ人も解けてしまった。

 悟飯は完全に気を失い、目を瞑って倒れてしまった。

 17号が着地し、ニヤニヤ笑いながら悟飯を見下ろす。

 

「久しぶりに楽しめたぞ。放っておいても死にそうだが、一応トドメを刺しておくか……」

 

 17号が悟飯にトドメを刺そうとした瞬間だった。

 

「なんだ!? げほっ、げほっ!!」

 

 突然、18号が苦しそうに咳き込み始めたのだ。

 17号が振り向くと、18号が立っていたあたりに謎の煙幕が立っていたのだ。

 そう、18号に気を取られてしまったのが、17号の油断であった。

 

「どりぇりゃああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 刹那、17号は背中に灼熱を覚えた。

 

「う、うあぁぎゃああああああああああああああっ!!」

 

 届かない背中に手を伸ばそうとしつつ、17号はその激痛に苦悶する。

 

「今だーカリン様!! 悟飯に仙豆を食わせるチャンスだぎゃ!!」

 

「ほーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」

 

 それはヤジロベーとカリン様であった。

 カリン様が18号の周辺に煙幕を張り、17号の注意をそちらに向けた瞬間、ヤジロベーはベジータの尻尾をも切り裂いた太刀で、17号の背中を切り裂いたのである。

 

「くそぉー!! よくもやってくれたね!! 波ぁーーーーーーっ!!」

 

 しかしヤジロベー達の作戦は失敗に終わろうとしていた。

 

「ひぎゃっ!?」

 

 18号のエネルギー波が、カリン様を掠めたのだ。

 カリン様は18号の心を読んでいたため、直撃こそしなかったものの、その戦闘力さは決して埋められるものではなく、カリン様はその一撃で瀕死の重傷を負ってしまった。

 

「こいつ、絶対に許さん!!」

 

「ごぉえっ!?」

 

 そして反撃の態勢を整えた17号のエネルギー波が、ヤジロベーの腹を貫く。

 

「……頭に来たぜ。まとめて消し去ってやる!!」

 

「やっちゃおう!! 17号!!」

 

 17号は頭に血が上り、18号と共に空高く飛んだ。

 そして予定通り、都市を消し去ろうとエネルギー波を放った瞬間だった。

 

(カリン様も、ヤジロベーさんも……まだ辛うじて生きている……ッ!!)

 

 悟飯が一気に飛び出し、ヤジロベーとカリン様を守るように立ち塞がったのだ。

 

「はあああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 そして悟飯は、見様見真似で覚えた17号のバリアを展開。

 スーパーサイヤ人に変身し、その身で17号と18号の攻撃を受けようとした。

 直撃の瞬間、まるで核爆発のような大規模な爆発に、この都市は包まれてしまった。

 しばらくして爆炎が収まると、都市とその周辺は完全に荒野になってしまっていた。

 

「見たかい? 孫悟飯のやつ、あの二人を庇ったよ」

 

「ふん。だが三人ともくたばったようだな……さあ18号、次の街へ行こう」

 

「ふふ、これでアタシたちの邪魔をするやつはいなくなったね」

 

 倒れ伏した悟飯と、ボロボロのカリン様とヤジロベーを見た人造人間の二人は、三人が死亡したものと判断してその場を離れたのだった。

 

「……ご、悟飯は、気絶しておるだけじゃ……じゃが、ヤジロベーが……っ」

 

 瀕死の重傷を負いながらも、カリンはなんとか意識を保っていた。

 這いながら、カリンは仙豆の袋を持って、ヤジロベーへと接近する。

 

「か、カリン……さまっ」

 

 ヤジロベーも意識が薄れてきていたものの、辛うじて生きていた。

 

「ワシは、もう……ダメじゃ……仙豆じゃ、お主が……食えっ」

 

「か、カリン様……お、オレはいいだ……アンタが、食ってちょ…………」

 

「今の、世界に、必要なのは、仙人ではなく……戦士じゃ……」

 

「カリン、様……」

 

「これを食い、安全なところへ、悟飯を運び……悟飯の怪我を……頼んだ、ぞ」

 

 カリン様は仙豆をヤジロベーに手渡した瞬間、息絶えてしまった。

 

「か、リ、ン、さ……ま…………」

 

 ヤジロベーも息絶える寸前だったが、持ち前のタフさでなんとか堪えていた。

 ヤジロベーは悲しみと苦痛を堪えつつも、なんとか仙豆を喉に通せた。

 その結果、ヤジロベーの腹に開いた風穴が塞がり、ヤジロベーは元気を取り戻す。

 

「カリン様……そりゃねーがや!! おみゃーさんが死んじまったら、もう誰も仙豆を作ることができねーでしょ!!」

 

 ヤジロベーはカリンの亡骸を抱え、大声で泣き喚いた。

 

「……おい、悟飯、仙豆だがや。食え」

 

 仙豆の袋ははヤジロベーが持っていた。

 そして予備の仙豆をカリン様が持っていた。

 しかしヤジロベーは仙豆の袋に手が届かない状態だった。

 自身も動けない手前、ヤジロベーを回復させるのがカリン様にとって最善策だった。

 己の命を犠牲に、ヤジロベーを復活させたカリン様。

 その想いを無駄にするわけにはいかない。

 ヤジロベーは七粒の仙豆が入った袋から一粒を取り出し、それを悟飯の口に無理やり押し込んだ。

 仙豆を食べ、復活するまでは多少のタイムラグが存在する。

 その隙にヤジロベーはカリン様の亡骸を抱き抱え、悟飯に後目を向ける。

 

「悟飯、その仙豆はおみゃーさんが使え……オレは役に立てねーからよ」

 

 そう言ってヤジロベーはカリン様を抱えたまま、どこかへ立ち去ってしまった。

 これ以降、ヤジメベーを見た者はいなかった。

 そして悟飯は意識を取り戻し、しばらく呆然としてから、自分が人造人間に敗北したことと、仙豆をヤジロベーたちが届けてくれたこと、そしてヤジロベーとカリン様は自分のために命を貼り、そして絶命したと思い込んだ。

 悔しかった。

 あれだけ修行したのに、全く人造人間には歯が立たなかった。

 それどころか、ヤジロベーとカリン様という大切な仲間をまた失う結果となった。

 最も悟飯は気絶をしていたため、ヤジロベーが生存していることを知らない。

 

「くそおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 やり場のない怒りを、スーパーサイヤ人に変身して晴らそうとする。

 

「人造人間め!! 絶対に、絶対に倒してやるぞ!! もっと強くなって、絶対に!!」

 

 それからも悟飯は闘い続けた。

 成長してきたトランクスに稽古をつけつつ、人造人間に立ち向かい続けたのだった。

 それからさらに5年の歳月が流れ━━エイジ779年。

 

 自分の強さに限界を感じ始め、死期を悟りつつある悟飯に━━ある出会いが訪れる。

 


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