ドラゴンボール外伝   作: 沢渡限

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 お久しぶりです。
 色々ありまして、長らく更新滞って申し訳ございません。
 ぼちぼち再開していければと思います。


絶望への反抗!! 悟飯と武天老師の決意

 エイジ779年、人造人間17号と18号による殺戮(さつりく)は続き、多くの地球人類が命を落とした。

 

『お知らせいたします。二人の人造人間によって、ペッパータウンが廃墟と化しています!!』

 

 ベジータ、ピッコロ、クリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズたちが死に、カリン様も殺されてしまい、遺体は発見されなかったがヤジロベーとも音信不通。この時点で人造人間に立ち向かえる戦士は悟飯とトランクスしか残されていなかったが、サイヤ人の血を引く二人でも人造人間には敵わない。

 カメハウス沖、潜水艦の中で亀仙人、プーアル、ウーロン、ウミガメの四人は絶望に打ちひしがれていた。

 

「だいぶ遠いから、この辺きっと大丈夫だよ」

 

「ああ、でももう終わりだぜ……俺たちだっていつまで生き延びられることか」

 

 ウーロンが深いため息を吐くと、突然亀仙人が拳を握って立ち上がった。

 

「よぉーし、こうなったらこのワシが人造人間を倒しちゃおうかな!!」

 

「武天老師さま!! 無茶ですよ!?」

 

「そうだよ!! ベジータやピッコロですら殺されちまったんだぜ? 誰も勝てないって!!」

 

 プーアルとウーロンの言葉を受けて、亀仙人は力なく項垂れた。

 

「くぅぅぅ……かつて武術の神と謳われた時代が懐かしいわい」

 

 かつて武術の神・「武天老師」と謳われ、悟空、クリリン、ヤムチャと、素晴らしい武道家たちを育て上げた亀仙人であったが、人造人間はもはや彼の武術が通用する領域ではなかった。

 己の無力さを痛感し、亀仙人は歯を食いしばって拳を握ることしかできなかった。

 

「……待てよ、勝てぬにしても方法はあるぞよ」

 

「む、武天老師さま……なにを?」

 

 不安そうに尋ねるウミガメを一目見てから、亀仙人は険しい表情を浮かべて一同の前に立つ。

 

「おぬし達、人造人間のニュースをよく聞いておくんじゃ」

 

「お、おい爺さん。一体なにする気だ?」

 

「武天老師さま、無茶ですよ!? ヤムチャさまだってやられて……」

 

「なぁに案ずるな、なにもワシは奴らと戦おうとは思っておらん。第一、ワシの実力では奴らとは戦いにすらならないじゃろう」

 

 そう言いながら亀仙人はサングラスを外した。

 

(じゃがトランクスはまだ未熟、そして悟飯一人じゃ奴ら二人を相手にできないのも事実。となればこの老いぼれにできることは、一つしかなかろう……)

 

 この時点で、亀仙人は覚悟を決めていた。

 悟空亡き今、人造人間との戦いで死んでいった愛弟子のクリリンやヤムチャ、そして鶴仙人を離反して立派な武道家の道を歩みながら、やはり人造人間との戦いで戦死してしまった天津飯やチャオズのことを思えば、彼とて人造人間を許せるはずがなかった。

 この日以降、亀仙人はプーアル、ウーロン、ウミガメと協力し、ひたすらラジオを聴き続けた。

 

 ──それから数日後、人造人間はオレンジシティに現れた。

 

 人々は銃火器を持って抵抗したが、人造人間を前に成すすべもなく殺されてしまった。

 

「そんな、イレーザ……っ!!」

 

「クソッ、人造人間め!!」

 

 人造人間の攻撃から難を逃れ、瓦礫に隠れる男女。

 一人は金髪の長い髪の男で、わりと筋肉質な体型をしていた。

 もう一人は黒髪の二つ結びで、二人とも年齢は同い年くらいといった風貌だ。

 

「しっかりするんだビーデル!! アイツが作ってくれた時間を無駄にしちゃいけない!!」

 

「けど……っ」

 

 

「あは、17号!! 見つけたよ、人間をさ」

 

 

 その声で、二人の背筋が凍った。

 

「誰かと思えば、さっき消した女の友達じゃないか」

 

「あはは、怯えちゃって。大丈夫だよ、すぐに友達の所に送ってあげるからさぁ」

 

 軍隊も、世界チャンピオンも、今抵抗を続けている謎の二人組も、誰だって人造人間には勝てない。

 絶望しかなかった。

 だが金髪の男、シャプナーは覚悟を決めていた。

 

「……ビーデル、お前は逃げるんだ」

 

「シャプナー、あんたまさか……!?」

 

「オレが隙を作る、だから逃るんだ!!」

 

「いやよ!! あんたが戦うならわたしも戦うわ!!」

 

 ビーデルは拳を握り、戦う意思を表明する。

 

「いいからお前は逃げろ!! お前はミスター・サタンの娘だ、アイツらに勝てる最後の希望はお前しかいないだろ!!」

 

 その言葉にビーデルは心を打たれ、拳を下ろす。

 

「いいかビーデル、生きて修行して、いつかアイツらを倒してくれ。頼んだぜ!!」

 

「シャプナー!?」

 

 ビーデルの呼びかけ虚しく、シャプナーは持っていた金属バッドを片手に特攻を始める。

 

「おらぁあああ人造人間!! くたばりやがれぇーーーーーーーーっ!!」

 

 ゴン!!

 鈍い音が響き渡るが、バッドで打たれた17号は微動だにせず、表情さえも変えない。

 逆にシャプナーが持っていた金属バッドが変形してしまい、殴った反動でシャプナーの腕がビリビリ痺れていた。

 

「ぐぁ、クソが!!」

 

 だがシャプナーは痛みをこらえ、ボクシングのファイティングポーズを取った。

 

「素晴らしい友情だ、涙ぐましいよ」

 

 17号が薄ら笑いを浮かべ、シャプナーに形だけの賛辞を贈る。

 

「うるさい!! お前らなんかこのシャプナー様がぶっ殺してくれる!!」

 

「大した覚悟だ。いいだろう、褒美にオレもボクシングで相手してやろう」

 

「まーた始まったよ、17号の遊び好きが……さっさと二人とも()っちゃいなよ?」

 

「いいだろう? こいつはゲームだ」

 

 それを聞いたシャプナーの頭の中で何かが切れる。

 

()らせない!! ビーデルだけでも絶対に生かさせる!!」

 

 ステップを踏み、かなりの速さでシャプナーは間合いを詰める。

 彼もボクシング部、それなりに試合はこなしてきた男だ。

 だがそれはあくまで一般レベル。

 

「やれやれ、これじゃあ一発貰ってやることもできないな」

 

 17号があっさりシャプナーのジャブを躱していく。

 あくまで常識的な高校生レベルの実力しか持たないシャプナーと、単独で宇宙の帝王フリーザですら敵わない強大な力を持つ17号とでは、そもそも次元が違うのだった。

 

「そろそろゲームは終わりだな」

 

「──ッ!?」

 

 17号が放った一閃。

 軽いジャブでシャプナーの首の骨を折り、シャプナーの命脈を絶ってしまった。

 

「そんな……シャプナー……っ!?」

 

 イレーザ、そしてシャプナー。

 二人の友人を眼前で殺され、ビーデルは狼狽えてしまう。

 悲しむ余裕さえ無い、あるのは絶望だけ。

 ニヤニヤ笑いながら目の前に立ち塞がる人造人間を前に、体が無意識のうちに震えてしまう。

 

「残念、友達を守れなくて惜しかったな」

 

「17号、さっさと()っちゃいなよ。それともあたしがやるかい?」

 

「おいおい、楽しみを奪わないでくれよ。オレは人間が恐怖に引き攣る顔を見るのが好きなんだ」

 

 その時、ビーデルの脳裏に去来するものは、楽しかった仲間たちとの高校生活。そして人造人間を倒すために立ち上がり、その後消息を絶った世界チャンピオンの父の姿だった。

 最高の友達は、自分の命を守ろうとして散っていった。

 偉大なる父は人類のため、勝ち目のない戦いに勇敢に挑んでいった。

 そう振り返っているうちに、ビーデルは心の中で覚悟を決めていた。

 

「冗談じゃないわ……アンタ達はわたしがここで倒す!!」

 

 強大な、勝ち目がないことは理解していながらも、ビーデルは腰を落として拳を構えた。

 

「アンタ達になんか負けないわ!! わたしはミスター・サタンの娘なんだから!!」

 

 ビーデルを支えるもの、それは亡き友との友情、そして亡き父が世界チャンピオンだったという誇りのみ。

 それを聞いていた17号は表情もなく、手のひらを開く。

 

「なんだ、絶望しないのか。興ざめだな」

 

「──ッ!?」

 

 そういって17号はエネルギー波を放つ。

 

(そんな、何もできないままわたし、殺されちゃうのね……悔しい)

 

 閃光に包まれる中、ビーデルは悔しさを覚えながら死を覚悟していた。

 しかしビーデルが死ぬことはなかった。

 

「波っっっっ!!」

 

 何者かが放ったエネルギー波によって17号のエネルギー波がかき消された。

 

(え、誰……?)

 

 恐る恐るビーデルが目を開くと、そこには山吹色の道着を身にまとった、年齢的には自分に近いくらいの筋肉質な若者の背中が写った。

 背中の中にマルが描かれ、そこには飯という一文字が刻まれていた。

 

「悟飯さーーーーーん!!」

 

 さらにもう一人、自分よりも年下でまだ少年といった風貌の、髪が紫色の少年がどういうわけか上空から降り立ったのだ。

 そう、ビーデルは信じられなかった。

 何故なら割って入ってきた二人は、空を飛んできたように見えたからだ。

 

「なんだ、孫悟飯とトランクスじゃないか。お前たちまだ生きていたのか」

 

「もう17号、アンタがモタモタしてるから邪魔者が湧いてきちゃったじゃないの」

 

 二人の姿を見て、先ほどまで瓦礫に腰かけていた18号が立ち上がり、17号の横に並ぶ。

 

「トランクス、その人を連れてできるだけ遠くに離れてくれ」

 

「え、悟飯さん……嫌ですよ、オレも戦います!!」

 

「トランクス、命令だ!! 人命救助も立派な戦いさ、早く行くんだ」

 

「……は、はい!!」

 

 青年に命令された少年が自分の前に駆け寄ってきた。

 何がなんだか理解ができないビーデルだったが、少年は必死な面持ちで自分と向かい合う。

 

「ここは危険です、オレと一緒に逃げましょう」

 

「あ、あなた達は……?」

 

「説明は後でします。さあ、オレの背中にしっかり掴まって」

 

 ビーデルは一瞬躊躇したものの、少年がやけに必死であることや、自分を助けようとしていることは間違いなさそうだったため、少年の言う通りに背中にしがみついた。

 

「きゃあっ!?」

 

 するとビーデルは未知の体験をする。

 なんと少年が空を飛んだのだ。

 しがみついるのがやっとで、目を開けられないほどの猛スピードで。

 とにかく自分は助かった。

 その事実を理解することが、ビーデルにとっては精一杯であった。

 

「人造人間!! 今日こそおまえ達を倒す!!」

 

 そう咆哮し、悟飯は果敢にも二人の人造人間に挑んでいった。

 これまで激闘を繰り返してきた悟飯の戦闘力は、初めて超サイヤ人に覚醒したあの頃よりも飛躍的に向上していたものの、それでもまだ人造人間二人を相手に勝てるレベルではなかった。

 はじめのうちはある程度の善戦を見せるものの、17号と18号のコンビネーションは抜群に息が合っており、少しずつ悟飯は劣勢に追い込まれていく。

 数分が経過した頃、悟飯はすでに怪我を負ってボロボロだった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

 

「なるほど、どうやら少しは強くなったようだな」

 

「でもまだ全然弱い。それじゃあたし達には何度やっても勝てないね?」

 

「18号の言う通りだな。お前ほど無駄な努力が似合う奴はいないよ」

 

 その時、悟飯が考えていたことはどうやって戦線を離脱するかだった。

 悔しいが、まだ自分の力では人造人間に勝つことができない。

 トランクスはまだ未熟、ここで散っては誰も人造人間を食い止めることも、トランクスを一人前の戦士に育て上げることもできない。

 なんとかして生き延びなければと悟飯は思っていたが、現状、人造人間に隙はない。

 

「さて、18号の機嫌を損ねてしまうし、そろそろ殺すけどいいよな?」

 

「くっ!!」

 

 悟飯は構えてみせるものの、正直ベストな状態で一対一ならまだわからないが、消耗した状態で二人を同時に相手にできない。

 絶望的な状況、勝ち目など全くない。

 

「ん?」

 

 だが状況は一つのホイポイカプセルによって激変する。

 投げ込まれたホイポイカプセルから出てきたのは、大魔王封印というお札が張られた電子ジャーだった。

 

 

「悟飯よ!! この隙に逃げるんじゃ!!」

 

 

 そして次に聞こえた雄たけび。

 それはピッコロ大魔王と戦った時に着ていた黒いカンフースーツを着た亀仙人だった。

 

「む、武天老師さま!?」

 

 亀仙人が助けに来た。

 だがそれば死ぬ気であるということ、悟飯はそれを感じ取り、焦った。

 

「逃げるんじゃ悟飯!! 人造人間を倒せるのはお主とトランクスしかおらん!!」

 

「武天老師さま……まさかっっっ」

 

「なんだ、この爺さんは?」

 

「17号、二人まとめてさっさと消しちゃおうよ」

 

 二人が亀仙人から視線を切らし、見つめあって亀仙人を殺害することを確認しあった瞬間。

 その隙を武術の達人である亀仙人は見逃さなかった。

 

(まともに挑んではワシの武術など奴らには通用せん……ならば手段は一つ)

 

 両手を開いて、正面に構えた。

 

(悟飯を、トランクスを、若者を、希望を死なせてはならん……そのためにこの老いぼれの命を使うのじゃ!!)

 

 そして。

 

 

魔封波(まふうば)じゃ!!」

 

 

 緑色のエネルギー波のようなものが渦を巻き、それは瞬く間に17号の周囲を包む。

 

「なんだ……なっ、うああああああああああああああああっっっっっっっ!!」

 

 亀仙人ごときの攻撃など効かない。

 そこら辺の雑魚と同じだと油断したことが、17号に大きな隙を生み、避けられたハズの魔封波の直撃を喰らう結果となった。

 

「なっ、17号!?」

 

「武天老師さま!!」

 

 弟が得体のしれない何かに巻き込まれ、18号が叫ぶ。

 そして命を賭けた亀仙人の行動に、悟飯もまた叫んだ。

 

「逃げるんじゃ悟飯!! さっさと行けい!!」

 

 亀仙人の咆哮。

 それは固まっていた悟飯を突き動かすのには十分すぎた。

 

「武天老師さま……すみません、すみません!!」

 

 悟飯はその場を飛び立った。

 

(すみません、すみません……仇は必ず取ります!!)

 

 悟飯はただ、心の中で亀仙人に謝ることしかできなかった。

 あの技のことを悟飯はなんとなく、知っていた。

 

『悟飯、世の中には力の差など関係なく脅威となる技もある。覚えておくんだな、油断しているとかつて武泰斗という武道家に悪の大魔王が封印されたように、足元をすくわれるぞ』

 

 戦いでは油断は禁物ということを教えてくれた師匠であるピッコロが、かつて自身の父であるピッコロ大魔王を封印した技があったことを教えてくれたことがある。

 魔封波、恐らくそれがその技であろう。

 悟飯は悩んだ。

 亀仙人を手伝い、17号を封印した後、18号と戦うべきだったのではないかと。

 しかし万全の状態ならともかく、満身創痍の今の状態では18号一人だとしても戦って勝てる可能性は限りなくゼロに近い。

 非情であり、後悔しかなかったが、それでも合理的な判断ではあった。

 未来へ紡ぐ。

 それが最優先であり、悟飯は自分にとってそれが使命であると考えていた。

 

(悔しいけど、オレじゃアイツらには勝てない……)

 

 このところ、悟飯は自分の力に限界を感じていた。

 修行の日々だというのに、これといって実力の向上を実感できず、事実何度挑んでも人造人間には勝てない現実もあった。

 だから悟飯は薄々感じ始めていたのだ──自分は人造人間には勝てないことを。

 

(だけどアイツらに僅かでも勝てる可能性があるとしたら……トランクスだけだ)

 

 しかし同時に悟飯は感じ取っていた。

 ベジータが遺したサイヤ人の末裔、トランクスが秘めている潜在能力の高さを。

 しかしトランクスはまだ子供、力も戦い方もまだ未熟だ。

 

(オレは死ねない。トランクスを一人前に育てるまでは……まだ死ねないんだ!!)

 

 その想いが悟飯に強い決意をさせる。

 亀仙人の想いを無駄にはしない、そう固く誓いながら悟飯はトランクスたちのもとへ飛ぶ。

 

 ──この後、亀仙人は消息を絶った。

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