幻想入りが多発するようになり、今までより大きくなった能力・無能力者達のセーフティゾーン、人里。その一角に里の雰囲気にそぐわぬ新築の屋敷が建っていた・・・
プロローグ
従二 文華は悩んでいた。その内容は本人にとって今後に関わる重要なもの。そう・・・
「どうしたら世の中のご主人様をご奉仕出来るんでしょうか・・・」
彼女は自分以外の人全てをご主人だとみなし、らしい理由もなくご奉仕する事を望んでいる、奉仕精神が異常に高いだけの女なのだ。その志は立派なものだが、ほとんどのご主人に当たる人々はまず変人扱いして相手にしないか、気味悪さに断るかの二択。もちろん、無条件に自分に仕えてくれると喜んでくれる輩も決して少なくはない。しかし彼女はそれでも満足できなかった、もっと多くのご主人様にご奉仕したいのだ。悩んでも解決策が見いだせなかった結果、彼女が向かった先は・・・
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「という訳でして、何とかしてくださいませんかご主人様方!」
0783ワオッと解決屋の依頼人席で少し気分高めにそう言う文華であった。
「お主・・・良い奴じゃな?アンヘルも見習わんか、吾輩専属なんじゃから。」
「お言葉ですがでしたら主人らしい振る舞いをしてくださいという話ですよクソ犬。というか、何故貴方はそこまで他人に利用されたいんですか、Mなんですか?」
「利用されたいなんて人聞きの悪い!私はただご主人様にご奉仕したいだけなんです!」
「・・・あぁ、何でこの解決屋にはこうも変な悩みを抱えた人しか来ないんでしょうか、名前以外はまともなはずなのに・・・。」
「吾輩の考えたこれ以上に良いものがない名前じゃぞ!?」
今日の解決屋にはルマとアンヘルしかいなかった。ユウは元々解決屋の事業に乗り気ではないので家で平和を過ごし、ラムダは買い出しに出かけている。二人で文華の悩みを解決する必要があるのだ。
「要は奉仕させてくれる主人を探しておるのじゃろう?なら簡単な事じゃ。お主から探すのではなく、主人の方から探してもらえば良い。」
「何かいい方法があるんですか!?」
「もう考えるのも馬鹿らしいので任せますけど、何を考えてるんです?」
「フッ、それはだな・・・」
時は少し進み、冒頭の屋敷が完成したのである。ルマの能力によって。
「お主は今日からここに住み、主人を待てばいいんじゃ!お主が主人を探しておるという旨を何かしらの方法で周りに伝えれば奉仕されたい主人達が来るじゃろうて。」
「なるほど・・・!」
「シェアハウスみたいなものですか。発想はクソ犬の割に悪くないですけど、本当にこんなので来るんですか?」
「それぐらい私がどうにかしてみせますよ!早速立て看板でも作りましょうか!」
そして出来た立て看板の文が・・・
”ご奉仕してほしいご主人様、募集してます!
・費用はこちらが全額負担!ご主人様が生活費の心配をする必要はありません!
・契約は不要!好きなだけ寝泊まりしてください!
・絶対に損はさせません!
是非お越しください ご主人様方のシェアハウス ご奉仕担当 従二文華”
「・・・うさんくさいにも程がありますよこれ。いえ、あるいは甘さにつけ込んでずっと居座りそうな人も出そうですが。それにこの条件ですと貴方がただ苦労するだけですよ?せめて家賃ぐらいは設定した方が・・・」
「いいんですよ!私はご奉仕出来ればそれだけで十分ですから!」
「・・・どうなっても知りませんよ私は。クソ犬の提案ですし。」
こうして屋敷は建てられたのであった。アンヘルの言う通りうさんくさいなんてものではないが、ここは何があるか誰にも分からない幻想郷。文華の望むご主人は、続々と集まるのであった・・・。
EP.1
屋敷が建てられて数日後、最初の来訪客は現れた。
「ご主人様ぁ?・・・何か変な奴がいそうだな。何だよこの条件、虫が良すぎねぇか?」
立て看板を見て言葉を漏らしているのは、あるギャング組織に所属するラッキーボーイ、グイード・ミスタ。彼は幻想入りして以来、持ち家を作っていなかった。どこか旅館を探していた時に見つけたのがこの怪しい屋敷である。
「でもまぁ、建物自体は新しい方だよな。お金もないし負担してくれるのはありがたいが・・・どうしたもんか。・・・一回入ってみるか?」
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「お待たせしておりましたよ!お帰りなさいませご主人様!」
ミスタが屋敷に入ると、玄関で文華が待ち構えていた。
「ちょい待て、出会うのが早くねーか?それに俺まだここで暮らすなんて言ってないぞ?ちょっと様子見に来ただけだっつの。」
「まあそう言わずに!表の立て看板は見ましたよね?私が誠心誠意ご主人様にご奉仕しますから!」
「いや、それは見たけどもよぉ・・・あんたが文華とやらでいいんだよな?あんな条件じゃあんたが報われねーぞ?」
「私はご主人様にご奉仕出来ればそれで満足ですから!」
こいつ騙されやすい性格だろうな、間違いない。とミスタは思った。
「つーかよぉ、この屋敷ずいぶん新しそうだが、いつ建てられたもんだよ?」
「えーっと、1週間も経っていませんね。ちなみにご主人様が初めてここに来られたご主人様です!」
「ご主人ご主人言うな、俺のことはミスタでいいから。しかしつい最近なのかよここ・・・。とりあえず中を見せてくれないか?」
「ここで暮らしてくれるんですね!?」
「まだそう決めた訳じゃねぇよ。中を見てからだ。」
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「この辺りがご主人様方の部屋です!どこも空き部屋なのでどこを取っても構いませんよ!」
「部屋作りすぎだろ・・・」
「どれほどのご主人様が来てくださるか分からないので沢山作ってもらったんです!数が足りなくなるよりはマシですからね!」
「いや、確かにそうかもしれないけどなぁ・・・。」
「部屋にはキングサイズのベッドにテレビに小さめの冷蔵庫、人をダメにするクッション、それと風呂とトイレは別々にあります。風呂は人一人分ですがあちらの方に大浴場がありますよ!」
「なるほどな・・・でも何でテレビなんか置けるんだよ?ここ圏外だから電波届かないんじゃないのか?」
「ご安心ください!この屋敷を建ててくれた人が手配してくださったおかげで電波が届くんですよ!フリーWi-Fiもあります!」
「そいつ何者だよ・・・?普通に凄くねぇか?」
「それだけじゃないんですよ、他にも開けていない間に食材が用意される冷蔵庫とか大浴場や個室の風呂の湯とかを自動で生成してくれる水道とか・・・」
「本当に何者だよそいつ!?万能過ぎて逆に怖いんだが!?」
「っと、話が逸れましたね。食堂はあちらの廊下の奥に、喫煙室はそちらの角に!それから・・・」
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「これで一通り紹介は済みましたよ、どうですかご主人様、住んでみませんか!?」
「だからミスタでいいっつの!まあ今のところデメリットは見あたらねーけど・・・本当にこっちが金を用意しなくていいんだろうな?金の無い俺が言うのもなんだが、これただのダメ人間の巣窟になるぜ?」
「それでもご主人様はご主人様ですから!それで、どうしますか?」
「・・・しょーがねぇ。尽くされっぱなしは気が引けるからよ、家賃の代わりに俺が警備役をやってやる。それぐらいはやらせてくれ。ただし、俺が元の世界に帰る方法を見つける間までだ。それまではここで暮らしてやる。」
「うーん・・・まあご主人様の命令だと思えば許容範囲内ですね!それではこれからよろしくお願いしますね、ご主人様!」
「だからミスタでいいっつってんだろ・・・。ご主人様って言われると何か背中がむず痒い気分になるんだよ。」
こうして、一人目の住人が決まったのであった・・・この後も様々な者が屋敷に訪れるが、それはまた次回のお話。to be continued