トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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思いつくまま書きましたが、もしかしたら規約に引っかかって消えるかもしれません


日本国の異常な平和主義 またはこの国は如何にして配慮するのを止めて積極的平和主義を標榜するようになったのか

遥かなる宇宙の片隅、広大なる銀河の一角。

青き水の星"地球"…その惑星は、その美しさとは裏腹に多くの争いの舞台となった。

毛の無い猿(人類)が生まれてから、彼らは棍棒で、石器で、青銅器で、鉄器で、銃器で、果には星の力()すら用いる戦争を幾度となく繰り返した。

 

そんな中、我らが祖国(日本国)はどうなったのだろうか?

第二次世界大戦に敗北し、牙を抜かれ、そのまま大国の思惑に踊らされ、都合の良い防波堤となって荒廃してしまったのだろうか?

はたまた深刻化する少子化に耐え切れず、緩やかに衰退してしまったのだろうか?

だが、幸いな事にそうはならなかったし、寧ろ何だかんだで様々な国難を乗り越えて今日まで存続していた。

それを示すように西暦2035年、日本国の中枢である霞が関、現在の政権与党である自由国民党の本部では党総裁にして現日本国内閣総理大臣である『成島 智治(なるしま ともはる)』が、会議室に備え付けられたモニターに目を向けつつ、熱い緑茶片手に煎餅を齧っていた。

 

ー「ご覧下さい、この広大な工場を!この工事は5年前、我が国がロシアとの交渉によって買収したスホーイ社、ミグ社、ツポレフ社、そして先の戦争によって固い絆を結んだウクライナのアントノフ社の日本法人を統合し設立した半官半民の軍用機メーカーである日本先進航空機の旗艦工場であり、本日初めて内部が公開されました!」

 

「バリッ…ズズッ…はぁ〜……。やっぱりテレビ越しだと大きさが伝わらんなぁ…」

 

女性アナウンサーのキンキンとした声に片眉をピクッと跳ねさせ、腕を組んで憮然とした様子で成島は画面から目を逸らして壁に掛かった額縁に収められた新聞の一面に目を向ける。

 

ー《露による侵略戦争終戦!宇政府は各国への謝意を表明!》

 

ー《露にて大規模金融危機か?日本政府は露への経済支援を検討との事》

 

ー《号外!日本政府、露の軍用機メーカー3社を買収!経済支援の見返りか!?》

 

「いやはやまさか我が国がこうなるとはな…。しかし、これでこの国に本格的な軍用機の工場が出来た。一昨年受注したキューバ空軍の戦闘機近代化改修作業も完了したし、後は引き渡しだけだ。まだまだ小さな実績だが、これを機に旧東側諸国が我が国に現用機の改修や、新型機の発注をしてくるようになれば、外貨でウハウハだな」

 

読者の方々はもう察していると思うが、この世界での日本は現実世界の日本とは違う道を歩んでいた。

東西冷戦の最中こそ大人しく西側の盟主(アメリカ合衆国)の防波堤となっていたが、冷戦終結後の世界的な軍縮の中でも冷戦気分から脱却出来なかった本邦は何をトチ狂ったのか、ソ連より独立したばかりのウクライナから建造途中の空母『ヴァリャーグ』を大枚叩いて買い取り、それを解析して来る訳がないロシア海軍空母機動部隊へ備えていたのだ。

 

しかし、原子力空母(スーパーキャリア)と比べればお粗末ながらも近代的な空母の実物と各種データが揃っている状況で、大日本帝国海軍(空母機動部隊のパイオニア)の末裔であるソ連海軍絶対殺すマン(海上自衛隊)が大人しく出来る筈もなかった。

防衛省はお得意の言葉遊び(方便)を駆使して、航空機搭載護衛艦(・・・・・・・・)という苦しすぎる造語を持ち出し、世論の反対も押し切って…調子に乗ってアドミラル・クズネツォフ級の準同型艦とも言える『しょうかく型航空機搭載護衛艦』を3隻(・・)も建造した挙句、当時最新鋭のミサイル護衛艦である『むらさめ型護衛艦』を20隻(・・・)も建造して、ミニ空母機動部隊とも言える艦隊を編成してしまうという暴挙をぶちかましたのだ。

 

だが日本国の狂いっぷりはこれに止まらない。

20年代初頭に勃発したロシアによるウクライナ侵攻、それを受けて日本政府はウクライナへと義勇兵と称した事実上の特殊部隊(陸上自衛隊特殊作戦群)を派遣、更には10式戦車や16式機動戦闘車の配備によって退役が進んでいた74式戦車及び90式戦車、それに加えてMLRS(多連装ロケットシステム)まで供与し、その上ウラジオストク沖に『ヴァリャーグ』が元となった『しょうかく』を中心とする『第一航空護衛艦隊』を遊弋(うろつかせ)てロシア軍の戦力を分散させる事でウクライナ側の勝利に多大なる功績を残した。

この功績によって日本は敗戦国(元枢軸国)から戦勝国(平和の守護者)となり、世界は日本を"蘇ったサムライの国"と畏怖され(讃えられ)るようになったのであった。

 

これにて一件落着…かに思われたが、吹っ切れた日本はまだ止まらない。

敗戦によって多大なる負債(賠償)を背負う事となり、経済的に窮地に立たされたロシアへ対して何と経済支援を行ったのだ。

これに対し世界は驚愕したが、無論日本も100%の善意で経済支援をした訳ではない。

日本政府は経済支援の見返りにロシアの主要航空機メーカーであるミグ、スホーイ、ツポレフを買収し、工作機械や治具、さらには主力技術者を真摯な交渉(高給と日本国籍)によって国内に誘致し、それに加えてウクライナから避難してきたアントノフ社の社員が設立したアントノフ社日本法人も傘下に収めた東洋一の航空機メーカーを設立する為であったのだ。

そしてその目論見は怖いぐらいにあっさりと達成され、今では航空自衛隊や海上自衛隊が運用する戦闘機の開発・製造を行いつつもロシアから距離を置きたがっている旧東側諸国が保有する軍用機の近代化改修まで行なっている有様である。

 

コンコンコン

 

「入れ」

 

閑話休題(それはともかく)、会議室のドアがノックされ、成島が入室を許可する。

 

「総理、失礼します。まもなく野党第一党、共同立憲党の党首との会談のお時間です。表に車を回しておりますので、ご準備を」

 

「ん?あぁ、もうそんな時間か…。あの若造との食事…正直言って、アイツは苦手なんだがねぇ…。言ってる事は正しいが、堅苦しくて敵わんよ」

 

入室すると共にスケジュール帳片手に淡々と述べる秘書の言葉に成島は腕時計で時間を確認しつつ、椅子に掛けていたジャケットとネクタイを持って会議室を後にした。

 

 

 

 

この数時間後、成島は…いや、日本国に住まう全ての人々は未曾有の事態に巻き込まれる事となるが、それを知る者は居る筈もなかった。




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魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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